なぜこのタイミング? 後発ニコンがあえて今アクションカム市場に参入するワケ

なぜこのタイミング? 後発ニコンがあえて今アクションカム市場に参入するワケ

2016.11.22

ニコンが10月、初めてアクションカメラを発売。360度撮影が可能で4K対応しているものなど個性的な3種類のカメラだ。カメラメーカーとして約100年の歴史を持つ同社が、満を持してアクションカム市場に登場することになるが、決して大きいとは言えないアクションカム市場への参入。遅いとも見えるが、同社の狙いは……?

発売するのは、全く違う使命を持った3種

ニコンが初めて販売するアクションカムは3種類。360度撮影が可能な「KeyMission 360」とアクションカムのスタンダードなタイプの「KeyMission 170」、携行性と機動力が特徴の「KeyMission 80」だ。

360度撮影が可能な「KeyMission 360」
アクションカムのスタンダードなタイプの「KeyMission 170」
携行性と機動力が特徴の「KeyMission 80」

さまざまな過酷なシーンに耐えられるような防水性と耐衝撃性能、そしてニコンが従来から持っている画質のよさを兼ね備えていると、同社が自信をもつ製品。

企画部マーケティング課の鳴澤学マネージャーによると「ターゲットは新しいものに興味を持ちやすい30代から50代の男性。そして、アクティブにスポーツなどの活動をしている人。使命を持っていろんなチャレンジをする人」だという。

使命。そんなところから製品の名前が名づけられたという。

これらのアクションカムは、スマートフォンで、専用のアプリケーション「SnapBridge」をダウンロードし、Bluetoothで接続すると、撮影中の映像がオンタイムで確認でき、同時にデータもスマホ内に収められる。

アクションカム市場

アクションカムといえば、山や海などアウトドアスポーツ中の光景を撮影することに最適に作られたカメラ。小型で、自転車や、サーフィンなどに取り付けられ、臨場感のある映像を撮ることができるのが特徴だ。

アクションカムの代名詞となっているGoProは、製品を使って撮影された映像がSNS投稿され、拡散したことが大きな飛躍につながったなど、SNSの普及とともに市場が拡大。既存のデジタルカメラ市場などと比べるとまだまだ市場は小さいものの、今後も期待される市場といっていいだろう。

ただ、躍進したGoProもここのところ販売台数は思わしくない。市場の成長は今後鈍化するとの見方もでてくるだろう。そんな市場に、参入していくニコン。今あえて参入する理由は……。

動画撮影機器の強化

鳴澤さんは「映像環境、動画の使われ方が変わってきたなと思っています。多様化する中で我々の今までの商品だと応えきれていないのではないかとの課題感がありました」と答えた。同社のラインナップの中に、客のニーズにあった動画メインの製品が足りない、と今回のアクションカムに行き着いたという。また360度撮影できるカメラについては、まだ製品数が少なく「市場が拡大する手伝いができたら」と、市場を作っていく時期だと見ている。

同社にとっては、動画の向けの撮影機器の開拓というわけだ。

360を使って撮影している様子を説明している企画部マーケティング課の鳴澤学マネージャー

スマホ撮影と同じ手間感へのこだわり

スマートフォンなどの普及によって、デジタルカメラといった既存のカメラの市場は縮小傾向が続いている。ニコンは、グループ全体の経営戦略の中で、市場の縮小が想定されるデジタルカメラなど映像事業は「ネットとの親和性」をテーマにあげ、取り組んできた。 スマートフォンなどの普及で、SNSなどへ映像の投稿、1日に18億枚の写真がネットで共有される時代に、映像は極めて重要なコミュニケーションツールになると分析。新しいデバイスやアプリケーションの提案などによって、スマホなどとの共存をどう実現できるか、が大事とみている。これが先に述べた動画撮影機器の強化につながっているし、常時接続を可能にする「SnapBridge」につながっているのだ。

「SnapBridge」によって、スマホで撮影するのと同じようなスムーズさで、カメラの高精細な映像をスマホ内に収められる。つまり、SNSへの投稿が、より手軽になる。「カメラでなくてもスマホでも写真は撮れる。どうやったらカメラの画質を楽しんでもらえるか。それには即時性だと」。「ネットとの親和性」へのニコンの1つの答えだ。

アクションカム発売にあたって、同社は、この「SnapBridge」の完成を待った。「リアルタイムで見られる機能とKeyMissionを一緒に出したかった」(鳴澤さん)という。

臨場感ある映像コンテンツを充実させ訴求

「SnapBridge」の完成を待ったこともあり、このタイミングとなった参入だが、同社は自信を持っている。「我々カメラメーカーとして来年で100年になります。技術品質は培ってきたものがあり、ニコンであればと信頼して、買う方も多くいるのではないかと思っております」(鳴澤さん)と期待。新しい展開なので客の反応を見ながら探っていくとのことだ。

ユーザーに対して、専用サイトやYouTube上に、これらの製品を使って撮影された臨場感ある動画をアップし、製品の良さをアピール。特に360についてはどんな動画が撮影できるのかを知ってもらうことからだという。

ニコンが100年かけて積み上げてきた品質の良さと、即時性、そしてまだまだ未開拓の360度カメラなどのバリエーションで、どこまでユーザーに支持されるだろうか。市場そのものも拡大できるかは、魅力的な新製品が増えることにかかっているともとれる今、“ネットとの親和性”をキーワードに即時性にこだわったニコンの新製品の売れ行きは注目してきたいところだ。

ソフトバンク通信障害、問題の機器を製造したエリクソンが原因を公表

ソフトバンク通信障害、問題の機器を製造したエリクソンが原因を公表

2018.12.10

ソフトバンクの通信障害、問題のエリクソンが会見

原因は機器のデジタル証明書の有効期限切れ

根本原因は調査中で、本格的な対策はこれから

12月10日、ソフトバンクで6日に発生した通信障害について、通信障害の原因となった機器を製造していたエリクソン(本社:スウェーデン)が会見を開いた。

6日午後、ソフトバンク回線が不通に

通信障害の原因とされたのは、LTE通信網のコアネットワーク内で制御信号などのやりとりを行うMME(Mobility Management Entity)内のソフトウェアで、デジタル証明書の期限が切れていたこと。これはエリクソン側のミスだという。同社は現在「根本原因の解析と今後の対策」については精査中と説明している。

LTEのコアネットワークには、さまざまな装置が必要だ。複雑なため概要は記事中の図を参照してほしいが、パケット交換を担当する装置としてEPCがあり、そこにはS/P-GWと今回のMMEが含まれている。S/P-GW側はパケット交換機能を担当しており、いわばルーターのような機能を提供する。MMEは、さらに加入者情報を管理する装置であるHLR/HSSとも接続しており、端末の位置情報も橋渡しするなど、制御系の機能を備えている。なお、今回問題となったエリクソンのMMEはバーチャルMMEだったという。

LTEのコアネットワークには、さまざまな装置が必要だ

今回の不具合では、このMMEの機能を提供するソフトウェアのライセンスを管理しているデジタル証明書の期限が誤って登録されていた。これが期限切れとなったことから、MMEの機能が使えなくなり、ユーザーの加入者情報が参照できなくなるなどの障害が発生し、通話・データ通信の全ての機能が利用できなくなるといった被害につながった。

デジタル証明書の期限が短く設定されていた理由は明らかになっていないが、今回はソフトウェアのバージョンダウンによって障害が収まった。旧バージョンでは長期間の期限が設定されていたからだ。そのため、新バージョンの証明書の期限が短くなっていた事象には人的ミスが疑われる。また、それ以外の装置では同様の問題は発生していないという。

そうした根本的な原因について、エリクソンでは現在調査中として未だ明らかにしていない。世界11カ国の事業者で同様の問題が発生したとしているが、ソフトバンクと英O2以外はキャリア自身が公表していないことを理由に、どの国のどのキャリアで問題が発生したかもエリクソンは明らかにしなかった。

今回は、ソフトバンクがLTE網の全てにエリクソンの装置を導入していたため、全国規模の障害発生につながってしまった。仮に複数のベンダーを採用してネットワークを構成していれば、被害を限定的にすることはできただろう。

エリクソンも「地域ごとにベンダー(製造元)を分けるなど、マルチベンダー化しているキャリアは(海外には)多数ある」としており、今後の障害対策のために、マルチベンダー化によって冗長化することは一つの策になる。

同社は今後も原因解析を進めるとしており、証明書の期限切れが発生した経緯なども明らかになる見通しだ。

面倒くささが先に立つ「軽減税率」のしくみ

カレー沢薫の時流漂流 第19回

面倒くささが先に立つ「軽減税率」のしくみ

2018.12.10

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第19回は消費税増税に伴い実施予定の「軽減税率」について

今回のテーマは「軽減税率」である。

庶民を救う「軽減税率」のはずが…

来年10月、消費税が10%に増税される。この前8%になったばかりやんけ、と思うが、「そうしないと日本ダメです」と言われたら、これからも日本に居座り続ける予定の者としては協力せざるを得ない。

しかし、所得が上がらぬまま税だけ増えれば、当然我々の負担は増加する。特に庶民の生活は圧迫され、スーパーのレジで合計金額が出た後、一つ二つ商品を棚に戻しに行くということが3回に2回は起こるようになるだろう。

そんな庶民や、それよりも苦しい低所得者層を救うという名目で実施を予定されているのが「軽減税率」である。

「軽減税率」とは、消費税が10%となった後も、一部商品だけは8%のままにしようという政策だ。一部商品とは何かというと「肉、魚、野菜、などの生鮮食品」「清涼飲料」「老人ホーム、学校給食」「テイクアウト」「新聞」などである。

要するに、飲食物など生活必需なものを8%のままにすることにより、低所得者層を救おうという作戦だ。その中に何で新聞が入っているのか。生ごみを捨てる時に必需だからか、と思ったが、「報道を味方につけるため」という見方が強い。こんなに露骨でいいのかとハラハラする。

人間食べなきゃ死ぬわけであるから、それらの税率が据え置きというのは一見良いように見えるが、すでにさまざまな問題点が指摘されている。

まずこの軽減税率、低所得者層救済という名目だが、実際に多く恩恵を受けるのは富裕者層と言われている。何故なら、食費にかける金額は富裕層の方が当然高いからだ。

例えば食費に月10万かけている富裕層と、三食うまい棒コーンポタージュ味でやりすごしている層がいるとする。前者の裕福勢の場合、軽減税率により毎月2000円消費税が軽減され、年間2万4000円浮くことになる。

片やうまい棒勢は、うまい棒が10円か11円かで一議論あるが、10円と仮定して、毎月の食費が900円、軽減税率により軽減額は月18円、年間216円である。つまり、裕福勢の方が2万3,784円も多く軽減税率の恩恵を受けているということになってしまう。

例をうまい棒コーンポタージュ味にしてしまったせいで、まったく説明ができてない気がするが、ともかく軽減税率は食費に多く金を使える富裕層の方が、軽減額自体は大きいということである。

「金持ちは恩恵を受けるな、むしろ36%ぐらい多く払え」、というわけではないが、「低所得者層救済」という名目で導入するなら、この軽減税率は適当ではないと言われている。そこを考えてか、低所得者層や子育て世帯に2万円(購入上限額)で2万5000円分の買い物ができる「プレミアム商品券」を配るというが、最大5000円のキャッシュバックで穴埋めできるのだろうか。

バナナは軽減対象に入りますか?

また、それ以前の問題もある。「うまい棒コーンポタージュ味は軽減税率対象に入るのか」という話だ。

実際、あのスポーツドリンクは清涼飲料水なので8%だが、この栄養ドリンクは指定医薬部外品だから10%だと、その線引きは曖昧かつ細かく、多くの飲食物販売店で混乱が起きると言われている。全国で「バナナはおやつに入るのか」というような古代の議論が、大真面目にされるようになってしまうのである。

また、テイクアウトは8%だが外食やイートインは10%なので、イートインスペースがあるファーストフード店やコンビニでは特に大混乱が予想される。

「早い」「手軽」が売りで私たち庶民に密接な関係があるコンビニやファーストフード店が、この軽減税率導入によりスムーズに行かなくなったら、「消費税10%より、コンビニやファーストフード店でもたつくことがムカつく」という事態になり、客が次々とモヒカンになってしまうかもしれない。軽減税率のせいで、庶民の生活が別の意味で圧迫される可能性があるということだ。

そもそも日本は少子高齢化の労働力不足で、コンビニ店員の確保もままならず、外国人労働力に頼らざるを得ないため、外国人や高齢者でも簡単に操作できるPOSレジを導入するなどの工夫をしている。それなのに、ここでさらにコンビニ業務を複雑化してしまったら、ますます働き手を確保できず、「コンビニ20時閉店時代」の到来が早まるだけだろう。

ちなみに軽減税率を導入することにより、全部10%にする場合より1兆円ほど税収入が少なくなってしまうそうだ。その1兆円をどこでまかなうかというと、総合合算制度の見送りやたばこ税、所得税の増税でまかなう予定らしい。

総合合算制度とは医療、介護、保育の負担の合計が一定額を越えたら国が補助をするという制度である。超高齢化社会日本にとっては、医療や介護などを補助してくれる政策の方が大事な気がするが、何故かこちらを見送って、軽減税率を採用するという。

私には理解しえぬ深い理由があるのかもしれないが、私程度の人間の感想としては「もう面倒だから全部10%にしてくれ」という感じだ。

もしかしたら、国民の方から「頼むから全部10%にしてくれ」と言わせるために、この「軽減税率」は存在するのかもしれない。