総務省のガイドライン改正でiPhoneの価格は本当に高くなるのか

総務省のガイドライン改正でiPhoneの価格は本当に高くなるのか

2016.11.22

総務省がMVNOの競争力強化のために取り組んだ一連の施策の現状を確認し、新たな施策を検討する「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」が実施された。この会合で議論の中心となったのは、「SIMロック解除義務化」や「端末の実質0円販売の事実上禁止」の動向に関してだが、今回の会合の結果を受けて改訂されるガイドラインによって、端末価格はどのように変動すると考えられるだろうか。

フォローアップ会合のテーマはSIMロックと端末割引

2015年にSIMロック解除を義務化したのに加え、2016年には「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」の制定によって、端末の実質0円販売を事実上禁止するなど、これまで当たり前とされてきた携帯電話キャリアの商習慣に対して、相次いで大ナタを振るってきた総務省。その背景には、大手キャリアが3グループに収れんされ競争が停滞したため、従来の商習慣を変えることでMVNOの競争力を高め、キャリアとの競争を加速させて通信料金を引き下げたい狙いがある。

だが総務省は、現状の施策をもってしても、まだキャリアの対応に不足があると感じているようだ。それゆえSIMロック解除や先のガイドライン制定後の動向を振り返り、新たに浮かんだ課題への対応を進めるべく、10月から11月にかけて総務省の下部組織であるICTサービス安心・安全研究会が「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」を実施。その結果を受けて、11月18日にはガイドラインの改正案が公表されている。

総務省はSIMロック解除義務化や今年4月のガイドラインの現状を確認し、新たな課題に対処するため「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」を実施

この会合におけるテーマはいくつか存在しているが、大きなテーマとなっていたのは、やはり「SIMロック」と「実質0円禁止」の2つだ。

SIMロック解除に関しては、MVNOの競争力強化のため、SIM解除できるまでの期間を6カ月より短縮すべきという意見が多く挙がった。とはいえ、端末を購入した後すぐ転売し、毎月の通信料を踏み倒す悪質なユーザーが後を絶たない現状もある。そうしたことからガイドライン改訂案では、SIMロック解除ができるまでの期間は、割賦払いの場合100日程度(2017年8月1日以降)、一括払いの場合は支払いを確認できるまでと(2017年12月1日以降)、従来より大幅に短縮されている。

また現状、NTTドコモの端末と、KDDI(au)の非VoLTE端末以外では、中古端末などに同じキャリアのネットワークを用いたSIMを挿入しても、SIMロック解除をしていなければ通信ができない仕組みとなっている。この点も、MVNOの利用促進の観点から問題があるとの意見が挙がり、ガイドライン改訂案では2017年8月1日以降に発売される端末に関して、MVNOのSIMであっても、同じキャリアのネットワークであればSIMロック解除なしに通信できるようにすることとしている。

端末価格の下限は下取り価格が基準に?

そして議論が大きく盛り上がったのは、端末購入補助の適正化、つまり冒頭に触れたガイドラインの適用後の動向と、その見直しである。

ガイドラインの適用後、総務省は実質0円、あるいはそれを割り込む額の割引となるキャリアの端末割引施策に対し、容赦なく行政指導を実施し、事実上端末の実質0円販売が禁止された。だが実際には端末販売を伴わない、番号ポータビリティ(MNP)による乗り換えでの回線契約を獲得した際に発生する販売奨励金を活用。週末に短期間のキャンペーンを実施するなどして、現在も実質0円販売がなされているのが現状だ。

そうしたことからフォローアップ会合では、ガイドラインの抜け穴を塞ぎ、実質0円販売の禁止を徹底するための方策について議論がなされた。ガイドライン改正案でも、連続するひと月未満の期間限定による、通信契約奨励金の臨時増額で端末の購入補助をすること、が端末購入補助の適正化対象になるとしている。

もう1つ、端末購入補助に関して大きな議論のテーマとなったのが、高額な端末と、廉価端末とで価格差があまり発生しないことである。割引額が制限されるのは、調達価格が3万円を超える高額な端末に限られるが、3万円を超える最新の端末であっても、割引後の価格は1万円程度となることが多い。

一方で、調達価格が3万円を切る廉価端末や、型落ちの端末にはガイドラインが適用されず、実質数百円での販売も可能だ。だが最新・最先端モデルと、廉価モデルの価格差が1万円程度では、前者を選ぶ人が多いのは自明である。そうしたことから高額端末の割引はもっと引き下げるべきという意見が多く出ていたわけだ。

では一体、高額端末はいくらで販売すべきなのか?という課題に対して、ある構成員から「1世代、あるいは2世代前の中古端末の買い取り額が目安の1つになるのでは」というアイデアが披露された。そうしたことからガイドライン改正案には、調達費用だけでなく、各キャリアが下取りしている、2年前に販売された同一メーカー旧機種の価格にも照らし合わせて、合理的な額の負担を求めることが適当との記述がなされている。

下取りを基準にすることで生じる新たな抜け穴

では、このスマートフォンの下取り価格が販売額の下限とされた場合、どの程度スマートフォンの値段が上がると考えられるだろうか。

ここでは最新の「iPhone 7」の32GBモデルを対象として、各キャリアのオンラインショップにおけるMNPで乗り換えた際の端末実質負担金(5GBのデータ定額サービス契約時)と、その2世代前のモデルとなる「iPhone 6」の、各キャリアが展開する下取りキャンペーン(NTTドコモ「下取りプログラム」、au「下取りプログラム(乗りかえ)」、ソフトバンク「のりかえ下取りプログラム」)における下取り価格を比較してみた。その結果が下表の通りとなる。

各キャリアのiPhone 7(32GB)の、MNPでのオンラインショップ販売価格と、iPhone 6の下取り価格の比較

この結果を見るに、下取り価格を基準とした場合、最新iPhoneの販売価格は今後、約2万円が下限となる可能性が高いといえそうだ。

だが一見確実な値上がりへとつながるこの仕組みも、実は必ずしもそうとは言い切れない。実際上の例を見ても、NTTドコモは実質負担金が下取り価格よりも高く、改訂されたガイドラインでは端末の値下げにつながる可能性もある。

またauの下取りプログラムでは、iPhoneや、他キャリアのAndroid端末の下取り価格は高額だが、Android端末の下取り価格は1万円を切るケースも多く、自社販売のAndroid端末の買い取り価格に至っては一律で3,000円と、非常に安価に設定されている。それゆえ下取り価格を基準にした場合、一部シリーズのAndroid端末は現状の1万円より安い価格で販売できるケースも起き得るわけだ。

またそもそも、iPhoneのように1世代、2世代前の機種が存在しないモデルは、何を基準に価格設定をすればよいのか?という疑問も生じてくる。そしてこうした矛盾や曖昧な点は、そのまま実質0円販売への"抜け穴"へとつながる可能性が高い。

一連の会合での議論を見るに、実質0円販売の禁止は通信料引き下げを実現するための手段であるはずが、その実現が目的化してしまっているように見える。実質0円の撲滅に向けた取り組みを性急に進めるあまり、多くの矛盾を生み出し、その穴埋めのために議論を繰り返すいたちごっこが、通信料引き下げに向けた正しい姿なのか。いま一度議論の根本に立ち返る必要もあるのではないだろうか。

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大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

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2019.05.20

トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

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