トヨタとダイハツの新車はスズキ「ソリオ」を意識? 提携話も絡む3社の気になる関係

トヨタとダイハツの新車はスズキ「ソリオ」を意識? 提携話も絡む3社の気になる関係

2016.11.23

トヨタ自動車とダイハツ工業が11月9日、小型トールワゴンを発表した。富士重工業(スバル)を含めれば4車種になるこの新型車、スズキの「ソリオ」に近い部分がいくつかある。スズキは先月、トヨタとの提携へ向けた協議を始めると表明したばかり。もし提携が実現したら3社の関係性はどうなるのだろうか。

発表会に登壇したダイハツ取締役社長の三井正則氏(画像右側)とトヨタ常務役員で国内販売事業本部長の佐藤康彦氏

ダイハツとスズキ、トヨタとの関係が気になる両社

10月12日に発表された、トヨタとスズキの提携に関する合同記者発表。以前から噂がないわけではなかったし、実際にはまだ「両社の協力関係の構築に向けた検討を開始する」段階ではあるが、トヨタの豊田章男社長とスズキの鈴木修会長が揃って共同記者会見に臨んだ姿は、それだけでビックニュースに値した。

多くの関係者はこのニュースを聞いて、スズキとダイハツの関係を思い出したはずだ。スズキとダイハツは軽自動車の分野でライバル関係にある。一方でダイハツは1960年代からトヨタと提携を結んでおり、今年8月に完全子会社になった。その中でトヨタはさらに、スズキとも手を組むかもしれない。両社のすみ分けはどうなるのか、気になった人は多いはずだ。

そんなさなかの11月9日、トヨタとダイハツが新型車の発表会を行った。コンパクトカーの「パッソ/ブーン」に続き、ダイハツが開発生産を行い、トヨタおよびスバルにOEM供給を行うトールワゴンで、車名はトヨタが「ルーミー」と「タンク」、ダイハツが「トール」と命名。スバルは実に21年ぶりの復活となる「ジャスティ」の名を与えた。

トヨタはタンク(左の画像、左側)とルーミー(同右側)という車名で販売。PRイベントに駆けつけた菜々緒さんは、Livingの“L”とDrivingの“D”を掛け合わせた「1LD-CAR(ワン・エル・ディー・カー)」というコンセプトをアピールした

トヨタが2車種あるのは、大型ミニバンの「アルファード/ヴェルファイア」と同じように、販売店別にデザインを分けたためだ。トヨタ店とカローラ店がルーミー、トヨペット店とネッツ店がタンクとなる。従来の国産車で、3兄弟はトヨタの「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」があるが、4兄弟となるのは珍しい。

4車種の車名を何度も並べて記していくと、記事が読みにくくなる恐れもある。そこで以降は、ルーミー/タンク/トール/ジャスティを「トールワゴン4兄弟」と記すことにする。

タントのノウハウを登録車に

発表会でダイハツの開発担当者数人に話を聞いた。その中で印象に残った言葉のひとつは、軽自動車「タント」の拡大版を狙ったという言葉だ。タントはそれまでの軽自動車より背の高いボディとスライドドアを装備してデビュー。現行型では助手席側スライドドアをセンターピラー内蔵のピラーレスとしたことで利便性を高めたことが評価され、軽自動車のベストセラー争いをしている。

こうした経験から、パッソ/ブーンに続き、軽自動車の経験を活かした登録車として開発を進めたようだ。しかし今回のトールワゴン4兄弟は、助手席側にもセンターピラーがある。その点については2つの理由を挙げていた。

ひとつは軽量化により燃費性能と動力性能を高めたかったこと。ピラー内蔵スライドドアはドアの重さが増し、それを支える骨格も補強が必要となるので、車両重量アップにつながるという。そしてもうひとつの理由として挙げたのが、ダイハツ自身が自分たちの強みだと発表会でアピールしていた“お客様視点”だ。

低燃費化の工夫は随所に

ダイハツ車に通底する“お客様視点”

以前、同社の軽自動車「ムーヴキャンバス」を記事で取り上げた際、晩婚化が進む未婚女性とその母親が共同で使うシーンを想定して開発されたことを紹介した。あのエピソードを思い出させるような背景があった。

タントはまだ子供が小さい家庭のファミリーカーとして企画された。子供を後席のチャイルドシートに乗せる際にはピラーレスのほうがありがたい。一方のトールワゴン4兄弟は、チャイルドシートを必要としない子供や、高齢者がいる家庭を想定。こちらはピラーに備えた手すりがあったほうが乗り降りしやすい。そこでピラーを残したというのがダイハツの説明だ。

エンジンはガソリン1リッター直列3気筒の自然吸気とターボを用意する。軽自動車以外の日本のトールワゴンやミニバンで、ターボエンジンを採用するのは少数派だ。それにダイハツはASEAN向けとして1.3リッターも持っているはずである。

ターボエンジンも用意

実はここにも軽自動車の経験が生きていた。軽自動車では同じ660ccの自然吸気とターボというラインナップが定着しており、その図式を登録車でも展開したとのことだ。

同一ジャンルに強力なライバル

ここまで今回発表されたトールワゴン4兄弟の独自性について解説してきたが、クルマに詳しい人はこの4車種が、スズキのソリオに似ていることに気付いただろう。2010年に登場したソリオは、スライドドアを備えたハイトワゴンという、軽自動車ではおなじみのパッケージングをいち早く登録車に持ち込み、安定した販売実績を挙げている。

トールワゴン4兄弟のボディサイズを見ると、全長3,700mm、全幅1,670mm、全高1,735mm(ルーミーGグレード)で、全幅はソリオより45mm広いが、長さと高さは10mmしか違わない。スライドドアを備えたトールワゴンであることも共通している。当然ながら発表会ではこの点についての質問も出た。

サイズを含めソリオと似た部分がある

これに対してダイハツは、ソリオと同じジャンルであることは認めた。そのうえでダイハツらしく、ユーザーの声を聞いて開発を進めたこともアピールした。となると気になるのは、トヨタとスズキが提携を結んだ場合だ。

軽・小型車のライバル、トヨタを交えた協力は進むか

しばらくはソリオ対トールワゴン4兄弟の販売競争が続くだろう。しかしダイハツとスズキが、同じトヨタグループに属する可能性が高まったのも事実である。提携が現実になれば、軽自動車や小型車の分野で、プラットフォームやエンジン、ボディなどの共用化が進むだろう。早ければ次のモデルチェンジで答えが出てくるかもしれない。

トヨタとダイハツは、トヨタとスズキの共同記者発表が行われた直前の10月4日、今後の新興国小型車事業の強化に向け、来年1月をめどに新興国小型車担当カンパニーの設置を共同で進めると発表している。これにインドで圧倒的なシェアを持つスズキがどう絡んでいくか。新興国戦略も見逃せない。

発表会ではこの点に関する質問も飛んだが、さすがに明言は避けていた。でも時期が時期だけに、単なるニューモデルとしてだけでなく、今後の展開も気になる新型車だった。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。