人工知能は何によって進化するか?

人工知能は何によって進化するか?

2016.02.02

現在、IT業界のみならず、さまざまな産業界で最もホットな話題のひとつである「人工知能(AI)」。かつてSFの夢物語だった「考える機械」が、今、さまざまな産業界において、急速なピッチで現実のものになろうとしている。人工知能の進化の裏には、技術面での進化が欠かせないものだった。

人工知能のレベルを引き上げた「ディープラーニング」

人工知能というと、映画「2001年宇宙の旅」の「HAL」のように人類に反乱を起こすちょっと危険なコンピュータ、あるいは「鉄腕アトム」や「ドラえもん」のように人間臭い感情を持ったロボットのことを思い出す人が多いのではないだろうか。現実の人工知能はこういったレベルには達しておらず、画像認識や音声認識など、限られた処理において、「人間が正確に条件を入力しなくても、自分で推測して答えを導き出す」という程度のものにすぎない。しかし、技術の進歩に伴い、その精度と速度は人間を上回るものになろうとしている。

たとえば、画像の中に何が写り込んでいるかを見つけ出す画像認識については、2011年ごろまでは「機械学習」という手法で鍛えられた人工知能は長年、80%程度の正答率を超えることができなかった。しかし2012年に新しい処理方法「ディープラーニング」を使って鍛え上げた人工知能が国際的な画像認識コンテスト「ILSVRC」で前年を大きく下回る誤認識率となった。人間の誤認識率は約5%とされており、2015年にはついに人間を上回る精度を実現している。

画像左:ディープラーニングにより画像認識の精度が上昇、画像右:国際的な画像認識コンテスト「ILSVRC」における画像分類テストの誤認識率。2012年を境にエラーが減っていることがわかる(NVIDIA Deep Learning Day 2016講演資料より)

機械に、人間のように「自分で判断し、自分で答えを見つけ出す」機能を実現させようという試みは、実は1940年代にはスタートしている。「ニューラルネットワーク」という人間の脳の神経伝達を模倣したモデルのうち、最初期の手法である「パーセプトロン」が、最初の学習機能を持った人工知能として登場した。しかし、このパーセプトロンでは解決できない問題が生じてしまった。やがて、「隠れ層」と呼ばれるものを加えた新たなモデルが登場することが問題解決の糸口となったが、十分な精度をもたらすための莫大なデータと、それを現実的な速度で処理する処理速度がなかったため、2000年代にいたるまで人工知能の進化は限定的なものだった。

2000年代に入りインターネットの普及で、学習に利用できる莫大なデータが容易に入手できるようになり、一気にニューラルネットワークを使った研究が進むようになる。特に数段階以上と深い階層を用いるニューラルネットワークを使った学習を「ディープラーニング」(深層学習)と呼ぶようになり、これがそれまでの限定的な浅い階層しか持たない人工知能との決定的な差を生むことになった。

人間の神経伝達をモデル化したものがニューラルネットワーク。それを多層構造にしたものが上記のディープニューラルネットワークであり、これを利用した学習がディープラーニングとなる(画像はGoogle I/O 2015より)

ディープラーニングの何がすごいのか

ディープラーニングは、それまでの機械学習を発展させたものだ。機械学習では、コンピュータに入力するデータの中から、解析に役立ちそうな特徴を抽出するための仕組みに人の手が介在した。ところがディープラーニングでは、こうした特徴抽出すらも処理の中に含まれており、特徴の選択も機械が学習する。人間は最小限の下処理をしたデータを人工知能に与えてやるだけでいい。

たとえば10万枚の写真の中から「猫」の映った画像だけを探す場合、従来の手段では猫っぽい特徴のあるデータをあらかじめいくつか用意しておき、その部分を指定しておくと、機械がその特徴に似た部分を探してくれるというものだった。

これがディープラーニングだと、与えられた写真を精査し、「これは猫っぽいのではないか」という答えを機械が人間に示してくる。それに対して人間が評価を与えると、その評価をもとに再度データを調べ直す、という手法で精度が徐々に高まっていく。まるで「これは? これは?」と親に聞いてくる子供が、さまざまなものを覚えていくような動きだ。

2012年にGoogleはYouTube動画から多量の写真を取り出しディープラーニングを行ったところネットワーク上に猫の画像が抽出された(Google Official Blog 2012年6月26日より)

ディープラーニングは画像認識のほか、自然言語解析や、いわゆるビッグデータのような莫大なデータの解析を得意としている。人間に並び、あるいは上回る精度で有意なデータを見出すことができるディープラーニングから得られる推測データは、人間が参考にするに十分な信頼性を持っている、あるいは人間の感性を超えた解答をもたらす可能性があるのだ。

たとえば米IBM社の人工知能「Watson」は、数十万のレシピを学習した結果、これまでになかった新しいレシピを「提案」するに至っている。

Chef Watsonを利用したウェブサイト。原材料にSakeを入力したところ「Sake Risotto」なるレシピを提示(IBM Chef Watsonより)

チェスや将棋の世界でも、ディープラーニングで過去の打ち筋を研究した対戦プログラムが、これまでの定石とは全く異なる新しい打ち筋を「発明」している。つまり、人工知能は人間と並ぶ、あるいは超える「知性」を持って、これまでの人類の知能が発見できなかった新しい知見にたどり着くことができる可能性を持っているわけだ。事実、製薬分野などでこれまでに見つかっていない新薬を人工知能が「発明」しているケースもある。これこそがディープラーニングがもたらした人工知能のブレイクスルーそのものだと言っていいだろう。

ディープラーニングを支える2つの柱

ディープラーニングには、ニューラルネットワークを鍛えるための莫大な量のデータと、それを処理するための超高速なコンピュータの2つが必要だ。ディープラーニングにたどり着くまでに、十分な精度をもたらすための莫大なデータと、それを現実的な速度で処理する処理速度がなかったため、2000年代にいたるまで人工知能の進化は限定的だったと記したが、そのことは、最近の研究事例を見てもわかる。

たとえば、2012年にGoogleが猫の概念をディープラーニングによって抽出するのに、200×200ピクセルのYouTube動画から切り出した画像を1000万枚用意し、1000台のコンピュータ(16000CPUコア)を使ってようやく達成できたものだ。しかも時間は1週間かかっている。

幸い、大量のデータは、今ならインターネットにいくらでもデータが転がっている。企業などであれば、行動データやいわゆるビッグデータも、人工知能を鍛える上でもってこいの「餌」なわけだ。もう1つの超高速なコンピュータについても、毎年の技術革新のおかげで、スーパーコンピュータクラスの超高速処理が可能なコンピュータを、個人の研究者がなんとか揃えられるようなレベルにまで価格が下がってきている。ただし、ここでイメージすべきは、超高性能CPUではない。求められるのは、GPUの性能となる。

ディープラーニングの発達要素は「ディープニューラルネットワーク(DNN)」「ビッグデータ」「GPU」の3つ(NVIDIA Deep Learning Day 2016講演資料より)

そして、GPUの開発環境や実績などを見ていくと、ディープラーニングの発達は米NVIDIAが握っているとも言えるのだ。NVIDIA自身も、今ではこの人工知能の分野に力を入れている。ではなぜGPUの発達が求められるのか、NVIDIAがこの分野で取り組んでいるのは、どんなことか。次回はこの点についてみていこう。

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第14回

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

2019.01.23

テックの祭典に見る自動車業界の現在地

キーワードは自動運転とMaaS? 自動車大手は何を語ったか

日本では産官学の自動走行システム研究が進行中

テックの祭典といわれる「CES 2019」を取材するため、新年早々から米国・ラスベガスに飛んだ。CESはもともと家電ショーの位置づけだったが、最近は自動運転やAIなどのテック系イベントに様変わりしている。

アウディはコネクト技術を披露、日系サプライヤーも健闘

今では自動車産業とIT企業が押し寄せるショーになったが、自動車メーカーがCESに参加するようになったのは2011年頃からだ。当初はドイツのアウディが電気自動車(EV)「e-Tron」のコンセプトカーを発表して話題となった。私が初めてCESを取材したのは2014年だが、その時もアウディが「ヴァーチャルコックピット」という新しいアイディアを提案していた。

今年のCESではアウディだけでなく、メルセデス・ベンツや韓国のヒュンダイにも勢いがあった。さらに、大手サプライヤーも独自の技術を披露していた。CESの常連であるアウディはサーキットを使い、バーチャルリアリティーを体験できるイベントを開催。そこそこのスピードで走る「e-Tron」の後席に座ってヘッドギアを付けると、視界に入ってくるのはサーキットの景色ではなく、異次元のサイバー空間だった。

アウディは電気自動車「e-Tron」を使ってヴァーチャルリアリティー体験を提供

アウディの狙いは、コネクト技術を使うことだ。車内でいろいろなエンターテイメントが楽しめるのに、実際のクルマの動きとサイバー空間で繰り広げられる動きが同期しているから、車酔いを起こさないというのが売りになっている。この映像システムは、ベンチャーのホロライド(holoride)社とコラボして開発したシステムであり、2022年頃には実用化するとのことだった。

日系メーカーではデンソーやアイシン精機がドライバーレスのロボットカーを発表し、自動運転への意欲を見せた。興味深かったのはパナソニックで、電気で走るハーレーのコンセプトモデルをブースに展示していた。実際の事業化はまだ未定とのことだったが、日本のサプライヤーの頑張りは目立っていた。

完全自動運転と安全運転支援を両輪で研究するトヨタ

それでは、自動運転と「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)について、自動車業界の巨人たちは何を語ったのだろうか。ここではトヨタ自動車とメルセデス・ベンツの発表を振り返ってみたい。

昨年のCESでは、移動や物流などの多用途で使えるMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」をお披露目して話題を呼んだトヨタ。今年のCESで熱を込めて語ったのは、同社が「Toyota Guardian高度安全運転支援システム」(ガーディアン)と呼ぶ自動運転技術だった。プレゼンテーションを行ったのは、トヨタが米国に設立した自動運転や人工知能などの研究機関「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)のギル・プラット所長だ。

TRIが研究を進める自動運転技術「ガーディアン」とは

TRIでは、システムがあらゆる場面でクルマを運転する完全自動運転を「ショーファー」、基本的には人間(ドライバー)がクルマをコントロールし、危険が迫った時などにシステムがドライバーをサポートする技術を「ガーディアン」と呼び、この2つのアプローチで設立当初から研究を進めている。

社会受容性など、乗り越えるべき課題の多い「ショーファー」の実現にはかなりの時間を要する見通しだが、運転支援システムの延長線上にある「ガーディアン」は、交通事故を減らしたり、より多くの人に移動の自由を提供したりするためにも、一刻も早い実用化を期待したい技術だ。CESでガーディアンの説明に時間を割いたところを見ると、トヨタは自動運転技術の社会実装を、可能なところから進めていこうと考えているようで心強い。TRIでは2019年春、レクサス「LS」をベースに開発した新しい自動運転実験車「TRI-P4」を導入し、ガーディアンとショーファーの双方で研究を加速させるという。

レクサス「LS 500h」をベースとする自動運転実験車「TRI-P4」

一方、メルセデス・ベンツがCES 2019に持ち込んだのは、MaaSを見据えたコンセプトカー「Vision URBANETIC」だった。人の移動にもモノの輸送にも使えるこのEVは、「e-Palette Concept」のメルセデス・ベンツ版といったところ。未来のモビリティについて想像を掻き立てるコンセプトカーだが、このクルマが現実社会を走行する場合、自動運転が実用化していることは大前提となる。

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision URBANETIC」

自動運転とMaaSが業界共通の課題、日本の取り組みは

ほんの一部ではあるものの、CESで自動車業界の巨頭が発表したことを振り返れば、彼らが自動運転を喫緊の研究課題と捉えていて、将来の自社のビジネスにとって必須の技術だと考えていることが分かる。ちなみに、CES 2019を見て回った筆者の印象では、自動運転にまつわる技術面の課題は、多くがすでに解決済みであるような気がしている。

自動運転とMaaSの社会実装は、自動車産業を基幹産業とする日本にとっても避けては通れない課題だ。日本国内では、内閣府が「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として自動走行システムの実現を後押ししている。

この取り組みでは、産官学が連携して5年にわたる研究・開発を進めてきた。自動車メーカーだけでなく、様々な企業や研究機関が英知を結集し、自動運転の基礎となる技術や、高齢者など交通制約者に優しい公共バスシステムの確立など、移動の利便性向上を目指してきたのである。

SIPにおける自動走行システムの研究成果については、2月6日、7日にTFTホール(東京・有明)で開催される「自動運転のある未来ショーケース~あらゆる人に移動の自由を~」というイベントで触れることができる。筆者も2月6日の「市民ダイアログ」(17時30分から)に参加して、自動運転で交通社会はどこまで安全になるかを議論し、市民の皆さんからも自動運転に対する様々な意見を頂戴する予定だ。この機会に是非、自動運転の最新技術とモビリティの未来像を体感してほしい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。