ついに日本上陸を果たしたSpotify、日本で勝てるチャンスはあるのか

ついに日本上陸を果たしたSpotify、日本で勝てるチャンスはあるのか

2016.11.24

世界的に人気の音楽ストリーミングサービス「Spotify」が、ついに今年9月に日本上陸を果たし、11月10日には招待制を排して一般公開がなされた。機能は限定されるが無料でもフル楽曲再生が可能なこと、多くのオーディオ機器と連携できることなどがSpotifyの強みだが、既に多くのライバルが存在する日本市場で確固たる地位を築くことができるだろうか。

世界的に人気の音楽ストリーミングサービス

スウェーデン発の「Spotify」といえば、スマートフォンやタブレット、パソコンなどで楽しめる音楽ストリーミングサービスの草分け的存在であり、同種のサービスの中では世界的に最も高い人気を獲得していることで知られている。しかしながら日本では、Spotifyの日本法人であるスポティファイジャパンこそ設立されたものの、長い間サービス提供がなされていなかった。

音楽ストリーミングサービスのSpotify。日本法人設立から長期間サービスは提供されず。このほどようやくサービス開始となった(画像:Spotifyホームページ)

だが今年の9月29日、スポティファイジャパンは日本でSpotifyのサービスを提供開始することを発表。開始当初は登録制の形をとり、事前にメールアドレスを登録して招待コードが送られてくるのを待たなければ利用できなかったのだが、11月10日には事前登録制が廃止され、本格サービス開始となった。

改めてSpotifyのサービスについて簡単に説明しておくと、Spotifyは音楽ストリーミングサービスでは一般的な、月額980円の定額制で全てのサービスが利用できる「Spotify Premium」だけでなく、一部機能制限があるが、無料でサービスが利用できる「Spotify Free」の2つのプランが用意されているのが大きな特徴となっている。

Spotify Freeの場合、曲と曲の間に広告が挿入されるほか、再生方法がスマートフォンではアルバムやプレイリストなどのシャッフル再生のみに制限。タブレットやパソコンでも、好みの曲を選んで再生できるオンデマンド再生は30日当たり最大15時間に制限されている(以後はシャッフル再生)。一方でSpotify Premiumではこうした制限が取り払われるのに加え、320kbpsの高音質オーディオや、楽曲のダウンロード再生など、充実した機能が提供される。

Spotifyの最大の特長は、再生方法に制限はあるものの、4000万曲のフル楽曲を無料で楽しめる点だ

楽曲数も約4000万と、他の音楽ストリーミングサービスと比べても豊富だ。その多くは洋楽だが、日本でのサービス提供に当たっては、日本でのニーズが高いJ-POPなどの数も増やして充実を図っているようだ。また日本向けの対応として、楽曲の歌詞表示機能を他の国に先駆けて用意するなどの取り組みも実施している。

日本上陸が遅れた理由はどこにあるのか

そしてもう1つ、Spotifyの特長であり強みともいえるのが、Spotify Premiumで利用できる外部機器との連携だ。Spotifyは、さまざまなオーディオ機器と連携し、オーディオ機器からWi-Fi経由でSpotifyのストリーミング再生ができる「Spotify Connect」という仕組みを備えている。

11月10日にスポティファイジャパンが実施した発表会では、ボーズやオンキヨー、パナソニック、ソニーなどさまざまなオーディオメーカーの、100種類以上の製品がSpotify Connectに対応するほか、BMWやボルボなどの自動車、ソニーのAndroid TV搭載テレビなどとの連携が可能になることも明らかにされた。こうした幅広い機器への対応は、既に海外で広くサービス展開しており、多くの企業と連携している、Spotifyならではの強みといえるだろう。

Spotify Connectに対応したボーズの「SoundTouch 10」。Spotifyのアプリ上で操作することにより、Wi-Fi経由でSpotifyのサウンドを直接ストリーミング再生できる

他の音楽ストリーミングサービスと比べ、洋楽を主体とした豊富な楽曲数や、Spotify Free、Spotify Connectなどいくつかのアドバンテージを備えるSpotify。だが日本では既にSpotify以外のサービスが先行しており、Spotifyは後発のサービスとなってしまったのは事実である。

その背景にあるのは、やはり日本の音楽市場が、海外とは異なる傾向にあることだろう。日本では邦楽の人気が非常に高いなど、楽曲の嗜好が海外と大きく異なっている。それゆえ日本でサービス展開するに当たっては、日本の音楽レーベルとの交渉が必要であり、その交渉に少なからず時間が費やされたと考えられる。

しかも日本の音楽市場は、年々落ち込んでいるとはいえ、インターネット上でのストリーミングよりも、CDがまだ高い売り上げを占めている状況だ。それゆえ日本の音楽レーベルは、(制限があるとはいえ)無料で楽曲を配信するSpotifyへの楽曲提供には消極的だったと言われている。筆者も過去、ある有料音楽配信サービスの関係者から「フルで楽曲が聴ける無料の楽曲配信サービスに対するレーベル側の警戒心は強く、配信の許諾を得るのは難しい」といった話を聞いたことがある。

だが最近になって、音楽ストリーミングサービスの認知度が高まってきたことを受けてか、日本の音楽レーベルのいくつかが柔軟な姿勢を見せるようになった。そうしたことが、Spotifyの日本展開を大きく前進させる要因になったと考えられそうだ。

市場変化に乗れば最後発でも勝てる?

サービス面では優位性が多いが、国内音楽レーベル側の信頼は、AWA(サイバーエージェントとエイベックス・デジタルの共同出資会社)の「AWA」やLINEの「LINE MUSIC」といった国内事業者のサービスと比べまだ高いとはいえず、日本のユーザーが求める楽曲の数では他社に譲るというのが、現在のSpotifyが置かれている状況であろう。また先にも触れた通り、Spotifyは後発のサービスであるため、一般ユーザーに対する知名度の面でも、先行するサービスと比べ不利だ。

そうした状況下でSpotifyが日本で成功を収められるのか? というと、そのチャンスはまだ十分あるのではないかと考えられる。理由は、ストリーミングを主体としたサブスクリプション型の音楽サービスは、いままさに急拡大している最中だからだ。

日本レコード協会の「日本のレコード産業 2016」によると、サブスクリプション型の音楽配信サービスの売上金額は、2012年時点では約10億円規模であったのが、2014年には約79億円、そして2015年には約123億円と、急速な伸びを見せている。

一方でダウンロード販売の売り上げ(「シングルトラック」「アルバム」の合計)は、2014年が約290億円であったのが、2015年には約282億円に減少。特にシングルトラックは、2013年まで順調に伸びていたのが、それ以降落ち込みを見せている。有料配信サービスの中で、ダウンロード型からサブスクリプション型へと、ユーザーの音楽視聴傾向に変化が起きている様子がうかがえるのだ。

有料音楽配信金額の推移(日本レコード協会「日本のレコード産業 2016」より)。ダウンロード型の販売が減少する一方で、サブスクリプション型のサービスが伸びている

確かにSpotifyは後発だが、AWAやLINE MUSIC、そしてアップルの「Apple Music」やアマゾンの「Prime Music」など、現在の主要音楽ストリーミングサービスが開始したのも約1年前である。最後発とはいえ、市場自体これから伸びていくタイミングであることから、Spotifyが挽回するチャンスはまだ十分あるわけだ。

もっとも、AWAが無料で利用できる「FREEプラン」をリニューアルし、楽曲の一部だけ聴くことができるハイライト再生ながら、利用可能な時間を従来より長くするなど、ライバルもサービスに改良を加えて対抗する姿勢を見せている。今後競争が激しくなることは必至だ。それだけにSpotifyには、音楽配信サービスの市場変化をうまく読み取りながらも、日本のユーザーが求める楽曲やサービスへ迅速に対応し、日本での競争力を高めることが求められるだろう。

大変革の新型「カローラ」に試乗! 激戦のハッチバックに挑むトヨタの事情

大変革の新型「カローラ」に試乗! 激戦のハッチバックに挑むトヨタの事情

2018.08.22

ハッチバックとなった背景に2つの理由

TNGA導入効果で走りは変わったか

コネクティッド機能は充実もスマホ連携に改善の余地

トヨタの「カローラ スポーツ」が発売となった。新型モデルにはさまざまな大変革が見られる。まず、先代モデルはセダンボディの「アクシオ」とワゴンボディの「フィールダー」という車種構成だったのに対し、今回の新型カローラシリーズで先陣を切ったのはハッチバックモデルであった。カローラの歴史を紐解くと、このボディタイプは2006年まで販売された「カローラランクス」以来、実に12年ぶりの復活となる。なぜ今、ハッチバックなのか。その理由は大きく2つ挙げられる。

ハッチバックを選んだ2つの理由

1つ目の理由は「若返り」だ。現在、カローラユーザーの平均年齢は70代で、ワゴンモデルのフィールダーでも60代だという。一昨年に50周年を迎えたカローラは、トヨタの基幹車種として愛され続けてきた反面、ロイヤルティの高いユーザーは高齢化していたのだ。そこで新型車には、次の50年に向けて若い人たちに乗ってもらえるクルマにしたい、という思いを込めた。

2つ目の理由としては「グローバル化」を挙げることができる。カローラは1966年の初代誕生以来、150以上の国と地域で累計4,600万台を販売してきた。世界16拠点の生産工場を持ち、10秒に1台を販売するグローバル商品だ。しかし、「カローラ」の名はつくものの、ボディタイプやプラットフォーム、搭載するエンジンなど、その中身は国や地域により作り分けていた。それを今回は、名実ともに、基本は世界ワンスペックのクルマとして作った。そして、グローバルで見ると、ハッチバックは人気が高い車種なのだ。

中国や米国などのビッグマーケットでも、ハッチバックの販売が伸びている。一足先に発売となったライバルのホンダ「シビック」も、セダンに加えハッチバックモデルをラインナップしているが、米国ではハッチバックが約3割を占めているそうだ。

このような理由から、まずはハッチバックの「カローラスポーツ」が登場することとなった。

新型車「カローラ スポーツ」のボディタイプはハッチバックだった(全ての画像提供:トヨタ自動車)

サーキットで感じた第一印象

カローラ スポーツと最初に出会ったのは、ショートサーキットだった。一言でいうと、存在感はあるけど強烈なクセはない、すんなり受け入れられるデザイン、というのが第一印象だ。切れ長でシャープな眼、ワイド&ローのプロポーションで、特にデザイナーがこだわったというリヤは“カタマリ感”、踏ん張り感で安定性をアピールしながらも、全体的にはスポーティーなシルエットとなっている。

ディテールを見ると、サイドのプレスラインはかなりエッジが効いている。つまり、作る際には鋭角的に鉄板を折り曲げる必要があり、実はこれもかなりチャレンジングだ。先に述べたように、トヨタは今回、グローバルで作るため、各工場の作り手の技術を安定させるという「工場の開発」にまで挑んでいるのだ。

エッジの効いたサイドのプレスライン

走ってみると、クルマの基本性能である「走る・曲がる・止まる」の性能が飛躍的に向上していた。実に気持ち良く走る。しっかりしたシャシーとボディに包まれ、足元のサスペンションはしなやかに動く。ステアリングはしっかり感があって、切れば素直に曲がっていく。従来のクルマと比べ、ドライバーの操作の伝達スピードと確度が格段に上がった印象だ。

サーキットの路面はフラットなので、そもそも安定感が高い。なので、意地悪く縁石を踏んでみたりもしたが、乗り越えの際にも尖った突き上げ感はなく、常にタイヤの接地を失うことなくスマートにいなした。また、限界域まで追い込んでみても、旋回中にブレーキを踏んでも、リヤが破綻することなく安定性を保っていた。DSC(ダイナミックスタビリティコントロール、クルマが曲がりすぎたり、逆に曲がらなかったり、横滑りしたりするのを防ぐ機能)を解除して電子制御なしで走っても唐突な動きはなかったので、トヨタが基本的な素性から作り込んでいることが確認できた。

後日、一般道と高速道路でも試乗した。ハンドリングの良さは納得だが、やはり、荒れた路面やアンジュレーションのある”生きた道”を走ってみないと乗り心地や静粛性といった「快適性」の側面はわからないからだ。しかし、サーキットで受けた印象が覆されることはなく、快適に、気持ち良く走ることができた。エンジンは1.8Lハイブリッドと1.2Lターボのガソリンがある。燃費志向の方にはハイブリッド、気持ち良さや瞬発力を求める方にはガソリンエンジンをオススメしたい。

「HYBRID G」というグレードの内装(色はサドルタン)

「TNGA」導入の効果は明らか

「走り」の進化は、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)プラットフォームの導入によるところが大きい。TNGAは「もっといいクルマをつくろう」という豊田章男社長の号令の下、トヨタが推し進めた開発コンセプト。現行「プリウス」で初採用し、人気の高いコンパクトSUV「C-HR」で走りを磨いたが、第3弾となるカローラ スポーツでは、その能力をさらにブラッシュアップしている。

具体的には、C-HRよりさらにステアリングの剛性がアップしたことで、リニアな操縦性が実現している。摩擦が低く滑らかに動く新開発ダンパーの投入により、動き始めからしなやかさを発揮する。さらには電子制御が良くなっているし、静粛性も向上している。

先代カローラを国内専用モデルとして開発したトヨタだが、プラットフォームはBセグメントの「ヴィッツ」と共用していた。それに対して今回は、Cセグメントで使う新規プラットフォームを採用しているので、動的性能の向上幅が大きい。

スポーティでありながら、スポーツカーほど尖った性格ではないし、パワーに対して高いシャシー性能があるので、初心者でも安心して乗れる。この後、セダンやワゴンも登場するとのことだが、ワゴンよりカッコよく、リヤシートを倒して使えるなどセダンよりフレキシビリティのあるハッチバックは、若い人たちにも受け入れられるのではないだろうか。

6月26日の発売から1カ月で「カローラ スポーツ」の受注台数は約9,200台に達したとのこと。月販目標は2,300台だ

コネクティッド機能が充実、スマホ連携は少し残念

ところで今回、クルマ本来の楽しさに加えて、トヨタが開発に注力したのが「コネクティッド」機能だ。「クラウン」と「カローラ」という基幹車種の同時フルモデルチェンジにも関わらず、メディア向け発表会は開かず、ユーザーを対象とした「コネクティッドデイ」なるイベントを大々的に開催したことからも、その力の入れようは容易にうかがえる。

カローラの全グレードに標準装備となるコネクティッド機能を使えば、例えばオペレーターを介してナビの目的地設定を行ったり、インジケーター点灯時に対処法のアドバイスを受けることができたりするし、エアバッグ作動時には自動でオペレーターに接続し、ドクターヘリの出動判断を行う「D-Call Net」にも対応していたりする。さらに、LINEにマイカーを「友だち」として追加すると、乗車前に目的地登録やガソリン残量の確認などを行うことができる。

安心・安全が格段に上昇するが、一方で、ちょっと残念なのは、スマホアプリを車載ディスプレイで操作する機能が搭載されていない点だ。というのも、トヨタはAppleやGoogleと手を組まず、独自のプラットフォーム「SDL」(スマートデバイスリンク)を介してスマートフォンとナビゲーションシステムを連携させ、スマホアプリを車載ディスプレイで操作する機能を開発しているからだ。

なので現状、Wi-fiがつながる環境は整っているのだが、「Apple CarPlay」や「Android Auto」は使えない。もっとも、これにも理由がある。彼らと提携すればことは簡単なのだが、そのシステムはブラックボックス化されていて、トヨタには管理できない。より安全なものを提供したい、というこだわりがあるゆえの選択なのだ。

とはいえ、若者にとって(いや、若者に限らずかも)スマホはマストアイテムであり、運転中も”つながっていたい”というニーズは高そう。また、スマホと車載ディスプレイの連動は「ながら運転」を抑止するための重要な機能でもある。なので、早急な対応を望みたいところだ。

コネクティッドは面白い機能だが、やはりスマホ連携も充実させて欲しいところだ

カローラ スポーツが位置するCセグメントのハッチバックモデルは、フォルクスワーゲン「ゴルフ」、メルセデス・ベンツ「Aクラス」をはじめ、競合車がひしめく大激戦区だ。しかしながら、グローバルを見据えてトヨタが大きた革新を施した新型カローラ スポーツは、その土俵でも十分に戦える戦闘力があると思わせるクルマに仕上がっていた。
 

なぜMVNO通信サービスは昼休みの通信速度が遅いままなのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第22回

なぜMVNO通信サービスは昼休みの通信速度が遅いままなのか

2018.08.22

MVNOの通信速度が遅いのはどうしてか

データの通り道が細いMVNO特有の問題

フルMVNOとなって帯域幅を広げる企業

大手キャリアから料金が安いMVNOのサービスに乗り換えた人が不満を抱くのが、昼休みなど多くの人がスマートフォンを利用する時間帯を中心に、劇的に通信速度が遅くなることではないだろうか。同じ大手キャリアのネットワークを使っているのに、なぜMVNOの通信速度だけが遅くなりやすいのだろうか。

MVNOのネットワークは“道”が狭い

大手キャリアでスマートフォンを利用していると、月々の通信料が6~7千円から1万円はかかるのが一般的だ。それゆえ毎月のスマートフォンの通信料金を節約するために、“格安”をうたうMVNOに乗り換えたという人も、多くいることだろう。

確かにMVNOのサービスは、同じ通信容量であれば毎月の通信料金が大手キャリアの半分から3分の1と、大幅に抑えられるので、料金面でのメリットが非常に大きいのは事実だろう。だが一方で、MVNOのサービスを利用している人から多くの不満の声が聞かれるのが通信速度だ。

というのも、特に昼休みや朝夕の通勤時間帯など、多くの人がスマートフォンを利用する時間帯になると、MVNOのサービスは軒並み通信速度が劇的に遅くなってしまうのだ。MVNOの状況にもよるが、その通信速度は動画視聴はおろか、Webサイトの閲覧やSNSの利用などであっても、まともに利用できないほど遅くなるケースもあり、深刻な状況が続いている。

こうした事象は大手キャリアのサービスではほとんど起きることはなく、MVNO特有の問題となっている。ではなぜ、MVNOの通信速度が遅くなりやすいのかといえば、それはネットワークの帯域幅、要するにデータの“通り道”が狭いからである。

MVNOは、お金を払って大手キャリアから借りたネットワーク帯域を使い、通信サービスを提供している。このことは、鉄塔を建てるなど莫大なインフラ投資をする必要がなくなるため設備投資が少なくて済み、MVNOが安価にサービスを提供できる一因となっている。

だが一方で、帯域幅を増やすにはより多くのお金をキャリアに支払う必要があり、無尽蔵に増やせる訳ではない。それゆえMVNOの帯域幅は大手キャリアよりも狭い、つまり道幅が狭いのである。狭い道路にたくさんの車が通れば渋滞が起こるのと同じように、帯域幅が狭いネットワークに、多くのデータが流れ込めば混雑が起きやすくなる訳だ。

2018年7月1日に実施されたLINEモバイルの発表会より。ネガティブイメージとしてネットワークと通信速度に対する不安が挙げられるなど、MVNOは通信速度の問題に大きな影響を受けている様子が見える

解決に特効薬がない頭の痛い問題

もう1つ、キャリアがMVNOに対して、時間帯に関係なく一定の帯域幅で貸し出していることも、MVNOが簡単に帯域幅を増やせない要因となっている。というのも、ユーザーのデータ通信利用は24時間常に一定という訳ではなく、確かに昼休みや朝夕などはスマートフォンの利用者が増えて混雑が起きやすいのだが、深夜・早朝などはスマートフォン利用者が大幅に減り、帯域が空いている状態になる。

帯域が空いているということは、お金を払ってネットワークを借りているMVNOにとって“無駄”が生じていることでもある。混雑している時間帯に合わせた幅の帯域幅を借りると、空いている時間帯に多くの無駄が発生してしまうことから、MVNOはコストの無駄を抑えるため、混雑時にユーザーが不満を抱かない範囲の帯域幅を借りてサービスを提供しているのだが、ユーザーとともに増えるデータ通信量に耐え切れず、混雑時に通信速度が大幅に落ちてしまうのである。

この問題を解消するにはいくつかの方法がある。1つはキャリアにより多くのお金を支払って、混雑する時間帯に合わせた帯域幅を借りること。KDDI傘下のUQコミュニケーションズが提供している「UQ mobile」は、帯域幅を自らWiMAX 2+のネットワークを提供することで得ていることに加え、他のMVNOより高めの料金設定にすることによって、KDDIからより広い帯域幅を借り、高速な通信速度を維持している。

UQ mobileは他のMVNOより通信料を高く設定することで、売上を増やしより多くの帯域幅を借りることで、通信速度の低下を抑えている

2つ目は、自らキャリアになってしまう方法だ。そうすれば他社にお金を支払う必要はなく、自身のネットワークの帯域幅が使い放題になるため、問題は一気に解消する。この手法を取ろうとしているのが楽天で、同社は2019年に携帯電話事業に参入することを発表している。

そして3つ目は、空いている時間帯の帯域幅を有効活用することで、帯域の無駄を減らし底上げを図る方法だ。実際、MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)は、自らSIMを発行できる「フルMVNO」となり、法人向けのデータ通信サービスに力を入れることで、深夜などの時間帯にもネットワークを活用してもらう取り組みを進めている。

IIJは個人のスマートフォン向けサービスだけでなく、IoTを中心とした法人向けのサービスにも力を入れることで、深夜のネットワーク稼働率を高め無駄を減らそうとしている

より直接的な施策を打ち出しているのが、ソニーネットワークコミュニケーションズの「nuroモバイル」が提供する「時間プラン」の「深夜割」だ。これは深夜1時から早朝6時の5時間だけ、高速通信を使い放題にするいうもの(それ以外の通信速度は200kbps)。空きのある深夜の帯域を有効活用してもらうことで、利用効率を高めようとしている訳だ。

だが、1つ目、2つ目の方法を取ることができるMVNOは相当限定されるし、3つ目の方法は劇的な効果には結び付きにくい弱点がある。それだけにMVNOにとって、通信速度の問題は頭の痛い問題として残り続けることとなりそうだ。