ついに日本上陸を果たしたSpotify、日本で勝てるチャンスはあるのか

ついに日本上陸を果たしたSpotify、日本で勝てるチャンスはあるのか

2016.11.24

世界的に人気の音楽ストリーミングサービス「Spotify」が、ついに今年9月に日本上陸を果たし、11月10日には招待制を排して一般公開がなされた。機能は限定されるが無料でもフル楽曲再生が可能なこと、多くのオーディオ機器と連携できることなどがSpotifyの強みだが、既に多くのライバルが存在する日本市場で確固たる地位を築くことができるだろうか。

世界的に人気の音楽ストリーミングサービス

スウェーデン発の「Spotify」といえば、スマートフォンやタブレット、パソコンなどで楽しめる音楽ストリーミングサービスの草分け的存在であり、同種のサービスの中では世界的に最も高い人気を獲得していることで知られている。しかしながら日本では、Spotifyの日本法人であるスポティファイジャパンこそ設立されたものの、長い間サービス提供がなされていなかった。

音楽ストリーミングサービスのSpotify。日本法人設立から長期間サービスは提供されず。このほどようやくサービス開始となった(画像:Spotifyホームページ)

だが今年の9月29日、スポティファイジャパンは日本でSpotifyのサービスを提供開始することを発表。開始当初は登録制の形をとり、事前にメールアドレスを登録して招待コードが送られてくるのを待たなければ利用できなかったのだが、11月10日には事前登録制が廃止され、本格サービス開始となった。

改めてSpotifyのサービスについて簡単に説明しておくと、Spotifyは音楽ストリーミングサービスでは一般的な、月額980円の定額制で全てのサービスが利用できる「Spotify Premium」だけでなく、一部機能制限があるが、無料でサービスが利用できる「Spotify Free」の2つのプランが用意されているのが大きな特徴となっている。

Spotify Freeの場合、曲と曲の間に広告が挿入されるほか、再生方法がスマートフォンではアルバムやプレイリストなどのシャッフル再生のみに制限。タブレットやパソコンでも、好みの曲を選んで再生できるオンデマンド再生は30日当たり最大15時間に制限されている(以後はシャッフル再生)。一方でSpotify Premiumではこうした制限が取り払われるのに加え、320kbpsの高音質オーディオや、楽曲のダウンロード再生など、充実した機能が提供される。

Spotifyの最大の特長は、再生方法に制限はあるものの、4000万曲のフル楽曲を無料で楽しめる点だ

楽曲数も約4000万と、他の音楽ストリーミングサービスと比べても豊富だ。その多くは洋楽だが、日本でのサービス提供に当たっては、日本でのニーズが高いJ-POPなどの数も増やして充実を図っているようだ。また日本向けの対応として、楽曲の歌詞表示機能を他の国に先駆けて用意するなどの取り組みも実施している。

日本上陸が遅れた理由はどこにあるのか

そしてもう1つ、Spotifyの特長であり強みともいえるのが、Spotify Premiumで利用できる外部機器との連携だ。Spotifyは、さまざまなオーディオ機器と連携し、オーディオ機器からWi-Fi経由でSpotifyのストリーミング再生ができる「Spotify Connect」という仕組みを備えている。

11月10日にスポティファイジャパンが実施した発表会では、ボーズやオンキヨー、パナソニック、ソニーなどさまざまなオーディオメーカーの、100種類以上の製品がSpotify Connectに対応するほか、BMWやボルボなどの自動車、ソニーのAndroid TV搭載テレビなどとの連携が可能になることも明らかにされた。こうした幅広い機器への対応は、既に海外で広くサービス展開しており、多くの企業と連携している、Spotifyならではの強みといえるだろう。

Spotify Connectに対応したボーズの「SoundTouch 10」。Spotifyのアプリ上で操作することにより、Wi-Fi経由でSpotifyのサウンドを直接ストリーミング再生できる

他の音楽ストリーミングサービスと比べ、洋楽を主体とした豊富な楽曲数や、Spotify Free、Spotify Connectなどいくつかのアドバンテージを備えるSpotify。だが日本では既にSpotify以外のサービスが先行しており、Spotifyは後発のサービスとなってしまったのは事実である。

その背景にあるのは、やはり日本の音楽市場が、海外とは異なる傾向にあることだろう。日本では邦楽の人気が非常に高いなど、楽曲の嗜好が海外と大きく異なっている。それゆえ日本でサービス展開するに当たっては、日本の音楽レーベルとの交渉が必要であり、その交渉に少なからず時間が費やされたと考えられる。

しかも日本の音楽市場は、年々落ち込んでいるとはいえ、インターネット上でのストリーミングよりも、CDがまだ高い売り上げを占めている状況だ。それゆえ日本の音楽レーベルは、(制限があるとはいえ)無料で楽曲を配信するSpotifyへの楽曲提供には消極的だったと言われている。筆者も過去、ある有料音楽配信サービスの関係者から「フルで楽曲が聴ける無料の楽曲配信サービスに対するレーベル側の警戒心は強く、配信の許諾を得るのは難しい」といった話を聞いたことがある。

だが最近になって、音楽ストリーミングサービスの認知度が高まってきたことを受けてか、日本の音楽レーベルのいくつかが柔軟な姿勢を見せるようになった。そうしたことが、Spotifyの日本展開を大きく前進させる要因になったと考えられそうだ。

市場変化に乗れば最後発でも勝てる?

サービス面では優位性が多いが、国内音楽レーベル側の信頼は、AWA(サイバーエージェントとエイベックス・デジタルの共同出資会社)の「AWA」やLINEの「LINE MUSIC」といった国内事業者のサービスと比べまだ高いとはいえず、日本のユーザーが求める楽曲の数では他社に譲るというのが、現在のSpotifyが置かれている状況であろう。また先にも触れた通り、Spotifyは後発のサービスであるため、一般ユーザーに対する知名度の面でも、先行するサービスと比べ不利だ。

そうした状況下でSpotifyが日本で成功を収められるのか? というと、そのチャンスはまだ十分あるのではないかと考えられる。理由は、ストリーミングを主体としたサブスクリプション型の音楽サービスは、いままさに急拡大している最中だからだ。

日本レコード協会の「日本のレコード産業 2016」によると、サブスクリプション型の音楽配信サービスの売上金額は、2012年時点では約10億円規模であったのが、2014年には約79億円、そして2015年には約123億円と、急速な伸びを見せている。

一方でダウンロード販売の売り上げ(「シングルトラック」「アルバム」の合計)は、2014年が約290億円であったのが、2015年には約282億円に減少。特にシングルトラックは、2013年まで順調に伸びていたのが、それ以降落ち込みを見せている。有料配信サービスの中で、ダウンロード型からサブスクリプション型へと、ユーザーの音楽視聴傾向に変化が起きている様子がうかがえるのだ。

有料音楽配信金額の推移(日本レコード協会「日本のレコード産業 2016」より)。ダウンロード型の販売が減少する一方で、サブスクリプション型のサービスが伸びている

確かにSpotifyは後発だが、AWAやLINE MUSIC、そしてアップルの「Apple Music」やアマゾンの「Prime Music」など、現在の主要音楽ストリーミングサービスが開始したのも約1年前である。最後発とはいえ、市場自体これから伸びていくタイミングであることから、Spotifyが挽回するチャンスはまだ十分あるわけだ。

もっとも、AWAが無料で利用できる「FREEプラン」をリニューアルし、楽曲の一部だけ聴くことができるハイライト再生ながら、利用可能な時間を従来より長くするなど、ライバルもサービスに改良を加えて対抗する姿勢を見せている。今後競争が激しくなることは必至だ。それだけにSpotifyには、音楽配信サービスの市場変化をうまく読み取りながらも、日本のユーザーが求める楽曲やサービスへ迅速に対応し、日本での競争力を高めることが求められるだろう。

ボルボの新型「V60」に試乗! 人気のSUVでは味わえないステーションワゴンの魅力とは

ボルボの新型「V60」に試乗! 人気のSUVでは味わえないステーションワゴンの魅力とは

2018.09.25

ボルボがステーションワゴン「V60」をフルモデルチェンジ

日本車では減りつつある車種だが、SUVにはない魅力がたくさんある

輸入車のステーションワゴン市場は激戦区! V60の持ち味は?

ボルボがステーションワゴンの「V60」をフルモデルチェンジした。最近は「XC60」や「XC40」といったSUVで評判のボルボだが、同社といえばワゴンというイメージも根強いので、その本丸ともいえる「V60」の新型は、やはり気になるところ。今回は新しい「V60」に試乗した感想も踏まえつつ、SUVブームの世の中で、あえてステーションワゴンを選ぶ意義についても考えてみたい。

フルモデルチェンジしたボルボの「V60」。本稿では、東京クラシックキャンプ(千葉県)を拠点に開催された試乗会で撮影した新型「V60」の画像も紹介していく

実用性に原点回帰? 新型「V60」はリアに注目

ボルボの「V60」は、今回のフルモデルチェンジで2世代目となった。2010年に誕生した初代V60は、「V70」など従来のステーションワゴンに比べると、後ろのハッチバック部分がクーペのように傾斜していて、その商品性は“スポーツワゴン”という位置づけだった。同じ傾向は2016年に登場した「V90」にも見えて、デザイナーは「もはやステーションワゴンに大きな家具などを積み込み、自分で家へ運ぶような時代ではなくなっている」との言葉で、格好よさ優先の外観であることを説明していた。

しかし新型V60は、かつてのV70のように、ハッチバック部分が前型に比べ直立し、荷室容量も初代に比べ100リッター近く増えている。この変更からは、V70の販売が終了した今、その利用者をV60で補完したいというボルボの考えがうかがえる。

また、いくら買った家具を自分で持ち帰ることが少なくなったとはいえ、子供のいる家族連れなど、多くの荷物を持ち歩く必要がある自動車ユーザーはいまだに存在する。さらには旅先での買い物などを考えると、ステーションワゴンの荷室容量に期待する消費者は一定数いるはずだ。

ハッチバック部分が初代に比べ直立した新型「V60」

国産ステーションワゴンは減少傾向、輸入車は充実

需要は根強いはずだが、国産車ではステーションワゴンの車種構成が消えていきつつあり、SUVへと移行する動きが顕著だ。国産車でステーションワゴンを残すのは、トヨタ自動車「カローラ フィールダー」、マツダ「アテンザ」、スバル「レヴォーグ」くらいだろうか。スバルが“リゾートエクスプレス”と銘打って発売し、ステーションワゴン時代を築いた「レガシィ」も、現在ではSUVのように車高の高い「アウトバック」こそ残っているが、一世風靡したツーリングワゴンはラインアップから消えてしまった。

米国でもステーションワゴン人気は下がり、SUV志向が顕著であるという。それに対し、欧州ではステーションワゴン需要が健在だ。日本市場においても、メルセデス・ベンツが「Cクラス」と「Eクラス」にワゴンを設定しているし、BMWは「3シリーズ」および「5シリーズ」、アウディは「A4」と「A6」、フォルクスワーゲンは「ゴルフ」と「パサート」、そしてプジョーは「308」という具合にステーションワゴンをラインアップしている。そして、それらは着実に売れている。

そんな中、日本車からステーションワゴンが消えて、SUVが車種を増やし続けているのはなぜだろうか。

ボディカラーは「バーチライトメタリック」だ

ステーションワゴン誕生の背景とSUV勃興の兆し

ステーションワゴンは、鉄道旅行が盛んな時代に、駅から人と荷物を一緒に運べるクルマとして誕生した。だから、「ステーション ‐ ワゴン」であるということらしい。飛行機で移動する時代となっても空港まで、あるいは空港から目的地へと、人と荷物を一緒に運ぶのに便利なクルマであった。米国では、日常的な通勤にはセダンやクーペを使い、家庭にはステーションワゴンが1台あるといった複数台所有が長く続いてきた。

そこにミニバンが登場し、続いてSUVの品ぞろえが充実してくると、ステーションワゴンからミニバンやSUVへと購買意欲が移っていった。

新型「V60」のフロントビュー。クルマの寸法は全長4,760mm、全幅1,850mm、全高1,435mm

米国では大都市であっても、クルマで少し走ると郊外の趣を持つ風景となり、主要道路の脇は未舗装路であることが多くなる。駐車場も、市街地はコンクリートで舗装されているが、郊外では未舗装のままであったりする。それほど、米国とは広大な国なのだ。

そこでは、いわゆる未開の悪路というほど凹凸の激しい路面でなくても、セダンやステーションワゴンよりも路面と車体との間隔が広く、床下を打つ心配のないSUVの人気が高まる。この事情は納得しやすい。

新型「V60」のリアビュー

4輪駆動車は「ジープ」などで戦後から存在したが、それは悪路走破を主体とした武骨なクルマであり、郊外では威力を発揮するだろうが、日常的に市街地で乗るには使い勝手がよくなかった。英国には、そうした本格的4輪駆動車として「ランドローバー」があり、より上級な車種としては「レンジローバー」がある。このレンジローバーにハリウッドで乗る人が現れ、セダンの高級車より目立つ存在となった。そこに、米国におけるSUV人気の萌芽を見ることができる。

また、ジープが「チェロキー」というやや小型で乗用車感覚を備えた4輪駆動車を発売し、これが人気を呼んだ。その様子を見て、トヨタが「ハリアー」を生み出した。こうして、SUV志向が盛んになり始めるのである。

ヘッドライトに横にした「T」字型の意匠が見えるのは、ボルボの特徴だ。北欧神話の雷神トールが持つハンマー「トールハンマー」をモチーフとしている。念のためにいっておくと、ボルボはスウェーデンの企業である

欧州のステーションワゴン人気を支える要因とは?

日米のSUV人気をよそに静観していた欧州にも変化が訪れる。メルセデス・ベンツは米国でSUV「Mクラス」を生産するようになり、あのポルシェでさえも、サーキット走行が可能なSUVという新たな価値を掲げ、「カイエン」を誕生させることとなった。こうして、世界的なSUV人気に火が点くのである。しかし欧州では、ステーションワゴンが根強い存在感を発揮し続けた。

荷室容量は先代が430L、新型が529L

欧州のステーションワゴン人気を考える前提としては、クルマの走行速度を押さえておく必要がある。欧州では全体的に、クルマが速く走るのだ。

日本は一般道で時速40キロ制限、高速道路で同100キロ制限が基本。米国は州によって違うが、フリーウェイは時速65マイル(約104キロ)制限である。それらに対し欧州では、一般公道であっても80キロ制限(市街中心部は50キロ制限)で、多くの高速道路は130キロ制限となっている。ドイツのアウトバーンには無制限区間すらある。

ポルシェやBMWのように、サーキット走行も視野に入れたSUVを作る勢力があるとはいえ、一般的に車高の高いSUVは重心が高く、セダンを基にしたステーションワゴンに比べれば操縦安定性で劣る傾向がある。となると、クルマを高速で走らせるシーンの多い欧州に、SUVよりもステーションワゴンを好む消費者がいるのは当然のことだ。また、ステーションワゴンであれば、セダンとワゴンが分有する走りの良さ、利便性などといった利点を1台で享受できるという合理性もある。

新型「V60」の価格は499万円から。スライドの右上に見えているが、2019年3月にはプラグインハイブリッド(PHV)モデルも発売予定だ

乗ると視界が高くなるSUVは、市街地で運転しやすいとの声があり、日本でも人気が高まっている。とはいえ、高速道路などで頻繁に長距離移動をする人にとっては、ステーションワゴンの方が走りはより安定し、疲れにくいだろう。また、車高の高いSUVは、乗り降りがしにくいのも事実である。そういう人々の選択肢として、輸入車のステーションワゴンが好まれている。

米国市場を優先する日本メーカーが、SUVに車種を絞り込むという状況はあるものの、消費者には今なお、ステーションワゴンに期待するところがあるのだ。

こちらは「デニムブルーメタリック」というボディカラーの新型「V60」

競合の多いステーションワゴン市場、「V60」の強みは

ボルボのV60は、そうした輸入ステーションワゴンの激戦区に、Cクラス、3シリーズ、A4の競合として挑戦する。実際に新型V60に乗ってみると、前型より車幅を1.5センチメートル縮めたという車体寸法は運転中に車幅感覚をつかみやすく、ガソリンターボエンジンは走り出しから十分な力で滑らかに動き出し、室内は静粛、後席の乗り心地もよいなど、いいことづくめであった。標準寸法の18インチ径タイヤも、ちょうどよい適合を見せる。そして、ことにドイツ車ではあまり見られない明るい色の内装も、開放的でおしゃれな雰囲気を室内にもたらす。

今回は、前輪駆動で2リッターガソリンターボエンジンを搭載する「V60 T5 INSCRIPTION」のみの試乗だった。この内装は競合ドイツ車に対する1つの特色になるだろう

競合に負けない走行性能と、競合にはない魅力を持ち合わせている新型V60。試乗してみて思ったのは、爽快な気持ちにさせるステーションワゴンであるということだ。

クリーンな進化系カプセルホテル「ナインアワーズ」が浅草に

クリーンな進化系カプセルホテル「ナインアワーズ」が浅草に

2018.09.25

カプセルホテルのイメージを変えた「ナインアワーズ」が浅草に

同じビルにノルウェーカフェ「フグレン」2号店が入居

気鋭の建築家が手がけたビルと内装を写真で紹介

「カプセルホテル」と聞くと、主に中年男性が泊まる安宿、あるいはサウナに併設された仮眠場所という印象を抱いている人は多いことだろう。そんなイメージを覆し、女性や若者でも気楽に入れるクリーンで現代的な空間を提供しているカプセルホテルが「9h ninehours(以下、ナインアワーズ)」だ。

すでに東京や大阪、仙台などで8つの店舗を展開しているが、9月21日、東京の下町・浅草に9番目となる新店舗「ナインアワーズ浅草」がオープンする。ここでは、19日に開催されたプレス内覧会の模様をレポートする。

浅草を「巻き取る」ユニークな建築

「ナインアワーズ浅草」の外観。ブロックを組み合わせたようなユニークなデザインが印象的。1階と2階にはノルウェー・オスロに本店を構えるカフェ「Fuglen(フグレン)」がある。日本では、渋谷区富ヶ谷の1号店に次ぐ国内2号店だ。

「ナインアワーズ」は、シャワー・睡眠・身支度といった宿泊時の基本行動に特化し、それぞれの機能性と品質を追求する考えで開発されたカプセルホテルだ。施設名は1h(シャワー)+7h(眠る)+1h(身支度)=9hという想定から出した滞在時間からきている。

今回、新たにオープンする「ナインアワーズ浅草」の建築・設計は、気鋭の建築家・平田晃久氏が手がけた。

ユニークな外観は、「歴史ある浅草の風景を、立体的に巻き取る」ようなイメージでデザインされた。岩山のような凹凸感と、14種類の異なる屋根が取り付けられたことで、浅草の街に溶け込みながらも、景観に新たな表現を加えるものとなっている。

まずは、同カプセルホテルを展開するナインアワーズ代表取締役の油井啓祐氏が、「ナインアワーズ浅草」の設計を平田氏に依頼した理由を説明した。ナインアワーズのブランド全体において、総合的なディレクションをプロダクトデザイナーの柴田文江氏が、サインやグラフィックは廣村デザイン事務所の廣村正彰氏が担当しているものの、実は建屋に関しては、毎回手がける建築家が変わっているという。

ナインアワーズ代表取締役の油井啓祐氏

その原則に反して、竹橋(2018年3月開業)、赤坂(2018年5月開業)に引き続き平田氏が"三連投"している。その理由として、「アイデアの段階で毎回感動する」ことと、「設計プランを作るまでの間に、とてつもない思考力を発揮していることが伝わってくる」からだと語った。

また、浅草に出店した理由について質問したところ、浅草は宿泊需要が旺盛でマーケットとして成立するのではないかという判断によるものだという。もちろん、インバウンド需要が高いエリアであることも理由とのことだ。

 

浅草の昼飲みスポットとして有名な「ホッピー通り」から続く道にあり、目の前が「浅草西参道商店街」の入り口という、外国人観光客にとっては堪らないロケーションだ。

続いて、平田氏が登壇し、これまでの竹橋、赤坂、そして今回の浅草に続き、今後オープン予定の浜松町や水道橋、麹町、新大阪でも設計に携わっていることを明かした。

ナインアワーズ浅草のデザインを手がけた、建築家の平田晃久氏。同カプセルホテルの設計は、竹橋、赤坂(ともに東京)に続いて3店舗めとなる。今後オープン予定の浜松町や新大阪などの設計も手がけているそうだ。

平田氏が最初に手がけた赤坂では、周りに雑多な建物や超高層ビルがあり、街の色々なレイヤーが一気に見えるような場所であったため、カプセルが街に投げ出されたようなコンセプトで設計したという。

「カプセルは一見するとニュートラルなものだが、それを通じて街を見ると新鮮に見えることに気づいた」(平田氏)

そして、今回の浅草では、浅草寺や花やしきがみえる眺望の良さを活かし、浅草独特のフィーリングをいかに絡み合わせるかをテーマに設計したということだ。

 

凸凹したデザインがユニークなナインアワーズ浅草の模型。カプセルの塊でできた岩山のようなものに、浅草の周辺の店が三次元に巻き上がったようなものをイメージしたそうだ。

平田氏は、「角地で細長い敷地なので、カプセルを効率よく並べようとしても凸凹ができてしまう。それを逆手に取り、カプセルの塊でできた岩山のようなものに屋根が所々に掛かったイメージを描き、周辺のさまざまな店をそのまま三次元に巻き上げたようなものを作ってはどうか?という提案をした」とのこと。

5階にある「ジム」には、2台のジョギンググマシンとヨガマットなどが用意され、浅草のシンボルでもある「浅草寺」を眺めながら汗を流すことが可能
7階「ラウンジ」は男女共有スペース。このほか、6階には男性専用のこぢんまりとしたラウンジがある。どちらも飲食可能となっている
8階にはノートパソコンなどで作業できる「デスク」が用意され、コンセントも備わっている

また、宿泊階を中心に3階から8階には共有スペースが用意され、それぞれの階あるいは階をまたいでくつろいだり、ヨガをしたりできる。

平田氏は「立体的な街のようなスペースがカプセルと結合し、カプセルと浅草の街をつなぐ間のような場所になっている」と述べ、「東海道五十三次のように、テーマは共通しているものが、異なる場所に出会うことによって建築が生まれていく。それが面白い」と語った。

宿泊客は建物の北側にあるエレベーターで9階に上がり、9階にあるフロントでチェックインし、支払いを済ませる

日本2店目のノルウェーカフェで朝食も

続いて、「ナインアワーズ浅草」のシステムが説明された。宿泊客はまずエレベーターで最上階の9階へ上がり、フロントにてチェックイン。男性は9階、女性は8階にあるロッカーに荷物を入れ、シャワーを浴びる。その後、各階に降りて自分のカプセルに入る――という流れだ。

シャワールーム(男女別)。シャンプー、コンディショナー、ボディソープ、バスタオル、フェイスタオル、館内ウエアは用意されている

各階に設けられたラウンジに関して、3階と4階、および6階は女性専用または男性専用となっているが、その他の階は男女共用。これは、ラウンジから浅草の街が一望できるため、宿泊客全員にその眺望を味わってもらうため。その一方で、専用エリアへはカードキーがないと入れない仕組みなので、セキュリティ面は安心という。

エレベーターは男女兼用と女性専用の2機が用意され、男女の動線が分かれるように停止階が異なる
カプセルルームの外観は黒を基調としたデザイン。フロア毎に男女別となっている
3階と4階(女性用カプセルルームのフロア)には「温室(サンルーム)」が用意される。眠れないときのくつろぎタイムなどに

なお、ナインアワーズ浅草の価格は、宿泊が4,900円~(13時チェックイン、翌10時チェックアウト)、仮眠は最初の1時間が1,000円、以降は1時間毎に500円加算~(13時から21時の間で利用可)、シャワーは1回700円(1時間以内、24時間いつでも利用可)となっている。

ノルウェーカフェ日本2号店が階下に

同じビルの1階と2階には、ノルウェー・オスロに本店を構えるカフェ「FUGLEN(フグレン)」が入居。代々木公園の1号店に続く、日本第2号店だ。

ナインアワーズ浅草の1階・2階に入るカフェ「Fuglen」

ビジネスホテル階下の飲食店では、ホテル利用者向けの割安なモーニング提供などが行われる場合もある。「ナインアワーズ浅草」とフグレンの連携があるか訪ねると、現在のところ、宿泊者の優待価格などは設定されていないが、今後検討していくとのことだった。

同店では「ノルウェージャンワッフル」やノルウェーの小麦を使った「カルダモンロール」など、ノルウェー発祥のカフェならではのメニューが用意される

2020年が近づくにつれ、急速に都市圏での出店を拡大しているナインアワーズ。外国人観光客が多く訪れる浅草の地に、既存店舗にはない有名コーヒーカフェとの同居店舗を構えたことで、どのような相乗効果が生まれるか期待したい。