流行の店から10年、クリスピー・クリーム・ドーナツが打つ布石の先はスイーツのマクドナルド?

流行の店から10年、クリスピー・クリーム・ドーナツが打つ布石の先はスイーツのマクドナルド?

2016.11.30

日本上陸10周年を迎えるクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンは今、大きな改革を行っている。店舗数は最大の時には64店舗まで拡大したが、現在は46店舗。行列もみかけなくなり、内情は苦しいのではないかと察せられたが、次に向けた布石とし、ドーナツだけにこだわらない新商品の展開とあわせ、同社は前向きな店舗戦略を進めている。

日本上陸10周年

1937年にアメリカのノースカロライナ州で誕生したクリスピー・クリーム・ドーナツは、2001年にカナダに出店したのを皮切りに世界展開をはじめ、今では、27カ国に約1100店舗ある。

約80年! 今では世界的なスイーツブランドに!

日本には、2006年に上陸。店舗の前に数時間待ちの長蛇の列ができ、ドーナツを食べながら待つ人の光景が、記憶に残っている人も多いだろう。東京・新宿区の1号店を皮切りに、関東、関西、東海、中国、九州など最大64店舗まで拡大したが、ブームから10年たち、今は行列を見かけなくなった。

主力商品の開発

同社といえば、ふわふわの生地を砂糖でコーティングしたシンプルなドーナツ、オリジナル・グレーズドが最もポピュラーな商品。実は、1937年から続く秘伝のレシピを一度も変えることなく、作り続けられている。同社の歴史そのものといえる商品なのだ。人気なのは、「ふわ、とろ」な食感で、全世界で不動の1位、日本だけでも、今までに約1億3000万個が食べられている。

看板商品、オリジナル・グレーズド

日本で、このオリジナル・グレーズドに次ぐ定番商品としたい2商品を、上陸10周年に合わせて、発売した。日本人の味覚にあわせた独自の商品だという。

実は日本上陸時には、すべてのメニューがアメリカで考案されたものだが、現在では国内のメニュー約8割が自国で考案されたもの。抹茶のドーナツのように、日本で考案された商品が、ほかの国のクリスピー・クリーム・ドーナツで採用されることも増えており、日本の開発力は高い評価を受けている。

日本で開発された商品が、海外でも食べられている

競合は手土産にできるスイーツすべて

ドーナツの雄・ミスタードーナツやコンビニチェーンなど、ライバルが多いドーナツ市場だが、国内市場の規模は緩やかに縮小しているという。

国内のドーナツ市場は縮小傾向

日本の消費者は、スイーツに対する要求水準が高い上に、流行のサイクルが早いと危機感を持っている同社は、ドーナツだけに固執することなく、ほかの商品展開を、実はスタートさせている。それは、ラスクだ。

同社のドーナツの弱点は、日持ちしにくく、土産に不向きなこと。一方で同社のドーナツといえば、ポップな色合いのものが多く、目で見ても楽しいことが特長。弱点を克服しつつ、特長を生かすものはなにかと考え、行き着いたのが、ラスクだという。ラスクは乾燥しているから日持ちし、表面の砂糖のコーティング部分はカラフルにすることができる。ドーナツ形のラスクをつくり、ドーナツではないものの、同社のドーナツを少しでも楽しんでもらえるようにしたのだ。

カラフルなデコレーションのドーナツ形のラスク

土産需要を見込んで、羽田空港で販売されているが、今後ほかのところでも取り扱いしていく可能性はあるという。同社の若月貴子副社長は「競合はドーナツだけでなく、手土産になりそうなスイーツ全部だと思っている」と話し、今後ラスク以外のスイーツの販売も模索していく考えを明らかにした。

店舗閉店の理由

ラスクのような商品開発と平行して、店舗戦略の見直しも行っている。

同社は、日本に上陸してから積極的な地方進出を進め、2015年度には、64店舗まで拡大したが、現在では、46店舗と減少している。そうなると、業績悪化による閉店だろうか、という疑問が生まれてくるだろう。

「確かに、行列ができたころから比べれば、売り上げは下がってないとはいえないです。しかし、そういうことではなく、10年日本で生き残ることができたのだから、この先も長く生き残るために、出店戦略を見直したということです」(若月副社長)。地方の店舗を中心に閉店させ、関東や関西などの大きな消費地に集中する戦略に切りかえた。

地域を絞って、その地域にあわせた店舗をつくる。今まではアメリカと同じような店舗づくりだったが、例えば、その地域にファミリー層が多ければ、キッズスペースを設け、ベビーカーが通れるようなスペースを確保し、子どもが楽しめるメニューを作るといった、その店舗の周辺環境に合わせた最適化を進めていく。

裾野を広げる展開も

また全く別の展開も進めている。輸入生活雑貨店「PLAZA」のオリジナルブランド「in private(インプライベート)」とコラボレーションし、同社のドーナツをモチーフにしたグッズを販売(すでに販売終了)。食べるだけでなく、日ごろから持ち歩いてもらうことで、ブランドをさらに広く知ってもらい、愛着を持ってもらう狙いがある。

輸入生活雑貨店「PLAZA」のオリジナルブランド「in private(インプライベート)」とコラボレーション商品

さらに、まだ一店舗のみの展開だが、デリバリーサービスをスタートした。これにより、今まで買いに行けなかった人も手軽に購入できる。このように、今までより、多くの消費者との接点をつくり、裾野を広げる試みも進められている。

新しい成長軌道に乗せられるか

なぜ、このように、様々な布石を打つのか。日本のスイーツブランドの流行廃りのサイクルは早いため、同社は、“話題のスイーツ”から早く脱却し、日本人の“定番”の店になる必要があると考えているのだ。そのためには、アメリカからそのまま持ってくるのではなく、日本人の生活様式や、多様なニーズに合わせた店舗や商品作りをし、愛されるブランドにしていかなくてはならないとの思いが同社にはあるのだ。幸いなことに、世界中のクリスピー・クリーム・ドーナツの中でも、日本は商品の開発力には定評がある。開発力を武器に、日本に愛されるブランドづくりを進める。同社は、まだまだこれからも模索の余地があるとみている。

同社の戦略をみていると、アメリカから日本に入ってきて、定着したマクドナルドが思いだされる。価格の手ごろなところはクリスピー・クリーム・ドーナツと共通で、似たようなターゲットが想定できるのではないだろうか。ファミリー層狙った子ども用のスペースについては、マクドナルドは、昔から一部の店舗で設置しているし、商品展開への考え方もなども、マクドナルドが歩んできた道に、ヒントがあるかもしれない。今後同社が、今までのイメージを変え、長く日本で生き残る成長軌道に乗せられるか。1つ1つの戦略の舵取りにかかっている。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu