人工知能の世界的権威が語る、テクノロジーがもたらす人類の未来

人工知能の世界的権威が語る、テクノロジーがもたらす人類の未来

2016.10.06

人工知能が全人類の知力を上回る、いわゆる「技術的特異点(シンギュラリティ)」を提唱したレイ・カーツワイル氏が、日本で講演を行った。人工知能(AI)の世界的権威といわれる同氏が見据える、シンギュラリティ到達後の人類の未来はどのようなものだろうか。

天才発明家にしてビジョナリー

レイ・カーツワイル氏は1948年生まれの68歳。子供の頃からコンピュータでプログラムなどを作成し、OCRソフトやシンセサイザー、フラットベッド・スキャナーなど数々の発明でも知られる発明家にして実業家でもある。

人工知能の世界的権威レイ・カーツワイル氏

過去の著書ではインターネットの普及やチェスでコンピュータが人間を負かす時期をかなり正確に予測し、「収穫加速の法則」や、「技術的特異点」(シンギュラリティ)などを提唱するなど、未来の技術動向についての予測の正確さには高い評価を集めている。現在のAI研究において、技術面だけでなく精神的にも非常に大きな影響力を持った一人であり、ある種の思想家・ビジョナリーといってもいいだろう。2012年に米Googleに入社し、現在はGoogleでAIの開発を指揮。大脳新皮質の構造をコンピュータでシミュレーションする「Neocortex Simulator」の開発に取組んでいる。

そんなカーツワイル氏が、ワークスアプリケーションズ主催のイベント「COMPANY Forum 2016」において講演を行った。講演のタイトルは「The Future of Intelligence」、もちろんテーマは人工知能とシンギュラリティだ。

テクノロジーは指数関数的に発展する

カーツワイル氏は過去の人類の科学技術がこの1世紀程度の間に指数関数的に爆発的な発展を遂げていることを、ムーアの法則などに触れながら指摘し、こうした発展経路を考えると、将来の技術でどのようなことが起きるかを予想できるとした。いわゆる「収穫加速の法則」だ。

ムーアの法則は「半導体の集積率は18カ月で2倍になる」という経験則だが、収穫加速の法則では、技術は自身の発展だけでなくさまざまな技術の発展が総合的に関与しあい、指数関数的に上昇速度を上げていくというものだ。

たとえば1,000ドルあたりで計算機が1秒に計算できる量は指数関数的なカーブを描いて上昇しているし、それに対してトランジスタのHzあたりのコストは年々下がっている。毎年出荷されるコンピュータのビット数の総数やインターネットでやり取りされるデータ通信量、世界中のインターネットホストの数、DNA解析の100万塩基対あたりのコスト、スーパーコンピュータの処理能力、そして全世界の太陽光発電の累積発電容量などは、すべて指数関数的に増減している。

指数関数的に成長しているコンピュータ
スーパーコンピュータの処理能力の増加推移

人間の兆寿命化もやってくる?

カーツワイル氏は、コンピュータの発展でデータの解析速度も指数関数的に高まっていることが、人間の生活においても様々な分野でイノベーションを生み出していることを指摘する。健康や医療の分野においても、DNAシーケンスやゲノム解析が進んで、遺伝子を組み替えて疾病に対処することも可能になった。心臓発作を起こした患者が、普通に歩けるまでに回復することは、昔は夢物語だったが、今では可能になっている。

このようなイノベーションはここ10年程度で起きたことであり、今後はさらに短いスパンで次々に革新的なイノベーションが登場していく。それに従って、人類の寿命も飛躍的に伸びることが予想できるというわけだ。カーツワイル氏によれば、次の寿命レベルのジャンプは2035年ごろに来るという。

超寿命化が進んだ人類。カーツワイル氏は不老不死の可能性も指摘する

こうしたイノベーションは、人間の超寿命化だけにとどまらない。同氏は、人間と人工知能の融合についての可能性についても言及しているのだ。

人類はクラウドにつながり不老不死に?

ナノテクノロジーが進むと血液細胞レベルのサイズのデバイス(ナノボット)が人体の中で機能するようになる。このナノボットを介して、インターネット上にある人工知能の大脳新皮質にアクセスし、人間の大脳新皮質を拡張できるようになるというのだ。カーツワイル氏はこれを「第二の脳」と呼び、自分自身の脳(=第一の脳)と、クラウド上の第二の脳がつながることで脳のバックアップも取れるようになるという。

コンピュータが大脳新皮質をシミュレートできるようになれば、人間の感情などもシミュレートできるようになる。そして脳のバックアップが取れるということは、その人の人格などもバックアップされることになる。つまりバックアップが存在し続ける限り、その人物は不滅になったのも同様ということだ。不老不死化はおよそ2050年ごろには到達するという。

まるで「攻殻機動隊」などのSF作品のような話だが、カーツワイル氏は本気で不老長寿の実現を目指している一人。余談だが、不老長寿実現のためには消化器に負担をかけないよう栄養剤を飲んだり、毎日数本の注射をすることも厭わないが、生身のメンテナンスは面倒なので機械の体が欲しい、というような人物なのだ。閑話休題。

いずれにしても人類の意識がネットと融合するようになれば、意識レベルにおいて時間や距離は問題にならなくなるだろう。VR空間を使ったチャットルームなどを介して、世界中の人間がクリーンで美しい理想的な空間を共有してコミュニケーションを取れるようになる。昼夜も意味をなさなくなるかもしれない。人間の社会生活そのものが根底から変わらざるをえないようになるだろう。

ちなみに、講演においてワークスアプリケーションズの牧野CEOとの対談では、グーグルではコンピュータに人間の言語を理解させ、どんな意味があるかを理解し、対話できるようにすることを目標に開発していると明らかにした。

また、AIが進化して人間の知性を超えてしまったら人類に対して敵対するのではないかという問いに対しては、AIは人間の助けになるものであって、映画などのように人間と敵対することはないという。もちろん技術は諸刃の刃であり、火が暖を取れれば家を焼いてしまうこともあるように、悪意ある人間がテクノロジーを使う危険性はあるので、テクノロジーの安全利用のためのガイドラインを作る必要性を指摘した。

技術の進歩に取り残されないために

AIの権威であるだけでなく、未来学の権威でもあるカーツワイル氏だけに、かなり刺激的で未来志向な講演だったが、その内容はビジネスにとっても決して無関係ではない。シンギュラリティが起きるか起きないかに関わらず、技術の進歩は、カーツワイル氏が提唱する収穫加速の法則に近い形でその速度を高めているからだ。

ビジネスの現場も経営者も、こうした技術革新を無視していては、時代に取り残されてしまう。常にアンテナを高く掲げ、最新の技術動向に気を配っておく必要があるだろう。人工知能時代のビジネスは、これまで以上に経営速度と新技術への対応が問われる時代になりそうだ。

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メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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