MVNOが強化する「中古iPhone」の販売は順調に拡大するか

MVNOが強化する「中古iPhone」の販売は順調に拡大するか

2016.10.06

大手キャリアがiPhone 7/7 Plusを販売し、iPhone商戦が盛り上がりを見せている中、MVNOは中古のiPhoneを取り扱い、保証を付けるなどして、iPhoneユーザーの取り込みを進めているようだ。iPhoneをはじめとした中古端末販売の活性化はMVNOの市場活性化を進める上で重要な鍵と見られているが、順調に開拓が進むだろうか。

中古でiPhoneを取り扱うMVNOが増加

iPhoneの新機種「iPhone 7」「iPhone 7 Plus」が発表されてから約1カ月が経過したが、今年もiPhoneの販売は盛り上がりを見せているようだ。中でもデュアルカメラを搭載したiPhone 7 Plusや、iPhone 7新色の「ジェットブラック」は品薄傾向が続くなど、端末値上げの影響などがありながらも、日本でのiPhone人気は現在も継続しているといえるだろう。

だが、iPhone 7/7 Plusを正規に取り扱うことができるのは、アップル自身と、携帯電話大手3社のみ。iPhone 5sなど旧機種を正規に扱うことができるのも、UQコミュニケーションズなど携帯大手の傘下企業のみである。それ以外の通信会社、要するにMVNOはiPhoneを取り扱うことができず、iPhone商戦の蚊帳の外に置かれてしまっているのが現状だ。

新しいiPhone「iPhone 7/7 Plus」はアップルと大手キャリアのみが正規に取り扱っており、MVNOが新品を取り扱うことは非常に難しい

しかしながら、iPhoneは日本で絶大的な人気を誇るスマートフォンであることは確か。それだけに、正規で新品のiPhoneを取り扱うことはできなくても、なんとかiPhoneと自社のSIMをセットで販売したいMVNOが少なからず存在するのは事実であり、これまでにもさまざまな手法で、MVNOがiPhoneを取り扱うための取り組みは進められてきた。

ここ最近急速に増えているのは、中古端末販売業者とMVNOが組んでの、iPhoneを含む中古端末とSIMのセット販売である。中古のiPhoneはアップルではなく、中古業者が直接取り扱うことから、MVNOも中古携帯電話の販売業者と協力することで、iPhoneが取り扱えるようになるわけだ。

しかも最近では、中古の端末に独自の保証を付けてケースも出てきている。例えば、「mineo」ブランドでMVNO事業を展開するケイ・オプティコムは、12月よりユーザーが所有している既存端末や、中古で購入した端末を「持ち込み端末」として扱い、月額数百円程度の料金で保証する「安心保証サービス」を12月より提供する予定であることを明らかにしている。「Apple Care」が契約できないなど、中古端末では難しい端末補償の問題も、こうしたサービス提供側の努力でクリアされつつあるのだ。

「mineo」ブランドでMVNOを展開するケイ・オプティコムは、12月より手持ちの端末や中古端末を保証する「安心保証サービス」を開始することを明らかにしている

中古端末業者と協力関係を築くMVNOの狙い

なぜ、MVNOがiPhoneをはじめとした中古端末の販売協力を強化しているのかというと、MVNOが端末ラインアップを拡大したい狙いが大きいといえるだろう。

最近ではSIMフリーでも多くのスマートフォンが市場に投入されており、スマートフォン自体の選択肢は増えてきてはいる。だがサムスン電子の「Galaxy」シリーズのように、SIMフリー端末が国内では存在せずキャリア経由でないと購入できない機種や、iPhoneのように、SIMフリーモデルは存在しても高額で、なおかつMVNOが直接取り扱えないため買いづらいものが、特にハイエンドモデルを主体として多く存在する。

「Galaxy S7」などサムスン電子のスマートフォンも、国内ではSIMフリーモデルが存在せずMVNOが直接取り扱えないモデルの1つだ

しかしMVNOが扱えない機種であっても、iPhoneのようにユーザーが欲しいという要望が大きいケースは少なからずある。そうした声にMVNO側が応えるためにも、主としてキャリアが販売した端末を買い取り、中古で販売する業者の存在は大きいのだ。

それゆえ、中古販売業者とMVNOが接近する事例は昨年より相次いでいる起きている。例えば昨年4月には、MVNO最大手のNTTコミュニケーションズが、中古スマートフォンを取り扱っているゲオと提携することを発表。SIMフリースマートフォンに加え、ゲオが扱う中古スマートフォンだけでなく、中古スマートフォンとSIMのセットによる割賦販売を実現している。

NTTコミュニケーションズはゲオと提携し、中古端末とSIMのセットによる割賦販売を実現している

もっとも中古端末は、誰かが一度使ったものという抵抗感だけでなく、外観・内面の傷や故障、さらにはバッテリー寿命のなどいくつかの問題を抱えているのは事実であり、新品と比べれば購入するユーザー側の不安も大きい。そうした中古端末の流通の妨げになるネガティブ要因を取り払うためにも、セット販売や割賦、さらに保証など、中古端末で利用しやすい環境を整えることにより、ユーザーの抵抗感を減らし購入・利用しやすくする努力が積極的に進められているのである。

行政も中古スマートフォンの販売を後押し

そして中古端末の流通活性化は、MVNOの競争力向上を目指す総務省、ひいては行政の側も積極的に後押ししている。実際、昨年実施された総務省の「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の取りまとめにも、「中古端末市場の発展が望まれる」と記されている。それだけに、MVNOを活性化するための動きの1つとして、行政側も中古端末市場拡大に向けた取り組みを今後も積極的に推進していくものと考えられる。

しかしながら行政側は、中古市場の拡大にはまだ不足があるとの認識を示しているようだ。例えば公正取引委員会が8月2日に公表した「携帯電話市場における競争政策上の課題について」によると、中古スマートフォン端末の流通数は平成26年度で227万台と、新品スマートフォンの出荷台数の8%にとどまると記しており、流通数が少ないことを問題視している。

この報告書には、その理由が明確に記されている訳ではないが、「端末メーカー又はMNO(大手キャリア)が、不当に高い価格で中古端末を購入する場合には、独占禁止法上問題となるおそれがある(不当高価購入、取引妨害等)」と、キャリアや端末メーカーが中古端末の流通に関してけん制する記述がいくつかなされている。こうした公正取引委員会の動きは、国内で絶大なシェアを持つアップルをけん制する動きと見る向きも多いようだ。

無論、現時点で報告書に具体的な企業名が記されている訳ではないため、その真相は定かではない。だが仮にもし、特定のメーカーが国内で、新品の価格維持のために中古端末の流通を操作することがあれば、中古市場を活性化する上では大きな問題となってくるだろうし、その際は行政が強硬的な手段に出ることを明確に示したことは、今後の中古端末販売動向を占う上でも大きな意味を持つ。

このように、iPhoneのような人気端末をラインアップに揃えたいMVNOと、MVNOを後押ししたい行政による積極的なサポートを受ける形で、中古端末の販売は今後大きく伸びていくものと考えられる。現状のMVNOの規模からしても、それが新品のスマートフォン販売に直接大きな影響を及ぼすようになるとは考えにくいが、従来以上に中古端末が身近な存在となることは、確かであろう。

ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

2019.05.22

NTTドコモがスマホ決済の「d払い」を強化する

競合ひしめくなか、ドコモはどこに勝機を見出したのか?

NTTドコモは、夏モデル発表会においてスマホ決済の「d払い」の強化を発表した。送金やミニアプリなど新機能を追加し、ドコモの会員基盤をベースにキャッシュレスを普及させるビジョンを示した。

ドコモがスマホ決済「d払い」を大幅強化

PayPayを始めとするスマホ決済各社は、還元キャンペーンや加盟店開拓などで競争を繰り広げている。ドコモはどこに勝機を見出したのだろうか。

「d払い」が送金やミニアプリに対応

電子マネー「iD」やクレジットカード「dカード」を展開するドコモが、2018年4月に始めたスマホ決済が「d払い」だ。FeliCaの搭載が必要だったおサイフケータイとは異なり、バーコードやQRコードを用いるd払いはほとんどのスマホに対応できる。

d払いアプリのダウンロードは2019年5月に500万DLを達成し、2019年度は1000万DLを目標に掲げた。利用箇所はiDとdポイント、d払いの合算で2019年4月に100万箇所。2021年度末の目標は200万箇所とした。

d払いの強みは、「dポイント」との連携だ。ドコモの利用料金やdカードからの還元だけでなく、キャリアに関係なく持てる「dポイントカード」でポイントが貯まる。2018年度の利用総額は1年間で1600億ポイントに達し、d払い利用者の53%が支払いにdポイントを利用しているという。

さらにドコモはd払いに新機能を追加してきた。9月末に提供する「ウォレット」機能では、ドコモ契約者向けだった「ドコモ口座」を誰もが使えるようキャリアフリー化し、チャージや送金の機能をd払いアプリに統合する。

ドコモ口座をd払いに統合する「ウォレット」

複数の加盟店アプリを1つにまとめた「ミニアプリ」は、秋以降に展開する。d払いアプリから加盟店のサービスを呼び出すことで、「ハンバーガーの事前注文」や「タクシーの配車」が可能になる。加盟店の専用アプリを入れる必要がなく、d払いで決済もできるのがメリットだ。

「ミニアプリ」はローソンとマツモトキヨシから開始予定

QRコードの読み取りも強化する。これまでd払いは利用者がスマホ画面のQRコードを店舗側に見せる「CPM」方式に対応しており、コンビニのようなPOS連携が必要になるなど中小店舗にはハードルの高い仕組みだった。

コードを「見せる」「読み取る」の両方式に対応

そこでd払いは、顧客がスマホのカメラで店舗のQRコードを読み取る「MPM」方式への対応を発表。PayPayなど多くの事業者に続き、d払いも6月末には両方式に対応することで、大型店舗だけでなく中小店舗に展開していく体制を整えたというわけだ。

アプリを大幅強化、「マルチQR」にも対応

次々と新機能を追加するd払いでは、アプリも大きく変わることになる。開発中のアプリ画面には、ドコモ口座への入金と送金、ポイント送付、割り勘、ミニアプリなどの機能が所狭しと並んでいた。

d払いアプリを大幅強化

参加企業が増えればミニアプリには多くのアイコンが並ぶことになるが、これにはカテゴリ分けなどで対応していく考えだ。ミニアプリの仕組みは、既存システムとのAPI接続や専用パッケージの提供など、さまざまな方式を検討するという。

また、増え続けるQRコードへの取り組みも発表した。1つのQRコードで複数の決済サービスに対応できるデジタルガレージの「クラウドペイ」に、d払いも対応する。

1つのQRコードで複数の決済サービスに対応

クラウドペイでは、店舗側が支払う決済手数料は一律3.24%(税込)となるものの、固定費や機器の導入は不要で、複数の決済サービスをワンストップで契約できるなどのメリットがある。

全国のドコモ代理店が加盟店開拓へ

今後は全国のドコモ代理店の営業リソースを活用し、加盟店を拡大していくという。最近ではソフトバンクの営業部隊がPayPayの加盟店を次々と開拓する快進撃を続けており、そこにドコモが勝負を挑む構図になりそうだ。

d払いは、スマホアプリを中心にさまざまなサービスにポイントを循環させるビジョンを描いている。ドコモの発表からは、これまで以上にアクセルを踏み込む姿勢が感じられた。dポイントを絡めた「20%還元」など、新たなキャンペーンにも期待したい。

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ここ最近、若者に嫌われがちな慣習に「飲みニケーション」がある。

これはいうまでもなく、仕事を終えた後、同僚たちと居酒屋などに集結し、アルコールの力を借りて互いの胸襟を開き、親睦を深めるコミュニケーション手法のこと。しかし、終身雇用や年功序列が崩壊した今や「会社の人とプライベートの時間まで削って仲良くなろう」というモチベーションは薄れた。「“飲みニケーション”って、いらなくね?」というムードが蔓延。令和時代に廃れてしまいそうな慣習ともいえる。

会社に勤める日本人の若者には、風当たりの強い飲みニケーション。それを新たなカタチとしてビジネスにつなげているのが、アシノオトの木村壮介さんだ。では、どんなビジネスなのか、木村さんに聞いた。

アシノオト代表の木村壮介さん。高校卒業後、兄が起こしたグループウェアメーカーにジョインして、エンジニアとして活躍。ウェブマーケティングの会社へ転職し、ウェブコミュニティの開発運営などを経て独立。訪日外国人とローカル日本人をつなぐQ&Aサイト「Hub Japan」を起ち上げ。2017年、同サイト内で「MEET&EAT」をスタートさせた

サービス名はHub Japan「MEET&EAT」。ネット上のプラットフォームを介して知らない者同士がマッチングし、文字どおり、食べて、飲む。”飲みニケーション”で親睦を深める、というわけだ。

もっとも「MEET&EAT」がマッチングするのは上司と部下でも、出会い系的な若い男女でもない。木村さんが飲みニケーションのターゲットにしているのが訪日外国人と日本人。日本を訪れた海外からの旅行者と、日本にいる人たちを居酒屋でつなぎ、親睦を深めさせる。いわば“異文化飲みニケーション”を提供しているのだ。

旅行者の「美味しい」は、アテにならない

きっかけになったのは、木村さんの経験だった。

「新婚旅行のときに覚えた違和感。そこからはじまったんです」(木村さん)

木村さんがイタリアへ行ったのは2015年。奥さんと2人で楽しみにしていたのが本場のイタリア料理だった。旅行に関する大手口コミサイトでみつけた店を、まず巡った。待ちに待った本場の味。それが実にいまいちだった。

「『こんなものかな…』とも思ったけれど、2日目に偶然仲良くなった地元のおばちゃんが『昨日はどこで食べた? 駅前の店? ダメダメ。行くならあっちの店よ』と教えてくれたんです。すると今度はめちゃくちゃ美味しかった。それが衝撃でした」(木村さん)

美味しさに対する衝撃だけじゃない。圧倒的な集合知を誇るネットの口コミサイトが、地元のおばちゃんのアナログな知見に勝てないことにこそ、木村さんは感銘を受けた。

「考えてみたら当たり前なんですけどね(笑)。世界中の質の高いユーザーが口コミを書き込めたとしても、書き手が旅行者である以上、底はしれている。地域にずっといる人の知識には敵いませんから」(木村さん)

そこに着想の芽があった。

ならば「地元の人と海外からの旅行者をQ&Aでつなぐローカルコミュニティサイトがあったら喜ばれるのでは?」と考えた。ヤフー知恵袋のような巨大なQ&Aサイトや、SNSで直接つながったコミュニティサイトはあるが、越境してローカルの人と旅行者をつなぐQ&Aサイトは意外と見つからない。

それまでグループウェアの制作運営や、企業向けのコミュニティサイトの開発運営を手がけるITエンジニア・ディレクターだったが、独立起業の潮目を感じた。個人的に「社会課題の解決につながるような事業で独立したい」と考えていたことも後押しになったという。

「どんな課題か? “グローバリゼーション”とそれに伴う文化の均質化“への危惧ですね。なんていうと大げさですけど、目立たないけれど素敵なスポットや、小さくても美味しいお店が、情報の均質化で目立たず消えていく。盛りあげないともったいないなって、感じていたのです」(木村さん)

そして2016年に独立。自らプログラムを書けること、奥さんもWebデザイナーだったこともあいまって、すぐさまシンプルなQ&Aサイトを立ち上げた。名前は「Hub Japan(ハブ・ジャパン)」。訪日予定、あるいは訪日中の外国人ユーザーが英語でクエスチョンを書き込むと、日本のローカルユーザーがアンサーを書き込んでくれるシンプルな仕組みだ。

たとえば「東京でオススメの穴場の寿司屋は?」「サクラを見に大阪へ行くが、気温は? 上着は持参したほうがいいか?」といった具合に欧米を中心に訪日予定の人たちから英語で書き込む。すると、サイトに埋め込んだGoogle翻訳エンジンが日本語に変換してくれるので、日本人も気兼ねなく「現地の声」を書き込める。その日本語は、書き込んだユーザーが読めるように、英語に変換されるわけだ。

「ただオンラインだけだとつまらないのでリアルでも何かやりたいと考えた。そこで『体験の仲介サービス』をやろうとしたんです。訪日外国人が興味のありそうな、着物の着付けとか、お茶の体験とか、いろいろ試しにやってみたら……」(木村さん)

そうしたなか、圧倒的に参加者の好評を得た体験イベントがあった。「居酒屋探訪」ツアーがそれだ。

日本人には当たり前の居酒屋に価値があった

赤提灯や縄のれんが目印の大衆居酒屋から、高級割烹ぜんとした高級店まで、バラエティに富む居酒屋レストランは、日本全国に23万店以上あるといわれる。日本独自の酒とつまみが効率よく味わえるうえ、日本の生活文化や日本人とふれあう機会もあるため、今や訪日外国人にも人気のスポットだ。

ただ興味はあれど、観光客が海外の夜の街に繰り出して、初めての居酒屋に入るのはハードルが高い。ボッタクリ店などにあたるリスクもある。しかし、勝手知ったるローカルの日本人が薦める店に、しかも一緒に入って楽しめるとあれば、安心感が高まる。

「一方で居酒屋などの飲食店も、訪日外国人のお客様を呼び込みたいけれど、お店を知ってもらえていないというのが、多少の機会損失になっていた。なので、飲食店の販促の仕組みとして活用してもらえると考えたんです」(木村さん)

試しに「ハブ・ジャパン」をとおして「日本の居酒屋で日本人と語り合おう」というツアーを告知すると、すぐに外国人観光客から応募があった。木村さんが試験的にアテンドをする。奥さんや友達とともに外国人複数×日本人複数で、オススメの居酒屋にむかい「カンパイ!」からはじめると、異様な盛り上がりをみせた。

英語もできず、そもそもコミュニケーションも苦手だった木村さんだが、酒が入り、気持ちが大きくなると「身振り手振りで必死に会話をしている自分」に気づいた。飲みニケーションあなどれじ、だ。

「また、もちろん海外の方々に『日本に来た目的は?』『何を楽しんだ?』などと聞くことも楽しいのですが、実のところ彼らから日本について意表をつく質問をされることにこそおもしろさ、価値を感じました」(木村さん)

「日本で最もポピュラーな宗教は?」とか、「無宗教? ではなぜあれほど神社があり、誰しもお参りしているんだ?」とか、「あなたにとって蕎麦とはなんですか?」とか――。

「蕎麦については、おもしろかった。自分にとって蕎麦とは何か、なんて考えたことなくて(笑)。日本人同士だったら絶対に聞いてこないような質問をどんどん向けられる。結果、むしろ日本のこと、日本文化のことを深掘りせざるを得なくなったんです。また海外の人たちが、日本の何に興味があるのかも肌感覚でわかる。これって観光施策や訪日外国人向けビジネスのヒントが得られる貴重な場になるなって」(木村さん)

だから、日本文化を深掘りしたい「訪日外国人」、質の高いインバウンド客を集客したい「居酒屋」、そして外国人とフランクに交流することで刺激やアイデアを得たい「ローカルの日本人」。この三者を“三方良し”でつなぐプラットフォームとして、2017年末に作った。

仕組みはやはりシンプルだ。ローカルの日本人ならFacebook認証をとおして「ハブ・ジャパン」にまず登録。そこから「MEET&EAT」のサイトに行く。同じようにログインして日本滞在中の「居酒屋で交流したい」と書き込んでいる訪日予定の外国人アカウントをチェック。都合のいい場所や日時、気の合いそうなプロフィールの団体がいたら「マッチング希望」をクリック。返信を待つ。マッチングとなれば、メールでのやりとりができるようになり、「MEET&EAT」内で指定する居酒屋店をチェックして予約。当日、最寄りの駅前で待ち合わせて、予約時間に店にいき「カンパイ!」となるわけだ。

外国Hub Japanの利用者たち。未成年かどうかの判断はFacebook認証で行われる。トラブルが起きないように、基本2~3人ずつしかマッチング登録できない

今はサイト経由で飲食店への予約が発生したときに、紹介料を得る仕組みで運営中。都内数十店舗の居酒屋と契約を結び、月30人程度の訪日外国人からのリクエストに応えている。

「ビジネスの規模はもう本当に小さい。受託の仕事を続けながら、まだまだ手探りの段階です。ただ小さいながら手応えも感じています」(木村さん)

「またぜひ居酒屋で飲みたい」と訪日外国人のリピーターが増えている。「生きた英語を学びたい」「楽しい飲み会を開きたい」というローカル日本人も増加中だ。とくに「企業のインバウンド担当をしているが、本当のニーズがつかめない。ヒントを得たい」「飲食店を経営しているが外国人向けにメニューやサービスを充実させたい。直接リサーチできるのでは」とマーケティング・リサーチの場として価値を見出している人も現れ始めているという。

飲みニケーション、やはりあなどれじなのだ。

「まあ、まだまだ小さい事業で、どこまでできるかわからないけど(笑)」(木村さん)と、取材終盤、木村さんは繰り返した。ただ、目立たないけど素敵なビジネス。盛り上げないともったいない、と……。

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