iPhoneの伸びが減速、Appleに何が起きているのか

iPhoneの伸びが減速、Appleに何が起きているのか

2016.02.04

シリコンバレーだけでなく、米国、あるいは世界で最も著名なテクノロジー企業であり、驚異的な成長を示し続けてきたApple。その先行きを不安視する声も少なくない。これまでAppleは、各四半期決算においてそうした暗雲をはねのけてきた。しかし、2016年はそう簡単にはいかないようだ。

Appleは米国時間1月26日に、2016年度第1四半期決算を発表した。もはや当たり前となった「過去最高の四半期」(Record Quarter)こそ維持したが、これまでの拡大一色とはいかなかった。

Appleの2016年第1四半期決算は、759億ドルの収益を上げ、純利益は184億ドルという結果で、過去最高ながら、いずれも前年同期比からわずかな増加に留まった。ガイダンスには収まっているが、アナリスト予測を下回る結果となった。株価も反応し、1月末に97ドル台まで戻す局面があったものの、決算発表後は一時92ドル台まで下げた。

主力製品の停滞と減速

Appleの収益は、悪化こそ免れているが、非常にわずかな成長に留まった。その原因は、稼ぎ頭のiPhoneの成長が止まったことにある。その他の主力製品であるiPadは前年同期比で出荷台数25%の減少、これまで堅調に成長してきたMacも減少に転じた。

iPhoneを武器に破竹の勢いで成長してきたAppleに何が起きているのか

iPhoneの低成長は、前年、つまり2014年に大画面化を施したiPhone 6、iPhone 6 Plus、中国市場への本格的な取り組みによって、iPhoneの販売台数は大きく上振れしたことによる反動と見てもよいだろう。2015年度第1四半期(2014年10~12月)のiPhone販売台数は7446万台で、前年同期比で約40%も増加(2014年度第1四半期は5402万台の販売)しているからだ。

iPhone販売台数の推移。図表内の2015年度第1四半期と2016年度第1四半期がほぼ同等の数値となり伸びやんでいることがわかる(Apple決算資料をもとに作成)

つまり、2016年度の各決算において、iPhoneの販売台数は、前年度の「できすぎた数字」と比較されることになる。決算発表でもアナウンスがあった通り、4月に発表される2016年度第2四半期決算において、iPhoneの販売台数は減少するとの予測も出された。2016年についていえば、この数字を上回ることは難しいだろう。その理由は、中国のホリデーシーズンともいえる春節の時期で、中国経済の状況が2015年とは異なると見られるからだ。

ドル高が圧迫する収益

決算発表では、収益の圧迫要因としてドル高も指摘された。iPadやMacの販売台数も減少しているが、米国外では、販売価格の上昇が少なからず関係しているのではないだろうか。

Appleは世界で販売価格の整合性を取っている関係上、ドル高になれば他国での販売価格は値上げされ、販売台数を圧迫する。販売価格を変えなかった場合でも、ドルで評価すれば目減りすることになる。既に米国外の売上が約6割に上るAppleにとっては無視できない影響だ。

折しも、日本銀行は、欧州中央銀行に並んで、マイナス金利を打ち出した。表向きは国内・域内のお金の流れを刺激するとのことだったが、結果的には通貨安競争の手段であり、中国も含めて、今後さらに自国通貨安への誘導が顕著になることも考えられる。

一方の米国の連邦準備制度理事会は、2015年末から利上げを行っており、各国が政策を維持するのであれば、金利差からドル高に動く傾向が強まるだろう。つまり、2016年以降、Appleの世界でのビジネス環境は厳しさが増すことが考えられる。

ちなみに、1ドル100円程度から123円まで、20%以上ドル高となった日本における2016年度第1四半期の収益は、前年同期比で12%減だった。

米国のApple製品の魅力にも陰り?

地域別の売上も見てみよう。欧州で微増、中国では10%を超える成長、日本は前述の通り14%の減少、米国市場は4%の減少となったが、このように地域に目を向けると別の要因も見えてくる。

米国市場は前年同期比で4%減と奮わず。日本も同様に前年同期比14%減だった(Appleの決算資料)

米国で最も購買が盛んになるホリデーシーズンである第1四半期において、やはり前年度の大画面化を受けたiPhoneの成長の反動と見ることもできるが、既に足下の市場でマイナス成長が始まっているとすると、iPadやMacの下落も含め、あまり穏やかではない。

Appleは製品以外の各種サービスも強化しているが、本質はハードウェアメーカーであり、製品の魅力が売上を左右する。つまり、主力製品群の魅力が、米国において失われつつある可能性を指摘せざるを得ない状況になってきたかもしれない。

iPhoneは2年に1度のデザイン変更、iPadやMacに至っては平気で3~5年はそのままのデザインを維持する。これは、普遍性あるデザインを採用していることの裏返しでもあるが、1年ごとのプロセッサ性能の向上がほぼ唯一のスペック面での進化だと考えると、だんだん売れなくなっていくのは頷ける。

こうした背景から、Appleは2016年に、製品ラインアップに大幅なテコ入れを行っていくことが考えられる。ちょうどiPhoneについても、2年ごとのデザイン刷新の年であり、これも含めて、様々な製品に対して、魅力を高める改善や、新製品の追加が行われていくだろう。

どんなテコ入れを行うかに注目

では、どんなテコ入れが行われそうか。iPhoneについては、カメラへの新機能の追加や、iPhone 6sシリーズで一旦重量や厚みが増加したデザインをスリムに引き締め、デザイン変更を大きくアピールすることになるはずだ。

また、4インチサイズのiPhoneの再来についても、噂が拡がっており、小型デバイスを好むユーザーや販売価格が安いiPhoneを求める新興市場に効果的なものとなりそうだ。

iPadについては、2015年11月に発売した12.9インチのiPad Proの仕様を、9.7インチへ拡大していくかどうかに注目している。4つのスピーカーの搭載、キーボードを接続できるSmart Connectorと、キーボード一体型カバーのSmart Keyboard、非常に高い感度を実現するApple Pencilという新たな魅力は、より小型で価格の安いiPad Airシリーズへの投入でより高い効果を発揮すると考えている。

書き心地の高さを売りにするApple Pencilと大画面iPadのiPad Pro

Macについては、現在、Retinaディスプレイの非搭載モデルはMacBook Airのみとなった。後継機種が出るのか、撤廃されるのかはまだ明らかになっていないが、Retinaディスプレイ搭載のMacBook Airを13インチのみとし、こちらも2012年からデザイン変更が行われていないMacBook Proの刷新を行うことも予測できる。

MacBook Airに高精細ディスプレイのRetinaが搭載されるかに注目

Appleブランドの総合力を高める1年に

同時に、複数のAppleデバイスを持っていることによる魅力をより高める施策を、クラウド等のサービス側でより強化していくことになるだろう。前述の通り、Appleはハードウェアメーカーだ。1人1台ではなく、1人2台、1人3台のApple製品を持ってもらう努力は、非常に理に適った戦略だ。

引き続きiPhoneを核としたビジネスのなかで、iPhoneに対するApple Watch、iPhoneに対するiPad、iPhoneに対するMacと、より明快な「組み合わせによるメリット」をアピールしていくことになるはずだ。

加えて、iPhone以外の入り口をいかに作るか、もまた重要課題と言える。継続して売れていく存在をいかに作り出すか。新たなイノベーションやビジネスモデルへの期待も含めて、注目していくべきテーマとなるだろう。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。