リアル世界にも影響! LINEが進めるボット活用の今

リアル世界にも影響! LINEが進めるボット活用の今

2016.10.11

スマートフォンの普及やSNSの浸透により、かつての電話サポートからSNSやチャットアプリを使ったサポート窓口の需要が増大している。そんな中、国内SNS最大手のLINEが、新たなボット(bot)サービスの提供を発表した。これからのボットの活用法を占う上で注目される。

チャットアプリは企業と顧客の新たな窓口に

LINEは若年層を中心に広く利用されており、国内では既に一種のインフラとして普及している。企業が開設する「LINE公式アカウント」(大企業向け)や「LINE@」(中小企業~個人商店向け)も、それぞれ3000、300万アカウント以上に達しており、企業からの情報発信や顧客とのコミュニケーション/マーケティング手段としても定着してきたと言えるだろう。

一方、SNSやチャットアプリでは人力での投稿から自動応答/投稿システム、いわゆるボット(ロボットのように自動で返信や情報収集などを行う自動プログラムの総称)を使うのが一般的になりつつある。

こうしたボットはサードパーティによるサービスとして提供されることが多いが、フェイスブックやLINEでは自前のAPIを用意して公式にボットを活用する手段を提供している。LINEは以前から自社サービスに加え、ヤマト運輸や出前館にこうしたAPIを提供していたが、今年4月に「LINE Messaging API」として一部の開発者向けに限定公開。そして9月に開催された開発者向け会議で正式版のリリースを発表した。

これまでは2万人のデベロッパー限定で公開されていたが、9月末よりオープンにすべての開発者に向けて公開される

店舗予約もLINEでスムーズに

LINE Messaging APIではサードパーティ製のボットプログラムと、LINE側のボットプラットフォームを接続するための手続きを規定するとともに、以下の3つの新機能を用意した。

  • グループ対応

  • 新しい3種類のメッセージタイプ(カルーセル、コンファーム、ボタン)を追加

  • リプライ/プッシュ

また、ボットが能動的に発信する情報を「プッシュメッセージ」、ユーザーの入力に対する反応を「リプライメッセージ」と区分し、LINE@の無償アカウントではプッシュを使えなくすることで、アカウントの差別化も実現している。

LINEのグループにボットを招待できるようになった。むしろこれまでできなかったのが意外にも思われる

グループ対応については、従来は翻訳ボットなど限られた種類のボットしかグループに参加できなかったものが、さまざまなタイプのボットがグループ内に参加できる。店の予約ボットアカウントなどをグループ内に呼び出し、グループみんなで選び合えるようになったわけだ。

新たなメッセージ表示が変えること

実際の利用ベースにおいては新しいメッセージタイプの登場が大きい。「カルーセル」は画像などを含めた複数の選択肢を左右にスライドして選択できるメッセージタイプで、「コンファーム」は「YES/NO」を選択できるもの、「ボタン」は複数の選択肢を提示するタイプのメッセージになる。

左から「カルーセル」「コンファーム」「ボタン」。検索サービスなどでは情報量も多いカルーセルの出番が増えてくるだろう

これを実際のサービスに当てはめると、「この近所の料理店」と検索ボットに送ると、周辺の料理店の情報をカルーセルで5件ずつ表示してくれる。さらに「次の5件」「前の5件」などの選択肢をボタンで送信し、店が決まったら「ここで予約しますか?」というメッセージをコンファームで送信すれば、そのまま予約できる。

これを従来のLINEで行おうとすると、一度ブラウザなどに移動して店を検索したあと、1件ずつ店の情報を確認し、めぼしいものをグループ内にコピー&ペーストして検討。店が決まったら再度ブラウザに移動する必要があった。それが、LINEの中ですべてこなせるようになるわけだ。

ビーコンとボットの連携でリアル世界へ進出

もうひとつ面白い試みとしては、Bluetooth接続のビーコンとボットを連携させる仕組みが用意された。ビーコンは電波の届く範囲に近づくと一種のスイッチとして機能し、ビーコンの反応をトリガーにしてさまざまなサービスを起動させるものだ。

LINEではこのビーコンをボットのトリガーとして設定できるようにし、たとえば店舗を訪れてくれたユーザーにはLINE@のアカウントから割引クーポンを提供する、といったマーケティングに利用できるようにしている。ネットだけでなくリアル世界での体験もしっかりサポートしているわけだ。

ビーコンの利用はこれからのリアル店舗での体験の差別化に大きく影響を与えそうな技術トレンドのひとつだが、LINEもしっかりそれを取り入れている

スマートフォンのインタフェースにおいて、複数のアプリを移動するのはベテランユーザーであっても面倒なものだ。その点、LINEの新しいメッセージサービスはLINEから移動せずにほとんどの処理を行えるもので、多くのユーザーをLINE内の動線に確保し続ける。結果としてLINEのその他のサービスへ誘導しやすくなる。LINEの生態系を強化することになるわけだ。逆に言えば、こうしたサービスを外部で提供してきたサードパーティは、LINEボットに対応しなければLINEユーザに使ってもらえなくなってしまう恐れもあるわけだ。

ちなみにフェイスブックにも同様にボットと外部サービスを連携させる仕組みが用意されているが、日本でのユーザー数はLINEのほうが多く、ビーコンを使ったリアル店舗との連携もない。どちらか一方を選ぶとすればLINEを選んだほうが効率的だろう。

ボットの重要性はますます高まる

最近の技術トレンドとしては、チャットボットのバックグラウンドに人工知能を使い、チャットボットによるサポート窓口運用などがあるが、LINEではこうした技術トレンドとは直接関係のない、地道なインフラ部分としてのMessaging APIを公開している。とはいえ、これは決して悪いことではなく、必要な応答さえできるなら、顧客にとってはボットが単純なパターン認識のプログラムでも、人工知能でも大差がないのだ。もちろん人工知能でより人間らしい対応ができるならいうことはないが、そこはサードパーティによる差別化の余地ということなのだろう。

顧客としては素早く快適に目的のサービスに到達するのが重要であり、そのための体験がリッチであれば、裏にある技術はなんでもいいわけだ。今回のLINE Messaging APIは外部サイトとの連携やIFTTTとの連携、Githubやmackerelへの対応、リッチなUIの提供、ビーコンとの連携など、土台となる部分を無理なく拡張することで、開発者にも顧客にも快適な環境を用意している。

今後、ビジネスの消費の中心となる世代は、デジタルネイティブでスマートフォンやSNSの利用が当たり前になってくる。こうした層に向けてよりリッチで快適なコミュニケーション手段を準備しておくのは、もはや経営上当然の施策といえそうだ。固定電話やFAXが役割を終えることはまだまだないだろうが、これらと並行してボットを準備しておくのが、今後のスタンダードということになりそうだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu