プリウスのプロモーションが奇抜すぎる…トヨタが攻めている理由とは

プリウスのプロモーションが奇抜すぎる…トヨタが攻めている理由とは

2016.10.12

自動車メーカーのウェブサイトと言えば、販売車種を写真や動画で紹介するカタログがメイン。そんな中でトヨタ自動車は、プリウスを素材に大胆なプロモーションを展開した。作家やミュージシャンが登場し、ガムやコーヒーまで製作した、その真意とは。担当者に伺った。

現行プリウスの違いを表現するために

今回お話を伺ったのは、トヨタマーケティングジャパン(TMJ)のプロモーション室、第1プロモーショングループで主任を務める齋藤隆幸氏。TMJは7年前、トヨタ自動車の宣伝部が独立することで誕生した。

トヨタマーケティングジャパンの齋藤氏

トヨタ自動車のマーケティング活動を、よりスピーディに、よりユーザーの側を向いた内容にしていくことがTMJ設立の目的。そのために何を、どのように展開するかという企画の部分から一任されているそうだ。今回取り上げる「TRY! PRIUS」というキャンペーンも、こうした体制の中で企画が立ち上がった。

「これまでのプリウスのお客様は50~60歳代が中心でした。しかし(現行の)4代目は、TNGA(Toyota New Global Architecture)の第1号車としてゼロから設計したクルマであり、走りや乗り心地にもこだわっています。それを若者をはじめ、今までプリウスに興味を持たれなかった多くの人に伝えたいという気持ちが、思い切ったことをやろうという決断につながったのです」(以下、発言は齋藤氏)。現行プリウスのテレビCMは、福山雅治さんを起用するなど大胆な内容となっている。しかしトヨタとしては、ただのモデルチェンジではなく、走りが大きく変わったことを、別の形でもアピールしたかったのだ。

ネットでのクルマ選びが増加、試乗機会は減少

特に他社のクルマに乗るユーザーに、走りの良さを体験してもらいたかった。しかし販売店にヒアリングを行うと、他社のユーザーほど、トヨタの販売店に行って試乗することはハードルが高いと感じているという意見があった。そこでさまざまなジャンルの人々にプリウスの走り味を表現してもらい、少しでもプリウスを身近に感じてもらうことにしたそうだ。

「最近のお客様は、複数の販売店に足を運んで品定めすることはあまりなく、インターネットで情報を集め、車種を絞り込み、最後に確認のために試乗をするパターンが多くなっています。若い人ほどその傾向が強いようです。そんな人たちに、とにかく乗ってもらいたいという気持ちがありました」。

外部の感性を取り入れて再認識したプリウスの特性

文学を取り入れたプロモーションに、村山由佳さん(試乗小説)と原田マハさん(試乗エッセイ)の2人の作家を起用したのは、齋藤氏が読書家であったことも影響したという。しかし誰にお願いするかを決めるのは難しく、周囲のスタッフと相談しながら絞り込んでいった。

企画の趣旨を考えれば、運転免許を持っていて、日常的にドライブを楽しんでいる方が前提となる。さらに人気作家ともなれば多忙なので、限られたスケジュールの中で対応してもらえることも条件になった。

「多くの人にプリウスに乗ってもらいたいという企画なので、まずはお2人にプリウスを運転してもらい、作家さんの感性で、エッセイや小説にまとめてもらう手法を取りました。興味深かったのは、他のジャンルの方を含めて、静かでスムーズという感想が多かったことです」。

現行プリウスの静かさや滑らかさは、単にハイブリッドカーだから実現できているというわけではない。TNGAの採用によるボディ剛性向上も効いている。こういった特性が現行プリウスのメッセージになると齋藤氏は思ったそうだ。

水カンがイメージチェンジに適任!?

一方、ミュージシャンとして起用したのは「水曜日のカンパネラ」だった。初めてその名を目にした読者もいるだろう。サブカル的な香りがする彼女たちのチョイスは、スタッフの提案によるもの。プロモーションの方向性に合っていたので、齋藤氏の中ではほぼ即決だったという。

水曜日のカンパネラ(画像左)を起用。ミュージックビデオにはプリウスも登場する

これまでのプリウスは優等生的であり、学級委員的な存在だったかもしれないと回想する齋藤氏。しかし今度のプリウスは違う。その違いをアピールするとともに、トヨタの販売店に行ったことがない人を引き付けたいという思いに、水曜日のカンパネラは適役だと感じたそうだ。

「とはいえ社内で水曜日のカンパネラを知らない人もいたので、実現するまでは少し大変でした。特に自分より年上の人には認知度が低かったようです。でも『今までは選ばなかったから』という思考ではなく、プリウスの新しい魅力を今までにない切り口で訴求するチャンスだと思い、あの手この手で説明し、納得してもらいました」。

プリウスと松尾芭蕉、共通点は“侘び寂び”

水曜日のカンパネラが、プリウスに試乗して楽曲とミュージックビデオ(MV)を制作した今回のプロモーション。パフォーマンスを担当するコムアイさんがリアシートに座り、プロデューサーのケンモチヒデフミさんが運転するというスタイルで製作は進んだ。静かな車内から、“侘び寂び”というテーマを思いついたというケンモチさんが作った曲が「松尾芭蕉」。タイトルを聞いたときは齋藤氏も驚いたそうだが、同時に、水曜日のカンパネラの世界観の中で、プリウスがどのように表現されるのかと期待も膨らんだという。作家とは違うシーンの切り取り方や、「ダブルウィッシュボーン式サスペンション」などの自動車用語を歌詞に取り入れた点も印象的だったそうだ。

ただ、ミュージシャンをクルマのプロモーションに起用した例はこれまでもいくつかある。その点で画期的だったのは、ガムやコーヒーとのコラボレーションだろう。こちらはどういう発想から生まれたのだろうか。

共通の課題を抱えるトヨタとロッテ

「プリウスの滑らかな走りを何か身近なモノで表現できないかと考えました。ガムは食感(つまりは感覚の部分)が大事という点がクルマと似ているので、ロッテさんに相談に行ったところ、先方から『若者のガム離れ』という言葉を聞いて、若者のクルマ離れと似たような状況だと、親近感が湧きました。ブルーボトルコーヒーさんは、スタッフを通じてアプローチしました。もともと若い人にも人気のショップで、スタッフの方にもこちらの企画にご賛同いただいたので、すんなり進めることができました」。

“プリウス試乗味”のガム(画像左)とコーヒー。ガムのパッケージも豊富に用意した

SNS上で話題が拡散されるなど、いずれもかなりの効果があった。とくにガムは販売店でもらえたこともあって、販売店への問い合わせが急に増えたという。ガムで人が動くという事実は、さらに楽しい企画を考えていこうという前向きな気持ちにつながったそうだ。

渋谷区観光協会とのコラボレーションイベントなど、それ以外のメニューも独創的だった今回のプロモーション。展開は10月中旬までとなっており、現在は次の企画を考えている最中だという。年末にはプリウスPHVが発売予定なので、それに合わせた新しい展開があるかもしれない。テレビCMに比べると予算も限られており、そのぶん頭を使う仕事だというが、ぜひ今後もクルマに負けない攻めのプロモーションを打ち出してほしい。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。