【現場の声】地元で多くの優良企業から愛されてきた人材派遣会社を譲渡。当時の心境や譲渡のきっかけをインタビューしました。

【現場の声】地元で多くの優良企業から愛されてきた人材派遣会社を譲渡。当時の心境や譲渡のきっかけをインタビューしました。

2016.10.21

【現場の声】地元で多くの優良企業から愛されてきた人材派遣会社を譲渡。当時の心境や譲渡のきっかけをインタビューしました。

八王子を拠点に、人材派遣業を中心とした総合人材サービス業を多摩エリアで展開してきたプロステージ(株)。人材派遣業としては異色の「高く仕入れて安く売る」—— 派遣社員には良い待遇を、派遣先企業には低廉価格を提供することをモットーに、地域密着型で多くの優良企業から愛され成長を果たしてきた。2015年9月には、創業者である松井明氏が後継者不在を理由に、大手人材関連サービス企業に会社を譲渡。そこで、会社を譲渡された経緯や当時の心境などについて、松井氏にお話を伺った。

「買い手は当社を本当に必要としてくれるのか?」
相手企業がどのような意図、
意欲で買収を望むのかを重視

――プロステージ創業の経緯や社名の由来を教えてください。

 私は大学卒業後、大手食品会社に就職しました。42 歳でそこを離れ、新しい業界として人材派遣業の立ち上げに参画しました。そこで2年間、人材派遣業についての経験やノウハウを習得、また経理の知識や経営についての知見を得ることもできました。

お話:プロステージ株式会社
前代表取締役 松井 明 氏

その経験を元に、八王子で1992 年にプロステージの前身となるプロパート(株)を設立。技能の高いプロのパートタイマーを地元の中小企業に派遣しよう、という意図で名づけました。大変愛着のある名前でしたが、事業が大きくなるにつれて取引先の企業規模も大きくなっていき、派遣する人材もパートタイマーからフルタイムの派遣社員へと変遷しました。業容拡大に伴う本社移転を機に、社員たちからも社名案を募り、2003 年に現在のプロステージへと社名変更いたしました。

――サービスの特長は?

 創業当時の人材派遣業は、今よりもマージンを大きくとる会社が多かったんですね。でも、私は派遣される人たちもハッピーにしたくて、創業当時から「高く仕入れて安く売る」、つまり派遣社員には良い待遇、派遣先企業には低廉価格というのを企業コンセプトにしてきました。“人を仕入れる”という表現は適切ではないかもしれませんが、要は、できるだけスタッフには高く払ってあげたい。そこで、フルタイムの人は社会保険にきちんと入れたり、通勤交通費を支給したりしていました。

そんな待遇の派遣会社は珍しかったので、口コミでどんどん良い人材が集まってきてくれました。一人あたりのマージンは薄くとも、良質なスタッフが安定して働いてくれるので、優良な取引先と長くお付き合いいただけるようになりました。

――M&Aをご検討されたきっかけや背景は?

 私には娘が二人いまして、その娘婿であったり、社内の人間への承継を検討したりしていましたが、2008年秋からのリーマンショックを発端とした人材派遣業全体の業績悪化、またその後の人材派遣業への規制強化などがあり、それらの話は立ち消えになってしまいました。

そうした経緯がありましたので、事業承継の選択肢としてM&Aの検討は自然な流れでした。そのためにM&A仲介会社の方とも定期的にお会いし、情報交換を図るようにしました。あとはタイミングだけでしたね。

【次のページ】 お相手の決め手は何だったのでしょうか?

――譲渡に際し、どのような条件を希望されましたか?

 経済的な条件もありましたが、個人的に重視したのは「買い手はプロステージを本当に必要としてくれるのか?」という点でした。その想いを相手が強く持ってくれていないと、M&Aの交渉途中で破談になってしまうのではないかという不安もありましたし、私も20 年以上やってきた会社を譲渡するのですから、相手に喜んでもらって達成感みたいなものを得たかった。それで相手がどのような意図で買収を検討し、どれだけ必要としてくれるかという点を重視しました。

――お相手の決め手は何だったのでしょうか?

 今回、私の希望を鑑みて2社の買い手候補企業をご紹介いただきました。そして、どちらの企業も「あ、プロステージを本気で必要としてくれる」ということがわかりました。買い手企業がいろいろと会社の状況をヒアリングしてくるのですが、両社とも人材派遣業を経営する上で鋭いポイントを突いてくるのです。そこまで聞いてくるのかと思いましたが、逆に相手の本気度合いがよくわかって、うれしかったです。

経営者も会社も気力・体力に余力のある
今がベストのタイミングと決断

――あせらず余裕を持ってM&Aに臨めたM&A後の会社の状況はいかがでしょうか。

これまで多摩エリアを中心としてきましたので、新しい取り組みと事業シナジーの可能性を頼もしく思っています。 譲渡した企業は人材関連の事業を手がけておられますが、派遣業はメインでやって来られませんでしたので、プロステージをとても大切に扱ってくれています。また、すでに全国に事業所を展開されていますので、そこにプロステージの支社を開設することで、スピーディーな事業エリアの拡大を実現されています。

――最後に、M&Aを検討されている企業オーナー様へのメッセージをお願いします。

会社の業績も順調でしたので、あと2年の創業25 年を一つの区切りと考えていましたが、やや守りの姿勢であることを自分自身が感じ始めていました。従業員のことも考えると、私個人も会社も気力、体力に十分に余力のある今がベストのタイミングと決断しました。あせらずに余裕を持ってM&Aに臨めたことが良かったと思っています。

――本日はありがとうございました。

お話:プロステージ株式会社 前代表取締役 松井明氏
M&A情報誌「SMART」より、2016年10月号の記事を基に再構成
まとめ:M&A Online編集部

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CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。