社員同士の交流促進! 専用ワーキングスペースを開設する資生堂のねらいとは?

社員同士の交流促進! 専用ワーキングスペースを開設する資生堂のねらいとは?

2016.10.21

資生堂といえば、マイナビで行った学生アンケートで「理系総合ランキング」3位、理系の女子学生にいたっては1位になるなど、学生が入社を希望する人気企業のなかでも屈指の存在。就職情報誌で公開されている各種データのほかに、大学OB・OGから“働きやすさ”のクチコミが学生たちに伝わっていることも、人気に影響しているのだろう。

社員専用のスペース

SHISEIDO PIT

そんな資生堂の人気をさらに高めるかもしれない社員のための空間が生まれた。「SHISEIDO PIT」(以下、PIT)の開設だ。これは何かというと“社員向け多目的ワーキングスペース”のこと。社員ひとり一人が自由に使えるほか、ワークショップやイベントにも利用される。

「単なる会議室ではないか」「自由に使えるオープンスペースなら我が社にもある」といった意見もあるだろうが、会議室やオープンスペースとはあきらかに性格が異なる。まず、社員が自由にこのスペースに訪れて業務をこなしたり、リラックスしたりできる時点で単なる会議室ではない。オープンスペースは来客対応や打ち合わせなどに使われるが、PITの場合は社員専用スペースだ。その意味でもオープンスペースとは異なる。

おそらくこうしたスペースを設けている企業は数多くあるわけではない。

資生堂 経営戦略部 未来創造局 萩原なつらさん

では、なぜPITを開設したのか。「さまざまな社員にこのPITを利用してもらうことで、コミュニケーションを促すことがおもな目的です」と、資生堂 経営戦略部 未来創造局 萩原なつらさんは話す。萩原さんは、このPIT開設を担当した人物だ。

東京・汐留にある資生堂の本社では、約2,000人のスタッフが働いている。当然、管理部門や各種事業部、システム担当など、数多くの部門に分かれている。異なる部門で働くスタッフがPITに集まることで、部門を超えた社員同士のつながりや知見の共有を促し、社員のクリエイティビティを高める場として活用するのがねらいだという。

そのPITを見学させていただいたのでレポートしよう。案内役は前出の萩原さんだ。

PITの入り口は資生堂本社ビルエントランスのすぐ近くにある。まさにビル内の“一等地”ともいえる場所。PITは地下にあり、階段を降りていくと靴脱ぎ場に到着する。「靴を脱ぐのか」と一瞬思ったが、オフィス内に靴を脱げるスペースが存在するのはある意味新鮮といえよう。

「現在、試験的に土足厳禁にしています。利用者の意見はさまざまですが、靴を脱ぐことでよりリラックスでき、コミュニケーションも進むのでは、という考えで実験しています」(萩原さん)。それもそのはず、PITは9月16日にオープンしたばかりの“できたてホヤホヤ”のスペース。現在は少しでも多くの社員に利用してもらい、フィードバックをもらうフェイズなのだろう。

入り口付近に設置された本棚

PIT内のレポートに戻ろう。目に入ってくるのが大型の本棚だ。天井高約8mの広々した空間に設置されているので写真では小さく見えるが、十分大きな部類に入るサイズ。その本棚にオブジェなどを置いたり、本を開いた状態で配置したりと、広々と贅沢に使っている。なお、この本棚には雑誌や小説、文庫本などが化粧品メーカーならではの切り口で配架されており、PIT利用者なら誰でも読める。貸し出しにも対応しており、PITの外へ持ち出すことも可能だ。

次に目に入ってくるのが対面式の細長いテーブル。自分の前にノートパソコンを置くと、その奥側の作業スペースがほぼ無くなるほど奥行きが狭いが、これは対面に座ったほかの社員とのコミュニケーションを行いやすくするための仕掛けだという。

社員同士のコミュニケーションが考えられたテーブル。遊び心なのかスタンプもあった

84インチの巨大Surface

奥の部屋に設置された本棚。中心のディスプレイがSurface Hubの84インチだ

続いて奥のルームへ。そこには入り口よりもさらに大きな本棚があり、その中心に巨大なディスプレイが架けられていた。実はこのディスプレイ、単純なモニターでもなければテレビでもない。これは日本マイクロソフトがリリースしている「Surface Hub」といわれる製品で、その名のとおりSurface、つまり巨大なタブレット端末だといってよい。当然、OSやアプリを搭載しており、この巨大なディスプレイを使って、社員がレコメンド動画を共有するなどのコミュニケーションツールとして利用できる。

余談となるが、日本マイクロソフトからは84インチと55インチのSurface Hubがリリースされているが、PITに導入されているのは84インチのほう。日本で84インチのSurface Hubを導入したのは、化粧品業界では資生堂が初だそうだ。

そのSurface Hubが架けられている反対側の壁は全面ホワイトボードとして活用可能な乳白色のガラス。これほどの面積があれば、複数人でワークショップを行うとき役立ちそうだし盛り上がりそうだ。

ホワイトボードとして活用できる壁
スペースは地階にあるが上部はガラス張りで明るい

PIT内部のレポートはここまでにして、萩原さんが所属する未来創造局という部署に触れよう。この到底ほかの企業ではまずお目にかかることができない名前の部署は、その名のとおり“100年先の資生堂の「未来」を考え、「今」を企画する”のが目的。局の開設時には、まず全国津々浦々をまわり、各地域の資生堂社員の“未来の資生堂”についての意見をヒヤリングしたそうだ。つまり、社員の声のなかから未来につながる企画を生み出している。もちろん経営陣との話し合いも綿密に行われたという。その結果誕生したもののひとつがPITというわけだ。部署立ち上げ当初は5人だったが、公募した社員も加わり、現在15人規模の体制を敷いている。

さて、PIT開設を担当した萩原さんは、まだ入社5年目だという。その若手に197.35平方メートルという、決して狭くはないスペースとなるPIT開設をコンセプトメーキングからいきなり思い切って担当させるのだから、資生堂は開明的なのか、あるいは度量があるのか……。若い社員でもやりがいのある仕事を任されるのだから、そんなクチコミを聞いた学生たちが資生堂に入社したがるのは当然なのかなぁと、資生堂汐留オフィスを背にし、新橋駅へ向かっている途中でそんなことを考えた。

ソフトバンク通信障害、問題の機器を製造したエリクソンが原因を公表

ソフトバンク通信障害、問題の機器を製造したエリクソンが原因を公表

2018.12.10

ソフトバンクの通信障害、問題のエリクソンが会見

原因は機器のデジタル証明書の有効期限切れ

根本原因は調査中で、本格的な対策はこれから

12月10日、ソフトバンクで6日に発生した通信障害について、通信障害の原因となった機器を製造していたエリクソン(本社:スウェーデン)が会見を開いた。

6日午後、ソフトバンク回線が不通に

通信障害の原因とされたのは、LTE通信網のコアネットワーク内で制御信号などのやりとりを行うMME(Mobility Management Entity)内のソフトウェアで、デジタル証明書の期限が切れていたこと。これはエリクソン側のミスだという。同社は現在「根本原因の解析と今後の対策」については精査中と説明している。

LTEのコアネットワークには、さまざまな装置が必要だ。複雑なため概要は記事中の図を参照してほしいが、パケット交換を担当する装置としてEPCがあり、そこにはS/P-GWと今回のMMEが含まれている。S/P-GW側はパケット交換機能を担当しており、いわばルーターのような機能を提供する。MMEは、さらに加入者情報を管理する装置であるHLR/HSSとも接続しており、端末の位置情報も橋渡しするなど、制御系の機能を備えている。なお、今回問題となったエリクソンのMMEはバーチャルMMEだったという。

LTEのコアネットワークには、さまざまな装置が必要だ

今回の不具合では、このMMEの機能を提供するソフトウェアのライセンスを管理しているデジタル証明書の期限が誤って登録されていた。これが期限切れとなったことから、MMEの機能が使えなくなり、ユーザーの加入者情報が参照できなくなるなどの障害が発生し、通話・データ通信の全ての機能が利用できなくなるといった被害につながった。

デジタル証明書の期限が短く設定されていた理由は明らかになっていないが、今回はソフトウェアのバージョンダウンによって障害が収まった。旧バージョンでは長期間の期限が設定されていたからだ。そのため、新バージョンの証明書の期限が短くなっていた事象には人的ミスが疑われる。また、それ以外の装置では同様の問題は発生していないという。

そうした根本的な原因について、エリクソンでは現在調査中として未だ明らかにしていない。世界11カ国の事業者で同様の問題が発生したとしているが、ソフトバンクと英O2以外はキャリア自身が公表していないことを理由に、どの国のどのキャリアで問題が発生したかもエリクソンは明らかにしなかった。

今回は、ソフトバンクがLTE網の全てにエリクソンの装置を導入していたため、全国規模の障害発生につながってしまった。仮に複数のベンダーを採用してネットワークを構成していれば、被害を限定的にすることはできただろう。

エリクソンも「地域ごとにベンダー(製造元)を分けるなど、マルチベンダー化しているキャリアは(海外には)多数ある」としており、今後の障害対策のために、マルチベンダー化によって冗長化することは一つの策になる。

同社は今後も原因解析を進めるとしており、証明書の期限切れが発生した経緯なども明らかになる見通しだ。

面倒くささが先に立つ「軽減税率」のしくみ

カレー沢薫の時流漂流 第19回

面倒くささが先に立つ「軽減税率」のしくみ

2018.12.10

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第19回は消費税増税に伴い実施予定の「軽減税率」について

今回のテーマは「軽減税率」である。

庶民を救う「軽減税率」のはずが…

来年10月、消費税が10%に増税される。この前8%になったばかりやんけ、と思うが、「そうしないと日本ダメです」と言われたら、これからも日本に居座り続ける予定の者としては協力せざるを得ない。

しかし、所得が上がらぬまま税だけ増えれば、当然我々の負担は増加する。特に庶民の生活は圧迫され、スーパーのレジで合計金額が出た後、一つ二つ商品を棚に戻しに行くということが3回に2回は起こるようになるだろう。

そんな庶民や、それよりも苦しい低所得者層を救うという名目で実施を予定されているのが「軽減税率」である。

「軽減税率」とは、消費税が10%となった後も、一部商品だけは8%のままにしようという政策だ。一部商品とは何かというと「肉、魚、野菜、などの生鮮食品」「清涼飲料」「老人ホーム、学校給食」「テイクアウト」「新聞」などである。

要するに、飲食物など生活必需なものを8%のままにすることにより、低所得者層を救おうという作戦だ。その中に何で新聞が入っているのか。生ごみを捨てる時に必需だからか、と思ったが、「報道を味方につけるため」という見方が強い。こんなに露骨でいいのかとハラハラする。

人間食べなきゃ死ぬわけであるから、それらの税率が据え置きというのは一見良いように見えるが、すでにさまざまな問題点が指摘されている。

まずこの軽減税率、低所得者層救済という名目だが、実際に多く恩恵を受けるのは富裕者層と言われている。何故なら、食費にかける金額は富裕層の方が当然高いからだ。

例えば食費に月10万かけている富裕層と、三食うまい棒コーンポタージュ味でやりすごしている層がいるとする。前者の裕福勢の場合、軽減税率により毎月2000円消費税が軽減され、年間2万4000円浮くことになる。

片やうまい棒勢は、うまい棒が10円か11円かで一議論あるが、10円と仮定して、毎月の食費が900円、軽減税率により軽減額は月18円、年間216円である。つまり、裕福勢の方が2万3,784円も多く軽減税率の恩恵を受けているということになってしまう。

例をうまい棒コーンポタージュ味にしてしまったせいで、まったく説明ができてない気がするが、ともかく軽減税率は食費に多く金を使える富裕層の方が、軽減額自体は大きいということである。

「金持ちは恩恵を受けるな、むしろ36%ぐらい多く払え」、というわけではないが、「低所得者層救済」という名目で導入するなら、この軽減税率は適当ではないと言われている。そこを考えてか、低所得者層や子育て世帯に2万円(購入上限額)で2万5000円分の買い物ができる「プレミアム商品券」を配るというが、最大5000円のキャッシュバックで穴埋めできるのだろうか。

バナナは軽減対象に入りますか?

また、それ以前の問題もある。「うまい棒コーンポタージュ味は軽減税率対象に入るのか」という話だ。

実際、あのスポーツドリンクは清涼飲料水なので8%だが、この栄養ドリンクは指定医薬部外品だから10%だと、その線引きは曖昧かつ細かく、多くの飲食物販売店で混乱が起きると言われている。全国で「バナナはおやつに入るのか」というような古代の議論が、大真面目にされるようになってしまうのである。

また、テイクアウトは8%だが外食やイートインは10%なので、イートインスペースがあるファーストフード店やコンビニでは特に大混乱が予想される。

「早い」「手軽」が売りで私たち庶民に密接な関係があるコンビニやファーストフード店が、この軽減税率導入によりスムーズに行かなくなったら、「消費税10%より、コンビニやファーストフード店でもたつくことがムカつく」という事態になり、客が次々とモヒカンになってしまうかもしれない。軽減税率のせいで、庶民の生活が別の意味で圧迫される可能性があるということだ。

そもそも日本は少子高齢化の労働力不足で、コンビニ店員の確保もままならず、外国人労働力に頼らざるを得ないため、外国人や高齢者でも簡単に操作できるPOSレジを導入するなどの工夫をしている。それなのに、ここでさらにコンビニ業務を複雑化してしまったら、ますます働き手を確保できず、「コンビニ20時閉店時代」の到来が早まるだけだろう。

ちなみに軽減税率を導入することにより、全部10%にする場合より1兆円ほど税収入が少なくなってしまうそうだ。その1兆円をどこでまかなうかというと、総合合算制度の見送りやたばこ税、所得税の増税でまかなう予定らしい。

総合合算制度とは医療、介護、保育の負担の合計が一定額を越えたら国が補助をするという制度である。超高齢化社会日本にとっては、医療や介護などを補助してくれる政策の方が大事な気がするが、何故かこちらを見送って、軽減税率を採用するという。

私には理解しえぬ深い理由があるのかもしれないが、私程度の人間の感想としては「もう面倒だから全部10%にしてくれ」という感じだ。

もしかしたら、国民の方から「頼むから全部10%にしてくれ」と言わせるために、この「軽減税率」は存在するのかもしれない。