【キャリア危機への処方箋(1)】M&Aで社内は大混乱。賢いビジネスパーソンは転職すべき?

【キャリア危機への処方箋(1)】M&Aで社内は大混乱。賢いビジネスパーソンは転職すべき?

2016.10.23

【キャリア危機への処方箋(1)】M&Aで社内は大混乱。賢いビジネスパーソンは転職すべき?

自社が買収/合併されるらしい―。この重大な局面で従業員はどのように行動すればよいのだろうか。
企業における従業員のキャリア相談から法人向け研修まで幅広く活動するキャリアバランスの弓ちひろ代表と、自身も会社員としてM&Aに直面した経験をもつ、同社取締役の赤堀吉昭氏に話を伺った。第1回は社内が混乱している際の転職判断についてお伝えする。

リストラ宣告や元同僚からのヘッドハンティングで
社内は騒然

M&Aが実施された場合、従業員は予期せぬ変化に見舞われることもある。合理化によるリストラや出向などがその最たるものだ。大手商社へ新卒入社して3年目に自社が同業他社と合併し会社名も全てが新しくなるという経験をもつ

赤堀氏は、当時の社内の様子をこう振り返る。

「早期退職や子会社への出向を促される人、その前に辞めていく人もいました。会社に直接、外資企業からヘッドハンティングの電話がかかってくることもあったうえ、その話に乗った人からの転職の誘いもありました。並行して新会社も新規採用を行うなど、明らかに社内は騒然としていましたね」。

M&Aが実施されるとなると、このほかにも勤務地の移動、勤務条件や評価軸の変更など、従業員はさまざまな環境の変化に直面することになる。このような状況に陥ると、今、自身がリストラや出向を促されたわけではなくても、「自分も動いた方がいいだろうか?」と、身の振り方を考える方も多いだろう。そのときに道を誤らないためにはどうすればいいのだろうか。弓代表は次のようにアドバイスする。

自分だけの「仕事観と人生観」で
転職を判断せよ

「会社の状況が変化しても動じないために、『仕事観と人生観』を日頃から整理しておくことが重要です。つまりどのような人生を歩みたいか、その人生の中でどのような仕事をしたいか、といったことです。なぜ仕事をするか、というと経済的なこと、つまりお金のため、ということが最初に出てきますが、それだけではないはずです。仕事を通して人の役に立つことに喜びを見いだすことはもちろん、自身の成長や存在意義を実感することもあるでしょう」。

このような仕事観や人生観の確立は、就職活動の際に「自己分析」として行うケースも多いが、社会人になってから改めて向き合うことこそが大切なのだという。

会社からの評価だけではなく、仕事に対する自分自身の「軸」を持つことで、そもそも転職すべき状況なのか、もし転職するとなったら、どのような転職先がよいのか、といった判断材料にもなるからだ。

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漠然とした不安で動くのはNG
転職でうまくいくパターンとは?

転職判断に際して、最もよくないのは「このままでは、会社が危ないのではないか、待遇が悪くなるのではないか」といった漠然とした不安から転職を決めることだという。弓代表は転職で失敗しがちな人の傾向を次のように説明する。

「なんとなくマズイな、という周囲の雰囲気に流されて、真っ先に条件のよいと言われる会社に転職する人は、うまくいかない傾向があります。同時に、転職で失敗する人は自分のキャリアは会社がどうにかしてくれる、とどこが他人任せの傾向があると思います」。

逆に、転職でうまくいく人の傾向はどのようなものだろうか。「M&Aという社内環境の変化を、よい『きっかけ』と捉えている人は、その後のキャリアも順調なことが多いと感じます。例えばM&Aを機会に独立したり、やりたいことにチャレンジする人などです。前提として仕事観や人生観がしっかりあり、人生を自分の責任で歩んでいるということです」(弓代表)。

つまり、自分自身の価値観を軸にした仕事観を持ち、条件に流されずに転職するのであればよいが、雰囲気に流されたり隣の芝生が青く見えて、転職する人は失敗しがちだということらしい。

真の満足を得るためには
「外的キャリア」にとらわれるな

さらに弓代表は、企業名や役職といった外部から見た「外的キャリア」とは別に、自分の価値観によって捉えるキャリアを「内的キャリア」として、転職判断の際に見つめ直すことを勧める。

「『内的キャリア』を軸にキャリアを考えるほうが仕事へのモチベーションが維持しやすいはずです。『外的キャリア』にばかり目を奪われていると、自分が満足する本当のキャリア形成にはつながらないケースも多いのです。転職すると一見、外的キャリアがアップするように見えますが、本当に自身が望むキャリアなのか、周囲の変化にさらされた時こそ、改めて考えてみる必要があります」。

これらのアドバイスは、M&Aだけでなく、転職に迷っているという人にも共通のものとなりそうだ。なんとなくこのまままではマズいという漠然とした不安感や、条件面の優劣のみで転職を考えている人は、もう1度踏みとどまって、自分の仕事観や人生観を整理してみるのもよいかもしれない。

次回は、M&Aで起こりがちな、新会社における旧組織間の対立についての処方箋をお届けする。

取材・文:M&A Online編集部

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株式会社キャリアバランスについて

株式会社キャリアバランス 代表取締役 弓ちひろ(ゆみ・ちひろ)弓ちひろ
1級キャリコンサルティング技能士(国家資格) JCDA会員 国家資格キャリアコンサルタント養成講座講師。
電子機器メーカー退社後独立。フリーアナウンサー業と共に、コンサルティング会社等に所属し、キャリア開発、マネジメントスキルなど企業人の能力開発に携わる。株式会社キャリアバランス設立後、企業、行政、大学などでキャリアカウンセリングや キャリア開発系のプログラム開発・管理職研修の講師を務める。 企業研修および講師経験は25年間に渡り、年間200回を越えるペースで講演を行っている。 これまで延べ1500人のキャリアカウンセラーを世に送り出している。現在は、後進養成のほか、講演・メディアを通じ、ダイバーシティの推進支援に力を注いでおり、特に企業における女性の活躍推進のための支援に取り組んでいる。著書に働き続ける女性を応援した「無理しないほうがうまくいく!ナチュラルキャリア実践術(朝日新聞出版)」がある。

株式会社キャリアバランス 取締役 赤堀吉昭(あかほり・よしあき)
キャリアコンサルタント(国家資格)。2級キャリコンサルティング技能士(国家資格)。
神戸大学大学院総合人間科学研究科修了後、総合商社へ入社。総合商社では人事部にて、採用のほか研修等の企画・講師、新規設立会社の人事制度設立業務や関連子会社への採用コンサルティング、また航空機ビジネスを行う営業部署にて欧米企業の事業コンサルタントに従事。2009年から現職。内定率100%の就職活動塾を主宰しているほか、主に20代のビジネスパーソンを中心に、キャリア開発とビジネスセンス向上のためのビジネス塾を運営している。
詳しくはこちらから http://www.careerbalance.co.jp/

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu