13年かけて製品化、ロボット掃除機に後発参入する日立の自信

13年かけて製品化、ロボット掃除機に後発参入する日立の自信

2016.10.26

日立アプライアンスは、ロボット掃除機「minimaru(ミニマル)」を発表した。日立にとっては初めてのロボット掃除機となるが、すでに競合各社が製品を投入しており、この分野では後発となる。それだけに会見でも、「後発であることを承知で、この段階で参入した理由は?」という質問が飛んだ。果たして日立アプライアンスがこだわったのはどこだったのだろうか。

13年かけたクオリティ

「我々は掃除機のプロ。中途半端な製品を発売するわけにはいかなかったのです」。10月17日に行われた日立アプライアンスのminimaruの記者会見。意外な事実が明らかになった。

ロボット掃除機「minimaru」

minimaruは、日立アプライアンスにとって初めてのロボット掃除機製品だ。だが、ロボット掃除機を記者会見で取り上げたのは初めてではなかった。「実は2003年にもロボット掃除機に関する説明を行ったことがあります。しかし、その時点では技術開発を行っただけでした。実際に発売する製品を発表するのは今回が初めてになります」(日立アプライアンス・商品戦略本部ユーティリティ商品企画部 部長代理 白河浩二氏)。

今回の製品発表をさかのぼること13年前に技術発表を行っていたのだ。しかも、「13年前の時点でも、今回と同じコンセプトである狭い場所で掃除をするという説明をしていました」という。

なぜ、技術発表から製品を実際に発売するまでに13年の時間を要したのか。

会見終了後、日立アプライアンスに確認すると、返ってきたのが「我々は掃除機のプロです。中途半端な製品を発売するわけにはいかなかったのです。満足できる掃除機を開発するために、部品から開発を行い、満足できるクオリティとなったことで発売に踏み切ったのです」という発言だった。

確かにminimaruの製品発表の中でも、掃除機としての性能がたびたびアピールされた。本体につけられたサイドブラシによってゴミを集め、換気の流れでゴミを吸込み口へ送る。前面にはダブルかき取りブラシがついていて、ついた回転ブラシでゴミをかき上げ、その前についているかきとりブラシでカーペット上の綿ぼこりもすっきりとかき取る。取ったゴミを吸引するパワーを支えるのが、この製品のために新たに開発された「小型ハイパワーファンモーターR」だ。

minimaruの裏面

狭い場所を満足に掃除するために

minimaruの特徴は製品名とおり、小型であることだ。サイズは幅25センチ、高さ9.2センチ。製品が小型になると吸引力を支えるモーターのサイズは当然小型になる。吸引力もそれにともなって落ちてしまうことにならないために、今回、新しいファンモーターが開発された。小型、軽量でありながら高効率という新しいモーターで、「モーターの日立」とアピール。モーターの開発力に強い自信を持っていることがうかがえる。

他社製品との大きさの比較をすると、小さいことで狭いところに届きやすいのがわかる!

今回、製品を発売するにあたり、日立アプライアンスではロボット掃除機購入を検討している人、すでにロボット掃除機を持っている人の両方にアンケート調査を行った。そこで明らかになったのが、購入前の人にとっても、購入後の人にとっても掃除機としての機能への不安だった。

購入前の人へのアンケートで最も多かったのが、「どの程度ごみが取れるのか」だった。複数回答であるが78%の人がこの点を不安に思っている。吸引力を強化したのは、まさにこの部分の不安を払拭することを狙ったものだ。

購入後の不満としては、同じ掃除への不満でも、「部屋の隅の掃除」が2番目に、「イスの脚周りなどの狭い場所の掃除」が3番目に、「壁際の掃除」が5番目の不満としてあがっている。購入後は、より具体的な場所への不満としてあがっている。

「小さい」からこその機能を備えている

この具体的な場所への掃除の不満を解消するために、minimaruは小さなきょう体を実現した。直径サイズが小さいことで、これまでのロボット掃除機では届きにくかった部屋の隅に届きやすくなる。テーブルやイスの脚周りに対しても、検知機能を搭載し、その周りを周る制御機能を搭載。ロボット掃除機は掃除しにくく、ホコリもたまりやすい脚周りを掃除する。きょう体を小さくしてイスの下など狭い部分を掃除することができる上、細い脚周りを回る制御機能によってこれまでロボット掃除機には掃除することが難しかった、家具周りも掃除する機能を搭載した。

狭いところでも入れる

掃除をする際の動きについても、きょう体が小さい分、掃除ができる範囲が小さくなるという弱点を、素早い動きで通過回数を増やすことでカバーする。さらに毎秒250回の高速センシングによって状況を判断するminimaru AIを搭載し、周囲の状況を判断して、状況に合わせた100以上の行動パターンから最適な掃除パターンを選択する。最初はゴミのたまりやすい隅や壁際からスタートし、部屋全体を素早く、丁寧に掃除するプログラムを搭載した。

ゴミがきちんと取れていることを実感するために、ダストケースはゴミが見えやすい透明のケースを採用。充電時、自動的にダストケース内でゴミを圧縮する機能も搭載。約2週間分のゴミをためることができ、圧縮している分、ゴミがまとまっていて捨てやすいというメリットにもなっている。

ゴミが見えやすくて、圧縮しているから捨てやすい

ロボット掃除機に対する期待としては、「外出中に掃除が終わっていれば便利なので」、「掃除機をかける時間が少ない」、「体力的に掃除をすることがおっくうになってきた」など、掃除にかける手間を減らすことだ。ところが実際にロボット掃除機を導入した人は、「床に置いてあるものを片付ける」、「イスをテーブルの上にあげておく」など、ロボット掃除機を使うための準備をしているとアンケートで回答している。

minimaruが小さいきょう体で、掃除能力にこだわった開発を行ったのは、この「ロボット掃除機を使うための準備をしないでも使える」を狙ったものとなる。

ロボット掃除機市場は形成段階

果たしてこうした狙い、そして部品から新たに開発して作った掃除機としての機能がどれだけ伝わるのかがminimaruが成功するか、否かの鍵となる。イスや家具の下にも入っていって掃除することができることを狙ったきょう体の小ささは、見た目だけで伝わるが、掃除機としての強力さについては見ただけでは伝わらない。日立アプライアンスでは、「CMと店頭でのアピールを大々的に行っていくことで、機能の特性を知って貰う予定」と話している。

「ロボット掃除機の市場規模は5年前に比べれば2.3倍に拡大している。今後もこの市場規模は伸びていくだろう」(日立アプライアンス 取締役 家電・環境機器事業部長 松田美智也氏)。日立アプライアンスの調べでは2015年度の市場規模は20万4000台。掃除機全体の中でロボット掃除機が占める割合は4%とまだ小さいものの、次回購入したい掃除機のタイプとしてはサイクロンタイプ、スティックタイプに次ぐ3位となっている。

こうした市場調査の声を見ると、ロボット掃除機は、買ってみたいと考える人が増えている段階で、買ってみたいと考える人の懸念、買ったものの不満に感じている機能的懸念をどれだけ解消することができるのかによって、ロボット掃除機の市場規模拡大がかかっているといえるのではないか。

ロボット掃除機市場は現段階では市場形成段階であるという実情を考えると、日立アプライアンスは競合企業からシェアを奪うことよりも、これまで機能面を検討した結果ロボット掃除機購入を思いとどまっていた人、以前、購入したことがあるが機能に満足しなかった人をどれだけ獲得できるのかがポイントとなってくる。

同社では月産5000台、市場でのシェア10%を目標として掲げている。これを実現するか否かは、機能面の特性をどれだけ多くの人に伝えていけるかにかかっているのではないだろうか。さらに、実際に利用した人が、「ロボット掃除機に感じていた不安、不満が解消できた」と納得できる製品に仕上がっているのか、まさに機能が評価されるかの勝負である。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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