iPhone凋落? スマホ料金是正から見る人気端末の行方

iPhone凋落? スマホ料金是正から見る人気端末の行方

2016.02.12

昨年実施された総務省のタスクフォースの結果を受け、携帯電話大手3社が実質0円以下での端末販売を見合わせたことから、2月に入ってスマートフォンなどの端末価格が急上昇している。そこで注目されるのが、端末価格の変化がメーカーにどのような影響を与えるのかということ。事実上iPhone一択の状態であった日本のスマートフォン市場が、大きく変化するのだろうか。

総務省要請で「実質0円」が姿を消す

昨年総務省が実施した「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の結果から、総務省は携帯電話大手3社に、携帯電話の料金引き下げに関する要請を実施した。それを受けて各キャリアは、今年に入ってから要請に応えるための施策を打ち出している。

中でも注目されるのが、端末販売の適正化に向けた動きである。これは一体何かというと、要するに携帯電話端末を、実質0円を割り込む価格で販売しないようにということである。

実はここ数年来、番号ポータビリティ(MNP)で乗り換えをするユーザーに対し、iPhoneのような高額な端末を、販売奨励金や割引などを用いて実質0円で販売するだけでなく、それを超える割引や、5万円、10万円といった高額なキャッシュバックを追加して販売する手法が横行。一部メディアで“現代の錬金術”として取りざたされたように、MNPでキャリアを乗り換えながらスマートフォンを買い替え続けることで、お金がもらえてしまうような状況が続いていたのだ。

そして高額な割引の原資となっているのは、利用者が毎月支払っている携帯電話料金である。それゆえ、MNPを活用し端末を頻繁に買い替える人は高額な割引を受けて得をするが、あまり買い替えない人は割引の恩恵をまったく受けられず、損をしてしまう。そうした不公平さが問題だとして、先のタスクフォースでは是正に向けた議論が進められていたわけだ。

総務省からの要請を受けたキャリアは、今年に入ってから要請に応えるための取り組みを進めてきた。端末販売の適正化に関しても同様で、1月29日にはNTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏が、決算説明会の場で「2月より、端末を実質0円で販売することは慎んでいきたい」と話し、2月から実質0円以下での端末販売は取りやめることを明らかにしている。

他のキャリアも同様に、2月より端末を実質0円以下で販売しないよう取り組みを進めているようで、2月に入ってからは携帯電話ショップの店頭から、実質0円やキャッシュバックなどの施策が姿を消している。

NTTドコモの加藤薫社長は、決算会見の場で2月より実質0円での販売を慎むと公言

商習慣の変化で大きな影響を受ける端末メーカー

これまで"常識"となっていた端末の0円販売が姿を消したことは、携帯電話に関連するさまざまな企業に影響を与えている。実際、2月9日に実施されたKDDI決算発表会で、同社の代表取締役社長である田中孝司氏は、2月に入ってからauショップへの来店者数が約2割減少するなど、来客数が大幅に落ち込んでいることを明らかにしている。

KDDIの田中孝司社長は、2月9日の決算説明会で好調な業績を記録したものの、実質0円販売の取りやめでショップの来客数が急減したことを懸念していた

だが実質0円販売がなくなることで影響を受けるのは、携帯電話ショップだけではない。同様に大きな影響を受けると見られているのが、端末メーカーだ。

これまでキャリアは、メーカーから調達した端末を、"2年縛り"を前提に多額の割引や販売奨励金をかけ、0円など非常に安価な価格で販売してきた。この仕組みによってキャリアは長期契約を獲得でき、一方でメーカーはキャリアの割引販売によって安定的な販売数を確保し、高性能な商品の開発に専念できるなど、Win-Winの関係を築いていたのである。

だがその割引が減少するとなると、必然的に価格が上昇するため、ユーザーがそのことを敬遠して端末の販売量が減少する。そうなると、キャリアがメーカーから調達する端末の数自体を減らしたり、より安価に販売できる低価格端末を求めたりするようになることから、メーカーの売り上げが減少して打撃を受ける可能性が高まるわけだ。

特に今回の総務省要請が大きなダメージを与えると見られているのは、高額なハイエンドモデルを提供してきたメーカーであろう。例えば、最も人気の高いiPhoneシリーズは、本来8万円以上する非常に高額な端末である。それをキャリアが価格を大幅に値引くことで、我々はタダ同然で購入できていた。だが極端な割引ができなくなると、必然的に端末の価格は正規の価格に近づいていくため、高い機種ほど高額で販売されることとなる。

そうしたことから、高額な端末を提供しているメーカーほど、今回の総務省要請によって大きな影響を受けると見られているのだ。

"iPhoneびいき"は継続、ハイエンドAndroid端末が姿を消す?

だが、販売奨励金や割引自体が禁止されているわけでもなければ、割引できる額に制限が加えられているわけでもない。確かに実質0円での販売は難しくなるものの、どの端末をどの程度割り引くかは、キャリアの裁量で決めることができることに変わりはないのだ。

実質0円を割り込む価格での販売も多く見られたiPhoneだが、本来は8万円を超える非常に高額なスマートフォンだ

そうしたことからキャリアは、日本で最も人気が高いiPhoneを提供するアップルとの関係を維持したいことから、iPhoneへの割引優遇施策は今後も継続するものと考えられる。他社のハイエンドモデルと比べれば、iPhoneが割安な価格で販売される傾向は、まだ続く可能性が高い。

先のタスクフォースの議論では、キャリアがiPhoneをとりわけ優遇して割引販売している“iPhoneびいき”を問題視する声も多く上がっており、それを改善するべきとの意見も少なからず出ていた。だが今回の要請の範囲内では、iPhoneのような高額端末の販売量自体を減らす可能性は高いものの、iPhoneびいきを解決するまでには踏み込めておらず、現在の傾向は当面続くと考えられそうだ。

ゆえに、今回の施策で最も大きなダメージを受けると見られるのは、Andoridのハイエンドモデルを主に提供しているメーカーではないかと考えられる。特に国内メーカーは、日本のみで展開している企業も多く日本市場の動向が生命線となっていることから、今回の総務省要請によって中期的に撤退するところが複数出てくるかもしれない。また日本で展開している海外メーカーも、規模の縮小や撤退、そこまでいかなくてもハイエンドモデルの提供取りやめなどといった戦略変更を余儀なくされる可能性が高いだろう。

低価格モデルが台頭?

一方で、今回の総務省要請がプラスに働くと見られるのが、低価格モデルに強みを持つメーカーだ。最近はミドルクラスのスマートフォンであっても、普段使いには十分な性能を持つことから、かつてとは異なりキャリアは最近、比較的安価な端末の導入に積極的になっている。それゆえ現在、SIMフリー市場で比較的安価なスマートフォンを提供している中国・台湾などのメーカーにとっては、ハイエンドAndroid端末メーカーの減少を受ける形で、キャリア向けビジネスに参入できるチャンスが生まれてくるかもしれない。

「ZenFone」シリーズで人気を獲得したASUSなど、SIMフリー市場で人気の中・低価格帯に強いメーカーが、今後キャリアへの端末供給に参入してくる可能性も考えられる

スマホ料金是正で結果的にどうなるのか

では結果的に、日本のスマートフォン市場はどうなるのだろうか。まずiPhoneに関しては、現在と傾向は大きく変わらず「iPhone一択」が続くと見られるものの、価格高騰の影響を受けて販売量自体はやや減少するだろう。一方でAndroid陣営は、多くのハイエンドモデルが姿を消し、代わりに安価なミドルクラスの端末が勢力を拡大すると推測される。

こうした市場構造は海外のものに近いといえ、総務省側も日本が海外と同様の市場構造になることを好ましいとしているようだ。だが一方で、このことは通信事業において日本の独自性を失わせることにもつながっており、通信市場全体で一層日本の存在感が低下する可能性が高まることが、気がかりなところでもある。

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大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

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