iPhoneはこれからもアップルを支えるか

iPhoneはこれからもアップルを支えるか

2016.10.27

アップルは米国時間10月25日、2016年第4四半期決算を発表した。売上高は469億ドル、純利益は90億ドルだった。収益は9%の下落となった。これで2016会計年度の決算が確定し、2001年以来実に15年ぶりの、前年比減収減益となった。注目されるのはiPhoneの販売台数と、その起爆剤となっていた中国市場だ。

第4四半期中に発売されたiPhone 7は業績にどう影響を与えたか

iPhoneの販売台数は前年比9%減

アップルは9月にiPhone 7、iPhone 7 Plusを発売した。発表された第4四半期決算には、新型iPhoneの発売後2週間の販売も含まれている。

第4四半期におけるiPhoneの販売台数は4551万3000台で、売上高は281億6000万ドルだった。この数字は前年同期比で販売台数は5%減、売上高は13%減という数字となった。

2016年第4四半期におけるiPhoneの販売台数は前年同期を下回る結果に

アップルによると、iPhoneの平均販売単価は619ドルとなった。販売台数の減少以上に、売上高の減少幅が大きくなっているのは、製造コストの上昇、iPhone SEや過去のモデルなどの低価格ラインアップの割合が大きくなっている点が理由に挙げられる。

決算に関するカンファレンスコールの中で、iPhoneの強い需要に供給が追いついていない点を指摘し、iPhone 7については年内に在庫状況が改善するが、iPhone 7 Plusについては約束できないとした。

米国、中国市場で低迷

今回の決算では、引き続き中国市場での弱さが目立つ結果となった。

中国市場での売上高は前年同期比で30%減と、大幅な下落に落ち込んだ。アップルのティム・クックCEOは、「年間を通して、前年比で17%の減少となっている一方で、2014年から比較すると43%の増収を記録している」と指摘。中国市場の数字が振るわない理由について、3%の通貨の下落と、2015年の爆発的な買い替え需要から、通常の買い替え需要に戻ったことによる反動、と説明した。

その上で、中国市場に対しては引き続き強気の見方を崩しておらず、ミドルクラスの成長と、緩やかなLTE対応によるゆっくりとした成長が見られるとし、非常に有望な市場であるとの見方を示している。

米国の売上高が7%減少している点にも驚かされる。こちらについては、iPhoneの需要に供給が追いついていない点に加えて、Macと、Apple Watchを含むその他の製品が、グローバルの数字でそれぞれ17%減、22%減となっている点も影響していると考えられる。Apple Watchについてはすでに新製品を発売済みだが、2016年末のホリデーシーズンにかけて、これらの数字が改善するかどうかに注目べきだろう。 前年同期比で売上高3%増の欧州、そこに加えて日本市場は引き続き好調で、10%のプラスとなった。Apple Pay導入で、iPhone、Apple Watchそれぞれに、好調な反応を示していることが考えられる。

またカナダ、中南米、中東、南アジアでのiPhone販売が好調であった。しかし、アップルにとって最大規模となる米中2市場での下落が足を引っ張った格好だ。

サービス分野の成長は続く

アップルの稼ぎ頭は引き続きiPhoneであることには変わらない。iPhoneを基点としたエコシステム全体への波及が、より鮮明になったのが2016会計年度の振り返りと言えるだろう。

その結果としてあらわれているのがサービスカテゴリだ。ここには、iCloudの追加ストレージ、App Storeのアプリ販売とアプリ内課金、Apple Music、iTunes Store、iBookstore、そしてApple Payの手数料収入が含まれる。

2016年第4四半期のサービスカテゴリは、前年同期比で24%増、前期比でも6%増となる63億2500万ドルにのぼる。この数字はアップルの売上高全体の約14.4%を占めている。

今回のサービスカテゴリの売上高には、7月に配信が開始されて大ヒットとなったゲーム「Pokemon GO」のアプリ内課金から得られる手数料が含まれるようになっており、また9月の段階で1500万ユーザーを超えたApple Musicの成長もある。12月にはこちらもヒットが期待できる「Super Mario Run」の販売も、上乗せされる形になるだろう。

米国9月9日に「Super Mario Run」の販売もアナウンスされた

Apple Payは、2016年第4四半期での決済数が、2015年全体の決済数を上回ったと指摘しており、また日本時間10月25日からは日本でのサービスが開始された。

日本市場におけるApple Payは、米国をはじめとした地域と異なり、すでに10年来整備されてきたFeliCaをベースとした非接触IC決済インフラをそのまま利用できる。そのため、Apple Payの決済数と手数料収入が、今後飛躍的に伸びる可能性が高いと考えている。

iPadモデルをiPhoneにもたらせるか?

2016年第4四半期決算において、iPadは、926万7000台を販売し、42億5500万ドルの売上高を記録した。前年同期比で販売台数6%減、売上高は変化0%と報告している。

前期比では、販売台数7%減だったが、売上高は13%減となった。指摘したいのは、前期比で平均販売単価が下がっている点だ。これは米国は9月に新学期を迎え、価格が安く抑えられているiPad Air 2やiPad mini 4に人気が集まった可能性が考えられる。とはいえ、前年同期比で比べると、「少ない販売台数で同じ収益を上げた」という説明もつく。

決算発表のコメントで、むやみに販売価格を釣り上げることはせず、経済状況との対話をしながら戦略を練っていくとの考えを示しているものの、アップルとしては、低価格モデルも用意しつつ、薄利多売に陥らないよう、高付加価値のデバイスを主流としていく戦略を取っていくことになるだろう。

業績厳しいMac

最後にMacについて触れておこう。Macの販売台数は488万6000台、売上高は57億3900万ドルとなった。第4四半期決算は新学期需要が見込めるが、それでも前年同期比でそれぞれ14%減、17%減となっている。iPadのおよそ半分の台数でより多くの収益を得ている一方で、iPhoneユーザーを対象とした成長戦略が奏功しているサービスカテゴリは、前期にすでにMacの売上高を上回るようになった。

Macも、iPhoneのエコシステムに対してアプリを開発するために必須のコンピュータであり、新興国を含め開発コミュニティの成長は、Macの販売を支えていくことになる。

加えて、「現在そして将来のMacユーザーに対して、いくつかの楽しみなニュースが近々発表される」とアップルはコメントしている。これは10月27日のイベントにおいて、新型のMacが披露されることを示唆するコメントだ。

アップルは、iPhoneを主たる収益の柱としながら、その他のカテゴリに良い循環を与える仕組みを作り出そうとしている。

そこから切り離されつつあるiPadも、IBM、シスコに加え、デロイトとの提携を用意しつつ、ビジネス分野でのパートナーシップの強化によって、iPhoneとは別の切り口での「堅調な成長」を目論んでいる最中だ。

中国市場において、アップルが再び成長に転じることができるのか。そしてインド等の新興市場を、新たな成長の柱へと転換できるのか。これらのポイントが、今後の注目点となっていくだろう。

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。