【キャリア危機への処方箋(2)】「正論で反論」は逆効果。社内抗争をうまく切り抜けるには?

【キャリア危機への処方箋(2)】「正論で反論」は逆効果。社内抗争をうまく切り抜けるには?

2016.10.30

【キャリア危機への処方箋(2)】「正論で反論」は逆効果。社内抗争をうまく切り抜けるには?

第2回は、M&Aを機会に起きうる社内抗争について、前回に続きキャリアバランスの弓代表と赤堀取締役に話を伺った。実例を引き合いに出しながら傾向と対処法を探る。

仕事・情報を回さない、極端な席配置・・・社内で起きた、いがみ合い

異なる企業同士が1つの会社となるM&Aにおいては、以前に所属していた企業の違いによって対立が起きることも想定されるだろう。例えば、A社とB社が合併してC社となった際に、旧A社と旧B社の社員が対立する、といったことである。

自身も大手企業の会社員としてM&Aを体験し、組合でさまざまな苦情を聞いてきたという赤堀氏は、当時の社内の様子を次のように振り返る。

「極端なところでは、旧A社の社員グループが旧B社の社員には回覧板を回さない、仕事を与えないといったことが起きていたようです。そのほか、わざと旧B社の社員の席をメインのシマから離れた位置に配置するなど、大小さまざまな社内不和のタネがありました」。

回覧板を回さない、といったあからさまな行為は、「いじめ」や「嫌がらせ」の領域に達しており、まさか大の大人がそのようなことをするとは信じがたいかもしれないが、実話だそうである。さらに仕事を与えないともなると深刻だ。

このような状況に自身が直面した場合、メンタル面もダメージを受け、旧A社の社員全員を憎んでしまいそうである。このM&Aでは旧A社が強い立場で、旧A社社員は弱い者いじめをしようとしていたのだろうか。

それに対し、弓代表は、嫌がらせをしてしまう側の社員の心理を次のように分析する。
「ほとんどの場合、嫌がらせをするのは、強い立場だからではありません。その根本的な心理は相手への『恐れ』であることが多いのです。自分たちのやり方が旧B社の社員によって否定されてしまうのではないか? 旧B社社員によって何か変わってしまうのではないか? といった潜在的な恐れが、旧B社社員を排除したい、という気持ちにつながり、嫌がらせという形で表れてしまったのでしょう」。

つまり、このような相手に対して、憎んだりすることはもちろん、正論で反論したりすると、恐れを助長することになってしまい、逆効果になるというわけだ。そこで、弓代表は次のようにアドバイスする。

「『恐れ』を抱いている相手に対しては、自分は相手にとって安全な存在だよ、怖くないよ、ということを伝えなければなりません。そのために効果的なのは、相手に対して『リスペクト』の意を表すことです」。

自分に尊敬の念を抱いている相手に対して敵意は生じにくい。そのため、このような嫌がらせを受けた時こそ相手のよいところを見つけ、「旧A社のやり方はさすがですね、勉強したいです。(旧A社の)〇〇さんはこうするんですね、ぜひマネしたいです」というように、具体的に褒めるとよいという。

最初は心理的なハードルが高いかもしれないが、このような対処法は、M&Aが起こった際に限らず、嫌がらせを受けた場合全般で効果的なものとなりそうだ。

結婚と一緒!旧組織のルールの押し付け合いはNG

弓代表は、M&Aの際にこのような対立を避けるために、すべての社員が心掛けてほしいことを、結婚に例えて説明する。

「A家の夫とB家の妻が結婚してC家という新しい家庭を築いた場合を考えてみてください。結婚したのに、夫や妻が自分の家のルールに固執していては対立を生みます。自分たちでC家をつくったのだから、新しいC家としてのルールを生み出そうという姿勢が大事です」。

確かに、実家のよさを主張し相手を否定するよりも、夫や妻が自分たちの家庭をどのように築いていくかを話し合う方が建設的といえそうだ。

企業もまったく一緒で、とくに大企業同士の合併の場合、自分の組織のやり方を少しでも残したいと思う経営者や社員の気持ちは強いだろうが、新しい企業としてのやり方を議論していくべきということになる。

そして、嫌がらせをしてしまう人は、変化全般に対して強い恐れを持つ傾向があると弓代表は指摘し、「前向きに捉える努力を」と、促す。

「何か起こったときに、『なんでこんなことが起こったんだ』という人と、『「プランドハップンスタンス(計画された偶発性)』として、チャンスと捉えるかでその後の人生が違うものになると思います」。

プランド・ハプンスタンス理論(Planned Happenstance Theory:計画された偶発性理論)
1999年にスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱したキャリア理論。
クランボルツ教授らは、数百人に及ぶ成功したビジネスパーソンのキャリアを分析したところ、その内の8割が「いまある自分のキャリアは予期せぬ偶然に因るものだ」と答えたという結果を得た。
著書「その幸運は偶然ではないんです!(J.D.クランボルツほか、ダイヤモンド社)」

この姿勢は、リストラなど想定外の事態に直面した際こそ、その後の人生に違いをもたらすものになるという。

次回は、従業員にとってのまさに一大事、M&Aによってリストラを宣告されても、動じないためにどうすべきかをお伝えする。

取材・文:M&A Online編集部

関連リンク
【キャリア危機への処方箋(1)】M&Aで社内は大混乱。賢いビジネスパーソンは転職すべき?

株式会社キャリアバランスについて

株式会社キャリアバランス 代表取締役 弓ちひろ(ゆみ・ちひろ)弓ちひろ
1級キャリコンサルティング技能士(国家資格) JCDA会員 国家資格キャリアコンサルタント養成講座講師。
電子機器メーカー退社後独立。フリーアナウンサー業と共に、コンサルティング会社等に所属し、キャリア開発、マネジメントスキルなど企業人の能力開発に携わる。株式会社キャリアバランス設立後、企業、行政、大学などでキャリアカウンセリングや キャリア開発系のプログラム開発・管理職研修の講師を務める。 企業研修および講師経験は25年間に渡り、年間200回を越えるペースで講演を行っている。 これまで延べ1500人のキャリアカウンセラーを世に送り出している。現在は、後進養成のほか、講演・メディアを通じ、ダイバーシティの推進支援に力を注いでおり、特に企業における女性の活躍推進のための支援に取り組んでいる。著書に働き続ける女性を応援した「無理しないほうがうまくいく!ナチュラルキャリア実践術(朝日新聞出版)」がある。

株式会社キャリアバランス 取締役 赤堀吉昭(あかほり・よしあき)
キャリアコンサルタント(国家資格)。2級キャリコンサルティング技能士(国家資格)。
神戸大学大学院総合人間科学研究科修了後、総合商社へ入社。総合商社では人事部にて、採用のほか研修等の企画・講師、新規設立会社の人事制度設立業務や関連子会社への採用コンサルティング、また航空機ビジネスを行う営業部署にて欧米企業の事業コンサルタントに従事。2009年から現職。内定率100%の就職活動塾を主宰しているほか、主に20代のビジネスパーソンを中心に、キャリア開発とビジネスセンス向上のためのビジネス塾を運営している。
詳しくはこちらから http://www.careerbalance.co.jp/

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。