ドコモショップで生命保険の販売がスタート、通信会社は何を狙うか

ドコモショップで生命保険の販売がスタート、通信会社は何を狙うか

2016.09.01

NTTドコモは9月1日よりドコモショップで保険の代理販売を開始した。これまでも損害保険を携帯電話を通じて販売してきたが、今回は、ドコモショップでの対面販売を行い、生命保険も取扱う。なぜ、携帯電話会社が保険に注力するのか。

生保販売に力を入れるドコモ

ドコモが保険の取扱いを開始したのは2010年。1日自動車保険や国内・海外旅行保険など、携帯電話を通じて加入できる損害保険「ワンタイム保険」を販売してきた。携帯電話から加入できる手軽さが受け、今でも存続しているサービスだ。

そして、ドコモショップを通じて9月1日からは、関東甲信越のドコモショップ11店舗で新たに生命保険の代理販売も開始した。各店舗には、概ね2つの保険相談の専用カウンターが設けられ、3カ月みっちりと訓練を受け、資格を得たドコモショップの店員が保険相談を行う。生命保険という商材の特質上、顧客からの信頼を得なければ申し込みにつながらず、従来のようにウェブからではなく、対面での販売が必須とのことで、ドコモショップという資産を活用して、生命保険を販売していこうというわけだ。

ドコモショップで生命保険の販売を開始。写真はドコモショップ桜新町店でのデモンストレーション

ドコモショップのスタッフを有資格者になるまで育て上げ、貴重な販売スペースを保険販売に割くほどの力の入れようだが、そもそも、ここまでする必要あるのだろうか。ドコモは保険屋ではなく、通信会社だ。そこを理解するには、ドコモの保険参入の意義に耳を傾けつつ、同社を取り巻く環境に照らし合わせて考える必要があるだろう。

保険参入の意義

保険参入の意義について、ドコモは「健康で豊かな社会の実現を目指し、お客様と長く・深い関係性を築くこと」とする。麗しい言葉が並ぶが、重要なのは「お客様と長く・深い関係性を築くこと」の部分だ。

次に、ドコモを取り巻く事業環境についてだ。ドコモをはじめとした大手通信キャリアには今も、逆風が吹いている。総務省は携帯電話利用者の料金負担の低減を目的に、MVNOへの移行を促しており、大手通信キャリアはその大きな流れには逆らうことができない。実質ゼロ円でのスマートフォンの販売も禁じられた今、他のキャリアからの顧客の奪い合いもなくなってしまった。

できることと言えば、長期利用者の優遇策を打ち出し、少しでも長くドコモを使ってもらえるようにすることだ。そのため、ドコモは今年に入って長期利用者を優遇する施策を打ち出している。少しでも長くドコモと関わってもらうには、生命保険のように契約期間が長期に渡り、顧客と深い関係性が求められる商品は都合がいい。生命保険の対面販売を行うことで、顧客との新たな接点を持てるようになるわけだ。

ドコモで生保は売れるのか

とはいえ、本当に生命保険が売れるのか、という疑問も残る。ドコモショップへは、携帯電話料金の見直しをしたい、端末を買い換えたい、から行くわけで、わざわざ、生命保険を目当てにドコモショップに行くことはないだろう。ニーズはどこにあるのだろうか。

NTTドコモ 保険ビジネス担当部長の寛司久人氏は、「ドコモショップはこれまで、顧客のライフステージに寄り添って営業してきた面がある。ドコモショップに来る人は結婚して、名義が変わるといった人も多い。そうしたタイミングで保険を替えたり、見直したりするニーズがあると思う」と話す。しかし、誘客がうまくいかなければ、生保の販売はうまくいきそうにない。契約にこぎつけるまでのドコモショップなりのメリットもほしいところだ。

誘客施策は、駅前でのティッシュ配りや店内でのマネー関連のセミナーの開催などを想定しており、非常に地道なものになるという。そして経済メリットも特にない。保険と携帯電話のセット契約による割引も考えられそうだが、保険業法の観点から実施はせず、先々もその予定はないという。あるのは、通信料の見直しついでに保険の見直しも行えるといった利便性の向上のみだ。

ドコモらしさをどれだけ出せるか

生命保険の販売は、うまくはまればドコモにとって有意義な事業となりそうだが、現状を見る限り、何ともいえない。それを見越してか、関東甲信越の11店舗でのスモールスタートになる。年度内には40店舗まで増やしたいと話すが、それでも数は少ない。年度内までの取り組みは、生保販売の親和性を探るというテスト的な側面が強いように感じられてしまう。

ただし、先々を見たときに、生命保険の販売は面白い取り組みになりそうだ。同社は今後、生命保険にドコモのアセットを活用していくとしている。ドコモヘルスケア、らでぃっしゅぼーや、ABC Cooking Studioといった事業資産を活用し、「健康な活動をすればするほど保険料が安くなる商品の提供」なども考えているという。深読みすれば、歩数や消費カロリー、睡眠を計測する「ムーブバンド」などを活用して、保険料金に反映させる仕組みを考えているようにも思える。

こうして見ると、第一幕となる生命保険の販売はドコモショップに従来のビジネスを取り入れただけのものとなり、事業資産を生かした第二幕からが本番になりそうだ。通信会社としてのドコモらしさをどれだけ出していけるか。そこに期待がかかりそうだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
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○藤田朋宏の必殺仕分け人
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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu