ロボット型携帯電話「ロボホン」は何をもたらすか

ロボット型携帯電話「ロボホン」は何をもたらすか

2016.09.02

僕がロボホンを初めて見たのは昨年の秋のCEATECだったと思うが、その第一印象はルックスが「カワイイ」ということと、その名前からくる「ロボット型のスマホ!」という言葉のインパクトだったが、その内容については展示がかなり混雑しており、詳しくはわからなかった。

その後、今年に入って、春のAndroidのイベント「ABC」などでも目にし、ダンスなどのアクションのデモを目にしていたが、ぞの具体的な機能についての情報が僕の耳に入ってきたは本当に発売も間近な時期だった。

それにしても、ダンスをするロボット型携帯電話というのは今までにないという印象だった。発売前のABCでのロボホンは30センチ四方ぐらいの範囲でダンスをしていたのだが、それでは広いスペースが必要になりすぎるということか、実際に販売されたロボホンのダンスはより移動が少なくなった。やはり、実際に販売される段階になると、現実的になるものだ。

踊ることもできるロボホン

実用レベルの音声入力を実現したロボット

僕はロボホンが「ロボット風の外観を持つスマホ」だろう程度に考えていたのだが、すぐにその予想が間違っていたことを感じることになった。

背面に小さな液晶を搭載しているのは知っていたので、その液晶で操作を行なうのでは? と思っていたのだが、実にロボホンはその主な操作をスマートフォンのようにタッチディスプレイではなく、「音声」によって行なうのだ。ちなみに人の名前などを音声入力でうまく入力できないときは、背中の部分に搭載している小さなディスプレイで手書き文字入力をすることもできる。

なお、現在のロボホンができる代表的な機能は次のようなことだ。普通のユーザーがスマホで行なう実用的なことのかなりの部分がカバーされているのではないだろうか?

  • メールの送受信

  • アラーム(目覚まし)

  • ニュース・天気予報の読み上げ

  • 地図の表示

  • デジカメ写真・動画の撮影、写真、動画のメールへの添付

  • デジカメ写真のプロジェクター表示

  • 音楽の再生

  • クイズ、ポポン(独自オセロ)

  • 通話、伝言

  • キーワード検索(Wikipediaでの検索)

正直なところを言えば、電車で目的に行くための経路検索などもあれば助かる機能だが、シャープでは、そのような機能を搭載することも視野に入れているという。今後、数年という長い視野でスマートフォンで主に使われているような機能をロボホンで実現することを目指しているのだという。

「なぜ、長い時間がかかるのか?」「スマートフォンにアプリを単純に移植するように簡単にいかないのか?」と言えば、言うまでもなくロボホンはUI(ユーザインターフェース)が音声であるためだ。単純に機能を持たせるだけでなく、音声入力で使いやすいそのアプリのためにUIも開発しなければならない。スマホのアプリをそのまま移植するわけにはいかない。 ロボホンがこのように購入後もソフト的に進化したり、情報にアクセスできるのはインターネットに接続できるからだ。ロボホンは4G LTEの高速なモバイル通信機能を搭載しており、スマホが通信できる場所なら、通信を行なうことができるし、Wi-Fi接続もできる。

プロジェクターで壁に投影することもできる
頭部にはカメラとプロジェクターを搭載
Wikipediaの情報を検索することもできる
背面のタッチディスプレイは補助的に使われる

「エモパー」スマホや「Siri」との違い

シャープはスマホメーカーでもあるが、最近のハイエンドモデルは「エモパー」と呼ばれる機能を搭載している。これはエモーショナル・パートナーの略で、人間の感情的パートナーのようになるという意味で、話しかけてきたり、画面に情報を表示したりする。スマホが友達になるというようなものだ。

ただ、このエモパーはコミュニケーションのためだけの機能であり、その機能はスマートフォンの一部に過ぎない。そして、そのコミュニケーション機能もロボホンを上回ることはない。その機能はメモを覚えてくれるとか、特定の話題を状況に応じて話をするというようなものだ。

エモパーの機能。雑談やメモの機能があり最新版ではダイエットなどに役立つアドバイスも

ロボホンとエモパー、両者ともにシャープの人工知能プロジェクト「ココロプロジェクト」から生まれているが、その目的、機能、スタンスは大きく異なっているのだ。

そして、iPhoneの「Siri」とも大きく異なっている。Siriは音声入力による自然言語処理でコミュニケーションができるという面ではロボホンに近いが、SiriはiPhoneの機能の一部に過ぎず、自立的に写真を撮影したり、人を認識して伝言を渡せるようなロボホンとは根本的に異なる。

ロボットとスマートフォンの違い

これらスマートフォンのアプリとロボホンのもう1つの大きな違いはその形状にある。ロボホンはロボットであり、「人間の形」をしているということ。人間の形状をしているが故に人々がそれを1つの独立した知的存在として認識しやすい。スマホが同じ人工知能を搭載したととしても、人間の形状をしたロボットのほうが人は話しかけやすいし、親しみを持ちやすいというわけだ。

そして、ロボホンはその「動作」や「声」の1つ1つにまで細かい配慮があり、1つのキャラクターを表現している。人間と同じくキャラクターを持った存在なのだ。

シャープではロボホンのしゃべりや動作において一定のガイドラインを作り、それに基づいて動作やしゃべりを決めているという。この細かいキャラクター作りにまで配慮しているあたりが他のロボット製品とロボホンの印象が異なる一因なのかもしれない。「カワイイ」キャラクター作りがロボホンが女性に受ける一因となっているのだろう。

音声入力はどうあるべきか

とはいえ、その音声入力インターフェースは簡単に現在の形になったわけではないようだ。シャープの関係者は次のように話す。

「日本人がロボットに話しかけるのはマインド的に難しいのでは? と考え、当初はエモパーのように『ロボホンから話しかける』UX(ユーザエクスペリエンス)を中心に企画・開発していました。しかしながら、実際にプロトタイプを作ってみると、形のあるものに意図しない内容を頻繁に話しかけられるのは思いのほか、うっとおしく感じ、心地の良いUXにならないと判断しました。そこで、心理的障害を下げるための対策として、『ボクに質問』のように、ロボホンから『○○も聞いてみて!』と誘導するようなUIやそわそわモーションをして『どうしたの?』と話しかけてもらいやすくしたり、というさりげない誘導を入れています」

つまり、人間のほうからロボホンに話しかけたいキモチにしようとしているわけだ。

ロボホンの可能性

いろいろ述べてきたが、やはりロボホンの大きな特徴はそのUIを基本的に音声入力にしたことが大きいだろう。これがロボホンを他のデバイスと明確に一線を画するものとしている。

何しろ、いままでスマホにしてもタブレットにしてもパソコンにしても、音声入力で不自由なく実用的に操作できるようなデバイスというのは存在したことがないのだ。言うまでもなく、パソコンはキーボード入力ができなければ使えないし、スマホにしても同様だ。これがロボホンであれば、メールアドレスさえ登録していれば、デジタル機器に疎い人でもスムーズにメールを使ったりすることができる。

これは非常に画期的なことであり、ロボホンは音声入力の標準化という今までにないUIを得たことによって、今後、今までにない市場を開拓していける可能性がある。

パソコンでキーボードをたたいて作業しながらでも、ロボホンで音声でメールの送信作業をしたり、受信したメールを音声で聞くことができる。物理入力デバイスとパラレルに使うことができるのだ。ある意味、パーソナルアシスタントのようで面白い。

ロボホンはスマートフォンのようなデバイスと競合する製品ではなく、共存できるもので、さらに新しい市場を開拓していける製品なのだ。

なぜ、音声入力にこだわったのか?

それにしても、なぜシャープはこんなに音声入力にこだわったのか? そして、その先に何か考えていることはあるのか? これもシャープ関係者に聞いてみた。

「音声"は"表示"のようにユーザーの時間を拘束しません。歩いているときや、何か作業をしているときにも音声であれば耳に入ってきます。また表示だけでは愛着が湧きませんが、音声の会話でやり取りすることで愛着が湧き、それによってその対象(ロボホンやお話しする家電)に自分の情報を話すようになると考えます。今後、音声でのサービス、特にユーザープロフィール・嗜好に沿ったサービスが展開されるようになると考えており、"音声"には非常にこだわっています。具体的なサービスはまだ検討中であり、現時点ではあまりお話できませんが、例えばユーザーの好きなものを登録しておくと、近くのレストランを検索した際に、好きなものとリンクしたお店を紹介してくれる等、嗜好理解を活用したサービスはいろいろ考えられるかと思います。好きな芸能人をロボホンに教えておくと、その芸能人が出演する番組を放送前に教えてくれる、等もユーザー理解の具体例になるかと思います」

シャープは音声入力の先に、さらにユーザーカスタマイズした情報サービスの提供なども考えているようだ。ロボホンは、まさにパーソナルアシスタントと言える存在になるのかもしれない。

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

恋するSNSマーケティング講座 第1回

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

2018.11.14

Facebook社員に「マーケティングのイロハ」を聞く新連載!

第1回は、講師の紹介と「マーケティングと恋愛」の関係性について

フェイスブック ジャパンのSNS運用コンサルタントに「SNSマーケティング」について聞く短期連載。初心者~中級者に知ってほしい「マーケティングの考え方」について、全5回にわたって説明します。

キーワードは「恋愛」。とっつきづらいマーケティングも、恋愛に喩えて考えてみると、意外とわかりやすいようです。

「恋愛とマーケティングは似ていると思うんです」

FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSを活用したマーケティングは今や企業にとって欠かせないものになっている。

一方で、「どこから始めればいいのかわからない」「そもそもSNSマーケティングって?」といった疑問もまだまだあるだろう。そこで今回は、フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リードを務める丸山祐子さんを講師に迎え、SNSマーケティングを“恋愛”に喩えてわかりやすく解説してもらうことにした。

フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リード 丸山祐子さん

なぜ“恋愛”なのか。それは「日々のお客様とのやりとりの中で、恋愛とマーケティングは似ていると感じることが多かったから」と丸山さんは言う。

丸山さん自身も現在婚活中の身。これまで仕事最優先で生きてきたが、最近になってパートナーを探すべく婚活を開始したという。その過程で感じたのが、前述の恋愛とマーケティングの共通点だったというわけだ。

「流行」は人の手でつくられるモノ

今回は連載初回ということもあるので、まずは講師である丸山さんの経歴から紹介しよう。

東京で生まれ育った丸山さんは、中高大一貫校に通っていた。小学生時代から「自分の知らない世界に行ってみたかった」という丸山さんは、高校時代に初海外となるカナダを訪れる。

「知らない言語で話しかけられたり、東京では見られない地平線や水平線を見たりして、私の知っている世界はなんて狭いんだろうと思いました」(丸山)

海外に魅了された丸山さんは、一念発起してカリフォルニアの大学に進学。そのころ、「ファッションの流行は自然に生まれるのではなく、必ず裏には仕掛人がいる」ということを実感したのがキッカケとなり、「自分も人の心を動かす仕事がしたい」と考えるようになった。

大学卒業後は日本に戻り、人材業界で働くことに。長くアメリカで過ごしていたこともあり、日本の業界事情がつかめない中、「まずはいろいろな業界を知りたい」と考えたためだ。

その後、「リーマンショック」が起こり人材業界の業績が悪化したこともあり、業務を通して興味を持つようになったデジタル業界への転職を決意。転職先は、IT業界を中心にメディアプランニングなどを行う電通の子会社。メディア担当として、デジタル広告のイロハを学んだ。

そこで担当していたクライアントが、当時日本に上陸したばかりのFacebookだった。その後、それまで培ったデジタル広告のノウハウをより活かすべく、フェイスブック ジャパンへ転職し、現在に至る。

広告はラブレター「相手に届かないと意味がないんです」

丸山さんは現在、FacebookやInstagramの広告メニューについて、運用コンサルやメディアプランニングなどを行っている。また、Instagramをより企業に活用してもらうためのプロジェクトメンバーとしても活動しているそうだ。

さて、そんな丸山さんがFacebookのコンサル業務を通して常々感じていたのが「恋愛とマーケティングの共通点」である。

どんな業界でもそうだが、良い製品だからといって何もせずに売れるわけではない。“届けたいメッセージを届けたい相手にちゃんと伝える”必要がある。これがマーケティングの目的だ。

「広告はよくラブレターに例えられます。いくらラブレターを書いても、それがちゃんと届けたい人に、その人の心に響くかたちで届かないと意味がありませんよね。ラブレターを届けるために恋愛にもマーケティングが必要なんです」(丸山)

婚活において“ラブレターを届けるべき相手”とは、まだ見ぬ将来のパートナーだ。その相手はどこかに存在しているはずだが、まだ出会ってはいない状態である。運命の相手と出会うために重要なことの1つは「とにかく出会いの数を増やすこと」だという。

「1人と会ってみて、その人が運命の相手ならラッキーですし、そういうケースもあるでしょう。でも、そうでない場合には、たとえば運命の相手と出会える確率が1/100だとして、10人と会うのと100人と会うのではどちらの方が出会える確率が高いか、言うまでもありません」(丸山)

これはそのままマーケティングに置き換えても同じことが言える。自社の製品を購入してくれる潜在的な顧客の態度変容効果が一緒であるなら、できるだけ多くの人数に広告を届けた方が売上は伸びるはずだ。

「そう考えると、婚活でもせっかくの週末に部屋にこもっているのはもったいないなと思いますよね。積極的に行動をおこして、多くの人に出会う機会を増やすことが大事なんです」(丸山)

一方で、重要なのは数だけではないと丸山さんは言う。多くの人にリーチすることは大前提として、そこからさらに“出会いの効率”を上げていく必要があるのだ。

では「数」に続いて大事なこととは? 次回は効率を上げるために必要な「ターゲティング」について、これまた恋愛と絡めて聞いていく。

第2回「恋するSNS講座」は11月20日に掲載予定です。

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

2018.11.14

日本自動車研究所が「自動バレーパーキング」の実証実験

駐車をシステム任せにできる仕組みとは?

未来の駐車場はクルマの“ハブ”になる

自動運転、電動化、カーシェアリングなど、新たな技術・サービスの登場により変革期を迎える自動車業界。クルマの乗り方、使い方を根本的に変えるかもしれないこれらの要素をまとめて「CASE」というが、この文字を目にする機会も増えてきた。クルマが変わればクルマに関連するモノや場所も変わりそうだが、例えば駐車場は、どのような姿になっていくのだろうか。日本自動車研究所(JARI)の実証実験で、その一端を垣間見た。

「CASE」の進展で駐車場の姿も一変する?

「バレーパーキング」を自動化

「CASE」とは「Connected」(コネクティッドカー)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Service」(カーシェアリングなど)、「Electric Drive」(クルマの電動化)という4つの言葉の頭文字をとってダイムラーが使い始めた概念のこと。そのうち、コネクトと自動化の2つを使って、JARIが実用化の道を探っているのが「自動バレーパーキング」というシステムだ。

JARIは経済産業省および国土交通省の委託を受け、2016年度から「一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」というプロジェクトを進めている。「バレーパーキング」とは、例えばホテルやショッピングセンターなどにクルマで乗りつけたとき、キーを従業員に預けて、代わりにクルマを駐車しておいてもらうサービスのこと。その自動化に向けて、JARIはシステム、制度、事業性などを検証してきた。

JARIは今回、自動バレーパーキングシステムの機能的な確認を行うためとして、東京都港区にある「デックス東京ビーチ」の駐車場で実証実験を実施。その模様を報道陣に公開した。そこではクルマが勝手に動き、定められた駐車スペースに止まり、再び動き出す様子を見ることができたし、自動バレーパーキングを含めた駐車場の未来像に関する話も聞くことができた。

JARIはデックス東京ビーチ駐車場の2階で実証実験を実施した

自動バレーパーキングとはどんなシステムなのか

自動バレーパーキングをドライバー目線で説明するのは簡単だ。例えばショッピングセンターのエントランスにクルマで乗りつけたならば、降車してスマートフォンのアプリで「入庫」を指示し、そのまま買い物にでも食事にでも向かえばいい。用事が済んだ頃に「出庫」ボタンを押して出口に向かえば、クルマ寄せには愛車が迎えに来ている。

自動バレーパーキングの指示はスマホで行う

では、そのシステムはどのようなものなのか。自動バレーパーキングは「クルマ」「管制センター」「駐車場」の3者による協調で機能する。駐車場の構造を把握している「管制センター」は、ドライバーから入庫の要請を受けると、安全性や効率を考慮して駐車場所とそこへ向かう経路を決め、「クルマ」に無線で指示する。「クルマ」は「駐車場」にあるランドマーク(目印)をカメラやセンサーなどで読み取り、「管制センター」が持つ駐車場の構造情報(地図)と擦りあわせて自らの位置と経路を確認し、指示された駐車スペースに向かう。そんな流れだ。

自動バレーパーキングの様子。運転席に人は乗っているが、ハンドルからは手を離している

同システムが実用化となれば、駐車場の「利用者」は手間を省けるし、「事業者」は駐車効率の向上を図れる。無人で自動運転を行うクルマであれば、ドアの開閉スペースは不要だし、ぶつけたりこすったりする心配もないはずなので、クルマをギュウギュウに詰め込めるからだ。JARIによれば、駐車効率は従来比で20%向上する可能性があるという。また、自動車事故の3割は駐車場で発生しているので、自動化は事故削減にもつながる。

ただ、実用化には当然ながら、いろんなハードルがある。自動バレーパーキングの実用化に向けて動いているのは日本だけではないが、JARIとしてはまず、同システムの国際標準化に向けた手続きを進めたい考え。2021年のISO国際標準化に向け、各国と協議を重ねているところだ。

また、システムが実用化となったとしても、最初から全てのクルマが自動バレーパーキングを利用できるわけではない。まず、通信機能が備わっていないクルマはアウトだし、通信できたとしても、管制センターの指示通りに自動運転をこなせるクルマでなければ、やはり同システムの恩恵は受けられない。

JARIの考えでは、まずは同システムが求める要件を満たすクルマだけが使える専用の駐車場を実用化し、段階的に「混在型」を目指すのが現実的だそう。ただし、混在型を実現するためには、人が運転するクルマと自動運転のクルマを駐車場内でうまく交通整理する工夫が必要になるだろう。

未来の駐車場はクルマの「ハブ」になる?

自動バレーパーキングの実用化には時間が掛かりそうな雰囲気だが、その先の駐車場の在り方についてもJARIは考えをめぐらせている。JARIのITS研究部に所属する深澤竜三さんによると、未来の駐車場が目指すのはクルマのハブ、つまり、クルマにまつわるさまざまなサービスの結節点だ。

JARIが描く未来の駐車場の姿

ハブ駐車場とはどのような施設なのか。深沢さんの描写はこんな具合だ。

「自動バレーパーキングで、勝手に駐車しておいてくれるのはもちろんですが、そこが自動車整備の拠点としての役目を果たしたり、電気自動車(EV)であれば、勝手に充電しておいてくれるとか。買い物が終わる頃には充電が済んでいるというのが理想ですね。あとは、観光地であれば情報配信拠点としての機能も想定できます」

「ほかのアイデアとしては、クルマを駐車しておいたら、宅配便がトランクに届いている、といったような使い方も考えられます。その場合は、トランクを開けられるような仕組みが必要にはなりますが、届け先を1件ずつ回る必要がなくなるので、配送業者の方も楽ですよね」

未来の駐車場は、クルマにまつわるいろんな機能を提供する拠点になるかもしれない

深澤さんの話を聞いていると、おそらくハブ駐車場はホテルに1つ、ショッピングセンターに1つという具合にではなく、地域に1つ、しかも大型の施設として存在するもののように想像できた。用事で近くまで来た人も使えば近隣の住人も使うし、カーシェアやレンタカーなどのクルマも混在している大きな駐車場。そんなイメージだ。

こういう駐車場が必要かどうかについては、地域によって状況が違うだろう。コンビニエンスストアですら広大な駐車場を備える地域がある一方で、例えば銀座のように、数台しか止められないけれど、短時間で驚くべき値段になるコインパーキングが稼動している場所もある。おそらく、ハブ駐車場が必要になるのは後者の方だ。

銀座に大きなハブ駐車場を作る余地があるかどうかは別としても、クルマの駐車以外には使いみちがないという点で「デッドスペース」化している駐車場に、さまざまな機能を持たせるというJARIの構想には可能性を感じた。一般道の自動運転も実用化となれば、例えば東京オリンピックの後、有明かどこかに残された広いスペース(会場の跡地)に大きなハブ駐車場を作り、そこと銀座などの繁華街を結ぶということも、夢のようではあるが不可能ではないはずだ。