【マツモトキヨシ】友好的な業務提携から全株式取得の子会社化へ。戦略の変化に迫る

【マツモトキヨシ】友好的な業務提携から全株式取得の子会社化へ。戦略の変化に迫る

2016.09.03

【マツモトキヨシ】友好的な業務提携から全株式取得の子会社化へ。戦略の変化に迫る

 日本全国どこにおいても、黄色地に黒文字の看板でおなじみのマツモトキヨシ。2015年度の実績では、売上高4953億円、店舗数1528店舗と、ドラッグストア業界の2冠を達成している業界の最大手企業である。

 小売業は得てして業界再編・企業の集約が行われやすい業種であるが、ドラッグストアの業界再編をひもとくに当たり、マツモトキヨシホールディングス<3088>の存在なくしては語ることはできない。

 マツモトキヨシは1932年(昭和7年)千葉県松戸市小金に、社名にもなっている「松本清」が個人経営の「松本薬舗」を開いたことに始まる。

 54年には法人へと組織変更し、87年には現在に至るまで都市型店舗のモデルケースとなっている、上野アメ横店を出店した。開放的な間口、照明も明るく、陳列されている商品の数々は、当時の薬局のイメージに革新的な変化をもたらした。

 また、94年には柏市加賀の幹線道路沿いにおいて、郊外店舗のモデルケースとなる駐車場を兼ね備えた大規模な店舗をオープンした。このように、時代に伴い移り変わる顧客層のニーズを素早くキャッチ・対応していく力を武器に、爆発的に店舗網を拡充していく。

 90年に日本証券業協会へ株式を店頭登録、95年には売り上げ1017億円、ドラッグストア業界の売り上げ首位に立ち、99年には東証1部への上場を果たした。

 その後マツモトキヨシは、出店競争・価額競争・異業種からの参入と、激化する業界の鎮静化・課題解決を図るため、地場の大手企業と手を組むことを企図する。これが今日までマツモトキヨシの行っていく、業界再編ともいえるM&Aの先駆けである。

■マツモトキヨシが行った主なM&A

年月 内容
2004.1 健康家族(長野県、27店舗)の全株式取得(0%→100%、価額非開示)、子会社化
2004.3 伊東秀商事(千葉県)の株式取得
2005.1 杉浦薬品(愛知県)の株式取得(0%→35%超、価額非開示)
2005.3 マツモトキヨシ薬品をマエダ薬品商事(神奈川県)に売却(100%→0%、価額非開示)
2005.11 ぱぱす(東京都)の株式取得(0%→18%、価額非開示)
2006.2 ミドリ薬品(鹿児島県)との株式持ち合い(10%未満)
2006.7 ぱぱす(東京都)の株式の追加取得(18%→75%、価額非開示)
2006.10 ラブドラッグス(岡山県)の株式取得(0%→20%、価額非開示)
2006.12 マックス(新潟県、21店舗)の株式取得(0%→100%、価額非開示)
2008.7 OTC専門卸売業の茂木薬品商会(東京都)の株式交換による子会社化(0%→100%)
2009.12 ミドリ薬品(鹿児島県、152店舗)の株式をTOBにより買い付け(0%→58.98%、約9億円)
2009.12 中島ファミリー薬局(長野県、16店舗)の株式取得(0%→100%、価額非開示)
2010.3 ラブドラッグス(岡山県、47店舗)の株式追加所得(20%→90.8%、価額非開示)
2010.4 ミドリ薬品(鹿児島県、152店舗)の残株式を株式交換(58.98%→100%)
2011.2 イタヤマ・メディコ(山梨県、10店舗)の株式取得(0%→100%、価額非開示)
2011.2 弘陽薬品(大阪、15店舗)の株式取得(0%→100%、価額非開示)
2011.5 ダルマ薬局(宮城県、62店舗)の株式取得(0%→100%、価額非開示)
2011.9 モリスリテール(兵庫県、8店舗)の株式取得(0%→100%、価額非開示)
2011.12 杉浦薬品(愛知県、44店舗)の株式取得(35.69%→100%、価額非開示)
2012.11 示野薬局(石川県、66店舗)の株式取得(0%→100%、約55億円)

 表の通り、全国各地の有力な薬局と次々手を組んでいく。店舗展開をしている企業が地場の企業を自社グループに加えることは、既に対象企業が展開している住宅街などの優良物件だけでなく、地場の不動産情報ネットワークなどをまとめて手に入れることができ、地域参入の大きな足掛かりとなる。

 マツモトキヨシがM&Aに取り組み始めた99年近辺は、ちょうどドラッグストア業界にM&Aが加速する流れが起こり始めた時期であった。そのため、当時売り上げ首位であったマツモトキヨシでもその座にあぐらをかいているだけではとどまり続けることは難しく、自社の地場以外の有力企業に声掛けしていくことが必要だった。

 初めての純粋なドラッグストアの買収は、04年2月の健康家族とのM&Aになる。長野県で27店舗のドラッグストアを展開している、地場に根差した企業だった。

 続いて着目したいのが、杉浦薬品、ぱぱす、ミドリ薬品への資本投下だ。それぞれ愛知県、東京23区、鹿児島県内にてドミナント形成をしている有力企業であった。これらについては、当初、資本業務提携として株式を取得する旨のリリースをしているが、後に3社とも株式を追加取得し、子会社化を実現している。これはマツモトキヨシがこの後行っていくM&Aの特徴の一つで、業務提携、ないしは議決権に大きな影響を及ぼすことのない範囲で資本業務提携をする。

 これは、他社ドラッグストアグループとの密度の差をつけ、友好的な関係を築いた上でシナジーを慎重に図ることができる利点がある。再編が激しい小売業界では、初手の早い者が最終的にスケールメリットを得ることも少なくない。ただし、この手法については大きな失敗を喫したこともあった。マツモトキヨシが01年5月、企業として初めて「業務提携」をした、静岡の大手ドラッグチェーンの高田薬局案件である。

 高田薬局との業務提携は資本関係を伴わないものであったが、01年来ずっとマツモトキヨシグループとしてマツモトキヨシのプライベートブランド商品の供給を受け、物流センター機能も共有。マツモトキヨシの中部エリアにおいては、かなり大きな基盤となっていた。

 しかし08年3月14日、マツモトキヨシに事前の通達がないまま、グループ傘下のウェルシア関東と持株会社設立を伴う経営統合を発表した。事実上、マツモトキヨシの最大の競合であるイオングループ傘下入りの表明である。

 これを受けマツモトキヨシは、「背信行為であり信頼関係が破壊されたと言わざるを得ない」として、08年4月11日付けで高田薬局に対して契約解除通知書を発送し、契約関係全てを解除するとともに、業務提携を解消した。この案件の前後から、マツモトキヨシによる株式の100%取得によるM&A案件が始まる。06年のマックス買収がそのはしりとなる。

 マックスは、新潟県で21店舗を運営するドラッグストアだった。当時、新潟県内における店舗網が少なく、住宅街などの優良立地をマックスが展開していたため、シナジーを発揮しやすい状況にあった。この後も、次々とこのような地場大手先を傘下にしていく。

 ここで、マツモトキヨシの財務状況をひもといてみたい。添付のグラフを見てもらいたい。

■マツモトキヨシ財務諸表

(参照元:マツモトキヨシHP IR 財務諸表 他)

 自己資本比率は61.9%と高い水準にあり、借入金も16年3月期には完済している。

 年を追って見ていくと、自己資本比率は年々回復しており、本年度をもって借入の返済も行ったことから、このあたりで借入を伴う大規模なM&A施策を行う可能性が少なくない。また、売り上げについては15年に前年比3%減となっているが、これは改装や将来的に貢献の見込めない71店舗を閉鎖するなど、てこ入れを行ったためと思われる。同時にこれは、海外の客層、いわゆるインバウンド向けのニーズに対応するためでもある。

 近年、外国人がマツモトキヨシで大量に商品購入する姿はもはや珍しくない。プライベートブランドに力を入れていること、価格、繁華街を得意とする立地施策がインバウンド層に大ヒットしている証左だ。

 16年3月決算で、マツモトキヨシの連結売り上げは5360億円と発表された。一方のイオングループは、イオンのウェルシアに対する資本提携拡大や、関東でハックドラッグを展開しているCFSコーポレーションの新規傘下入りなど、次々にダイナミックな構造改革を行っている。加えて、ツルハHDやメディカル一光にも資本を入れており、まだまだカードは出てきそうであるが、単独売り上げではいまだにデッドヒートを繰り広げている。今後の躍進について、期待を込めて見守りたい。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu