苦戦のアップルと好調のサムスン、なぜ「Galaxy S7」はヒットしたか

苦戦のアップルと好調のサムスン、なぜ「Galaxy S7」はヒットしたか

2016.09.07

韓国サムスン電子は、2016年度第2四半期(4-6月)決算で増収増益を報告した。売上高は50兆9400億ウォンで前年同期比約5%の増加、利益も8兆1400億ウォンと同18%の増加だった。 好業績の背景には、スマートフォンやタブレットを扱う部門の牽引があり、2016年に入って投入している最上位機種のGalaxy S7シリーズのヒットによるものだ。また、新興国向けの低・中価格帯のスマートフォンもラインアップの整理などによって、収益に貢献しているとみることができる。ではなぜ、Galaxy S7シリーズはヒットしたのか。

Galaxy S7シリーズのうちGalaxy S7 edgeが日本で発売。写真はNTTドコモ版

Galaxyシリーズ絶好調の理由

サムスンは第1四半期にGalaxy S7を投入し、米国ではiPhone 6sシリーズよりもGalaxy S7シリーズの販売シェアが上回るようになった。そして第3四半期に入ってファブレット端末であるGalaxy Note 7を投入し、こちらも生産が追いつかないほどの好評を博している。

その理由として、スマートフォン市場の成熟と購買パターンの変化が挙げられる。スマートフォンの普及が飽和状態にある米国などの市場では、人々は基本的に、古くなったデバイスの買い換えを行う。

その際に、好みのブランドからの乗り換えは少ない。米国においては、アップルからサムスンへの乗り換えが5%、サムスンからアップルへの乗り換えが14%程度とされる。Galaxy S7シリーズ、Galaxy Note 7は、既存のSamsungユーザーが「乗り換えたい」と積極的に買い換えに乗り出したことが、販売好調を維持する原動力と考えられる。

Galaxy Note 7

サムスンは、既存ユーザーに対して十分な魅力を、最新スマートフォンに盛りこむことができ、その結果好調な業績を叩きだした。スペックを重視し、理想のスマートフォンの性能を実現できたことが、成功の要因だった。

Galaxy S7、Galaxy S7 edgeは、それぞれ5.1インチ、5.5インチのAMOLEDディスプレイを備え、後者は左右の縁も操作可能なディスプレイとなっている。カメラは1200万画素へと画素数を減らしたが、その分1画素の大きさを拡大させ、色再現やボケ、暗所での撮影を強化した。その上で、高速起動、高速オートフォーカスを実現した。

またプロセッサとメモリは、最高スペックを誇示する。4コアを備えるQualcomm Snapdragon 820を搭載し、32GBの内蔵メモリとmicroSDによる256GBまでの拡張をサポートする。また30分プールの中での利用に耐える防水機能を復活させ、Galaxy S7 edgeで3600mAh、Galaxy S7で3000mAhの大容量バッテリーを内蔵した。

既存のGalaxyシリーズのユーザーが魅力を感じる「スペック」を実現したことが勝因であり、昨年の低迷の原因は、デザインは素晴らしかったがスペックの魅力を訴えきれなかったGalaxy S6シリーズにあった、と見ることができる。

スペック vs 体験

アップルは9月7日に、iPhone 7、iPhone 7 Plusを発表する予定だ。アップルは、サムスンよりも3倍ほどのスイッチャー(他のブランドから乗り換えてくるスマートフォンユーザー)を抱えているものの、大部分は買替え需要を見込むことになる。

新型iPhoneもサムスンと同じ「不発リスク」が常につきまとう。魅力を放つ製品でなければ、低調な買い換え需要による販売低迷を招く可能性があるからだ。予測される新型iPhoneのデザインは、iPhone 6sシリーズからさほど大きく変わらないとみられていることから、「新しいデザイン」を目当てにしたユーザーを失望させる可能性がある。

アップルは常々、「スペックがすべてではない」としてきた。デザイン・スペック・OSを通じた体験の良さが、iPhoneの魅力だ。しかしこのスペック偏重への否定は、前述の買替え需要の分かりやすい喚起をより難しくしている。サムスンのように、既存ユーザーの誰もを黙らせる高スペックを打ち出す戦略を、自ら封印しているように見えるからだ。

「スペックがすべてではない」としてきたアップル。iPhone 7でも高スペック路線は封印か(写真はiPhone 6sシリーズ)

Galaxy Note 7がリリースされたてすぐに、面白いベンチマークのビデオが登場した。最新のGalaxy Note 7と1年前のiPhone 6sの「アプリ起動ベンチマーク」を、PhoneBuffが公開したのだ

このテストでは、標準アプリと、AndroidとiPhone双方で利用できるアプリ13本を順番に起動させ、2周のタイムを規則というものだ。このテストでは、iPhone 6sの方が大幅に早いタイムを記録し、Galaxy Note 7を打ち負かした。プロセッサやグラフィックスの処理性能を打ち出すベンチマークの数値とは違う、日常での使用をイメージしたテストで、iPhoneが優れていると結論づけるものだった。

Galaxy Note 7の発売とGalaxy S7シリーズの好調さに水をさそうとしているようにも見えるが、前述の通り、ブランドの乗り換えは少ないため、このビデオを見たからiPhoneに乗り換えようと考える人はごくわずかだろう。

スマートフォン販売減時代の戦略

サムスンは、新興国から先進国までをカバーする最大のスマートフォンメーカーだ。IDCによると、サムスンは2016年第2四半期に7700万台を販売した。この数字は、前年同期比で5%増。ライバルのアップルは、300ドル台のスマートフォンiPhone SEをリリースしたが、前述のデータでは前年同期比15%減と落ち込んでいる。

このことからも分かるとおり、主戦場は低価格モデルではなく、650ドル以上の上位機種であり、現状販売台数拡大への厳しさがにじむ。

既に導入しているiPhone Upgrade Program(毎年新型iPhoneに乗り換えられる月額制プラン)による販売台数の確保とともに、より画面が大きな(100ドル高い)iPhone 7 Plusにデュアルカメラや濃色などを追加して魅力を高める施策を打ち出すことになるだろう。

「iPhone Upgrade Program」は毎年最新のiPhoneに乗り換えできる月額制のプランだ

買い換えサイクルの短縮と、平均販売価格を上昇させることで、「販売減でも売上増」を目指していくことになる。ちなみに高付加価値戦略は、iPad Pro 9.7インチモデルの投入によって、既にiPadカテゴリでは起きつつある。

高価格帯のiPad Proの投入で

IDCの別のデータによると、2016年のスマートフォン出荷台数の予測は、15億台から14億8000万台へ下方修正され、前年比3.1%増の低成長になるという。2014年は27.8%増、2015年は10.5%増と出荷台数の急拡大はストップし、低成長時代に入った。日本やカナダと行った成熟市場では、前年割れが予測される。

ユーザーがスペックに敏感に反応してくれることを確認したサムスン。今後の課題は、新興国のユーザーをいかに上位機種に移行させていくかだ。これには、オッポ、ビーボといった中国メーカーによる低価格市場での急成長による圧迫があるためだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu