ソフトバンクがiPhone商戦で先手、月額6,000円の20GBプランは差別化なるか

ソフトバンクがiPhone商戦で先手、月額6,000円の20GBプランは差別化なるか

2016.09.08

新iPhoneの発表を機に、ユーザー獲得の動きを活発化させる大手携帯電話会社。今年、最初に手を打ったのはソフトバンクだ。同社は月額6,000円で月間20GB利用できるデータ定額サービス「ギガモンスター」を発表した。スマホのヘビーユーザーにとっては魅力的なプランとなりそうだが、横並びが多い携帯会社のサービスにおいて、差別化要因となるだろうか。

「ギガモンスター」を9月13日から順次提供。当初は新規・機種変利用者を対象。

ギガモンスターとは

ギガモンスターは、ソフトバンクの基本料金プラン「スマ放題」「スマ放題ライト」で選べるデータ定額サービス。データ通信を毎月20GB利用できる「データ定額 20GB」(月額6,000円)と同30GB利用可能な「データ定額 30GB」(同8,000円)がある。毎月の請求額は、基本料金プランの利用額を足し合わせたものになり、たとえば、「スマ放題」「データ定額 20GB」の組み合わせで月額9,000円となる計算だ。

1,000円プラスでデータ利用量は4倍に
他社プランとの比較

トータルでは高額に見えるかもしれないが、「データ定額 5GB」は5,000円であり、わずか1,000円の上乗せで、データ利用量が4倍となる。スマートフォンで動画などを多く視聴するヘビーユーザーには革新的なプランに映りそうだ。

他社と料金を比較しても差は大きい。NTTドコモで20GBを契約すると毎月16,000円、auでは16,800円であり、圧倒的に安い料金で利用できる。

もちろん、ニーズがなければ何の意味もない。ソフトバンクによると、スマホ利用者の93%が5GB以下の契約とし、ユーザーは限られそうだが、65%の人がデータ通信量を気にしながらスマホを利用しているとし、潜在的なニーズは高そうだ。

たとえば、月間5GBまでだから、外出先で動画視聴はやめておこう、といった人たちは相当数いるだろう。こまめにWi-Fiのオン/オフを心がける必要もなくなり、データの利用制限というストレスから開放されるならば、1,000円の上積みも許容できるだろう。

実は容量を気にしながらスマホを使っている人が多数

また、動画投稿、ライブ中継、さらにはVRコンテンツなど、データ使用量は爆発的に増加していく傾向にあり、この先のコンテンツニーズを考えても、こうした対策は評価できる。とはいえ、もう少し早くこうしたサービスを出してくれても良かったんじゃないかというのがユーザーの本音だろう。その点、同社は意図的にやらなかったのではなく、ネットワークの強化が必要だったと説明する。

ネットワークの強化で実現

同社はこれまで基地局の数を増やしてネットワークの強化に努めてきた。しかし、都市部において基地局は過密状態にあり、極端なところでは10m感覚で基地局が設置されているところもあるという。これ以上の基地局の設置は電波干渉などを起こしうることからも困難であり、1基地局あたりの容量を増やすことが必要になっている。

従来のネットワークの強化では限界が見えていると説明する

そこで、ソフトバンクは今回のデータプランの発表にあたり、「Massive MIMO」という技術を導入した。これは1基地局当たりのネットワーク容量を最大10倍に増やせる技術。イメージとしては、通常の基地局では複数人で1つの電波を利用していたのに対し、Massive MIMOでは各人に電波を割り当ててることで、混雑した場所でも快適な通信が可能になるという。Massive MIMOはiPhone 7の発売当日、9月16日より全国43都市100局より開始することになる。スタート時の数は少ないが、こうしたネットワークの余裕が見えたことで、今回のデータプランができたというわけだ。

Massive MIMOはアンテナ数を最大128本搭載。ユーザー各人に専用の電波を割り当てるという

今回のデータプランは、他社との大きな差別化になりそうだ。もちろん、それは他社が追随しなかった場合である。そのあたりについてソフトバンクネットワーク企画統括部 統括部長 北原 秀文氏は「Massive MIMOはソフトバンクが商用化した世界初の事例。他社ももちろん、実用化に向けた実験を進めているが、うちが複数年先を行っている」と話す。それが事実であれば、今回の取り組みはヘビーユーザーを取り込む大きな武器になりそうだ。

学割ユーザーへの配慮も必要

ただし、懸念されることもある。それは学割キャンペーンだ。学割キャンペーンは、動画などの通信量を大きく消費する若い世代のニーズを汲み取り、今年1月に大手各社が打ち出した施策だ。ソフトバンクでは、「ギガ学割」と命名し、25歳以下の人を対象に、6GBを36カ月、計216GBをプレゼントするキャンペーンを展開してきた(新規・乗り換えの場合はホワイトプラン3年間0円の選択肢も)。

5月末まで行われた「ギガ割」の特典(新規・乗り換えの場合)

こうしたキャンペーンを目当てにソフトバンクを利用し続けてきた人にとっては、今回のデータプランが腑に落ちないかもしれない。データを多く使うのは、若者であり、ターゲットは学割もギガモンスターも同じ。今回のデータプランがはじめから存在していたならば、「そもそも学割は利用しなかった」「データの付与ではなく基本料金割引を選択していた」という人がいてもおかしくないからだ。その点に関して、ソフトバンクは、ギガ学割の利用者に対して「どうするか検討中」としている。ギガモンスターを進めるにあたり、ユーザーの不平不満を生まないような配慮も必要になるだろう。

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。