自動車販売にマイナスも? トヨタがあえてUberと組む狙いとは

自動車販売にマイナスも? トヨタがあえてUberと組む狙いとは

2016.09.09

トヨタ自動車が米Uber(ウーバーテクノロジーズ)に出資し、ライドシェアで協業を始めようとしている。配車サービスが普及すれば、自動車を所有しようと考える人は少なくなり、販売面でマイナスの影響がありそうに思えるが、なぜトヨタは配車サービス大手のUberと手を組むのだろうか。

ライドシェア最大手と提携した理由

日本最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車は、純国産にこだわってきた会社のひとつでもある。第2次世界大戦直後、いくつかのメーカーが欧米車のノックダウン生産に踏み切るなか、トヨタは自社開発を堅持した。1970年代以降、数社が欧米メーカーとの資本提携に動いたときも、トヨタは少し前から提携関係にあったダイハツ工業や日野自動車との結束を強め、米ゼネラルモーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)と対抗できる巨大グループに成長した。

21世紀になると、トヨタは独BMWグループや仏PSAグループと提携し、技術提供や共同開発などを行うことになるが、投資はPSAとの合弁工場運営会社設立に留めており、資本提携は行っていない。このようにトヨタは、ことあるごとに「日本」にこだわってきた。だからこそ今年5月に、スマートフォンを使った配車サービス、つまりライドシェアという仕組みを考案したUberに出資すると発表したことには驚かされた。

具体的な出資は、トヨタファイナンシャルサービスおよび未来創生ファンド(トヨタ、三井住友銀行、スパークスの3社が出資)からであり、本社が直接関わるわけではないが、出資の意向を明らかにしたことと、相手がライドシェアを代表する企業である点には注目が集まった。なぜトヨタはUberと手を結ぶという決断を下したのか。世界中でライドシェアが大幅な伸びを示していることが大きいだろう。

メーカーと配車サービスの結びつきは強まる一方

492の都市で利用可能だというUber(画像はUberのHPより)

2009年にUberが始めたライドシェア。米国では以前から一般的に行われていた、自動車の相乗りのマッチングをスムーズにするスマートフォンのアプリだ。

利用者から見るとタクシーに近いが、ドライバーを雇ったり車両を所有したりしていないので、タクシー会社とは根本的に異なる。しかしながら、乗る側はタクシーより安いうえに事前に料金決済を行うので安全であり、乗せる側は自分と愛車の空き時間を使ってお金を稼げることから、世界各地で急速に普及が進んでいる。

Uber以外に、米国ではLyft、マレーシアではGrab、イスラエルではGett、中国ではDidi(滴滴)というライドシェア企業が次々に誕生。そして今年1月にはGMがLyftと、5月にはVWがGettと、それぞれ資本提携を結んでいる。トヨタとUberの提携も、この流れの上にあるものと見てよい。

ライドシェアは、個々の自動車の有効活用を促進するアプリであり、自動車販売台数の低下につながる。ではそんなライドシェアと、なぜメーカーは手を結ぶのか。これについてはGMがLyftとの提携時に明らかにしている。米国ではライドシェアのドライバーになりたいが車両を持っていない人もおり、シカゴだけで6万人に達したという。こうした人々に対する車両提供がビジネスとして成り立つと見込んだようだ。

トヨタはUberの地元米国でも、自家用車、タクシー問わず広く使われている。そこにライドシェアのドライバーという、確実性の高い需要があることは大きいはずだ。

さらにGMは、Lyftとの提携発表の場で興味深い発言をしている。最終目標は自動運転ライドシェアの実現だというのだ。自動運転などずっと先の話だと考えている読者もいるだろう。しかしそれは自家用車に限った話だ。ライドシェアをベースに考えれば、はるかに現実的になってくる。

配車サービスとの提携は自動運転社会を見越した動き?

自動運転を語る際によく使われているのが、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が制定したレベル1~4という指標だ。レベル1はアクセル、ブレーキ、ステアリングのいずれかの自動化、レベル2は複数を自動化した。レベル3はアクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてを自動化し、必要な場合、人間がサポートする。最上級のレベル4が完全自動運転だ。

レベル2はすでに一部の市販車に搭載されている。しかしそこからレベル3へとステップアップすると、運転主体は人間から人工知能にスイッチし、人間はドライバーからオペレーターになる。そのときに自家用車のオーナーが、オペレーターとしての任務をきちんと果たしてくれるかについては疑問が残る。

トヨタも自動運転の研究開発を行っている(画像はトヨタHPより)

その点ライドシェアは、お金をもらって人を運ぶプロのドライバーであり、乗客から常に見られているわけだから、オペレーターとしての任務をこなしてくれる可能性が高い。つまりライドシェアは自動運転と相性が良い。トヨタもUberも自動運転の研究開発を行っており、最終的にはここを目指していくと思われる。

自動車メーカーとIT企業、考え方には違いも

トヨタとUberの関係性を巡っては、周辺で気になる動きも出てきた。中国吉利汽車傘下でスウェーデンに本拠を置くボルボが先月、Uberと自動運転車を共同開発すると発表したのだ。発表内容はトヨタより具体的で、ボルボは3億ドルを投資し、ベース車両を提供。Uberがそこに独自開発の自動運転システムを組み込む。ボルボとUberは同一のベース車両を、自動運転車戦略の次のステップに活用したいという。

Uberはボルボとも手を組んだ(画像はボルボHPより)

自動車ビジネスは、完成車を作るメーカーが頂点に立ち、その下にサプライヤーと呼ばれる部品メーカーなどが位置する、垂直統合の体制を取ってきた。トヨタも例外ではなく、デンソーやアイシン精機などの一次サプライヤー(tier1)を直下に置き、その下にtier2、tier3というサプライチェーンを築いてきた。

しかし、UberなどのIT企業が展開しているのは水平連合型だ。Uberの場合、個々のドライバーや車両を管理しているわけではなく、ネットワーク上でのつながりという関係を築いている。GoogleのアンドロイドOSとスマートフォンの関係も同じだ。

つまりトヨタとUberが資本提携を結んだからといって、Uberがトヨタ・グループの一員になったわけではない。だからボルボとも手を結ぶのは自然な流れだ。Uberがすぐにトヨタとの提携を打ち切るとは考えにくいが、提携するメーカーが2社に増えたことで、主導権はUberの手に渡ったような気がする。Uberとの関係を密に保つためにも、トヨタの次の一手が注目される。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu