女性の取り合い勃発? 企業が急ぐ管理職の増加

女性の取り合い勃発? 企業が急ぐ管理職の増加

2016.09.14

「2020年までに女性の管理職を30%に」という目標を掲げる政府、それを追い風に高まる社会的機運から、女性の管理職候補を増やそうとする企業が増加している。しかし、管理職候補となる女性はどこにでもいるわけではない。だから今、この層をターゲットとした人材市場は活況だ。

行動計画の提出率 98%

女性の職業生活における活躍を推進することを目的に4月に施行された女性活躍推進法では、従業員数301人以上の企業に対し義務を課している。(300人以下の企業については努力義務)女性の採用数や、勤続年数の男女差などといった「女性の活躍に関する状況の把握、改善すべき事情についての分析」。上記を踏まえた「事業主行動計画の策定と公表」などだ。対象となる大企業は、全国で1万5477社。そのうち、7月31日時点で1万5200、98.2%の企業が行動計画を提出している。施行直後には、約7割だったが、4カ月でほぼすべての企業が提出にこぎつけた。各企業の女性活躍への意識の高さがうかがえる。

まずは係長職を増やす必要性がみえてくる

これらのデータは社内に向けて公表されるほか、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データーベース」で公開される。大和総研がこのデータを分析し、公表した。

大和総研「企業における女性活躍の状況と取り巻く環境」より

それによると、採用人数に占める女性労働者の割合と、労働者に占める女性労働者の割合は、企業が大きくなるほど低下する傾向にある。つまり、大企業ほど男性中心の職場で、女性活躍が遅れているということ。一方、役職に就いている女性の割合は、いずれの項目においても、「300人以下」の企業の割合が最も高くなっており、企業規模が大きいと低くなっている。しかしながら、全体的にみて、女性の評価や登用の状況が十分とはいえない。女性管理職を増やすためには、まず係長職を増やしていく必要があると指摘している。

大企業、中小企業共に女性の管理職登用が大きな課題となっていることがわかる。

管理職に差し掛かる年齢が一番少ない

平成28年度版 男女共同参画白書。日本の女性の労働力をみると、25歳~29歳がピークで30歳~34歳でがくんと減少している

女性の労働人口は昔からM字を描くと言われている。働き盛りの30代くらいに結婚・出産で仕事を辞める人が増えるためだが、そのM字は女性の社会進出を促す社会全体の取り組みから、へこみが少なくなってきた。

一方で、へこんでいる事実は事実としてある。政府は女性の管理職30%を掲げているが、この管理職へと差し掛かる年代というのが、まさにこのへこみ部分の30代にあたるので、管理職候補に、と期待をかけられるキャリア女性の存在は貴重になってくる。

女性の管理職候補の採用が増加

「中途採用状況:年代別入社決定数の推移『女性の意識・雇用関連データとパソナキャリアの女性活躍支援関連の取組み』」

転職支援サービスを手がけるパソナキャリアカンパニー(以下、パソナキャリア)の中途の採用決定数を男女で比較すると、24歳までの入社決定数の増加率は男性が女性を上回っているものの、25歳以上の年代においては女性の増加率が男性を上回っていることが分かる。

「中途採用状況:年収別入社決定数の推移『女性の意識・雇用関連データとパソナキャリアの女性活躍支援関連の取組み』」

さらに年収別でみると、最も高額な700万円以上の増加率が他と比べて格段に増えていることがわかる。これは、女性の管理職候補を意識的に採用している結果とみていいだろう。

一方で採用しさえすればいいというものでもない。女性を採用した後の課題は尽きないのだ。パソナキャリアの調査でもそれは明らかだ。育児などと仕事の両立について課題意識を持っているとの回答が最も多い状況が続いているものの、男性女性両方の意識改革といったところが前年から大きな伸びを見せている。

意識改革。今まで会社内に女性が少なかった企業だと、職場に女性がいることがまれだったため、どうしたら最適な職場になるのか理解できていない男性も多く、一方でロールモデルがいない職場に入っていく女性にとっても分からないことは多くあるだろう。特に、管理職においてはその前例が多い企業は、より少なくなるから深刻な問題だ。

「女性管理職の実態:管理職になることへの不安『女性の意識・雇用関連データとパソナキャリアの女性活躍支援関連の取組み』」

実際、パソナキャリアが昨年管理職の女性を対象に行った調査によると、約55%が管理職になることに不安を感じていることが分かっている。

女性活躍推進法施行にあわせ「女性管理職担当チーム」結成

そんな中パソナキャリアでは、女性活躍推進法が施行される4月を前に、「女性活躍推進コンサルティングチーム」を発足させた。女性3人の専用コンサルタントが、営業に同行、企業が採用したい女性社員をヒアリング。マッチングしたのち、入社後も活躍できるようにサポートをしているのだ。

5月12日パソナ本社

5月上旬、都内にあるパソナ本社に、メーカー、ITなどさまざまな業界の18社、25人の女性が集められ、講習会が行われた。年齢も20代後半から40代までと幅広い女性たち。ここで行われているのは、パソナキャリアが提供するサポートの1つ。女性の管理職・管理職候補者を対象にチーム力を高めるためのリーダーシップや問題解決能力、長期的なキャリア形成を考える「女性リーダー育成プログラム」だ。

リーダーとして必要になる意識・考え方を学ぶ

この「女性リーダー育成プログラム」では、「リーダーシップ」「チーム力の最大化」「問題解決力」「キャリア」について計4回の講習を受ける。対象となるのは、各企業で管理職経験2年以内の女性もしくは、管理職候補とされている女性だ。

彼女たちがなぜ、同社の講習に参加しているのか。ここに、女性活躍の1つの課題、先に述べた「ロールモデルの不足」が横たわる。

社内でロールモデルとなる人がおらず、自身がロールモデルとなることを期待されている参加者。同じような境遇の仲間同士で同様の悩みを共有し不安を解消していく。そんなことが期待されている。

プログラムでは、講習の前に参加する女性の上司からアンケートをとる。内容は、参加する女性にどのようなことを学んできてほしいか、どんなリーダーになってほしいかといった期待などだ。これは女性が上司に書いてもらうようにお願いするのだが、それによって、上司も本人と一緒にキャリアを考える機会を作る、その意識付けをおこなうことができる。また、女性本人が上司との対話をした上で参加をするので、モチベーションにつながるのだ。やりっぱなしにしない……。ここでの対話自体も意識改革を促す狙いがある。

取材に行った際には、「リーダーのための問題解決力」というテーマで講義が進められていたが、特徴的なのは、ディスカッションが多いことだった。4つのチームに分かれて美容院を題材に、不満につながる項目、また来ようと思う項目をチームで討議して、「顧客にとっての価値」「顧客が負担するコスト」「顧客の利便性」「顧客との対話」の4つに分類して問題と解決策の洗い出しをおこなっていた。これによって現状がどのようなもので、あるべき姿とのギャップがどこにあるのかを把握するという。

講師によると、このようなリーダー研修では、女性の方が互いの意見を上手に聞きだし、多様な意見が速やかに出てくるという。また、コミュニケーションを重視する傾向が高く、それぞれ社内にロールモデルがいないことによる不安や戸惑いなどを相談して、解消している姿が見受けられたという。上司やメンバーなど職場を巻き込むコミュニケーション。リーダーとしての自信につながる意識の促進。これが女性活躍のカギになるかもしれない。

パソナキャリアカンパニー人材紹介事業部門 女性活躍推進コンサルティングチーム統括部長の岩下純子氏

そのほかにも、「等身大の女性管理職とは」をテーマに、女性の管理職登用が進んでいる企業で実際に管理職として働く女性の話を聞く、女性管理職向けセミナーや、企業の人事担当者などに向けた「女性管理職の育成と風土作り」セミナーなどを開催している。

さらには、パソナグループ内を横断したダイバーシティの取り組みのノウハウや、経験をパッケージ化してワンストップで提供するサービスも展開。企業の行動計画の策定や、従業員の意識調査、人事制度設計のコンサルティングといった法人向けサービスから、女性管理職育成研修、仕事と育児の両立セミナー、介護相談など、女性が企業で活躍するための課題となりえるものを網羅的にケアしていこうとしている。

中小企業にも広がるか“女性活躍”への取り組み

女性活躍推進法が定める行動計画の提出について、300人以下の中小企業については現状、努力義務だが、厚生労働省は、中小企業に対しても女性活躍の重要性を理解し、企業競争力の強化などにつなげていってもらおうと女性活躍を加速させていくための事業を開始。6月にパソナが、「中小企業のための女性活躍推進事業」を受託。中小企業に対して、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定、女性活躍の状況について優れている企業に対し3段階で評価する「えるぼし」認定の取得に向けた支援をスタートさせた。7月26日の東京を皮切りに、全国で行動計画等策定に関する説明会を開催している。また、無料で保険労務士、中業企業診断士などといった資格を持った「女性活躍推進アドバイザー」が、電話相談や企業訪問をして、個別の支援も行うという。

“女性活躍”の取組みが加速する理由

女性活躍推進法そのものは、現時点での数字と行動計画を外に向かって示す義務しか課していない。それにもかかわらず、企業はなぜ、対応を急ぐ姿勢をみせているのか。

安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」の実現に向けたの熱の高さから、企業もやらざるおえない状況にあることはもちろんだ。だがこの法律に関して言えば、企業のデータが同じ基準で一覧できるようになることで、数字の細かさや、取組みの具体性などから、企業ごとの温度差、進捗度合いがより見えやすくなったのだ。さらに、提出した行動計画に本当に基づいて女性活躍の取り組みが進められているのかどうか今後、見えてきてしまうことになる。就職における指標のひとつになることはもちろん、企業イメージにも関わる。「出来てすごい」から「出来て当然」になっていけば、当然遅れた企業は優秀な人員が確保できず、結果業績にも影響してくるなどなど様々な影響が出てくる可能性があるのだ。だからこそ、パソナが取り組む事業の意味は大きい。

パイが少なく、育成に時間がかかる女性管理職の候補。女性にとっては、プレッシャーであるものの、大きなチャンスのタイミングといえるだろう。一方、企業にとっては、数ある課題の中でも、急がなくてはならない項目となるだろう。

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

2019.01.24

フリマアプリを運営するメルカリが新聞折り込みチラシを配布

なぜリアル店舗のようなチラシ広告を出したのか

理由を聞いていくなかで同社のマーケティング戦略が見えてきた

問:次のアイテムのなかから、フリマアプリ「メルカリ」で販売されたことのあるものを選びなさい。

・ダウンジャケット
・ヒト型ロボット
・トイレットペーパーの芯
・クルマ
・イヤホンの左側

おわかりいただけただろうか。答えは「すべて」である。現時点では売り切れかもしれないが、上記はすべてメルカリで販売された実績のあるアイテムだ。

さまざまな商品が売買されているメルカリとはいえ、まさか「トイレットペーパーの芯」が売られているとは、よほどのヘビーユーザーでなければ知らないのではないだろうか。

もちろん筆者も知らなかったが、2018年12月12日に配布された1枚の新聞折り込みチラシが、その事実を教えてくれた。それは、メルカリが北海道と愛知県で計192万部配布した広告チラシだ。

紙面上では、トイレットペーパーの芯やクルマがメルカリで売られていたことを紹介していたのだが、東京在住の筆者は配られたチラシを直接見たわけではない。「メルカリが新聞折り込みチラシを配布している」という意外性がSNSで話題を呼び、仕事中Twitterをいじくりまわして遊んでいた筆者の元にも情報が届いたのである。

はたして、アプリ上でサービスを展開するメルカリが、なぜリアル店舗のような折り込みチラシを配布したのだろうか。

メルカリが配布した新聞折り込みチラシの例。まるでアパレル広告のようだ
裏面には、初心者でも使えるようにアプリのマニュアルが紹介されている

「スタンダードからいかに離れるか」が、おもしろさを生む

「端的に言えば“お茶の間の会話”を増やしたいと考えたためですね」

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏は、新聞折り込みチラシを配布した理由について、そう話す。

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏

2013年7月にサービスを開始したメルカリのアプリダウンロード数は、世界合計で1億超。また、累計流通額は1兆円を超えており、全国レベルでその名を轟かせている。

「ただ、月間のユニークユーザー数は1100万程度。ダウンロード数を考えるとまだまだ伸びしろがあるはずなのです。そのため、まだ取り切れていない、シニアを中心とするユーザーを取り込むためのアプローチを実施することに決めました」

アプリの存在は知っているが、普段からメルカリを使っているわけではない。そんな、シニアをはじめとする“お茶の間ユーザー”を取り込むべく企画されたのが「新聞折り込みチラシ」だった。さまざまなマーケティングを行っている同社ではあるが、新聞折り込みチラシの配布は今回が初めて。そのため、まずはテストマーケティングとして、限られたエリアでの配布が行われた。

だが、シニアへのアプローチは何も折り込みチラシに限らない。テレビCMはもちろん、街頭配布やポスティングなど、ほかにも宣伝手法はあったはずだ。なぜ折り込みチラシにこだわったのだろうか。

「1つのコンテンツとして完結しているところがポイントでした。新聞は、自ら購読して情報を取得する非常にポジティブな媒体。毎日目にするそのコンテンツにメルカリの折り込みチラシを入れることで、“違和感”を生み出したかったのです」

また村田氏は、チラシだからこそ違和感を生み出せたのだと話す。

「今の時代、いかにSNSで話題にしてもらえるかが大事です。そのためには普通とは違うことをやらなければなりません。違和感は、多くの人が認識する“スタンダード”がなければ作れないと考えています。いかに基準から大きな振れ幅があるか。それが驚きやおもしろさにつながるのではないでしょうか。そういう意味で、折り込みチラシには基準があります。『医薬品系だったらこんなチラシ』『スーパーのチラシはこんなもの』というイメージが、多くの人のなかで醸成されているからこそ、イメージからかけ離れたクリエイティブは一層際立つはずだと、新聞の折り込みチラシを実施したのです」

例えば街頭配布であれば、コスプレをしたり、奇抜な宣伝車で商品サンプルを配ったり、アメニティを同封したりと、工夫されているものが多く、普遍的な基準のようなものが思い浮かびにくい。あえて一般的な街頭配布の例を挙げるとすれば、ポケットティッシュと答える人が多いだろうか。だが、ポケットティッシュ以外のものを配っていたら、それだけで大きな話題を呼ぶかと言えば、おそらく難しいはずだ。

つまり、スタンダードがあるからこそ、違和感を与えて記憶に残るような手法を実施できると、数あるアプローチのなかから村田氏は折り込みチラシを選んだというわけだ。

そもそも、実店舗を持たないメルカリが折り込みチラシを配布するというだけで、1つの違和感を与えられるだろう。そして「徒歩0分! スマホの中でオープン!」といった目を引く謳い文句が、違和感をますます際立たせる。

「違和感を与えるために、コピーや商品ラインアップは工夫しましたね。今回、3タイプのチラシを作成したのですが、“メルカリだからこそできるラインアップ”をあえて出すようにしました。例えば、意外性のあるものでは、トイレットペーパーの芯やクルマ。実際にメルカリで売られていたことがあるんです」

今回作成されたチラシは「ファッション」「家電」「スーパー」の3タイプ。意外性のある商品ラインアップに加えて、北海道では日本ハムファイターズのユニフォーム、愛知県では中日ドラゴンズのユニフォームなど、地域に根付いた商品も掲載しており、そのような遊び心も、SNSで話題になるために必要なのかもしれない。

家電パターンのチラシ。「徒歩0分! ~」のコピーが目立つ
「トイレットペーパーの芯」を掲載したパターンのチラシ。2つのチラシをよく見比べると、ユニフォームで使われている写真が違う。なお、北海道と愛知県を選んだ理由は、「地場新聞の影響力が強いエリア」だからだという

結果として、違和感を覚えた消費者は、Twitterにチラシの画像を投稿。狙い通り、SNSでバズらせることに成功した。

しかし、SNSで話題になっても、ターゲットにしているシニア層にはあまり関係がないのではないだろうか。

「シニアや中高年の方々でSNSをやっている人は意外と多いんですよ。積極的に発信をしている人はあまり多くないですが、情報収集として活用している人は少なくないですね」

ちなみに、肝心の折り込みチラシの効果は、「すべての数字の集計が終わっているわけではありませんが、チラシを投下したエリアでは、いい成果が出ています」とのこと。データとしても、チラシの影響を確認できたという様子だった。

攻める姿勢が生み出したもう1つの広告

今回のようなアプローチは、SNSが普及した今だからこそ可能な新しいマーケティングだ。そして、メルカリではSNSでのバズを狙った取り組みがもう1つ。2019年1月1日からスタートした『#はじメル』だ。

はじメルは、「三日坊主でもいいから、とにかく新しいことをはじめる人を応援する」というコンセプトで展開しているキャンペーン。特設サイトを開設し、1月3日には新聞の一面広告を、1月5日からはテレビCMを放送開始した。

そのなかで、一体なにがSNSで話題になったのかというと、これまたアナログな「新聞広告」である。

「一般的に1つのクリエイティブで進める新聞広告を、あえて3タイプ制作し、首都圏・東日本・西日本で分けて配布しました。3枚の新聞広告をつなげるとメルカリの『m』が浮かび上がるというデザインなのですが、1枚だけ見ても、“つなげたら何か起きそう”なデザインにすることで、それを発見した人がTwitterに思わず投稿したくなるような仕組みを作っています」

新聞広告を3枚並べると「m」の文字が浮かび上がる

思わせぶりなデザインにするという“ヒント”を提供しておき、あとは何も言わずにユーザーの反応を待つ。離れたエリアの新聞を手に入れるのは難しいので、ほかのデザインが気になった場合は、自然とオンライン上での情報収集が開始されるだろう。そうして、SNSで活発なやり取りが発生するというわけだ。

「最初はもっと控えめのデザインだったのですが、それじゃダメだと言いましたね」

穏やかな口調ではあったが、村田氏の言葉からはクリエイティブに対してのこだわりを強く感じた。

「折り込みチラシのときもそうですが、守りに入ったら企業は終わると考えているので、常に攻め続けたいと考えています」

クリエイティブに対して攻めの姿勢を崩さない村田氏。それを象徴するエピソードとして、折り込みチラシのプロジェクトのキックオフ時には、「私をクビにする覚悟で仕事をしてほしい」とメンバーに伝えたのだという。

「もちろん、ほんとうにヤバいときは止めますよ。ただ、メンバーがリスクを考えてしまうと、どうしても“置きにいく”ようなアイデアになりがちです。責任なら私が取るので、どんどん攻めてほしいというメッセージですね」

置きにいくクリエイティブでは、SNSでバズらない。メンバーが自由にアイデアを出せる環境整備こそ、尖ったクリエイティブを生み出すのに必要なことなのだろう。

2019年はメルカリの内面を伝える年に

今回、折り込みチラシと新聞一面広告で、SNSでバズらせるマーケティングを実施したメルカリ。折り込みチラシに関していえば、まだテストマーケティングが終わった段階である。今後は全国的に折り込みチラシの配布を行うのだろうか。

「明確な方針はまだ決まっていませんが、折り込みチラシについては、読み物としてお客さまから期待されるコンテンツにしていきたいと考えています」

ただし、「今日は○○が特売」「○○が新発売」といったように、新聞チラシは日々情報が更新されるから読み物として成立する。タイムリーな情報をチラシで打ち出せないメルカリは、どのようなコンテンツにしていくのだろうか。

「今回折り込みチラシで意識したことの1つに、商品をたくさん入れるという点がありました。実際にメルカリで何が売られているかまでは知らない人が意外と多いんですね。そのような人からすると、トイレットペーパーの芯が売れることは1つの発見になるでしょうし、自分の家にある家電がいくらで売れるかということも新しい発見です。そのように、ほかにも、まだまだ知られていない情報があるので、継続的にチラシをやると決まったら、もっとメルカリの内側を知ってもらう情報を提供していきたいですね」

メルカリの内側を知ってほしいと話す村田氏。実は、はじメルにも同様の意図があったという。

「メルカリを使えば『新しい趣味を始める』ことへのハードルを下げられると伝えたかったのです。例えば、ゴルフを始めようと考えたら、ゴルフクラブのセットを購入する必要がありますよね。それが仮に10万円であれば、『ちょっとやってみようかな』程度に思っている人からすると、やはりハードルは高い。しかし、メルカリを使うことで、まずゴルフクラブを5万円で買える可能性があるのです。そのうえ、5万円で売られているのであれば、それに近い金額で売却できることも意味します」

5万円でゴルフクラブを買ってみたはいいものの「あまりおもしろくないな」と感じた場合、4万5000円で売却できれば、5000円の出費でゴルフを体験できるわけだ。

「また、メルカリにはバーコード出品と呼ばれる機能があって、バーコードを読み取るだけで商品情報を自動入力してくれるんです。値段も提案してくれるので出品が楽なのですが、最近では本を買うときにまずはバーコード出品を行う人が多いようですね。ちょうど読み終わったくらいに売却できて便利なんです。期限を決めることで、読まないといけないというプレッシャーにもなりますし、2000円の本を1500円で売却できれば、500円で本が読めるわけです」

何か買うときに、メルカリでまずいくらで売れるかをチェックする。そして、使わなかったり、一度使って満足したりすると、メルカリで売却するという消費行動が増えているのだ。その結果、購入のハードルが下がるので、二次流通が一時消費を活性化させる可能性もあるだろう。

「このような使い方の訴求は、継続してやっていきたいなと。そしてゆくゆくは、メルカリをライフインフラのようにしたいですね」

村田氏は展望を語る。

「認知はすでに獲得しました。次はメルカリの内面をもっと外に出していくフェーズです」

2018年には株式を上場し、気流に乗るメルカリ。決して“置きにいかない”同社のマーケティング戦略から、次はどんなアイデアが飛び出すのだろうか。2019年も同社の尖った広告が、SNSを騒がせるかもしれない。

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

2019.01.24

ソフトバンクの通信障害、総務省が行政指導へ

再発防止のためのさまざまな対策立案を支持

上場前後で「運がない」ソフトバンクに求められるもの

総務省は1月23日、昨年12月に大規模な通信障害を起こしたソフトバンクに対して行政指導を行った。

通信障害は、ソフトバンクのLTEに関する交換機の不具合が原因で起こったもの。それによって同社の4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともに圏外になる、もしくはつながりにくい状態が長時間続き、大きな話題になっていた。

通信障害は12月6日の13時39分頃発生し、その後同日18時4分頃まで、4時間25分に及び、約3060万人の利用者に影響を及ぼした (ソフトバンク ニュースリリース)

総務省は今回、同社の代表取締役取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏宛に「電気通信事故に関する適切な対応及び報告について」と題した文書を提出。

ソフトバンクの宮内謙代表

文書では、ソフトバンクが2018年中に同件を含めて3回の重大事故を発生させていることを挙げ、「このような事故の発生は利用者の利益を大きく阻害するもの」とし、社内外の連携体制の改善や利用者への周知内容・周知方法の改善、通信業界内での教訓の共有等の実施を勧告。さらに、それぞれの具体的措置の内容を2月末までにまとめ、報告するよう義務付けた。

携帯電話は、通話やメッセージのやり取りはもちろん、決済サービスや災害時の情報収集ツールとして、今や国民のライフラインになっている。

総務省は同文書で「事故における教訓を業界全体で共有することが重要である」ともしており、今後の再発防止策等の詳細について、ほかの携帯電話事業者に説明し、情報共有する機会を設けることも求めた。

昨年末に鳴り物入りで上場したが、なかなか株価が振るわないソフトバンク。その背景には、通信障害や「PayPay」のクレジットカードの不正利用、さらには同社が通信設備を使用している中国・ファーウェイの米中対立やCFOの逮捕などの問題などが影響していることだろう。

ソフトバンクグループは昨年11月に行われた2018年度第2四半期決算説明会で、「RPA(Robotic Process Automation)の導入により通信事業の人員を削減し、新規事業に力を入れていく」としていたが、新規事業の前に、まずは逆風吹く通信事業の早急な立て直しが求められている。