Xperiaの新製品に見るコンパクトスマホの将来

Xperiaの新製品に見るコンパクトスマホの将来

2016.09.15

「iPhone SE」などをはじめとした、4インチ台のディスプレイを搭載したコンパクトスマートフォンは、日本では根強い人気を誇っている。だが世界的に見ると、5.5インチ以上の大画面スマートフォンが増える一方、コンパクトモデルが激減しているのも事実。ドイツ・ベルリンで開催された家電の見本市イベント「IFA 2016」に合わせて発表された、ソニーモバイルのXperiaシリーズの新製品から、スマートフォンのコンパクトモデルの今後を考えてみた。

日本で根強い人気を誇るコンパクトスマートフォン

近頃のスマートフォンは大画面化が著しい。「標準的なサイズ」として提供されているスマートフォンは、かつては「大きい」と言われていた5~5.2インチのものが主流となっているし、最近では海外メーカー製のモデルを中心として、5.5インチクラスのより大きなディスプレイを備えた機種が急激に増えてきている。

その理由は、海外、特にスマートフォンメーカーが多いアジア圏においては、大画面である方が価値があるとされ、人気となっているからである。動画やゲームを楽しむ上では大画面の方が見やすく迫力があるのは確かであり、片手持ちに対するこだわりも少ない。それゆえASUSの「ZenFone Go」のように、性能は高くなくても5.5~6インチクラスのディスプレイサイズを採用し、なおかつ価格が安いモデルが重宝される傾向にある。

アジア圏を中心に、「ZenFone Go」のような5.5インチ以上の大画面ディスプレイを備えながらも、価格が安いモデルの人気が世界的に高まっている

そうした世界的な潮流の中にありながらも、国内で根強い人気を誇っているのが、4インチ台のディスプレイサイズを誇るコンパクトモデルだ。今年発売された4インチディスプレイを採用したアップルのiPhone新機種「iPhone SE」は、現行機種の「iPhone 6s」ほどではないとはいえ、各種販売ランキングで上位に顔を出すなど、人気を獲得していることがうかがえる。

さらにシャープが今年6月、4.7インチのSIMフリー端末「AQUOS mini SH-M03」を投入しているし、9月6日にはNTTレゾナントが、「gooのスマホ」の第6弾として、4インチディスプレイを採用したSIMフリーのローエンドモデル「g06」を発表。Androidでも継続的にコンパクトモデルが投入されていることが分かる。

4.7インチディスプレイを採用した「AQUOS mini SH-M03」など、国内では現在もコンパクトモデルが継続的に投入されている

なぜ国内でコンパクトモデルの支持が高いのかといえば、それはひとえにスマートフォンの利用スタイルが大きく影響している。動画やゲームなどが注目されがちなスマートフォン上のコンテンツだが、最も利用頻度が高いのはコミュニケーションであるし、コミュニケーションに必須なのは文字入力だ。

そして日本のスマートフォンにおける文字入力方法は、片手で操作ができる「フリック入力」が主流だ。それゆえ片手で利用できることが重視され、結果としてコンパクトモデルが現在も一定のニーズを獲得しているわけだ。確かに近年、動画などの利用が広まっていることから大画面に対するニーズも高まってはいるが、海外のように大画面へと急速にシフトするのではなく、コンパクトモデルが根強い支持を獲得しているというのは、日本ならではといえる。

ハイエンドではなくなった「Xperia X Compact」

だが、そのコンパクトモデルにも変化が見られるようになってきた。そのことを象徴しているのが、これまでコンパクトモデルを継続的に提供してきた、ソニーモバイルコミュニケーションズの新製品である。

ソニーモバイルは9月1日(現地時間)、ドイツ・ベルリンで開催された家電の総合見本市イベント「IFA 2016」に合わせる形で、Xperiaシリーズの最新スマートフォン「Xperia XZ」と「Xperia X Compact」を発表した。これら2機種は、いずれもソニーモバイルが得意とするカメラ機能を大幅に強化したスマートフォンだが、大きな違いはサイズと性能の違いにある。

Xperia XZは5.2インチのディスプレイを採用したハイエンドモデルだが、Xperia X Compactは、4.6インチディスプレイを採用したコンパクトモデルであり、性能的にもミドルクラスといえるものだ。そしてこの"ミドルクラス"であることこそが、同社のコンパクトモデルの戦略変化を象徴している。

IFAに合わせて発表された「Xperia X Compact」は4.6インチディスプレイのコンパクトモデルだが、性能的に見ればミドルクラスで、防水・防塵にも対応していない

ソニーモバイルのコンパクトモデルは従来、ハイエンドモデルの性能を可能な限り保ちながら、コンパクトサイズに凝縮した「ハイエンド・コンパクト」と呼ぶべきものであった。しかしながらXperia X Compactは、Xperia XZではなく国内未発売のミドルクラスのモデル「Xperia X」をベースとしており、性能的にミドルクラスであるのはもちろん、防水・防塵にも非対応であるなど、従来の同社のコンパクトモデルとは大きく異なる内容となっているのだ。

Xperia X Compactは既に欧州では発売されており、日本市場への投入は明確にはされていない。しかしながら日本で重要視される防水・防塵性能に対応しないこともあり、少なくとも現状のスペックのまま、日本市場で販売される可能性は低いと考えられる。

ハイエンド・コンパクトモデルは絶滅する?

ではなぜ、Xperia X Compactが従来のハイエンドではなく、ミドルクラスのモデルとなったのだろうか。そこにはスマートフォン、ひいてはコンパクトモデルを取り巻く状況が、大きく変化していることが影響している。

先にも触れた通り、特に日本ではこれまで、コンパクトモデルにも高い性能が求められる傾向が強かった。それはスマートフォンが進化の過程にあり、高性能なモデルでないと快適な使い勝手が得られなかったが故でもある。しかしながら現状、スマートフォンの進化は停滞傾向にあり、ミドルクラスの性能の機種であっても十分な使い勝手を実現する機種が増えている。それゆえユーザー側もメーカー側も、ともにハイエンドにこだわる必要がなくなってきているのも事実だ。

またそもそも、コンパクト・ハイエンドを求めるユーザーが多い国自体が減少しており、ある意味そうした性能を求める国が日本だけになりつつあることも、コンパクトモデルの変化には大きく影響してきているといえよう。ソニーモバイルも現在は2014年の経営不振から再建を進めている最中であり、日本市場だけに対応するのは難しく、世界的に広く売れる"売れ筋"モデルだけを提供するようになってきている。それゆえXperia X Compactは、日本以外でもニーズが見込める、ミドルクラスの性能に落ち着いたといえそうだ。

コンパクトモデル自体は、手頃なサイズ感や大画面モデルにはない個性があることなどから、日本だけでなく欧州などでも根強いニーズがあり、完全になくなってしまうとは当面考えにくい。ソニーモバイル側も、ニーズがある限りコンパクトモデルは継続的に提供していくと話しているし、欧州でXperia X Compactを販売しているのも、市場ニーズがあるからこそだといえる。

Xperia X Compactは欧州ではIFA開催の翌週に発売されており、日本だけでなく欧州でも人気があることをうかがわせている

だが現状の流れを見るに、日本でニーズの高いコンパクト・ハイエンドモデルは、世界的な市場の縮小とともに、今後姿を消してしまう可能性が高まっているのは確かである。そしてコンパクトモデルがミドル・ローエンドのみとなってしまうことで国内での人気が落ち、コンパクトモデルの絶滅につながってしまうことが、最も危惧されるところだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu