ヘルシオ新商品は

ヘルシオ新商品は"温め"に特化、「レンジでチン」はアジアも巻き込めるか

2016.09.16

どたばたの買収劇の末、台湾の鴻海精密工業(以下、ホンハイ)の傘下に入ったシャープ。生まれ変わった同社が発表した白物家電が、ウォーターオーブン専用機「ヘルシオグリエ」だ。人気商品、ウォーターオーブン「ヘルシオ」の機能の一部だけを持たせたという新商品は、アジアを射程圏内に納めているという。その思惑は……。

ヘルシオ新商品は"温め"に特化

9月、シャープが初披露したのは、同社が「健康」と「おいしさ」を両立すると展開している家電ブランド「ヘルシオ」の新商品「ヘルシオ グリエ」。この商品は同ブランドの象徴ともいえるウォーターオーブン「ヘルシオ」に搭載されている過熱水蒸気技術を使用。「ヘルシオ」でできる調理のうち「蒸す・ゆでる」を除いた「焼く・揚げる」調理だけができるというものだ。

「ヘルシオ グリエ」10月11日発売。オープン価格、店頭で4万円前後想定とのこと

従来の電子レンジ加熱だと油でギトギト、しんなりしてしまっていた揚げ物。「ヘルシオ グリエ」を使って加熱された鳥のから揚げは、従来の電子レンジ加熱で、揚げたてのように、外はサクサク、中はやわらかくという状態が再現されていた。

まるでできたてで、味の劣化が感じられない

レンジでチンで「健康」と「おいしさ」を両立

同社独自の過熱水蒸気技術とは、100度で気化した水蒸気をさらに過熱、この力を利用して加熱するというもの。熱量は通常の熱風の約8倍と加熱する力が強いのが特徴。そのため食材の中までしっかり熱が入る。しかも水の膜ができるため、余分な油が水と一緒に出ていく、脱油効果がある。また、過熱水蒸気は、温度が低いほうにより多くの熱を与えるので、冷凍食品の加熱や、異なる食材の同時加熱も可能。そのため、例えば朝食用の料理をいっぺんに加熱したりすることもできる。この技術によって、できたてほやほやを再現できるのが、「ヘルシオ」の売りなのだ。

「グリエ」は「ヘルシオ」の3分の1のサイズで「焼く・揚げる」という機能だけに特化した結果、「ヘルシオ」では機械が大きいため十数分加熱に時間がかかっていたものが、数分で完了するという進化を遂げた。ではなぜシャープは、「ヘルシオ」の一部の機能のみに特化し、改めて新商品を出すのか。

中食市場の拡大に期待

「グリエ」の登場には、シリーズの「健康」と「おいしさ」の両立に加えて、「時短」というキーワードが見えてくる。そう、シャープが、熱視線を送るのは、惣菜や冷凍食品を買ってきて、家で食べる「中食市場」だ。

単身世帯、共働き世帯の増加などから、外食よりもより安価で、かつ自炊のように手間がかからない中食市場が拡大している。事実パン食や、惣菜市場は拡大。スーパーやコンビニの冷凍食品、作り置きなどで家事労働時間を軽減しながら、「手軽においしく」食事をするというスタイルに食のシーンが変化している。そこで、「温める」を、よりおいしくできる機能に特化した商品を、2年前から構想し、今回の販売にこぎつけたのだ。

朝食によく食べられるパンも、まるでできたてのよう

さらに、「ヘルシオ」はより高額だったため、年齢や収入が高めの層がターゲットだったが、機能を絞り、4万円と値段を押さえたことで、中食市場のメインとなる、より若い世帯への広がりを期待しているという。

ホンハイ効果はいかほど

沖津雅浩シャープ取締役

ここで気になるのは、冒頭でも述べたように、ホンハイと手を組んだことによる影響だ。ホンハイは白物家電の取り扱いがなく、当分はシャープが商品開発をしていくことになるそうだ。消費者が日本製品に期待するのは、品質の高さだが、その点について沖津雅浩取締役は、「絶対シャープ品質を守る」と宣言。

今までは成長のための投資に制限があったが、ホンハイの資本が入ったことによって、「前だけを向いて考えられる」などと商品のラインナップの増加に意欲を見せた。今後は、工場の規模に強みを持つホンハイと手を組むことによって、工場の効率化に投資をし、商品の原価を下げることもしていきたいという。

こういったホンハイの工場利用については、グローバル展開しやすい小型商品が効率がよいそうでメリット、デメリットを考えながら効果的な方策を模索していくという。

「ヘルシオ」はアジアに進出できるか

ホンハイは白物家電の販路は持っていないため、今のところ具体的な効果は見えていない。しかし「ホンハイの仲間に入ったことで、中国台湾では有効に活用していくことができると感じている」と期待を込める沖津取締役。すでにアジアには、その国、地域にあわせた料理研究をするメンバーが現地にいるため、新しい調理器具とそれを利用するメニューを現地開発していくことなども考えているという。そうすることで、将来的には、現地開発した調理器具を使えば、日本でアジアン料理が手軽に作れるというようになるかもしれないという。

先に今回の家電のターゲットは単身、共働き世帯を中心とした「中食市場」だと述べたが、それは、アジア圏でもいえること。アジアには外で買って持ち帰るという文化の国が多いため、家で温めるニーズが高いと見込んでいる。またすでに、中国などでは「ヘルシオ」は販売しているが、今回の新商品だとより安価になるため、中国に比べて、経済的にまだまだな国でも普及すると想定しているという。

ヘルシオシリーズ

電子レンジの機能を絞った調理器具といえば、トースト。価格帯は1~2万円だから、同じ温めができる「グリエ」は高いという印象はぬぐえない。高付加価値商品は日本企業の得意なところだが、一方で安価な単機能商品にニーズがあるアジアには受けなかった過去がある。日常的に利用している「あたため料理」がおいしく、そしてより健康に寄与できる食べ方ができることに魅力を感じてもらえるかどうか。2~3万円の差をコスパよしと、どうやってアジア圏に訴えることができるかが今後の課題だろう。そしてそれはシリーズ全体がアジアを中心に普及していくかのカギなのではないだろうか。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。