秩父で新生! 西武鉄道の新たな挑戦

秩父で新生! 西武鉄道の新たな挑戦

2016.09.21

近年、西武鉄道の"秩父推し"がすごい。女優吉高由里子さんや作家の又吉直樹さんが出演したテレビCMをきっかけに、秩父という言葉を目にする機会が非常に増えた。今なぜ、西武鉄道は秩父を推すのか。秩父で何を成し遂げようというのか。

何かがありそうな秩父

2013年頃からだろうか。埼玉県の秩父周辺の見所を紹介したテレビCMが頻繁に放映され始めた。広告主は西武鉄道。金曜日の夜に特急レッドアロー号に乗って週末秩父を楽しもうといった趣旨のものや、秩父を歩き、名所をさりげなく紹介したテレビCMだ。

西武鉄道のテレビCMに作家の又吉直樹さんが出演。「B級うまし」とコメントしながら、秩父名物の「みそぽてと」をさりげなくアピールする内容になっている(写真提供:西武鉄道)

関東在住の人であれば、一度はこのテレビCMを目にしたことがあるのではないだろうか。埼玉県出身の筆者としては、県内の都市が推されることはあまりなく、最初は驚きだったが「まあ、西武秩父駅があるのだから、そりゃ秩父を推すよな」と軽く受け止めていた。

しかし、繰り返し目にするうちに捉え方が変わっていった。「なぜ、今、秩父なのか」という疑問だ。かつて秩父がここまでクローズアップされた記憶はなく、今になってテレビCMを活用してまで秩父を取り上げたことに違和感が残ったのだ。そしてそれは、「秩父に何かあったに違いない」という確信めいたものに変化していった。西武鉄道は秩父で何かを起こそうとしているようだ。

秩父推しを始めた理由

西武鉄道の輸送人員の推移(出典:「西武鉄道会社要覧2015」より)

西武鉄道が"秩父推し"を始めたにはワケがある。同社広報部によると、輸送人員の減少と関係するという。ここ数年の輸送人員こそ減少していないものの、実は1991年度をピークに漸減傾向が続いている。この先、少子・高齢化が進んだ場合に、輸送人員の増加は望めない。特に通勤・通学を目的とした輸送人員がメインの西武鉄道には大きな課題だ。

少子・高齢化という点では、西武鉄道だけが抱える課題ではなく、他の私鉄も同じ。しかし、他の私鉄と西武鉄道が違うのは、他の私鉄が観光地と密接に結びついてプロモーションを行えるという点だ。東武鉄道には日光があり、小田急電鉄には箱根がある。

西武鉄道はどうか。シニア層に人気の秩父札所巡りはあるが、それでは利用層が限られてしまう。幅広い層に秩父の魅力を伝え、"いざ秩父へ"という大きな流れを生み出したい、それが西武鉄道の本音だ。だからこそ今、西武鉄道は"秩父推し"を始めている。

では、テレビCM以外に何か手を打っているのだろうか。同社の取組みを調べると、秩父に限っただけでも、実はすでに様々なことに取り組んでいることがわかるのだ。

すでに様々なことに着手

その取り組みには次のようなものがある。特急列車のレッドアロー号を利用して、秩父の三峰神社で雲海と星空の鑑賞ツアーを開催。今年4月には有名店シェフ監修のコース料理を車内で味わう「旅するレストラン 52席の至福」のサービスもスタートさせた。ほかにも、5月、8月には期間限定で秩父鉄道のSL「パレオエクスプレス」を入線させるイベントも実施している。

「52席の至福」車両外観と車内の様子。運行区間は「池袋・西武新宿-西武秩父駅間」ほか「西武新宿-本川越駅間」など。車両デザインは荒川を意識した造りに、内装の一部にも秩父の絹織物「秩父銘仙」が利用されているという
「52席の至福」のコース料理(写真は4月時点)

近年では、秩父を舞台にしたアニメ「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」(以下、あの花)、同じくアニメ映画の「心が叫びたがっているんだ」(以下、ここさけ)がヒットし、秩父市内が聖地巡礼(物語の舞台を追体験するために訪れること)の地となった。それを踏まえて2014年に「あの花」のラッピング電車を運行したり、「ここさけ」の舞台探訪マップを配布したりと、アニメとのタイアップキャンペーンも積極的に行ってきた。

両作品については、秩父市が組織した秩父アニメツーリズム実行委員会と結びつき、「あの花」「ここさけ」のフラッグが今でも西武秩父駅構内に飾られ続けている。実際に「あの花」の舞台を訪れると、それと思わしきファンはまだおり、その効果は続いている。

インバウンド需要も狙った取り組みも見逃せない。今年1月には外国人にも人気の高いサンリオのハローキティを活用した「冬の秩父デスティネーションキャンペーン」を実施。ハローキティデザインの記念乗車券と長瀞ラインくだりの乗船代割引クーポンなどの特典をつけたキャンペーンだが、利用者に秩父の魅力をSNSで発信してもらうことを狙ったという。

西武秩父駅に人を呼び込む仕掛け

このように、秩父だけを取り出しても、様々な取り組みを西武鉄道は進めてきた。しかし、これらをみるとターゲットや季節が限られたものとなる。輸送人口を底上げを図るには、コアなターゲットに向けたものだけではなく、幅広い年齢層に訴求できる魅力を提供することが必要だろう。旅の魅力は"体感"だ。観る、味わう、触れる。秩父に人を呼び込むには、幅広い年齢層に訴えられる"体感"が必要になる。そこで注目したいのが西武秩父駅構内の改築である。

西武秩父駅は9月現在、秩父仲見世通り全体を改装中
西武鉄道は登山、サイクリングなどのレジャー目的のお客、地元住民の利用を想定しているが、ターゲットを絞らずに、幅広い年齢層に訴求できるのが温泉だ

西武鉄道は、駅構内の秩父仲見世通り全体を改装し、2017年4月に複合型温泉施設をオープンさせる。複合型温泉施設は、飲食、イベントエリア、物販エリアも備え、源泉かけ流しの温泉施設を開く予定だ。敷地面積は約6363㎡、延べ床面積は3983㎡。飲食・イベントエリアが約736㎡、物販が約466㎡となり、メインの温泉エリアは延床面積の約半分(約2170㎡)となる。

同施設の開設の目的について、西武鉄道はプレスリリース上で「秩父地域観光および秩父温泉のブランド向上を図るために、また、地元の方々にも愛され、日常的にご利用いただきたいという思いを込めて実施するもの」としているが、温泉施設には、もう少し深い意味があるように思われる。

西武鉄道にないもの

考えれば、東武鉄道や小田急電鉄にはあって西武鉄道にないものが温泉だ。日光付近には鬼怒川温泉があり、箱根は箱根湯元がある。いずれも駅近くに温泉街があり、入浴してから電車で帰れる。駅併設の温泉施設といえば、最近では、京王電鉄の京王高尾駅にできた「京王高尾山温泉 極楽湯」があり、人気も上々のようだ。

しかし、秩父には温泉のイメージはない。正しくは秩父にも温泉はあるが、鬼怒川や箱根湯元のように温泉街がなく、温泉地のイメージが薄いのは秩父に点在していることが原因だろう。

温泉は秩父がこれまでアピールしきれなかったものと言えそうだ。幅広い年齢層に訴求できる体験型コンテンツであり、秩父への旅の満足度を上げる締めのワンピースとなる可能性がある。そう考えると、この複合型温泉施設の期待値は高い。旅の締めくくりとして、旅の魅力となる"体感"を提供でき、お客の満足度が高まればリピート客も増え、それが輸送人員の底上げにつながる、そんなストーリーが描けそうだ。温泉施設の開業とともに、秩父のイメージがどう変わるのか、そして、西武鉄道にどういった効果をもたらすのか。秩父をキーワードにした西武鉄道の新たな挑戦はこれからが勝負どころになりそうだ。

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第14回

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

2019.01.23

テックの祭典に見る自動車業界の現在地

キーワードは自動運転とMaaS? 自動車大手は何を語ったか

日本では産官学の自動走行システム研究が進行中

テックの祭典といわれる「CES 2019」を取材するため、新年早々から米国・ラスベガスに飛んだ。CESはもともと家電ショーの位置づけだったが、最近は自動運転やAIなどのテック系イベントに様変わりしている。

アウディはコネクト技術を披露、日系サプライヤーも健闘

今では自動車産業とIT企業が押し寄せるショーになったが、自動車メーカーがCESに参加するようになったのは2011年頃からだ。当初はドイツのアウディが電気自動車(EV)「e-Tron」のコンセプトカーを発表して話題となった。私が初めてCESを取材したのは2014年だが、その時もアウディが「ヴァーチャルコックピット」という新しいアイディアを提案していた。

今年のCESではアウディだけでなく、メルセデス・ベンツや韓国のヒュンダイにも勢いがあった。さらに、大手サプライヤーも独自の技術を披露していた。CESの常連であるアウディはサーキットを使い、バーチャルリアリティーを体験できるイベントを開催。そこそこのスピードで走る「e-Tron」の後席に座ってヘッドギアを付けると、視界に入ってくるのはサーキットの景色ではなく、異次元のサイバー空間だった。

アウディは電気自動車「e-Tron」を使ってヴァーチャルリアリティー体験を提供

アウディの狙いは、コネクト技術を使うことだ。車内でいろいろなエンターテイメントが楽しめるのに、実際のクルマの動きとサイバー空間で繰り広げられる動きが同期しているから、車酔いを起こさないというのが売りになっている。この映像システムは、ベンチャーのホロライド(holoride)社とコラボして開発したシステムであり、2022年頃には実用化するとのことだった。

日系メーカーではデンソーやアイシン精機がドライバーレスのロボットカーを発表し、自動運転への意欲を見せた。興味深かったのはパナソニックで、電気で走るハーレーのコンセプトモデルをブースに展示していた。実際の事業化はまだ未定とのことだったが、日本のサプライヤーの頑張りは目立っていた。

完全自動運転と安全運転支援を両輪で研究するトヨタ

それでは、自動運転と「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)について、自動車業界の巨人たちは何を語ったのだろうか。ここではトヨタ自動車とメルセデス・ベンツの発表を振り返ってみたい。

昨年のCESでは、移動や物流などの多用途で使えるMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」をお披露目して話題を呼んだトヨタ。今年のCESで熱を込めて語ったのは、同社が「Toyota Guardian高度安全運転支援システム」(ガーディアン)と呼ぶ自動運転技術だった。プレゼンテーションを行ったのは、トヨタが米国に設立した自動運転や人工知能などの研究機関「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)のギル・プラット所長だ。

TRIが研究を進める自動運転技術「ガーディアン」とは

TRIでは、システムがあらゆる場面でクルマを運転する完全自動運転を「ショーファー」、基本的には人間(ドライバー)がクルマをコントロールし、危険が迫った時などにシステムがドライバーをサポートする技術を「ガーディアン」と呼び、この2つのアプローチで設立当初から研究を進めている。

社会受容性など、乗り越えるべき課題の多い「ショーファー」の実現にはかなりの時間を要する見通しだが、運転支援システムの延長線上にある「ガーディアン」は、交通事故を減らしたり、より多くの人に移動の自由を提供したりするためにも、一刻も早い実用化を期待したい技術だ。CESでガーディアンの説明に時間を割いたところを見ると、トヨタは自動運転技術の社会実装を、可能なところから進めていこうと考えているようで心強い。TRIでは2019年春、レクサス「LS」をベースに開発した新しい自動運転実験車「TRI-P4」を導入し、ガーディアンとショーファーの双方で研究を加速させるという。

レクサス「LS 500h」をベースとする自動運転実験車「TRI-P4」

一方、メルセデス・ベンツがCES 2019に持ち込んだのは、MaaSを見据えたコンセプトカー「Vision URBANETIC」だった。人の移動にもモノの輸送にも使えるこのEVは、「e-Palette Concept」のメルセデス・ベンツ版といったところ。未来のモビリティについて想像を掻き立てるコンセプトカーだが、このクルマが現実社会を走行する場合、自動運転が実用化していることは大前提となる。

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision URBANETIC」

自動運転とMaaSが業界共通の課題、日本の取り組みは

ほんの一部ではあるものの、CESで自動車業界の巨頭が発表したことを振り返れば、彼らが自動運転を喫緊の研究課題と捉えていて、将来の自社のビジネスにとって必須の技術だと考えていることが分かる。ちなみに、CES 2019を見て回った筆者の印象では、自動運転にまつわる技術面の課題は、多くがすでに解決済みであるような気がしている。

自動運転とMaaSの社会実装は、自動車産業を基幹産業とする日本にとっても避けては通れない課題だ。日本国内では、内閣府が「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として自動走行システムの実現を後押ししている。

この取り組みでは、産官学が連携して5年にわたる研究・開発を進めてきた。自動車メーカーだけでなく、様々な企業や研究機関が英知を結集し、自動運転の基礎となる技術や、高齢者など交通制約者に優しい公共バスシステムの確立など、移動の利便性向上を目指してきたのである。

SIPにおける自動走行システムの研究成果については、2月6日、7日にTFTホール(東京・有明)で開催される「自動運転のある未来ショーケース~あらゆる人に移動の自由を~」というイベントで触れることができる。筆者も2月6日の「市民ダイアログ」(17時30分から)に参加して、自動運転で交通社会はどこまで安全になるかを議論し、市民の皆さんからも自動運転に対する様々な意見を頂戴する予定だ。この機会に是非、自動運転の最新技術とモビリティの未来像を体感してほしい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。