【ツルハホールディングス】ダイナミックなM&Aで2000店舗・売り上げ7000億円を目指す

【ツルハホールディングス】ダイナミックなM&Aで2000店舗・売り上げ7000億円を目指す

2016.09.21

【ツルハホールディングス】ダイナミックなM&Aで2000店舗・売り上げ7000億円を目指す

 ドラッグストア業界は非常に業界再編が激しい業界の一つで、主としてマツモトキヨシグループとイオン系列グループの2グループが業界を席巻している。資本業務提携をはじめとしたM&Aが盛んに行われており、地場の優良企業を自社グループ傘下に収め、グループの流通網・自社グループのブランド店舗に加えていく傾向がある。

 その中、イオングループ傘下でグループをけん引しつつ、独自路線・独自ブランドを崩さない企業がある。北海道を中心に全国で店舗運営している、ツルハホールディングス<3391>だ。同社は、赤を基調とした看板のツルハドラッグ、クスリのツルハなどの商号を持つドラッグストア大手で、創業は1929年、北海道旭川市で「鶴羽薬師堂」という店舗名で運営していた。

 75年9月に札幌に進出。ここから本格的なチェーン展開を始め、85年3月には50店舗、87年に東京都大田区六郷に店舗を開店し関東へ進出、89年7月には100店舗達成と爆発的に店舗網の拡充をしていった。

 95年に先述のとおり、イオングループ(※当時ジャスコ)の資本を受け入れ資本業務提携し傘下入りするも、現在に至るまでイオングループの中で独自路線を貫いている。これはひとえに、ツルハの持つブランド力がイオングループのブランドと比べても遜色がなく、かつ業績的に見ても優れているためだと推測できる。

 ツルハは現在、全国1660店舗を運営している。ブランド力の向上、店舗網の拡充については、かなり早い段階からのM&Aの活用が成長剤になっているのは間違いなく、その歴史をひもといてみたい。

以下の沿革表を基に解説していく。

■ツルハホールディングスの主なM&A 年月 概要 1929.5 北海道旭川市に鶴羽薬師堂創業 1956.8 ツルハ薬局に屋号変更 1963.6 北海道旭川市にツルハ薬局(現ツルハホールディングス)を設立 1975.5 クスリのツルハコントロールセンター(現ツルハ)を北海道旭川市に設立 1985.3 店舗数50店舗となる 1989.7 店舗数100店舗となる 1991.8 クスリのツルハコントロールセンターからツルハに商号変更。ツルハが本社を札幌市東区に移転 1993.2 ツルハ薬局をクレーン商事(現ツルハホールディングス)に商号変更 1995.1 ジャスコ(現イオン)と業務・資本提携契約を締結 1997.12 クスリのアオキと業務・資本提携契約(持株比率10%)を締結 1999.4 店舗数200店舗となる 2000.11 ツルハがドラッグトマト(岩手県)の全株式を取得し子会社化 年月 概要 2001.2 ツルハが東京証券取引所市場第二部に上場 2001.11 ツルハがリバース(神奈川県)を株式交換により子会社化 2001.11 店舗数300店舗となる 2002.5 ツルハが東京証券取引所市場第一部銘柄に指定 2002.5 グループ売上高1000億円突破 2002.6 ツルハがポテトカンパニー (山形県)の全株式を取得、子会社化 2003.5 ツルハが子会社ドラッグトマトを吸収合併 2003.10 ツルハがくすりの寺田(山梨県)から調剤薬局事業5店舗を事業譲渡(価額非開示) 2004.2 クレーン商事が札幌市東区に本店を移転 2004.3 ツルハが子会社ポテトカンパニーを吸収合併 2004.4 店舗数400店舗となる 2004.10 リバースがエバラドラッグ(神奈川県)から調剤薬局事業5店舗を事業譲渡(価額非開示) 2005.3 ツルハが三光グループ(青森県)から調剤薬局事業8店舗を事業譲渡(価額非開示) 2005.8 クレーン商事をツルハホールディングスに商号変更 2005.11 株式交換によりツルハをツルハホールディングスの完全子会社とする 2005.11 ツルハグループの持株会社として東京証券取引所市場第一部へ上場 2006.8 店舗数500店舗となる 2006.11 くすりの福太郎(千葉県)と業務・資本提携契約(持株比率36.5%)を締結 2007.4 ツルハが信陽堂薬局(千葉県)からドラッグストア事業11店舗を事業譲渡(価額非開示) 2007.5 くすりの福太郎(千葉県)を株式交換(36.5%→100%、約75億円相当)により子会社化 2008.4 PB商品開発のウイング(北海道)の株式を取得(14%→51%、700万円)子会社化 2008.5 グループ売上高2000億円突破 2008.7 スパーク(愛知県/滋賀、7店舗運営)の全株式を取得(0%→100%、約8500万円)、子会社化 年月 概要 2009.1 店舗数800店舗となる
2009.2 ウェルネス湖北(島根県、28店舗運営)の全株式を取得(0%→100%、約33億円)、子会社化 2009.6 リバースが仁天堂(神奈川県、5店舗運営)の全株式を取得(0%→100%、約6700万円)、子会社化 2009.8 クラフトのドラッグストア事業の新設会社(首都圏、19店舗)の全株式を取得(0%→100%、約13億円)、子会社化 2009.11 くすりの福太郎がセベラル(東京都)からドラッグストア事業5店舗の事業譲渡(価額非開示) 2010.4 店舗数900店舗となる 2010.5 リバースが仁天堂(神奈川県)を吸収合併 2011.4 ウイング(北海道)の株式を取得(51%→100%、4400万円)、子会社化
2012.4 店舗数1000店舗となる 2013.7 くすりの福太郎がかねまん薬局総本店マルモ薬品(東京都)からドラッグストア・調剤薬局事業3店舗を事業譲渡(価額非開示) 2013.8 ウエダ薬局(和歌山県、14店舗)の全株式を取得(0%→100%)、子会社化(価額非開示) 2013.10 ツルハがかもめ(高知県)からドラッグストア・調剤薬局事業14店舗を事業譲渡(価額非開示) 2013.12 ハーティウォンツ(広島県、140店舗)の株式を取得(0%→56%、約101億円)、子会社化 2015.3 ハーティウォンツが共栄ファーマシー(大阪府)から広島県内のドラッグストア・調剤薬局事業5店舗を事業譲渡(価額非開示) 2015.4 ツルハが、フジ(愛媛)とともにレデイ薬局(愛媛、200店舗超)の株式を公開買付(34.32%→63.58%、約25億円) 2015.7 ツルハが、フジとともにレデイ薬局の株式を2回目の公開買付(63.58%→97.42%、約35億円)

 ツルハのM&Aは、大きく分けて2種類の目的がある。「ドミナント形成」と「ブランド力の強化(仕入れ流通網の強化)」だ。ツルハホールディングスがバイサイドとなるM&Aは、1997年、くすりのアオキとの資本業務提携から始まる。くすりのアオキとは、商品の共同仕入れや店舗開発の相互協力を目的としたもので、ツルハがくすりのアオキに10%の資本参加をした。

 その後も2000年、岩手県のドラッグトマトを買収、01年関東圏のドミナント強化のため、神奈川県のリバースを買収、02年、山形県のポテトカンパニーを買収と、たて続けに地場の企業に対しM&A、店舗譲渡を仕掛けている。

 非常に意義の大きなM&Aとして、06年11月、当時売り上げが300億円を超えていたくすりの福太郎に対する資本業務提携、翌年07年5月の株式交換による完全子会社化がある。このM&Aは関東圏の店舗網の拡充を目的としたもので、くすりの福太郎の出店は、東東京・埼玉・千葉が中心であり、自社出店では神奈川に強く出ていたツルハとはよい相互補完となった。01年のリバースに続く、関東圏の強化のためのM&Aである。この案件では07年の株式交換において、売上高330億円、純資産12億円、経常利益4.7億円に対し、当時時価において約75億円相当の株式を割り当てており、これまでにないビッグディール案件となった。

 その後10年7月には、主として中国地方を基盤とし関東以南の本州および九州地域でコンビニエンスストアを運営しているポプラとの業務提携を発表した。ツルハとしてはポプラの持つ店舗開発網、商品開発力の提供を企図しており、ポプラとしては自身の運営するコンビニ、並びにポプラの子会社であるキリン堂薬局にツルハから商品流通を行うという相互補完を伴う業務提携であった。2011年9月にはシナジー効果を出すには相当の時間がかかるとのことから撤退、同業務提携を双方合意の上破棄している。

 13年8月には、大阪府、和歌山県内に5店舗のツルハ薬局のフランチャイズ展開をしていたウエダ薬局の株式を取得し子会社化。これにより、同地区でのドミナント形成を加速させていく。

 続いての大きなM&A案件として、13年11月21日、ハーティウォンツ株式の56%をリサ・パートナーズの運営する子会社投資ファンドより取得、子会社化した。ハーティウォンツ(売り上げ511億円、純資産100億円、営業利益35億円、13年3月期実績)は広島県を中心とした中国地方で計ドラッグストア「Wants」と調剤薬局「ウォンツ薬局」を140店舗展開し、中国地方では業界トップクラスの規模と知名度を誇っている。

 店舗展開は広島県や山口県を中心に圧倒的なドミナント化を実現しており、中国地方では鳥取県や島根県を中心基盤とするツルハとは非常によい補完性を持っていた。前述の財務体質の会社の56%株式を、約45億円ののれん代をつけた101億円で買収した。

 さらに、15年5月、かねてより協力関係のあった愛媛県を中心にスーパーのチェーン展開をしているフジとともに、フジの持分法適用会社で、四国最大のチェーンドラッグストアでJASDAQ上場のレデイ薬局の株式をTOBすることを発表した。2度のTOBを経て、ツルハが51%、フジが49%の株式を取得し、レデイ薬局を子会社化した。投下した資本は2つ合わせ計61億円となった。

 実はこの株式の持ち合いについては、ツルハとしてのメリットも多くある。フジは地場の大手チェーン店で知名度が高く、地場で苦戦しているツルハとしては、フジと協業状態にあるということそのものに付加価値があり、ノウハウの吸収、客層の獲得というメリットが付随してくる。

 ここでツルハの財務内容を見てみたい。(数値は15年5月期)

■業績と財務状況の推移

 ツルハは自己資本比率が51.6%と非常に高く、383億近い潤沢なキャッシュに対し借入金は53億と実質無借金といえる。また、この53億円は2016年度に新規に借り入れを起こしたものであり、これまでのほとんどのM&Aは手許資金で行われているものと推察される。

 ここ数年、ハートウォンツ・レデイ薬局は共に中国・四国エリアを中心としたチェーン展開をしており、これまで本拠地から遠く、伸び悩んでいた南下の足掛かりとなる。また、国外(タイ)での自社出店にも力を入れており、去年は13店舗を新規開店した。

 現在のツルハの掲げている中期目標として、「19年5月期、2000店舗・売り上げ7000億円」というものがある。16年5月時の決算説明では、国内の運営店舗1667店舗、売上5275億円となっている。レデイ薬局を傘下に迎え、前期から売り上げを飛躍的に伸ばしたが、あと3年で1800億円近く売り上げを伸ばすことを要する。今後ともダイナミックなM&Aを行っていくものと期待したい。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。