なぜアイリスオーヤマは

なぜアイリスオーヤマは"こんな家電が欲しかった!"を形にできるか

2016.09.28

ホームセンターで売られている衣装ケースや、オフィスのデスク周り用品などでおなじみのアイリスオーヤマは、2009年から家電事業に参入。参入して7年、事業は右肩あがり、同社の事業の中でも一番の売り上げを誇るまでになった。そんな同社がこだわっているのは、国内大手家電メーカーとは一線を画す戦略だ。その戦略とは。

コメの銘柄ごとに炊き分けられる炊飯器

9月、アイリスオーヤマが新たに発表したのは、米の重さに応じて必要な水量を教えてくれる炊飯器「銘柄量り炊きIHジャー炊飯器3合」。炊飯器の底の部分に重量センサーが搭載されていて、釜に入れた米の量をはかり、必要な水量を表示してくれる。さらに水を注ぐと、必要な水量の残量がわかるようになっていて、超えると知らせてくれるようになっている。

「銘柄量り炊きIHジャー炊飯器3合」

コメは銘柄ごとに、おいしく炊き上がる水量や火力が少しずつ異なっているが、それぞれをおいしく炊き上げられるように、銘柄別の必要な水量まで教えてくれる。さらには火力も微調整してくれるのだ。

なぜこのような、コメの量と銘柄に合わせて水の量を微調整できる炊飯器を開発したのだろうか。

半数の人が水量計測に失敗している

コメを炊くと「かたすぎる」とか「やわらかすぎる」といった出来上がりのムラができた経験はないだろうか。同社が行なったご飯の食味に関する調査で、炊飯の際に基準となる水の量に約4.5%以上の過不足があると、おいしさが損なわれることが分かっている。そして、水位線を目安とした目視による水の計量の場合だと、水の過不足を常に4.5%にとどめられる人は、3合炊きで約55%。約半数の人が水量のミスによって、最もおいしい状態でご飯が食べられていない現状が浮かび上がった。

同社が、この問題を解決しようと作ったのが今回の炊飯器。

この炊飯器はさらに、炊飯以外の時は、上と下を分離させることができる。下部分は、IHコンロになり、煮炊きなどに利用することができる。上部分は、保温効果が高い素材でできており、おひつとして使用できる。1商品が3役こなしてくれているのだ。

アイリスオーヤマといえば、宮城県仙台市に本社を置く企業。東日本大震災で大打撃を受けた東北復興のために、2013年に精米事業に参入した。コメの製法など、コメそのものに対する研究を行っており、知見は積み上がっている。さらに、2009年に家電事業に参入している。

2事業の知見を生かし、同社は「米屋がつくる米家電」を合言葉に、おいしいごはんを提供するための商品を開発しようとしている。同社の石垣達也家電事業部統括事業部長によると、「他社との戦いというより、マーケットの需要創造をしたい」と米家電については考えているという。

石垣達也 家電事業部統括事業部長

高機能商品と一線を画して戦える理由

ところで、なぜ、同社は家電事業に参入したのか。「当時大手企業数社によって、寡占状態。競争力は低下、必要としていない機能までつけて価格がどんどん高くなっていると感じていた」と石垣統括事業部長は感じていたという。「そういった市場だからこそ、あえてなんです。当社の考え方に市場を活性化させたいというのがあります」。こうして、家電事業に参入、最初は単機能の商品からスタートしたが、家電についてのノウハウを集積するために、大阪に研究拠点をつくり、2013年から大手企業を退職した技術職を大量採用。その数は約100人に上る。

ちなみに今回の炊飯器もそんな大手企業で腕を磨いてきた技術者が開発している。

「ちょっと使いやすいとか、ワンポイントでいいのではないか」と「ユーザー目線の不満解消型商品」をコンセプトにしたシンプルでリーズナブル、必要な機能をより使いやすく進化させた「なるほど家電」を展開しようとこのころ舵を切ったという。「高齢化が進む中、分かりやすさは大事なポイント」(石垣氏)だという。

同社は、開発、生産、営業というセクションがその部分部分だけに携わるのではなく、開発のスタートから消費者に届けるまでトータルで関わる商品開発を採用している。石垣氏によると、大手家電メーカーだとセクションごとに分業になっているが、技術者が最後まで商品に携われることがモチベーションにつながっているという。

同社の家電事業は参入して7年の今年、600億の売り上げを見込んでいる。さらに来年は750億を計画。同社の中で、一番の主力事業になった。

そして米家電事業はその中において、今後最も力をいれていく分野だという。現在は市場シェア0.8%だが、再来年には、約5%まで拡大させる計画。そのために、商品ラインナップを22アイテム(2018年)に増やすとしている。「精米事業をやりながら、家電を作るから、他社にはないアプローチができると考えている」(調理家電事業部 平元佑司事業部長)

マーケットの需要創造が実現できる体制

同社のように、低価格で勝負する家電は無数にある。だが、なぜ同社の商品が支持され、事業が拡大し続けているのか。その答えは明確だ。ユーザーの声から本当に欲しい機能だけに絞った商品、だからこそ低価格が実現できる。だが、その機能の品質の高さは大手家電メーカーに引けをとらない技術力の裏づけがある。現場からの意見を吸い上げ、確かな技術力で課題を解決する商品。その筋肉質な開発の仕方こそが同社の躍進の原動力であり、大手家電メーカーにとって今後さらに、大きな脅威になっていくだろう。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。