ソフトバンクは何を狙う? アーム買収を巡る真の意図

ソフトバンクは何を狙う? アーム買収を巡る真の意図

2016.08.02

ソフトバンクは7月18日、半導体設計で知られる英アームの買収を発表した。買収総額240億ポンド(日本円換算で約3.3兆円)を手持ち資金と借り入れを合わせた全額キャッシュで賄い、買収後は100%子会社として上場廃止を行う計画だ。まだ今後も各国や関係機関での買収審査が待っている状況だが、早くも買収の意図や今後を巡る議論が盛り上がっている。今回はアームのバックグラウンドを振り返りつつ、買収にまつわるいろいろを整理してみる。

約3.3兆円を全額キャッシュというソフトバンクによるアームの大型買収

アームのバックグラウンド

アーム(ARM Holdings)の歴史を紐解くと、英エイコーン・コンピュータ、米VLSIテクノロジー、米アップル・コンピュータの3社が1990年に設立したアーム(Advanced RISC Machines)に行きつく。当時PCメーカーとして活動していたエイコーンが半導体の設計・製造を行っていたVLSIとのプロセッサ開発プロジェクトが源流にあり、後に自社製品で活用すべく興味を示したアップルが出資して、独立した半導体メーカーとして同年にアームが設立された。アーム設立時のオリジナル計画ではアップルの主力製品の一部に向けたプロセッサ開発だったといわれるが、この計画は途中で破棄され、チームがPDAの「Newton」プロジェクトに参加したことで注目されることになった。

興味深いのは、アームが比較的初期から携帯機を中心とした省電力プロセッサの市場を指向していたことで、前出のNewtonでの採用のほか、2000年代に入ると任天堂のゲームボーイアドバンスで採用されたことが知られている。DEC StrongARMやその流れを汲むIntel XScaleといったアームアーキテクチャでより高速なプロセッサを指向する試みもあったものの、基本的にはマイクロコントローラを中心に低消費電力プロセッサを主力にビジネスを拡大してきた。今日、スマートフォンやタブレット製品の大部分、センサーや家電の制御機器に、将来的には自動車産業への進出など、適用範囲はより広がっている。

そして、アームで最も特筆すべきはそのビジネスモデルにある。

アームのビジネスモデル

一般に半導体メーカーといえば、インテルのように開発から製造までをすべて自社で行うようなところもあれば、クアルコムやエヌビディアのように"ファブレス"と呼ばれる開発と販売だけを行って製造は他社に委託するところがあったり、あるいはファブレスのメーカーからの受託で製造のみを行う台湾TSMCのようなメーカーだったりと、いずれかの形で製造・販売に関わるのが一般的だ。

現在のアームを構成する技術の数々。これらを直接の顧客となる半導体メーカーに要素単位でライセンスする

だがアームでは半導体の設計のみを行い、これをメーカーにライセンスすることで収入を得るという「知的財産(IP)」モデルを採用している。「アームプロセッサ」といってもアーキテクチャのみが共通で、最終製品は各半導体メーカーに委ねられている。つまり、われわれがスマートフォンなどで利用している「アームプロセッサ」はアーム社が作ったものではなく、アップルやサムスン、クアルコムといったアームからライセンスを受けたメーカーが作ったプロセッサということになる。ビジネス的にみれば、最終製品の販売に比べて売上面では劣ることが多いが、一方で一定のライセンス収入が得られ、今後搭載デバイスの増加とともに収益増が見込めるという手堅いビジネスだといえる。

さて、このアームとソフトバンクの関係だが、事業としてのリンクはこれまでのところ存在しないというのが定説だ。かつてはPCソフトウェアの卸しや出版・メディア事業からスタートしたソフトバンクは、2000年代以降は通信事業を中心としたビジネスへと進出し、その集大成は2012年に発表されたスプリント買収だ。当初の想定ほど進展状況はよくないといわれるスプリント買収だが、一方で通信業界での大型買収は一段落したとみられており、おそらく次の10年以上先を見据えた形での次世代の事業展開を睨んだアーム買収だと考えられる。では、この買収はソフトバンクにとってどのような意味があり、今後業界に与える影響はどうなのだろうか。

ソフトバンクの事業の変化はパラダイムシフトと共にあると孫正義氏。実際、その時々で主流とされていた事業を中核に据えていた

利害関係のない買収劇

7月21日に都内のホテルで開催されたSoftBank Worldで基調講演を行ったソフトバンクの孫正義氏は、講演時間の多くをこのアームの紹介と買収の意図についての説明に費やし、さながら「孫正義の半導体の歴史と最新トレンド講座」ともいうべき内容になっていた。

アーム買収の背景と意図について説明する孫正義氏

これはこれで非常に興味深いのだが、本来ビジネスの勉強と商談の場としてSoftBank Worldにやってきていた人にとってはおそらく完全に分野外の話題であり、非常に面食らったのではないかと思う。ただ、そこまでして孫氏がアームと半導体分野の現在について説明しないといけなかったあたりに、ARM買収の鍵が隠されているのではないかと筆者は考える。

アームの業績についてはさまざまな意見があるものの、今後もアームプロセッサ搭載デバイスが増加することで市場が拡大し、それにつれて業績も拡大していくことに異論を挟む人は少ないだろう。一方で、2015年度における同社の売上は15億米ドル程度であり、これから先も売上が上昇カーブを描き続けたとして、おそらく今後10年ビジネスを続けても買収に費やす約3.3兆円を回収するのは難しいだろう。

孫氏は、今後もビジネス的に成長する源泉は「IoT」と「車載システム」にあると力説する。確かに、IoTではPCやスマートフォンでは比較にならない台数へとアームプロセッサが搭載され、プロセッサの出荷台数は倍々ペースで増加していくだろう。インフォテインメント対応に加え、通信機能搭載やセンサーの固まりとなった自動車は将来的に自動運転を見据えた新しいビジネスへと変革していくことが見込まれており、こちらも非常に有望だ。

アームプロセッサの出荷台数は今後もさらに急カーブで伸び続ける
アームのエコシステムを次に大きく拡大するドライバーとして期待されるのがIoT分野
車載システムでの事業領域拡大も期待される

とはいえ、あくまでライセンス収入に頼るアームは、デバイス数の増加ほどには売上増加が望めないというジレンマがある。PCやスマートフォン向けプロセッサとは異なり、これら制御系のマイコンは単価も安めで、個々の収益は知れている。ライセンス料の上昇は顧客離れにもつながるため、基本的には収益を抑え込むことがアームプラットフォームの拡大に貢献するという構図だ。

売上も大幅に増加しているものの、実は純粋な半導体メーカーと比較するとその事業規模は小さいのが特徴

そうなると、ソフトバンクによるアーム買収の意図はどこにあるのだろうか。同社は携帯電話事業やヤフー・ジャパンのように主に収益を上げることに重点を置いた「運用資産」と、アリババなどが好例だが先行投資を行ってリターンを得るという「投資資産」という2軸のビジネスを展開している。問題はアーム買収がどちらに属するのかという点だが、前出のように直接ソフトバンクとコラボレーション可能な事業ではないため、どちらかといえば投資資産としての側面が強い。ただ、3.3兆円もの"すでにビジネスとして確立した"案件での買収を実施するにあたっては相応の理由が必要で、先行投資ではない形のメリットを投資家や銀行らに説明しなければならない。SoftBank Worldでの半導体業界講座は、これを反映したものだといえるだろう。

ソフトバンクは運営と投資の2つの事業領域で構成される。問題はアームがどちらに属するかだが、投資事業の一環だとみられている

不足感が残る説明をどう見るか

それでも説明不足だというのは、筆者だけでなく多くの人の頭の中でくすぶっている問題だろう。孫氏はアームの100%子会社化にあたって全株式の買収と非上場化を実施する予定だが、将来的にアームがさらに有望な企業となったところで他社へと売却したり、あるいは再上場でキャピタルゲインを得るということも可能だろう。ただ、アームの過去の株価を見る限り買収金額は6割増し程度の水準であり、10年後などのタイミングで売却したとしても、せいぜい買収金額と同程度だと予想する。そのため、事業的に将来性が見込めない、あるいは本業や他の事業で問題が発生したと孫氏が判断しない限り、長期的に傘下企業としてアームを抱え込む算段なのではないかと筆者は考える。

逆転の発想で、「なぜソフトバンク以外の企業はアームを買収しなかったのか」という話がある。全世界で動作する95%以上のマイクロプロセッサはアームベースの製品であり、これだけ驚異的なシェアを持つアーキテクチャを開発する企業であれば「事業買収で業界を支配してやろう」と考える会社や人物がいてもおかしくはない。だが現実には買収されなかった。正確にいえば「できなかった」というのが正しいかもしれない。

アームのエコシステムは広大であり、半導体業界やデバイスメーカーでは利害関係が存在しないケースを探すほうが難しい。例えば、アームの顧客であるアップルやクアルコム、サムスンは競合他社との利害関係が発生してしまう。エコシステムにあたる影響から、おそらく近年急伸しつつあるファーウェイなど中国系メーカーが買収するのも難しいだろう。各国での買収承認が下りない可能性が高いからだ。

失敗するケースもあるものの、トータルでみれば世界的な成功企業の投資案件を複数抱えている時点でソフトバンクは希有な存在だといえる。投資に対するリターンもそれだけ大きい

一方で、今回のソフトバンクのように微妙に事業領域が近いながらも直接的な関係がないというポジションで「3.3兆円もの大金をキャッシュで用意できる会社は存在しない」と考えられ、「仮に買収を考えてもソフトバンクくらいしか買収できなかった」というのが筆者の唱える結果論だ。「買収を考えても実行できるのはソフトバンクくらいしかいない、だったら買収してやろう」と孫氏が考えたかは不明だが、これだけコンピュータや通信業界の中核にいながらも手つかずだった企業を「チャンス」とばかりに買収した背景には、このような流れがあったとみている。

買収を巡る双方のメリット

孫氏は、買収発表から3カ月以内での買収完了を見込んでいるようだが、株主による承認さえとれれば買収は成功する可能性が高いと筆者はみている。逆にいえば、株主による承認が最大のハードルであり、だからこそアームに関する説明を非常に入念に行っているのだと考える。ソフトバンクはアーム買収にあたり、英国内にある同社の拠点の今後5年での人員倍増のほか、アドバイスなどの側面以外での経営への介入を直接行わないとの条件を示しており、前出の利害関係の問題を考えれば、おそらく各国の関係機関での買収承認を得るのは可能だろう。特にスプリント買収を経て、T-Mobile USA買収の失敗で辛酸を舐めた同氏は、特に入念にこのあたりの根回しを行っているとみられる。

買収される側のアームだが、現時点でこの買収にはメリットのほうが大きい。まず経営への直接介入を行わないと孫氏が表明していることで、現状のビジネスモデルはそのまま維持できる。一方で公開企業やベンチャーキャピタルのような投資会社が経営に直接口出しをしてこない点で、プロセッサの設計やライセンス事業に注力できるメリットがある。最近記憶に新しいのは、クアルコムの業績が落ち込んだタイミングで株主からIPライセンス事業と半導体事業を分離しろという再三にわたる圧力で経営が混乱したという前例だ。アームはそのエコシステムの広大さと比較して、他の半導体メーカーに比べれば売上は非常に小粒であり(年間売上は10分の1以下)、これを狙って何らかの市場介入を試みる投資家がいても不思議ではない。

ただ、これでは単にソフトバンクがアームに救済の手を差し伸べただけに過ぎないし、「孫正義氏は夢に投資している」と批判を受けても仕方のない話だ。残りの問題は、「アームがどの程度ソフトバンクからの独立性を維持するのか」という点に帰結する。スプリントのような同業他社の買収とは異なり、共同調達や事業連携のような関係がソフトバンクとアームの間には存在しない。将来的にはソフトバンクが要望を出してアームにプロセッサ設計を依頼するということも考えられるが、現時点ではまだ難しいところだろう。アームは基本的にすべてのマイクロプロセッサを供給する半導体メーカーと提携関係にあり、これを利用しての情報収集や、ソフトバンクがそれらメーカーとの何らかのコラボレーションを行うという予測もある。ただ、こうした動きも直近の話ではなく、今後5~10年以上先の話だ。

筆者の予測だが、今回の買収は今後ソフトバンクが目指したい方向性を示し、今後ビジネスモデルを順次組み立て、その前段階としてまず買収可能なアームに食指を伸ばした……というのが現時点での状況だと考える。

将来的にIoTのような形ですべてのデバイス同士がつながる世界がやってくるというのは間違いなく、携帯キャリア各社も「M2M」を皮切りにセンサーネットワークの構築や次世代インフラの整備を進めている段階だ。通信品質やカバーエリアが重視される一方で、このIoTから直接得られる単体の通信量収入はそれほど大きくない。このあたりはアームプロセッサのIPライセンスモデルに通じるものがある。IoT時代の通信事業者は接続デバイス数を大幅に増加させる以外に、そのインフラを使った付加サービスを強化することで収益を増やそうとするのではないだろうか。

例えば、データセンターのリソースを提供することでセンサーネットワークの情報収集や処理に必要な仕組みを用意したり、すでに存在するセンサーネットワークのデータにアクセス可能なAPIのメニュー化、あるいは一連の仕組みを使ってユーザーにサービスを提供するための仕組みの構築に必要なコンポーネントの提供だ。コンサルティングのようなビジネスも可能だろう。

IoTの世界では特にセキュリティが大きな鍵になるといわれている。半導体とセキュリティ業界の両方を長年にわたって見てきた筆者だが、これだけ「TrustZone」というキーワードが連呼されるのは初めて見た

孫氏はアームの説明において、たびたびIoT世界でのセキュリティの重要性を強調していたが、筆者が過去のアームや関連半導体メーカーの取材の中で「TrustZone」というアームプロセッサのセキュリティ機能を指すキーワードを短時間であれほど聞いたのは初めてだ。セキュアOSのような仕組みもあるが、TrustZoneへのアプリケーションの実装は非常に原始的で実装が難しいことが知られており、ソフトウェア方面で稼ぐ手段は今後の需要増を考えればいくらでもあるだろう。ソフトバンクはアームを抱えつつ、付帯ビジネスに活路を見出すことも十分に可能なわけだ。いずれにせよ、今回の買収は短期では結果が出ず、かなり長い視点で進展を見極める必要がある案件だと筆者は考える。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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