【エムスリー】M&Aを活用して業容を急拡大させ、医療業界に確変をもたらす

【エムスリー】M&Aを活用して業容を急拡大させ、医療業界に確変をもたらす

2016.08.06

【エムスリー】M&Aを活用して業容を急拡大させ、医療業界に確変をもたらす

 エムスリー<2413>は、ITバブルの最中である2000年に、外資系コンサルティング会社マッキンゼー出身の谷村格氏によって設立された。エムスリーの由来は、Medicine(医療)、Media(メディア)、Metamorphosis(変容)の頭文字であり、医療業界にメディアを通じて変革をもたらすことを使命としている。同社は設立から4年でマザーズに上場、さらにその3年後には東証一部に上場した異色の企業である。現在は世界各地の医師とのネットワークを活用して、医師に対する医療情報の発信や製薬会社向けソリューションの提供を行っている。

 損益・財務状況は16年3月決算時点で、売上高646億円、営業利益200億円、営業利益率30%、自己資本比率75%で、損益・財務面ともに超優良といえる企業である。設立から4年で上場、16年で売上高600億円を達成した背景には、戦略的なM&Aの活用がある。

 同社設立から1カ月後にリリースされた製品「MR君」は、インターネットを利用した製薬業界のMR(注1)向け業務ツールであった。インターネットが高度に普及した現在から考えると、業務のIT化は一般的になっているが、当時の製薬会社の営業は非常にアナログで、数分間の医師との面談のために1日中MRが病院で待機しているということも珍しくなかった。このように非効率的な営業を行う製薬業界にビジネスチャンスを感じた谷村氏は、当時コンサルティングをしていたソネットとエムスリー(当時はソネット・エムスリー)を設立し、アナログな製薬業界に風穴を開けた。この強力な業務ツールに改善と拡充をしつつ、M&Aを活用して業容を拡大していくこととなる。注1:MRとは、医薬情報担当者(Medical Representative)の略称で、医薬品の適正使用のため医療従事者を訪問することなどにより、医薬品の品質、有効性、安全性などに関する情報の提供、収集、伝達を主な業務として行う者のことを指す。

 エムスリーのM&Aは、フェーズに応じて2つのパターンに大別される。第1フェーズが、医師とのリレーションの強化・拡大である。このフェーズにおいては、医師会員を多く抱える医療情報サイトを買収している。例えば、設立からわずか1年半後にソフトバンク系列企業であるウェブエムディからサイトを買収した。第1フェーズにおけるミッションは、医師とのリレーションの強化・拡大を通じて、自社ソリューションである「MR君」の拡販を行うことにあった。

 一方で、第2フェーズは、築いてきた医師とのリレーションを生かした周辺事業(エムスリーにおいてはプラットフォーム派生事業と呼ばれている)の展開フェーズである。08年に診療予約システムの開発会社を買収したのを皮切りに、1年に1社のペースでM&Aを行っている。また、この時期の特徴は、M&Aの第2フェーズと並行して日本で成功したMR君事業の海外輸出が行われていたことである。

 このようなM&Aを活用した戦略的な事業展開の結果、会社設立からわずか16年で売上高600億円を達成したのである。

■エムスリーが行った主なM&A

年月 内容
2000.9 会社設立
2002.3 ソフトバンク系同業のウェブエムディから医療情報サイト「WebMD Japan(現m3.com)」の運営事業を買収
2003.1 ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(現・ソネットエンタテイメント株式会社)より、医療情報サイト「MediPro/MyMedipro(現・m3.com)」の運営事業を買収
2004.9 東証マザーズに上場
2005.6 韓国で医師向け会員制ウェブサイト「MEDIGATE」を運営するMedi C&C Co.,Ltd(売上高1億2200万円、営業利益5200万円)の第三者割当増資2億8000万円を引き受け株式40%を取得し子会社化(過半数の役員の派遣により連結子会社化)
2005.7 ソニーから医療情報サイト「メディカル・チャンネル」の運営事業を買収
2006.6 米国の医療従事者向けウェブサイト「MDLinx」を運営するMDLinx(売上高2億9300万円、営業利益5300万円)の株式100%を、子会社を通じて8億8000万円で取得し、孫会社化
2007.3 東証一部に上場
2007.12 竜宮社出版から子会社を通じて団塊世代向けファッション雑誌「Z(ジー)」に関連する事業を買収
2008.6 診療予約システム「iTICKET plus」を提供するアイチケット(売上高1億3200万円、営業利益▲2億円、持分割合12.3%)の株式62.1%を2億200万円で追加取得し、子会社化
2009.4 ITを活用した臨床研究支援を行うメビックス(売上高21億9500万円、▲3億3800万円)の株式84.01%を公開買付により24億1800万円で取得し、子会社化
2009.12 医療従事者向け人材サービスを提供するエス・エム・エスと医師の転職支援を行うエムスリーキャリアを合弁で設立
2010.1 エムスリー株式会社へ商号変更
2010.11 医療分野の調査に強みを持つ英国の調査会社EMSリサーチ(売上高5億円)の全株式を6億6000万円で取得し、完全子会社化
2011.8 イギリスの医師向けポータルサイト「Doctors.net.uk」を運営するDoctors.net.uk Limited(売上高10億9500万円、営業利益7800万円)の株式100%を16億7800万円で取得し、完全子会社化
2011.9 治験業務支援を行うメディカル・パイロットを、第二会社方式を利用して完全子会社化
2011.12 治験業務支援を行うフジ・シー・アール・エスの全株式を取得し、完全子会社化
2012.8 臨床開発業務を支援するCRO(注2)事業を展開するMICメディカル(売上高27億4500万円、営業利益▲8800万円)の株式96.73%を公開買付により24億円5900万円で取得し、子会社化
2012.10 電子カルテのシステムを開発するシィ・エム・エス(売上高23億円、営業利益6900万円、純資産2億円)の全株式を4億円で取得し、完全子会社化
2014.2 治験業務支援をおこなうメディサイエンスプランニング(売上高82億円、営業利益7億3200万円、純資産20億円)の株式を、株式交換を利用して66億9200万円で取得し、完全子会社化
2015.2 米国で医師の転職支援をするNew England Physician Recruitment Centerの全株式を取得し、完全子会社化
2015.3 医薬品開発コンサルティングをおこなうIntegrated Development Associatesの全株式を取得し、完全子会社化
2015.4 治験業務支援をおこなうノイエス(売上高40億円、営業利益500万円、純資産7億円)の株式90.9%を1億9200万円で取得し、子会社化
2015.5 米国で医師の転職支援をするProfilesから同事業を譲り受け
2016.1 米国において医師転職支援サービスを提供する The Medicus Firmの全株式を取得し、完全子会社化
2016.1 製薬会社向けマーケティング支援をおこなうQLifeの全株式を取得し、完全子会社化

 注2:CROとは、受託臨床試験実施機関(Contract Research Organization)の略称で、製薬会社や食品会社、バイオ企業などの研究を外部機関として支援する事業を指し、CRA(臨床開発モニター)やDM(データマネジメント)、QC(品質管理)、安全性管理などといった幅広いサービスを提供する。

 ここで、下の業績推移の図表を見ていただきたい。

■業績推移

(エムスリーウェブサイトデータを元に制作)

 07年3月期から売上高が急伸していることが分かる。この時期はちょうどM&Aの2つのフェーズの境目でもある。第1フェーズまでは売上高を伸ばすことよりも、将来を見据えて事業基盤を固めていた時期といえる。06年3月期から08年3月期までの事業セグメント別売上高推移は下記のようになっている。

■セグメント別売上高推移

(エムスリーウェブサイトデータを元に制作)

 各事業部とも売上高が伸長していることが分かるが、それぞれ伸長要因は異なっている。MR君事業の売上高が伸長した要因は、MR君利用社数と1社当たりの売上高の増加である。次に、プラットフォーム派生事業の売上高が伸長した要因は、自社内での新規事業の立ち上げが堅調に進捗した結果である。一方で、海外事業の売上高の伸長には、M&Aにより買収したMDLinxが寄与している。

 この時期はM&Aを活用して業容を拡大した時期というよりも、独立独歩で業容を拡大していた時期といえる。

 それとは対照的に、13年3月期から14年3月期にかけてはM&Aを活用して業容を急速に拡大した。12年3月期から14年3月期までの事業セグメント別売上高推移は下記のようになっている。

■セグメント別売上高推移

(エムスリーウェブサイトデータを元に制作)

 上記の12年4月から14年3月までの2年間で3件の大型買収を行っている。CRO事業を展開するMICメディカル(売上高27億4500万円、買収金額24億5900万円)及びメディサイエンスプランニング(売上高82億円、買収金額66億9200万円)、電子カルテのシステムを開発するシィ・エム・エス(売上高23億円、買収金額4億円)の3社である。3社の売上高の単純合計は132億円強で、2年間で増加した売上高178億円の4分の3を占め、M&Aを活用して業容を急拡大させた好例といえよう。特に、MICメディカルとメディサイエンスプランニングに09年4月に買収したメビックスを合わせると、CRO業界においてCRA数は3位(14年3月時点。16年3月時点で2位)に及び、M&Aによって業界のポジションを確立している。注3:CRAとは、臨床開発モニター(Clinical Research Associate)の略称で、治験に関する治験契約、モニタリング業務、症例報告書チェック・回収、治験終了の諸手続きなどを行う専門職のことを指す。

 これだけのM&Aを繰り返した結果、財務面は下記図表のような推移をたどっている。

■総資産額の推移等

(エムスリーウェブサイトデータを元に制作)

 総資産額の推移を見ると、毎年順調に積み上がっており、自己資本比率も75%前後を堅調に推移している。一方で、15年3月期からIFRSを導入したことで、のれんの残高は積み上がっている。総資産に占めるのれんの割合も30%近くに上り、のれんに大きな減損が生じた際のリスクをはらんでいるといえる。

 ただ、利益率の高い事業が成功している間こそリスクを取って攻めの経営を進める必要があり、ここまでエムスリーはM&Aを活用して順調に業容を拡大してきた。エムスリーは、これからもM&Aを含めた戦略的な事業展開を通して、世界の医療業界に変革をもたらし続けることだろう。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。