【第一三共】国内第3位の製薬会社のM&A苦難の道のり

【第一三共】国内第3位の製薬会社のM&A苦難の道のり

2016.08.10

【第一三共】国内第3位の製薬会社のM&A苦難の道のり

 2005年に三共と第一製薬が経営統合し誕生した第一三共<4568>は、売上規模約1兆円、現在国内第3位の製薬会社だ。15年3月期で第10期を迎えた第一三共のこれまでのM&Aは、08年のRanbaxy Laboratories Limited(以下「ランバクシー」という)の買収に始まり、15年のランバクシーの売却に終わる苦難の道のりであったと言ってよい。細かく見ていこう。

■第一三共が行った主なM&A

年月 内容
2005.9 株式移転により三共と第一製薬が経営統合。持株会社「第一三共」が誕生
2006.3 アステラス製薬の100%子会社であるゼファーマ(売上高224億円)を355億円で買収(100%)
2006.4 アサヒビールが実施する和光堂(ベビーフード製造販売。売上高240億円)株式の公開買付けへの応募。60.14%を282億円で売却
2006.10 第一製薬の子会社である第一ラジオアイソトープ研究所(放射性医薬品、および放射性標識化合物の研究、開発、製造、販売、輸出入。売上高172億円)の全株式を富士フイルムに譲渡
2006.10 第一化学薬品(臨床検査薬、研究用試薬、化学薬品、薬物動態研究。売上高228億円)の全株式を積水化学に譲渡
2007.4 持株会社の第一三共が、三共と第一製薬を吸収合併。経営統合の最終段階へ
2007.5 埼玉第一製薬(経皮吸収製剤、液剤及び軟膏剤を中心とした医療用及びOTC医薬品の研究・開発・製造・輸出入事業 売上高73億円)の全株式をニプロに譲渡
2007.6 第一ファインケミカル(医薬品、動物用医薬品、体外診断薬、化成品中間体の製造(輸入)及び販売。売上高156億円)の全株式を協和発酵に譲渡
2008.2 日本乳化剤(界面活性剤、並びに化成品の製造・販売。売上高237億円、100%所有)、及び中日合成化学股份(界面活性剤等各種工業用化成品の製造・販売。売上高62億円、52.03%所有)の全株式を日本触媒に譲渡
2008.4 子会社である三共化成工業株式会社及び三共有機合成株式会社、第一三共ケミカルファーマ株式会社は、第一三共ケミカルファーマ株式会社を存続会社として合併
2008.5 U3 Pharma AG 社(ドイツ)の全株式を268億円で取得。がん及び抗体事業の強化を図る
2008.10 ランバクシー・ラボラトリーズ(インド、後発薬製造販売。売上高742億ルピー、1ルピー2.5円換算で1856億円)の過半数を取得するため、公開買付、創業家一族からの取得、第三者割当増資、新株予約権の引き受けを実施。買収価額の総額は4884億円、58.1%を所有
2010.1 米国子会社であるルイトポルド社(米国)ファルマフォース(米国、ジェネリック注射剤の開発・販売)の全株式を2100万ドル(1ドル92円換算で19億円)取得
2010.4 当社の子会社である第一三共プロファーマ株式会社の静岡工場をシミック(医療用医薬品等の研究開発・製造・営業支援)に譲渡
2010.8 インドの法令・ルールにのっとり、ランバクシーの関係会社であるZenotech株式の20%の公開買付けを実施。価額は7億8200万ルピー(1ルピー2.5円換算で15億6000万円)
2011.3 がん事業強化の一環として、Plexxikon社(米国)の全株式を805百万ドル(1ドル82円換算で660億円)で取得
2014.11 公開買付及びその後の合併によりAmbit社(売上高2380万ドル。1ドル115円換算で27億円)の全株式取得による企業買収を行う。買収価額は3億1500万ドル(1ドル115円換算で362億円)
2015.3 ランバクシーとサン・ファーマシューティカル・インダストリーズ(インド、以下サン・ファーマ)の合併によるランバクシーの譲渡。合併に伴いサン・ファーマ株式の約9%の割当
2015.4 サン・ファーマ株式を3784億円で売却

1. 第一三共の誕生

 三共の前身は1899年に創業された三共商店で1913年に三共株式会社が発足。第一製薬の前身は1915年に創業されたアーセミン商会で1918年に第一製薬が発足している。統合直前期の2005年3月期には、三共商店が151期、第一製薬が127期と歴史の長い会社同士の統合となった(図1参照)。

 経営統合は、05年9月。株式移転方式で、共同持株会社第一三共を設立、両社が持株会社の傘下に入った。05年4月に山之内製薬と藤沢薬品の経営統合により誕生したアステラス製薬は合併方式であった。株式移転方式の統合は、アステラス製薬の合併と比較して、緩やかな統合になるのが特徴だ。第一三共が合併により完全に統合したのは、経営統合から約1年半後の07年4月になる。第一三共がアステラス製薬の合併を見た後に、株式移転方式が選択されたのは興味深い。

 05年3月期の三共の売上高は5878億円、純資産が7165億円、第一製薬の売上高は3285億円、純資産が4485億円となっており、三共が第一製薬より規模は大きい(図1参照)。持株会社の代表取締役社長には、三共出身の庄田隆氏、代表取締役会長に第一製薬出身の森田清氏が就任した。取締役10名のうち、生え抜きの取締役は、三共、第一製薬とも3名選任されている。典型的な形といえ、規模の大きな三共が主導権を握った事がうかがえる。

 図1の通り、両社の過去5期の業績は安定しており、統合が必要な喫緊の課題はないように見受けられる。では両社がなぜ統合したのか。統合についてはさまざまな理由があるが、①アステラス製薬といったライバルの動向、②将来の海外展開の基盤、③研究開発費の確保のため、規模を大きくすることが、両社のマネジメントの課題であったと推察する。また、06年会社法改正で、株式交換等のスキームにより外資系製薬会社が国内製薬会社を買収しやすくなったことも、規模の確保が必要になった一つの要因と想像できる。経営統合当時、アステラス製薬(06年3月期売上高8793億円)を抜いて武田薬品工業(06年3月期売上高1兆2122億円)に次ぐ国内第2位の製薬会社の誕生となった。

 また、経営統合の後、和光堂等医薬外の子会社の売却をはじめ、両社の子会社の整理が行われた。

(有価証券報告書、決算短信を元に制作)

2. ランバクシーの買収

 ランバクシーは、インドのデリーを本拠地とし、高脂血症及び感染症などの領域における後発医薬品の製造・販売及び研究開発事業を展開している。売上規模は07年12月期で約1800億円(過去3期の主要な財務数値は図2参照)。本件は、先進国市場におけるハイリスク・ハイリターンの従来型ビジネスに加え、新興国市場へのグローバルリーチを拡大し、さらに後発医薬品により先進国市場における薬剤へのリーチを広げた「複眼経営」に取り組むための最重要案件と位置付けられた。

 08年6月に株式の取得が発表され、08年8月公開買付開始、創業家一族からの取得など、ディールが完了したのが08年11月である。

 ランバクシーの取得費用は4884億円で、前の期(08年3月期)の現金及び現金同等物の金額4443億円(図3参照)に匹敵するビックディールだ。のれん代は4087億円、無形資産として商標関連で410億円などを計上している。償却期間について、のれんは会計基準で定められた最長期間20年、商標関連無形資産は10年が設定されていることから、年間の償却負担は約245億円となる。ランバクシー07年12月期の経常利益約250億円とほぼ同水準といえる。シナジー効果を発揮し、業績を拡大しなければ、損失が発生するディールであった。

 当時、日本の製薬会社の大型クロスボーダー案件が相次いでいた。例えば、08年1月に国内第5位のエーザイが、米国のMGIファーマを約4000億円で買収した案件や08年5月には、国内第1位の武田薬品工業が、米国のミレニアム社を約8000億円で買収した案件が挙げられる。国内ライバル会社がクロスボーダーの大型案件に取り組むなか、第一三共が意識しないわけがない。

 この時の代表取締役社長は統合時と同じで、前述の庄田氏で三共出身であったことから、三共案件と噂された。

(有価証券報告書、決算短信を元に制作)

3. 誤算

 結果から言うと、買収した期の09年3月期連結財務諸表に、のれんの減損費用などランバクシー関連で3516億円の特別損失を計上。前年の純資産1兆2445億円の約3割が損失の計上により吹き飛んだ(図3参照)。08年3月期に83.6%あった自己資本比率は、09年3月期には57.7%まで落ち込んでしまった。以降、自己資本比率が08年3月期の水準に戻っていない。

 誤算は、公開買付直後の08年9月から始まる。ランバクシーのパオンタサヒブ、デワスの2工場に対して米国GMP違反の警告状が出され、当該工場の米国向け製品について輸入禁止措置が取られる。また、09年2月に、パオンタサヒブ工場に対し、安定性試験データの一部改ざんが判明し、米国食品医薬品局(FDA)によるAIPが発動、より重たい措置となった。外部機関を含めた拡大対策チームの設置を余儀なくされた。

 解決に向けた前向きな動きは、3年後になる。11年12月にランバクシーのFDAとの同意協定書締結を発表。これにより、米国において、既存品の拡大に加え、重要新製品の市販に向けて事業活動を強化できるとした。また、12年3月期決算に、米国司法省との案件の解決に向け必要とされる5億ドルについて、ランバクシーで引当金を計上。13年5月には米司法省との協議が完了し、和解金5億ドルが確定した。

 本件は、元株主との国際仲裁裁判所の仲裁案件となり、M&A関係者の間で、法務デューディリジェンスの事例でよく取り上げられる、不名誉なディールとなってしまった。元株主が米国司法省及びFDAの調査に関する重要な情報を隠蔽(いんぺい)していたとされる。M&Aプロセスに不備がなかったか、研究が深まることが望ましい。国内企業のクロスボーダー案件は、買収後に苦戦するケースが多いとされる。M&A関係者としてM&Aプロセスを改善していく使命を感じる。

 買収後のランバクシーの業績の推移は図4の通り。第一三共の売上高に対する貢献はあるものの、純利益は開示のある09年3月期から14年3月期の6期中3期赤字、6期全体を合計すると276億円の赤字で、米国でのビジネスの縮小が響いた。

(有価証券報告書、決算短信を元に制作)

(有価証券報告書、決算短信を元に制作)

4. ランバクシーの売却

 ランバクシーをサン・ファーマシューティカル・インダストリーズ Ltd(以下サン・ファーマ)に売却することを発表したのは14年4月になる。

 サン・ファーマがランバクシーを吸収合併し、第一三共がサン・ファーマ株式の割り当てを受けた。ランバクシー株式1株に対してサン・ファーマ株式0.8株を割り当てるという合併比率で、第一三共が、サン・ファーマの株式の約9%を取得する取引となった。この取引により第一三共は、連結決算上、子会社合併差益を2787億円(税効果考慮後)計上した。

 また、15年に4月投資有価証券として計上しているサン・ファーマ全株式(帳簿価額4243億円)を3785億円で売却、特別損失として、215億円(税効果考慮後)が計上された。

 なお、第一三共は、サン・ファーマとの合併契約に基づき、ランバクシーのクロージング日前の品質問題などに関し、米国連邦政府又は州政府に支払う罰金及び損害などが、クロージング日から7年経過するまでの間にサン・ファーマなどに生じた場合、その63.5%について3.25億ドルを上限として補償する義務の履行求められることとなる。

 売却時の社長は、現在と同じ中山譲治氏、サントリー出身で生え抜きではないものの、第一製薬出身者だ。三共出身の庄田氏が社長時に買収したランバクシーを第一製薬出身の中山氏が社長時に売却したこととなり、売却は第一製薬出身者で主導したと噂された。

 16年5月には、元株主との国際仲裁裁判所の仲裁案件にも結論が出る。ランバクシーの株式を同社に譲渡したランバクシーの特定の以前の株主が米国司法省及びFDAの調査に関する重要な情報を隠蔽(いんぺい)したものと判断し、12年11月に、元株主を相手方として、国際商業会議所国際仲裁裁判所に仲裁を申し立て、シンガポールにおいて仲裁を行っていたが、16年5月に約562億円の仲裁判断を受領。業績に与える影響については、回収の目処が立った段階で公表するようだ。

5.ランバクシーを超えて

 今、ランバクシーの買収から始まったM&Aにおける苦難の道のりは、(サン・ファーマに対する表明保証を除いて)終着を迎えつつある。第一三共がランバクシーのM&Aから金銭的損失を被ったが、この売却を経て屋台骨を揺るがすほどではなくなっている。こうなると、第一三共の最も大きな損失は、時間を無駄にしたことだ。

 図5をご覧頂きたい。ライバルの武田薬品工業は、06年3月期に3400億円程度であった海外売り上げは、16年3月期には1兆1100億円になり、大幅に伸ばしている。ミレニアム社やナイコメッド社の買収が大きく貢献している。海外売上高比率も06年3月期は28%であったが、16年3月期には62%となっている。一方の第一三共は、06年3月期の海外売り上げは3072億円と武田薬品工業と遜色なかったが、16年3月期に4300億円と武田薬品工業と比較して伸び悩んでいる。海外売上高比率も06年3月期で33.2%に対して16年3月期で43.7%と上昇しているものの、武田薬品工業程ではない。国内製薬会社において最も重要とされる海外戦略について、差を付けられた形だ。08年に、ランバクシー買収時に掲げた後発医薬品と新興国という複眼経営は、振り出しに戻ってしまった。16年現在も、それに代わる目玉がない。ライバル企業が海外展開を加速させるなか、短期的にライバル企業に対抗する経営戦略を構築しなければならない。

 時間を買うにはM&Aしかない。新薬を開発し、新しいマーケットに打って出るのは中長期的な経営視点では重要であるが、ライバルとマーケットは待ってくれない。ランバクシーの失敗でM&Aをためらうといった愚策を取るのではなく、ランバクシーのM&Aで得た知識とノウハウを次のM&Aに生かしてもらいたい。

 この点、第一三共は16年3月に20年度までの中期経営計画を発表。M&Aや新規事業の開発に5000億円を投資するとした。サン・ファーマ株式の売却により、手元資金は約7000億円となっており、これを活用する。ようやく攻めの経営に転じることができる。

(有価証券報告書、決算短信を元に制作)

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。