傷だらけの東芝ブランド 白物家電は中国家電大手の傘下で変われるか

傷だらけの東芝ブランド 白物家電は中国家電大手の傘下で変われるか

2016.08.10

長年にわたる不正会計問題によって、信頼を失墜させた東芝。悪しき伝統は断ち切れるのか。消費者から厳しい目が向けられる中開催された、東芝ライフスタイルの記者発表会。6月にマイディアグループ(美的集団)の傘下に入った同社がその後初めて公に設けた新体制についての説明の場。40年続く東芝白物ブランドは変われるのか。

6月30日、東芝ライフスタイルの株式の80.1%が東芝からマイディアグループ(美的集団)に譲渡された。これにより、東芝の連結からはずれ、マイディアグループの傘下に入ることになった東芝ライフスタイル。(同社内にあった映像事業については、分割され、東芝の100%子会社東芝映像ソリューションとなった。)マイディアから2人の役員を招き、新体制がスタートしている。

登壇した東芝ライフスタイル石渡敏郎社長

事業主体は明け渡さない

8月8日、東京都内で行われた東芝ライフスタイルの記者説明会。マイディア傘下に入って初めての公の場で、新体制についての説明のため登壇した石渡社長。

「日本の皆様には安心してもらいたい」。社長は、これまでの東芝の白物家電事業の変遷や新事業体制について説明。事業の開発・製造・販売・アフターサービスの事業主体は変わらず東芝で、商品ラインナップも減ることなく、工場も維持、信頼性のある東芝ブランドのイメージと高い品質水準を維持することを約束した。

説明会の全編を通じて強調されたのは、40年継続してきた“東芝ブランド”が変わらないということ。“東芝”の看板への誇り、国内市場へのこだわりがうかがえた。しかしマイディアグループの傘下に入って、変わらないとは考えにくい。さらにいえば信頼性とイメージはすでに大きく下げてしまっている東芝から本当に変わらないといわれても、それはそれでいいのだろうか。記者からは相次いで質問が投げかけられた。

東芝ライフスタイルを傘下におさめるマイディアグループは、家電で世界第2位のメーカーで、200以上の国や地域で販売をおこなっている。売上高は約228億ドル。東芝とは、1993年にエアコンにおいて技術協力を開始して以降、電子レンジ、IH炊飯器などで技術協力などをおこなってきた歴史がある。

東芝ライフスタイルの会長に就任したマイディアグループの顧副社長は、ビデオレターで、経営理念として、権限の委任、信頼性、責務を重視していることを強調した上で、東芝ライフスタイルについては、石渡社長の自主経営を正式に認めているとあきらかにした。さらに、グループからの継続的な投資や支援を約束した。

東芝ライフスタイルの会長に就任したマイディアグループの顧副社長

2~3年後には、欧米、インド巨大マーケットを狙う

これまで聞くと本当になにも変わらないかのようにみえるが、そうではないようだ。東芝ライフスタイルの石渡社長はグローバルの事業シナジーを生み出すために、2社の持つ強みをいかしていくと説明。短期的に効果が上がることで言えば、部品を共通の調達先から仕入れることで、部品のコストを下げることが可能になる。

さらに、東芝は今まで日本の生活様式にあまり合致しないサイズでの商品がなかったが、マイディア傘下に入ることで、商品展開もバリエーションも増やすことができるようになるという。とはいえ、例えば国内市場において、増やしたバリエーションの商品を販売することになったとしても、ブランドは東芝。東芝ブランドを強く出していくという。

さらにはマイディアのグローバルでの強みを生かして、今後は、欧米、インドなど巨大マーケットにも東芝の白物家電の進出を目指していくという。時期は2~3年後、欧米では東芝のテレビなどをいまだに使用している家庭もあるため、ブランドはマイディアではなく東芝一本で考えているという。

そのほか設計、開発の技術協力、相互の製造拠点を活用した生産スマート家電、グローバル人材の育成などをともに進めていくとしている。

成長投資を拡大

「東芝ブランドは傷がついています」と自ら口にした石渡社長。今まで東芝傘下で、技術開発や広告、マーケティングなどへの投資も抑えられていたが、マイディアグループ傘下では、コスト削減だけでなく、成長のための投資も積極的に行っていけそうとの期待を明らかにし、マイナスな印象から逆転を図りたい考えだ。

“東芝ブランド”が変わらないことを最後まで強調

具体的な事業計画は現在2社の中で協議が進めれられており、決定次第発表するとしている。石渡社長は新体制にあたり、社員に対し「グローバルブランドになるチャンスを得た」と鼓舞、社員のモチベーションも高まり、すでに数十個のプロジェクトがスタートしていると社内の雰囲気がいいことをアピール。2017年度(1月から12月期に)には、営業利益、純利益ともに黒字転換させる見通しだと明らかにした。マイディアグループの子会社化は本当に東芝の白物家電の復活、そして世界ブランドへの始まりとなるのか。具体的な事業計画の中身に注目したい。

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる