TOKYO FMが“読むラジオ”を始めた理由

TOKYO FMが“読むラジオ”を始めた理由

2016.08.12

放送内容を記事化し、SmartNewsなどのキュレーションメディアに配信するラジオ局が増えている。リスナー獲得を狙った動きと見られるが、そもそも地上波で一度は放送した内容を記事化することに、どのくらいの効果があるのだろうか。いち早く記事化に取り組み始めたTOKYO FMで話を聞いた。

番組の記事化に外部の視点

TBSラジオ、ニッポン放送、J-WAVEの3社は2016年7月、SmartNewsに専用のチャンネルを開設し、記事配信を開始した。ラジオ局による番組の記事化事業がにわかに活気づいた印象だが、TOKYO FMがラジオ番組を記事化して掲載するサイト「TOKYO FM+(プラス)」を立ち上げ、SmartNewsにラジオ業界初となる専用チャンネルを開設したのは2015年4月のことだ。

TOKYO FM+には、毎日の放送内容から作成された記事コンテンツが並ぶ。記事の執筆は、番組制作に携わる構成作家が行う場合もあるが、基本的には編集の知見を持つ外部のライターチームが担当。番組スタッフによるブログは良くも悪くも“内輪ネタ”に走りがちだが、TOKYO FM+では外部の視点を取り入れることで、番組を聴いていない人にも読んでもらえるような記事作りに取り組んでいる。

TOKYO FM+のトップページ。記事はラジオ番組の内容をリライトしたものだが、リスナー以外の人でも読みたくなるように、見出しの付け方などに知恵を絞っているという。記事はYahoo!、SmartNews、Gunosy、antennaなどに配信している

ラジオを“読みたい”というニーズはある?

サイトに載せるのは、一見するとラジオ番組が元ネタと気付かないような記事だ。こういった記事を外部に配信することで、普段はラジオを聴かない人にも番組の存在を知ってもらうのがTOKYO FM+の狙い。ただの番組紹介ではなく、単独でも記事として成立するようなコンテンツを掲載・配信し続けることが同事業の肝となる。

ラジオ番組を書き起こして公開しているリスナーや、ラジオ番組を元ネタにしてニュース記事を作成するメディアが存在するという事実は、ラジオ番組を“読みたい”というニーズが一定程度はあることを示唆している。そのニーズを開拓するのに、最も適した立場にあるのはラジオ局だ。番組内容についてラジオ局が公式な記事を用意すれば、放送内容について余計な誤解を招いたり、番組で発言する出演者の意図を曲解されたりするリスクを減らすこともできる。

ラジオの競合はスマホアプリ?

「radiko」の登場により、スマートフォンでもラジオが聴ける環境が整った今、ラジオをラジオ以外のメディア、特にネット上で宣伝する重要性は増している。「(通勤時間などに)他のアプリを使っている人に、今、ラジオで面白いことが起こっていると定常的に伝える手段が必要だった」。TOKYO FM+の企画・開発を担当したTOKYO FM マルチメディア放送事業本部の藤井大輔氏は、同事業を始めた背景をこのように説明する。

TOKYO FMの藤井氏。TOKYO FM+の立ち上げを担当し、現在はTOKYO FMらが取り組む新たな放送プラットフォーム「i-dio」の企画・開発にも携わっている

記事のクオリティにもよるが、ニュースサイトやキュレーションアプリなどに記事配信を行うことで、TOKYO FMの番組がスマホユーザーの目に留まる可能性は高まる。radikoはバックグラウンド再生に対応しているため、記事を読んで番組に興味を持ったスマホユーザーが、radikoの「ながら聴き」に移行することも十分にありうるだろう。配信している記事のPV(ページビュー)について詳しい数字は聞けなかったが、記事経由でTOKYO FMに接触する人は1カ月あたり数百万人規模に達するようだ。

記事の読者を番組の聴取に結びつけるため、TOKYO FMは記事投入のタイミングにもこだわっている。例えば週1回の番組であれば、直近放送分の記事を次回放送の数時間前に投入し、読者をリアルタイム聴取に誘導するといった具合だ。「Pokemon GO」の大流行を引き合いに出しつつ、大勢で同じ時間に同じことをする楽しさが改めて注目を集めていると指摘する藤井氏。誕生当初から「リアルタイム性」を堅持してきたラジオが、再び脚光を浴びる日は近いのかもしれない。

radikoが「聴き逃し配信」に対応し、ラジオ番組の過去放送分を聴くことができる環境が整えば、TOKYO FM+の記事には別の用途も出てきそうだ。過去番組の記事にradikoのリンクを張れば、記事の読者を直接、過去番組の聴取へと誘導するルートが確立する。記事の読者をリスナーにするのに、実際の番組を聴いてもらうことほど有効な手段はないはずだ。

記事コンテンツがラジオの“検索ワード”になる

ラジオ局がネット上で番宣を行う方法として、番組の記事化は有効な手法といえそうだが、記事コンテンツがネットに存在することにより、ラジオとネットユーザーがつながるルートは他にも考えられる。記事がラジオ番組の「検索ワード」となるケースだ。

そもそも、ラジオ局はHPに各番組のサイトを用意しているものだが、訪問者の多くはリスナーで、その番組に関心のない人が偶然サイトを訪れるケースは稀だ。ラジオ番組に紐付く記事コンテンツがネット上に存在すれば、番組に関心がない人が検索サイト経由でラジオ番組に流れ込む可能性が出てくる。例えば著名人の名前を検索サイトに打ち込んだ場合、その人物が出演するラジオ番組のサイトが検索結果の上位に登場することはほとんどないが、その番組に紐付くニュース記事として、TOKYO FM+が上のほうに来ることはありうる。番組の記事化は、ラジオ局にとっての「SEO対策(検索エンジン最適化)」と捉えることもできるのだ。

ラジオ記事を収益化する方法は

「リスナーを増やしつつ、運用コストを広告営業でまかない、持続性のある広告・宣伝活動として定着させるのがミッション」。番組の記事化は新規リスナーの獲得につながるが、同事業を続けていくためには単独で収益化することも重要と藤井氏は語る。

収益化の仕組みとして、TOKYO FM+が取り入れている手法はアーカイブの有料化と広告だ。同サイトでは、番組の宣伝効果が高い直近の記事は無料で提供しつつ、主に番組のコアなファンが読みにくるであろう過去記事については有料コンテンツとし、プロモーションと収益化の両立にトライしている。

TOKYO FM+の広告メディアとしての側面を見ると、同サイトではバナー広告を受け付けているほか、広告記事の販売にも取り組んでいる。TOKYO FMで特別番組を放送するスポンサーに対しては、同サイトを使った番宣を提案することも可能だ。TOKYO FM+をビジネスとして見た場合の収支について詳しい話は聞けなかったものの、藤井氏は黒字化も近いとの手応えを得ている様子だった。

番組制作にも役立つフィードバック

新規リスナーの獲得につながり、単独での収益化も達成可能だとすれば、ラジオ局が番組の記事化を行う意義は大きいといえそうだが、この取り組みにより、読者・リスナーから得られる反応もTOKYO FMにとっての収穫となっているようだ。

記事の反響はPV数となって明確に現れるため、TOKYO FMは様々な記事を作成することで、読者・リスナーが関心を持っているテーマや、世間の注目を集めているアーティストなどについて情報を得ることができる。これを番組作りにフィードバックすれば、本放送の魅力が高まり、ひいてはTOKYO FMの広告媒体としての価値が向上するという好循環が生まれるのだ。

TOKYO FM+はネット上のサテライトスタジオ

TOKYO FM+は21世紀のスペイン坂スタジオに育つか

番組知名度の向上、新規リスナーの獲得、収益化、番組制作へのフィードバック。ラジオ局が番組の記事を作成する意義は多岐にわたるが、一番の目的は本放送のリアルタイム聴取者を増加させることだと藤井氏は強調する。

「(TOKYO FM+を)21世紀のスペイン坂スタジオにしたい」。行き交う人にTOKYO FMの情報を発信し、人を集め、集まった人に番組を聴かせる場所という意味で、藤井氏はTOKYO FM+をネット上のサテライトスタジオのような存在に育てたいと語る。渋谷PARCOパート1の建て替えに伴い、同ビルの1階に入居していたスペイン坂スタジオが23年の歴史に幕を下ろした今、TOKYO FMの玄関口として、TOKYO FM+の存在意義はますます高まっているといえそうだ。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。

新型VAIOの攻め手は十分か? 日の丸パソコン再起の展望

新型VAIOの攻め手は十分か? 日の丸パソコン再起の展望

2018.11.14

VAIOが独自機構の新型モバイルPC「A12」を発表

パソコン事業の成長は数年続き、海外展開も拡充

パソコンのVAIOから、ITブランドのVAIOを目指す

VAIOが業績が好調だ。2017年度は売上、利益ともに2ケタ成長となる増収増益を達成した。PC事業が順調なことに加え、EMS事業も進展したことが奏功したという。11月22日にはオールラウンダーPCというコンセプトを打ち出した新型モバイルパソコン「VAIO A12」を発売する。国内PC事業は合従連衡や海外への売却が続くが、数少ない「純国産」のPCメーカーであるVAIOの今後の戦略とは。

VAIO A12

働き方改革を追い風に地固め、今後は拡大を目指す

VAIOは、ソニーから独立後、法人向けビジネスを中心に据えたことで、早くから黒字化を実現しており、今期も順調な決算となった。売上高は前年同期比10.8%増となる214億8,800万円、営業利益は同13.9%増となる6億4,800万円で、過去最高益を達成した。

PCの法人需要が旺盛で好調な決算となった

法人向けモバイルPCの伸びが前年比30%増と順調だった点が特徴で、その背景にあるのが昨今のトレンドとなっている「働き方改革」だ。テレワークやフリーアドレスなど、それまでの決まったデスクに座ってデスクトップPCを操作するという環境から、ノートPCを持ち歩いて仕事をするという環境に移っていくなかで、VAIOの製品構成がこれに上手くはまった。

VAIO株式会社 代表取締役 吉田秀俊氏

VAIOでは、2017年から11~15インチのモバイルPCでラインアップを構築しており、今年はその後継機種を投入していた。パフォーマンスに特化したVAIO True PerformanceやVAIO Premium Editionといったバリエーションモデルも提供してはいるが、一方でVAIO ZやVAIO Z Canvasといった過去のハイエンドモデルに相当する製品はなく、あくまで「メインターゲットは法人ユーザー」を想定していることが伺える。

同社の吉田秀俊代表取締役は、今後も数年はPC事業が伸長を続けると想定している。働き方改革の拡大を受けて法人需要がさらに伸びることに備え、ラインアップをさらに拡充することで売り上げを伸ばしたい考えだ。

構想3年、開発2年の「VAIO A12」

これを目指して今月発売する新ラインアップが、12.5インチサイズのデタッチャブルWindows PC「VAIO A12」だ。市場にある課題とその解決を徹底的に図ったという製品で、求められているPCはクラムシェルか2in1か、タブレットタイプかコンバーチブルかデタッチャブルか、そういったゼロからの検討を行った結果、「構想3年、開発2年」を費やして仕上げたモバイルPCだという。

VAIO A12は、既存のカテゴライズでは、タブレットとキーボードの着脱機構を備えたいわゆる2in1モバイルPCだ
「膝上で使える」問題の解決や、まともなキーボードの搭載など、クラムシェルPCの使い勝手を求めた

前提とした課題がすべて解決しない限り製品化を見送るという強い意識で開発されたのがA12であり、それには新たな技術的ブレークスルーが必要となった。それが「Stabilizer Flap」と呼ばれる新たなデタッチャブルの機構だ。

「Stabilizer Flap」と呼ばれる独特のデタッチャブル機構が最大の特徴

きっかけは書籍の背の動きだったそうだが、軽量なPCを実現しながら、クラムシェル型と同等の使い勝手を実現した。キーボード部にはVGAやLAN端子を含む多くの端子類を装備して、周辺機器との接続性を求める日本の法人ユーザーのニーズに対応させた。実際、すでにA12導入に向けて動いている法人の中には、「VGAがあるのが選択の決め手」というところもあるそうだ。

機能はとにかくニーズの実現を徹底し、端子が豊富という今では貴重な仕様。手持ちのモバイルバッテリで本体を充電できる5V充電機能もいざというときに役立つ

コンシューマ向けで考えると、端子を減らしてスッキリとしてさらに薄型化、軽量化、低価格化も期待したいところだが、豊富な端子に対する法人ニーズは根強く、その点はVAIOとして譲れない線ということだろう。ただ、薄型軽量であることにはこだわり、タブレットとしては重さ607グラムで薄さ7.4ミリ、キーボードユニットを装着しても重さは1,099グラムまで抑え込んだ。

ソニー時代から同社が得意とする高密度実装技術を活かし、薄型軽量化にもこだわった

海外市場に再挑戦、PCラインアップも早々に増やす

PC事業では、一度は撤退した海外市場に向けて再挑戦にも乗り出している。販売エリアを順次拡大しており、今年は12カ国まで拡大した。今後は北米、中国、欧州での展開を計画している。特に欧州へは「検討中というわけではなく、決めている。来年早々にも展開する」(吉田氏)という。

PC事業の勝算はあるのか。吉田氏は、会社としてのVAIOが240人体制になり、「(ソニー時代に比べ)限られたリソースの中でどう成長戦略を描けるか」が課題であったと振り返る。この1年は「足りているもの、足りていないものを見極める」ことに集中し、独立後1~3年という「短期決戦を乗り切った」と話す。

引き続き、「VAIOはPC事業だけで将来生き残れるのか、という(市場の)問いに答えなければならない」としており、その答えとしては、「ビジネスユーザーにPCは必要なので、PCが大きな核としてVAIOを支えるのは間違いない」とするが、それだけではPC事業としての生き残りには不十分というのが吉田氏の認識だ。

そのため、技術革新や世の中の進化に伴って、ユーザーの生産性をいかに高められるかという観点で新しいPCを打ち出し、生き残りを図っていく考え。その一つの回答が「VAIO A12」となるが、来年以降の新製品でもそうした点を踏まえた新製品を投入していく。「来年度はもう少し違った形で生産性を高める製品を提供していく」という意向を示しており、年明け早々には今までとは異なるタイプの製品を企図しているようだ。

現行のラインアップ。最上部にあるのがVAIO A12で、来年さらなる新ラインアップを展開する

PCはVAIOのコアだが、VAIOはPCブランド脱却目指す

吉田氏は「貪欲な姿をもちながら、VAIOのブランドを伸ばす」と話すが、ここで大きな戦略の柱となるのは、「PCブランド」としての「VAIO」ブランドからの脱却だという。PC事業は順調とは言え、ライバルも多い。MicrosoftのSurfaceだけでなく、レノボとその傘下のNEC、富士通、鴻海傘下のシャープ、東芝、そしてデル、HPといった米国勢もあり、働き方改革の影響で伸びた市場をどこまで獲得できるかは未知数だ。

吉田氏は「次世代ITブランドとしてのVAIOを目指す」としており、単にPC単体を売るのではなく、セキュリティやキッティングといった付加価値サービスも盛り込むことで、トータルソリューションとしてのPC事業を展開する。

これに、EMS事業でのシナジーも追加していきたい考えだ。あわせてPCの周辺機器などを扱うことで、PC事業の強化にも繋げていき、市場全体の活性化も狙える。ハード、ソフトの両面から事業領域を拡大していく。

PC事業は、周辺機器やセキュリティソリューションなどでさらなる拡大を目指す

EMSやパートナーの強化、IoTなどの新規事業など、ビジネス領域の拡大で企業としてのVAIO自体の強化を目指すが、今後も屋台骨となるPC事業で好調を維持できるか。ここまでの短期決戦を乗り切り、ここから一過性の盛り上がりではなく継続した強い事業構造への転換を図る、吉田氏が「フェーズ2」と呼ぶVAIOの新たな成長戦略がはじまったばかりだ。