【東京海上ホールディングス】積極果敢なクロスボーダーM&Aで海外売り上げ拡大

【東京海上ホールディングス】積極果敢なクロスボーダーM&Aで海外売り上げ拡大

2016.08.13

【東京海上ホールディングス】積極果敢なクロスボーダーM&Aで海外売り上げ拡大

東京海上ホールディングス<8766>のM&Aの特徴は、2001年から翌年にかけての東京海上保険と日動火災保険の統合すなわち国内においての統合と、その後におけるクロスボーダーM&Aにある。

東京海上保険と日動火災保険の統合

 東京海上保険は三菱財閥に所属する会社として1879年に設立された日本最初の保険会社であった。一方、日動火災保険は、旧安田財閥に所属する会社として1898年に東京物品火災保険という商号で設立され、動産に強みがある保険会社であった。

 両社が統合するのは設立から100年以上先の2002年になる。これには、金融市場のグローバル化の流れの中で、改正保険業法などの施行により始まった保険商品の自由化による保険会社間の競争激化の流れが影響している。加えて、我が国においてバブル経済の崩壊以降に起きた資産運用環境の長期停滞もあり、保険業界では経営基盤強化と業務効率化を目的とした業界再編が進んだ。02年4月に東京海上と日動火災は、一般・金融事業を傘下に持つ国内初の上場保険持株会社ミレアホールディングスを設立し統合を果たし、08年に東京海上ホールディングスに商号変更して現在も存続している。

 当時、業界では大手損保会社の統合ラッシュであった。01年に日本火災と興亜火災が合併し、日本興亜損保が、02年に安田火災と日産火災が合併し損保ジャパンが誕生、その後両社は14年に合併し、損保ジャパン日本興亜損保となっている。

 また、01年に三井海上と住友海上が合併し三井住友海上が誕生。01年に大東京火災と千代田火災が合併しあいおい損保が、01年同和火災、ニッセイ損保が合併しニッセイ同和損保が誕生した。09年には、三井住友海上、あいおい損保、ニッセイ同和損保の経営統合、現在のMS&ADインシュアランスグループホールディングス(以下MS&AD)となっている。

 現在、国内大手損保会社は、東京海上ホールディングス、SONPOグループ、MS&ADの3グループに集約されている。

■東京海上ホールディングスの主なM&A

年月 内容
1944.3 東京海上は、明治火災および三菱海上火災で合併し、東京海上火災保険となる
1944.8 日動火災海上保険が東邦火災保険を吸収合併
2001.1 東京海上保険と日動火災保険、共同持株会社の設立に関して合意
2002.4 東京海上火災保険と日動火災海上保険が共同でミレアホールディングスを設立。なお、2008年に東京海上ホールディングスに商号変更
2004.2 スウェーデンのスカンディア生命の日本法人株式(1617億円)を200億円で取得(100%)
2004.10 ミレアホールディングス傘下の東京海上火災保険と日動火災海上保険が合併、東京海上日動火災保険となる
2005.2 日新火災の発行済株式総数の30.99%を150億円で取得
2005.4 東京海上日動火災保険は、359億円で売上規模439億円のABN アムロ(ブラジル)グループの損害保険会社 Real Seguros S.A.の発行済株式の100%および生命保険・年金会社 Real Vida e Previdencia S.Aの発行済株式の50%を取得することについて合意
2006.4 東京海上日動火災保険は、主にシンガポール・マレーシアで生損保事業を展開している Asia General Holdings, Limited(収益334億円)の15%の買収につき、主要株主と合意
2007.12 東京海上日動火災保険が英国ロイズを中心にグローバルに保険事業を展開する保険グループのキルン社(収益1030億円)を1061億円で完全子会社化する手続きを開始することについて、同社と合意(100%)
2008.7 東京海上ホールディングスは、当社子会社である東京海上日動火災保険を通じ、米国の損害保険グループ「フィラデルフィア・コンソリデイティッド社」(収益1950億円)を4700億円で買収する手続きを開始することについて、同社と合意(100%)
2011.8 東京海上ホールディングスは、当社子会社である東京海上日動火災保険を通じ、米国の大手保険グループCNA Financial Corporation社が子会社The Continental Insurance Companyを通じて保有するFirst Insurance Company of Hawaii, Ltd.(収益137億円)の発行済み株式の 50%を129億円で取得することで基本合意
2011.12 東京海上ホールディングスは、同社子会社である東京海上日動火災保険を通じ、米国の生損保兼営保険グループデルファイ・ファイナンシャル・グループ(収益1100億円、以下デルファイ社)を2050億円で買収する手続きを開始することについて、デルファイ社と合意
2015.10 東京海上日動火災保険株式会社を通じ、米国スペシャルティ保険グループであるHCCインシュアランス・ホールディングス社(収益3751億円)を8980億円で買収(100%)

クロスボーダーM&A

 近年の東京海上ホールディングスは、「グローバル保険グループ」を旗印とし、海外展開を加速している。巨大な米国市場、欧州市場の開拓、アジアを中心とした発展途上国の成長の取り込み、また東日本大震災といった大災害を含むリスクの分散などさまざまな理由がある。グループ全体の収益、利益、純資産、総資産の推移は図1の通りである。09年3月期のリーマンショックの影響による収益の減少や、12年3月期東日本大震災による当期純利益の減少は見受けられるものの、堅調に推移していると言える。

図1

 一方で、海外売上高のみの推移は図2の通りである。07年3月期までは、売上高に占める海外売上高の割合が10%以下ということで有価証券報告書のセグメント情報において海外売上高の開示がなかったが、08年3月期以降10%を超え、その後10%を下回ったことはない。15年3月期では、全体の売上高4兆3000億円のうち、海外売上高が1兆4000億円となり、売上高全体の約3分の1が海外売り上げとなった。16年3月期も同水準の海外売上高が維持されている。

図2

■海外売上高

■海外売上高割合

 東京海上ホールディングスの掲げる「グローバル保険グループ」という経営戦略は、M&A戦略にも浸透している。04年スウェーデンのスカンディア生命の日本法人取得(買収価額200億円)、05年ブラジルのReal Vida e Previdencia S.Aの株式50%取得(買収価額359億円)、06年シンガポール・マレーシアのAsia General Holdings, Limitedの買収(初期的には15%で買収価額100億円)、07年キルン社買収(買収価額1061億円)、08年米国フィラデルフィア・コンソリデイティッド社買収(買収価額4700億円)、11年米国First Insurance Company of Hawaii, Ltd.の株式50%取得(買収価額129億円)、同じく11年デルファイ・ファイナンシャル・グループ(以下デルファイ社)の買収(買収価額2050億円)と近年において数多くのクロスボーダー案件を実行してきた。

フィラデルフィア・コンソリデイティッドの買収

 フィラデルフィア・コンソリデイティッドの買収は、非日系の企業保険分野での事業基盤を飛躍的に強化し、米国保険市場での本格展開を実現することを目的としている。このM&Aは近年実行してきたM&Aの中で財務的にも特徴がある。受け入れた資産が5200億円に対して、受け入れた負債が2900億円、買収価額が4700億円であったことから、のれん代が約2500億円計上されることとなったのだ。この結果、08年3月期の無形固定資産が550億程度であったものが、09年3月期にはのれん代だけで2900億円と大幅に増加することとなった。

直近のM&A動向

 直近では15年10月、ニューヨーク証券取引所上場のHCCインシュアランス・ホールディングス(以下HCC社)の株式100%を取得した。買収価額は8980億円と、大型案件を数多く実行してきた東京海上ホールディングスにおいても超大型の案件となる。受入資産1兆2800億円、受け入れた負債が7300億円と大きく、のれん代も多額に計上された。本件のれん代は3390億円で、15年3月期に2258億円であったのれん残高は、16年3月期に5345億円となり、倍以上となった。10年償却であるため年間の償却負担は本件だけで339億円に上る。このM&Aはシナジー効果も大きい。①東京海上グループとHCC社の事業ポートフォリオは補完的であり、日本をはじめとする先進国に加え新興国も含めた東京海上グループのグローバルネットワークを通じて、HCC社の主力商品である医療・傷害保険や会社役員賠償責任保険その他のスペシャルティ保険商品の販売を展開できること、②HCC社の引き受けキャパシティの拡大や出再保険の最適化による収益の拡大が図れること、③デルファイ社の資産運用力の活用により、HCC社の資産運用収益の拡大を図れることが主なシナジー効果の内容である。16年5月に発表された新中期経営計画によると、16年度は、このHCC社の買収による影響により純利益の増加が見込まれるとしている。M&A戦略において、シナジー効果が見込める案件にはリスクをとって進めるという姿勢が、東京海上ホールディングスの将来を担っていく。

 東京海上ホールディングスは、海外保険事業において、グループ全体の利益成長ドライバーとして、「内部成長力の強化」と「戦略的なM&A推進」両輪で先進国・新興国でバランスある成長の実現を目指していく。M&A戦略においては、買収規律を維持しつつ、新規事業投資案件を継続的に検討していく方針だ。東京海上ホールディングスが重視する指標の一つにROE(及び、修正利益と修正純資産で計算される修正ROE)がある。図3の通り、ROEは過去5年上昇基調にあるが、獲得した利益を留保するだけでは指標は下がっていく。新規事業投資案件を継続的に検討し、グループ全体の資本効率の向上を目指す。

図3

■株主資本当期純利益率

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

恋するSNSマーケティング講座 第1回

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

2018.11.14

Facebook社員に「マーケティングのイロハ」を聞く新連載!

第1回は、講師の紹介と「マーケティングと恋愛」の関係性について

フェイスブック ジャパンのSNS運用コンサルタントに「SNSマーケティング」について聞く短期連載。初心者~中級者に知ってほしい「マーケティングの考え方」について、全5回にわたって説明します。

キーワードは「恋愛」。とっつきづらいマーケティングも、恋愛に喩えて考えてみると、意外とわかりやすいようです。

「恋愛とマーケティングは似ていると思うんです」

FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSを活用したマーケティングは今や企業にとって欠かせないものになっている。

一方で、「どこから始めればいいのかわからない」「そもそもSNSマーケティングって?」といった疑問もまだまだあるだろう。そこで今回は、フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リードを務める丸山祐子さんを講師に迎え、SNSマーケティングを“恋愛”に喩えてわかりやすく解説してもらうことにした。

フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リード 丸山祐子さん

なぜ“恋愛”なのか。それは「日々のお客様とのやりとりの中で、恋愛とマーケティングは似ていると感じることが多かったから」と丸山さんは言う。

丸山さん自身も現在婚活中の身。これまで仕事最優先で生きてきたが、最近になってパートナーを探すべく婚活を開始したという。その過程で感じたのが、前述の恋愛とマーケティングの共通点だったというわけだ。

「流行」は人の手でつくられるモノ

今回は連載初回ということもあるので、まずは講師である丸山さんの経歴から紹介しよう。

東京で生まれ育った丸山さんは、中高大一貫校に通っていた。小学生時代から「自分の知らない世界に行ってみたかった」という丸山さんは、高校時代に初海外となるカナダを訪れる。

「知らない言語で話しかけられたり、東京では見られない地平線や水平線を見たりして、私の知っている世界はなんて狭いんだろうと思いました」(丸山)

海外に魅了された丸山さんは、一念発起してカリフォルニアの大学に進学。そのころ、「ファッションの流行は自然に生まれるのではなく、必ず裏には仕掛人がいる」ということを実感したのがキッカケとなり、「自分も人の心を動かす仕事がしたい」と考えるようになった。

大学卒業後は日本に戻り、人材業界で働くことに。長くアメリカで過ごしていたこともあり、日本の業界事情がつかめない中、「まずはいろいろな業界を知りたい」と考えたためだ。

その後、「リーマンショック」が起こり人材業界の業績が悪化したこともあり、業務を通して興味を持つようになったデジタル業界への転職を決意。転職先は、IT業界を中心にメディアプランニングなどを行う電通の子会社。メディア担当として、デジタル広告のイロハを学んだ。

そこで担当していたクライアントが、当時日本に上陸したばかりのFacebookだった。その後、それまで培ったデジタル広告のノウハウをより活かすべく、フェイスブック ジャパンへ転職し、現在に至る。

広告はラブレター「相手に届かないと意味がないんです」

丸山さんは現在、FacebookやInstagramの広告メニューについて、運用コンサルやメディアプランニングなどを行っている。また、Instagramをより企業に活用してもらうためのプロジェクトメンバーとしても活動しているそうだ。

さて、そんな丸山さんがFacebookのコンサル業務を通して常々感じていたのが「恋愛とマーケティングの共通点」である。

どんな業界でもそうだが、良い製品だからといって何もせずに売れるわけではない。“届けたいメッセージを届けたい相手にちゃんと伝える”必要がある。これがマーケティングの目的だ。

「広告はよくラブレターに例えられます。いくらラブレターを書いても、それがちゃんと届けたい人に、その人の心に響くかたちで届かないと意味がありませんよね。ラブレターを届けるために恋愛にもマーケティングが必要なんです」(丸山)

婚活において“ラブレターを届けるべき相手”とは、まだ見ぬ将来のパートナーだ。その相手はどこかに存在しているはずだが、まだ出会ってはいない状態である。運命の相手と出会うために重要なことの1つは「とにかく出会いの数を増やすこと」だという。

「1人と会ってみて、その人が運命の相手ならラッキーですし、そういうケースもあるでしょう。でも、そうでない場合には、たとえば運命の相手と出会える確率が1/100だとして、10人と会うのと100人と会うのではどちらの方が出会える確率が高いか、言うまでもありません」(丸山)

これはそのままマーケティングに置き換えても同じことが言える。自社の製品を購入してくれる潜在的な顧客の態度変容効果が一緒であるなら、できるだけ多くの人数に広告を届けた方が売上は伸びるはずだ。

「そう考えると、婚活でもせっかくの週末に部屋にこもっているのはもったいないなと思いますよね。積極的に行動をおこして、多くの人に出会う機会を増やすことが大事なんです」(丸山)

一方で、重要なのは数だけではないと丸山さんは言う。多くの人にリーチすることは大前提として、そこからさらに“出会いの効率”を上げていく必要があるのだ。

では「数」に続いて大事なこととは? 次回は効率を上げるために必要な「ターゲティング」について、これまた恋愛と絡めて聞いていく。

第2回「恋するSNS講座」は11月20日に掲載予定です。

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

2018.11.14

日本自動車研究所が「自動バレーパーキング」の実証実験

駐車をシステム任せにできる仕組みとは?

未来の駐車場はクルマの“ハブ”になる

自動運転、電動化、カーシェアリングなど、新たな技術・サービスの登場により変革期を迎える自動車業界。クルマの乗り方、使い方を根本的に変えるかもしれないこれらの要素をまとめて「CASE」というが、この文字を目にする機会も増えてきた。クルマが変わればクルマに関連するモノや場所も変わりそうだが、例えば駐車場は、どのような姿になっていくのだろうか。日本自動車研究所(JARI)の実証実験で、その一端を垣間見た。

「CASE」の進展で駐車場の姿も一変する?

「バレーパーキング」を自動化

「CASE」とは「Connected」(コネクティッドカー)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Service」(カーシェアリングなど)、「Electric Drive」(クルマの電動化)という4つの言葉の頭文字をとってダイムラーが使い始めた概念のこと。そのうち、コネクトと自動化の2つを使って、JARIが実用化の道を探っているのが「自動バレーパーキング」というシステムだ。

JARIは経済産業省および国土交通省の委託を受け、2016年度から「一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」というプロジェクトを進めている。「バレーパーキング」とは、例えばホテルやショッピングセンターなどにクルマで乗りつけたとき、キーを従業員に預けて、代わりにクルマを駐車しておいてもらうサービスのこと。その自動化に向けて、JARIはシステム、制度、事業性などを検証してきた。

JARIは今回、自動バレーパーキングシステムの機能的な確認を行うためとして、東京都港区にある「デックス東京ビーチ」の駐車場で実証実験を実施。その模様を報道陣に公開した。そこではクルマが勝手に動き、定められた駐車スペースに止まり、再び動き出す様子を見ることができたし、自動バレーパーキングを含めた駐車場の未来像に関する話も聞くことができた。

JARIはデックス東京ビーチ駐車場の2階で実証実験を実施した

自動バレーパーキングとはどんなシステムなのか

自動バレーパーキングをドライバー目線で説明するのは簡単だ。例えばショッピングセンターのエントランスにクルマで乗りつけたならば、降車してスマートフォンのアプリで「入庫」を指示し、そのまま買い物にでも食事にでも向かえばいい。用事が済んだ頃に「出庫」ボタンを押して出口に向かえば、クルマ寄せには愛車が迎えに来ている。

自動バレーパーキングの指示はスマホで行う

では、そのシステムはどのようなものなのか。自動バレーパーキングは「クルマ」「管制センター」「駐車場」の3者による協調で機能する。駐車場の構造を把握している「管制センター」は、ドライバーから入庫の要請を受けると、安全性や効率を考慮して駐車場所とそこへ向かう経路を決め、「クルマ」に無線で指示する。「クルマ」は「駐車場」にあるランドマーク(目印)をカメラやセンサーなどで読み取り、「管制センター」が持つ駐車場の構造情報(地図)と擦りあわせて自らの位置と経路を確認し、指示された駐車スペースに向かう。そんな流れだ。

自動バレーパーキングの様子。運転席に人は乗っているが、ハンドルからは手を離している

同システムが実用化となれば、駐車場の「利用者」は手間を省けるし、「事業者」は駐車効率の向上を図れる。無人で自動運転を行うクルマであれば、ドアの開閉スペースは不要だし、ぶつけたりこすったりする心配もないはずなので、クルマをギュウギュウに詰め込めるからだ。JARIによれば、駐車効率は従来比で20%向上する可能性があるという。また、自動車事故の3割は駐車場で発生しているので、自動化は事故削減にもつながる。

ただ、実用化には当然ながら、いろんなハードルがある。自動バレーパーキングの実用化に向けて動いているのは日本だけではないが、JARIとしてはまず、同システムの国際標準化に向けた手続きを進めたい考え。2021年のISO国際標準化に向け、各国と協議を重ねているところだ。

また、システムが実用化となったとしても、最初から全てのクルマが自動バレーパーキングを利用できるわけではない。まず、通信機能が備わっていないクルマはアウトだし、通信できたとしても、管制センターの指示通りに自動運転をこなせるクルマでなければ、やはり同システムの恩恵は受けられない。

JARIの考えでは、まずは同システムが求める要件を満たすクルマだけが使える専用の駐車場を実用化し、段階的に「混在型」を目指すのが現実的だそう。ただし、混在型を実現するためには、人が運転するクルマと自動運転のクルマを駐車場内でうまく交通整理する工夫が必要になるだろう。

未来の駐車場はクルマの「ハブ」になる?

自動バレーパーキングの実用化には時間が掛かりそうな雰囲気だが、その先の駐車場の在り方についてもJARIは考えをめぐらせている。JARIのITS研究部に所属する深澤竜三さんによると、未来の駐車場が目指すのはクルマのハブ、つまり、クルマにまつわるさまざまなサービスの結節点だ。

JARIが描く未来の駐車場の姿

ハブ駐車場とはどのような施設なのか。深沢さんの描写はこんな具合だ。

「自動バレーパーキングで、勝手に駐車しておいてくれるのはもちろんですが、そこが自動車整備の拠点としての役目を果たしたり、電気自動車(EV)であれば、勝手に充電しておいてくれるとか。買い物が終わる頃には充電が済んでいるというのが理想ですね。あとは、観光地であれば情報配信拠点としての機能も想定できます」

「ほかのアイデアとしては、クルマを駐車しておいたら、宅配便がトランクに届いている、といったような使い方も考えられます。その場合は、トランクを開けられるような仕組みが必要にはなりますが、届け先を1件ずつ回る必要がなくなるので、配送業者の方も楽ですよね」

未来の駐車場は、クルマにまつわるいろんな機能を提供する拠点になるかもしれない

深澤さんの話を聞いていると、おそらくハブ駐車場はホテルに1つ、ショッピングセンターに1つという具合にではなく、地域に1つ、しかも大型の施設として存在するもののように想像できた。用事で近くまで来た人も使えば近隣の住人も使うし、カーシェアやレンタカーなどのクルマも混在している大きな駐車場。そんなイメージだ。

こういう駐車場が必要かどうかについては、地域によって状況が違うだろう。コンビニエンスストアですら広大な駐車場を備える地域がある一方で、例えば銀座のように、数台しか止められないけれど、短時間で驚くべき値段になるコインパーキングが稼動している場所もある。おそらく、ハブ駐車場が必要になるのは後者の方だ。

銀座に大きなハブ駐車場を作る余地があるかどうかは別としても、クルマの駐車以外には使いみちがないという点で「デッドスペース」化している駐車場に、さまざまな機能を持たせるというJARIの構想には可能性を感じた。一般道の自動運転も実用化となれば、例えば東京オリンピックの後、有明かどこかに残された広いスペース(会場の跡地)に大きなハブ駐車場を作り、そこと銀座などの繁華街を結ぶということも、夢のようではあるが不可能ではないはずだ。