日本の家電メーカーは復活できるのか? 白物家電は業績悪化の要因ではなかった

日本の家電メーカーは復活できるのか? 白物家電は業績悪化の要因ではなかった

2016.08.16

シャープと東芝の2社は、電機大手8社(日立製作所、パナソニック、ソニー、東芝、富士通、三菱電機、NEC、シャープ)のなかで、負け組企業に位置づけられている。だからこそ、シャープは台湾の鴻海精密工業の傘下となり、東芝の白物家電事業は中国マイディアグループに買収された。それが多くの人に共通した認識だ。

実際、両社の業績は厳しい。

シャープが発表した2015年度(2015年4月~2016年3月)の連結業績は、売上高が前年比11.7%減の2兆4615億円、営業損失は前年の480億円の赤字から悪化し、マイナス1,619億円の赤字。経常損失は前年の965億円の赤字から悪化し、マイナス1,924億円の赤字となった。当期純損失は前年の2,223億円の赤字から、マイナス2,559億円へ広がった。2期連続の大幅な赤字となり、債務超過の状態に陥っている。

8月13日にリリースされた「新社長就任のお知らせ」。鴻海グループの戴正呉(たい せいご)副総裁を代表取締役社長とする

2016年度第1四半期(2016年4月~6月)も、売上高は前年同期比31.5%減の4,233億円、最終赤字は前年から改善したものの、274億円の赤字が残り、債務超過額がさらに膨らんだ。 鴻海精密工業による出資は、6月23日に開催された株主総会において承認されたものの、その後、中国での競争法当局の認可取得が難航。8月11日にようやく審査が完了。払い込みが行われることで債務超過は解消することになる。今後は、新体制へと移行することで、新たな事業体制での再建が始まることになる。

子会社売却でひと息ついた東芝

一方の東芝は、2015年度の連結業績は、売上高は前年比7.3%減の5兆6,701億円、営業損失は前年の1,884億円の黒字からマイナス7,191億円の大幅な赤字に転落。税引前損失は1,566億円からマイナス6,422億円の赤字。当期純損失は前年の378億円の赤字から、マイナス4,832億円の赤字。営業損失、最終損失の赤字は、いずれも過去最大となった。

東芝も、2015年度末には、自己資本が1,500億円にまで減少。債務超過に陥る直前であったが、キヤノンに、医療システム子会社の東芝メディカルシステムズを、6,655億円で売却。これにより、財務的には一服つくことができた。さらに、白物家電事業も、同事業を担当する東芝ライフスタイルの株式の80.1%を中国マイディアグループ(美的集団)に約537億円で譲渡。これも、東芝の財務体質の改善につながっている。   しかし、どちらも白物家電については、業績悪化の決定的な要因にはなっていない。

おもに液晶事業向けの巨大投資となった「グリーンフロント 堺」

シャープは、液晶事業の不振がきっかけとなって業績が悪化。白物家電を含むコンシューマーエレクトロニクスの売上高は2015年度実績で、前年比17.5%減の8,170億円、営業損失は418億円減の218億円の赤字。だが、白物家電事業は黒字になっているという。

「白物家電では、ヘルシオホットクックをはじめとするヘルシオシリーズの販売が好調に推移しているほか、蚊取空清などの国内向け付加価値製品や、新興国向けローカルフィット製品などを投入しており、今後も付加価値と利便性の高い製品の提案していきたい」(シャープ・高橋興三前社長)と、家電事業の堅調ぶりを示す。

むしろ、シャープの白物家電事業は、「リーマンショックのときにも唯一影響を受けなかった事業」(高橋前社長)と、その体質の強さも強調してみせる。

ヒット作の「ヘルシオホットクック」(左)と「プラズマクラスター空気清浄機 蚊取空清」(右)

不適切会計処理が影響

一方で、東芝も全社業績悪化の要因は、PC事業などを舞台とした不適切会計処理が発端。白物家電を含むライフスタイル部門の売上高は2015年度実績で前年比31%減の8,026億円、営業損失が408億円悪化の1,505億円の赤字。2015年度は、白物家電も赤字となっているものの、「ライフスタイル部門の赤字の多くは、販売地域の絞り込みなど、事業規模を縮小したパソコンとテレビが影響している」(東芝の平田政善代表執行役上席常務)という。 そして、白物家電事業を担う東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長は、マイディアグループ傘下での新方針として、「2017年度(2017年1月~12月)において黒字転換を図る」と宣言。「東芝の白物家電事業においては、継続的な構造改革を行っており、とくに、2015年度には思い切った構造改革を実施した成果もあり、大幅な固定費削減が図られている。2016年度にはその刈り取りができるほか、2017年度には、コストダウンの取り組み成果も期待できる。2017年度の黒字化には自信を持っている」と語ってみせた。

すでに黒字化のめどは立っているといることを示す。

シャープおよび東芝の白物家電事業が新たな体制のなかで再スタートを切らなくてならなかった理由は、白物家電事業そのものの不振というよりも、経営の舵取りにこそ問題があったといわざるを得ない。

事実、両社の白物家電をみると、優れた製品が続々と登場している。

シャープは、世界初のお茶メーカー「ヘルシオお茶プレッソ」は、2014年4月の発売直後から品薄が続き、月産4,000台の当初計画を4倍に引き上げるという人気ぶり。また、電気無水鍋「ヘルシオホットクック」も計画比1.5倍で生産。蚊を取ることができる蚊取空清も、当初計画の3倍に増産するというヒット商品となっている。そして、シャープのロボット型携帯電話「RoBoHoN(ロボホン)」も、予約だけで1,000台を記録するスタートをみせた。

「ヘルシオお茶プレッソ」(左)と「RoBoHoN」

このように市場に受け入れられたり、話題となったりする製品が相次いで登場しているのだ。

「石窯ドーム」シリーズのレンジ

東芝も同様だ。もともと国産白物家電のほとんどが東芝という歴史を持つ同社にとって、白物家電事業は、東芝ブランドの代表的製品である。いまでも、東芝独自の技術は業界をリードしている。例えば、炊飯器では、かまど炊き加熱構造を再現した「備長炭かまど本羽釜」が高い評価を集めるほか、オーブンレンジでは、独自の石窯ドームを採用。石窯のおいしさを目指した製品開発に取り組み、「オーブンの東芝」というイメージを定着させてきた。

シャープも、東芝も、日本の市場に最適化した製品を、日本人の視点で開発し、日本人が使いたくなる製品が長年にわたって登場。それがいまでも継続しているのである。

実は、シャープの白物家電事業と、東芝の白物家電事業は、一時期、統合する可能性もあった。シャープは最終的に鴻海精密工業の出資による再建案を選択したが、それと対峙していた官民ファンドの産業革新機構による再建案では、シャープと東芝の白物家電事業を統合し、日本の家電メーカーを維持する方針が盛り込まれていた。

今年6月まで東芝の社長を務めていた室町正志氏が、「白物家電事業の売却先として、シャープは選択肢のひとつ」と明言していたことからもそれは明らかだった。

だが、先にも触れたように、シャープが鴻海精密工業の再建案を選択したことで、この話は幻となった。

だが、産業革新機構の案を受け入れれば、シャープと東芝の白物家電事業が安泰だったのかというとそうともいえない。日本の家電メーカーとしての存続は維持されるが、「競合しないのはアイロンぐらい」と言われるほど、両社の商品には、あまりにも重複分野が多いため、大規模なリストラが実施されることは必至とも言われた。継続的にユニークな製品を投入しつづけることができる環境を維持できるかどうかという点には、疑問符がつかざるを得なかったといえる。

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる