“食”に原点回帰するワタミ、メキシコ料理で業績は回復できるか

“食”に原点回帰するワタミ、メキシコ料理で業績は回復できるか

2016.08.18

介護事業から撤退し、「外食事業」に注力する姿勢を鮮明にしたワタミ。業績回復の兆しも見えるなか、新業態として仕掛けるのがテキサス風メキシコ料理店「TEXMEX FACTORY」だ。社員のアイデアを形にした同店は、“食”への原点回帰を図るワタミの今後を占う試金石となるかもしれない。

渋谷にオープンしたTEXMEX FACTORYは、ピンク色の看板と「メキシカンスカル」が目印だ。席数は155席、平均客単価は2,500円を想定

社員のアイデアが新業態として具体化

「TEXMEX(テクスメクス)料理」とは、米国人が食べやすいようにアレンジを加えたメキシコ料理のこと。米国ではポピュラーで、日本でメキシカンフードと呼ばれているものは多くがテクスメクス料理にルーツを持つのだという。例えばタコスはメキシコ料理とテクスメクス料理の双方に共通する食べ物だが、ブリトーやファヒータなどは本場メキシコ料理というよりもテクスメクス料理に分類すべきメニューなのだそうだ。

米国で様々なレストランを食べ歩いた結果、日本でもテクスメクス料理店を開きたいと考えるようになったのが、ワタミでDINNING事業部長を務める久保田琢磨氏だ。同氏はワタミ社内の新業態募集に応募し、このほどTEXMEX FACTORYの開店にこぎ着けた。

ワタミグループのノウハウを新規出店に活用

TEXMEX FACTORYは、ワタミが日本展開のパートナーを務める米国発のカジュアルレストラン&バー「TGIフライデーズ」に隣接する好立地だ。久保田氏は「TGIフライデーズがアンテナに引っかかる方は、TEXMEX FACTORYも引っかかると思う」と立地による集客効果に期待を示していた。

TEXMEX FACTORYではTGIフライデーズのノウハウを有効に活用する。店舗のシステムやオペレーションについては、TGIフライデーズで培った手法を移植することでスムーズな店舗の立ち上げ・運営を図る。両方の店舗で共通する食材については仕入れ面で協力する。

テクスメクス料理は日本で流行る?

久保田氏

メキシカンブームは「徐々にきている」(久保田氏)らしいが、テクスメクス料理は日本で受けるのだろうか。メキシコ料理店としては昨年、豪州から「グズマン イー ゴメズ」が日本に初上陸し、この秋には3店舗目をオープンさせる予定。ほんの一例に過ぎないが、価格もメニューも多種多様な日本の外食業界において、メキシコ料理店が店舗網を拡大する余地は少なくとも存在したようだ。TGIフライデーズで季節商品として提供していたテクスメクス料理が好評だったことも、今回の新業態が具体化した理由としては大きいだろう。

TEXMEX FACTORYの今後は1号店の出来次第だが、久保田氏は年間1~2店の新規出店を続け、やがてはTGIフライデーズと同じくらいの規模(10数店舗)を目指したいと話していた。

今回の動きで注目したいのは、ワタミがボトムアップで新業態のアイデアを募り、“居酒屋のワタミ”のイメージとはかけ離れた店舗の開発にゴーサインを出した点だ。この取り組みには、外食市場での復権を目指すワタミの本気度が見てとれる。

ワタミらしからぬ新業態が具体化した背景とは

ワタミが社内で新業態開発のアイデアを募集し始めたのは2015年のこと。約160件の提案があり、TEXMEX FACTORYが同制度の第1号案件に選ばれた。ピンクやエメラルドグリーンを使用した派手な内装や、メキシカンスカルをトレードマークとする点など、居酒屋をメインとするワタミには一見すると似つかわしくない新業態だが、同社幹部は久保田氏の提案を面白いと評価。久保田氏も「通るとは思わなかった」と語るアイデアが今、形になった。

星型の照明、原色で彩られた壁、メキシカンスカルなど、ワタミグループとは思えない内装のTEXMEX FACTORY

久保田氏によれば、新業態開発ではワタミグループならではの恩恵を受けたという。それは資金面にとどまらず、例えば内装の「スターライト(星の形をした照明)」を選ぶ際にも、「(個人では難しいが)ワタミなら」ということでサンプルを送ってもらったことがあったという。

グループの強みをいかし、社員が挑戦できる仕組み

労務訴訟などでブランドイメージが悪化した影響もあり、近年のワタミは業績不振に陥っていた。2015年度の売上高は約1,282億円で、損益面では約3億円の営業赤字を計上。収益の柱だった介護事業は2015年12月に損保ジャパン日本興亜に譲渡した。しかし、2016年度第1四半期の業績を見ると、既存店売上高と既存店客数は共に前年同期比で0.3%増と、かすかではあるが下げ止まりの兆しも見え始めている。

多種多様なレストランが現れては消えていく外食業界で、好みが多様化する顧客の奪い合いに勝ち抜いていくのは容易ではない。イメージが悪化していることに目をつぶったとしても、“居酒屋のワタミ”という単一ブランドで業績回復と事業拡大を追求していくのは難しいのが現状だ。顧客の変化に合わせてワタミ自身も多様化を図る必要があるとすれば、新業態の公募制度は1つの突破口になる可能性がある。

TEXMEX FACTORYのメニューは、テキーラベースのカクテルが700円、チキンファヒータが2,680円、ビーフタコスが1,880円、チキンブリトーが1,680円といった感じ。外食産業の「プチ高級路線」にマッチしそうな価格帯だ。写真はケソフォンディード(左)とTEXMEXサラダ

ワタミの資金力、知名度、仕入れルート、ノウハウなどを活用し、社員が自らのアイデアを具体化できる同制度が確立すれば、ワタミグループでは次々に新たな業態が誕生するかもしれない。テクスメクス料理が日本で流行るかどうかも気になるが、注目すべきはTEXMEX FACTORYがビジネスとして成功するかどうかだろう。この店が繁盛すれば、ワタミの新業態公募制度は更に活気づき、同社から新たな優良ブランドが誕生する確立も高まりそうだ。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

関連記事
スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

関連記事