ドコモの通信事業はなぜ好調を維持しているか

ドコモの通信事業はなぜ好調を維持しているか

2016.08.19

携帯電話料金の低減を目的に、総務省はMVNO(仮想移動体通信事業者)の契約者増に向けた後押しを進めている。大手携帯電話会社の通信事業にとっては痛手だが、NTTドコモの2016年度第1四半期決算は良好なものだった。同社が通信事業で好調をする秘密は何なのだろうか。

契約数増で収入もアップ

第1四半期の営業利益は、前年同期比で27.1%増の2,993億円と大きな伸びを見せた。営業利益の内訳は通信事業が2,704億円(前年同期比27.3%増)、スマートライフ領域が289億円(同25.7%増)と、どちらの事業も順調に伸びている。

収益の増加分に対して利益の増加分は非常に高い

通信事業については、スマートフォン販売の鈍化などが指摘されている中、ここまで伸びるのは少々意外にも感じられるが、通信分野の内訳を見てみると、モバイル通信領域での営業収入が348億円増と大きな伸びを見せている。

大幅増益の理由のひとつは、引き続き契約者数が伸びたこと、タブレットなどとの同時契約が増えたこと、解約率を低い水準に保持できたことなどが挙げられる。具体的な数字については明らかにされなかったが、MNP(ナンバーポータビリティ)は転出から転入に転じたという。過去、1年で100万契約以上を失っていたこともあったとは思えない改善ぶりだ。同社は長期割引も3大キャリアでは最も充実しており、長く使っていればいるほどユーザーが転出する理由がなくなりつつある。割引率を上げたことは短期的には減収につながるが、長い目で見れば「金のなる木」を長く手元に置いておけることになるわけだ。

解約率は微増で0.62%。MVNOにある程度食われているかと思われたが、MNP転出が減っていることを考えると実質影響はほとんどないようだ

また、固定回線とモバイル回線のバンドル販売の解禁による光通信サービス「ドコモ光」の収入も197億円と巨額だが、こちらはバンドル販売の初年度であり、既存の光回線ユーザーを多く取り込めたのが大きい。今後、固定回線が急伸するとは考え難いため、来年以降も大きく伸びるとは考えにくいが、光通信サービスではテレビ配信などのオプションによる売上の上積みが期待できるため、売上増には貢献するだろう。

ドコモ光の契約数は一気に5倍に。とはいえ、固定回線離れの進む現在、この先はここまで大きく伸びることは考えづらい

減価償却方法の変更も決算に与えた影響は大きい

さらに、2016年度第1四半期については、減価償却方法の変更等による影響(250億円)と、「ずっとくりこし」等による影響(180億円)、合計430億円がプラス要因となっている。

減価償却方法の変更やずっとくりこし等の影響も相当大きい

このうち後者については、2015年6月に導入されたサービスで、それまでの「ファミリー割引」がパケットの未使用繰り越し分を2カ月まで保持できたのに対し、「ずっとくりこし」では上限額までは期間無制限で保持できるようになったというもの。一見改善に見えるが、上限額を超えた繰り越し分は消滅してしまうため、実質ドコモの利益になる。この変更分だけで180億円もの「利益」が出ているというのは、企業的にはプラスだが、ユーザーから見るとあまり嬉しい感じはしないだろう。いずれにしてもこうした細かな部分でも利益を稼げる体質になっているようだ。

なお、加藤前社長時代から引き継いでいる経営の効率化・低コスト化が功を奏し、営業費用が321億円減と大きくコストダウンに成功している。LTE-Advancedのさらなる高速化や基地の高度化、5Gの開発といったインフラ投資は引き続き行なわれている中でこれだけのコストダウンを両立できるあたりが、同社の好調ぶりを物語っているようだ。

通信事業に今は影響なし

総務省のタスクフォースなどの影響により、新規/MNPでの端末購入費用が上がったことで、収益にもマイナスの影響があるかと思われたが、端末の売れ行きは落ちても、通信事業そのものには大きな影響はないようだ。

ごく一部を除けば通信プランそのものにメスが入っていないのだから当然ではあるだろうが、ドコモの場合はMNP転出が減ったことやiPhoneの扱いができるようになったことなど、ここしばらくの動きがことごとくプラスに回っているように見える。成長著しいMVNOの台頭も、結果的にはほとんどがドコモ回線を使う=ドコモの収益になるわけで、同社の好調ぶりには生半可なことでは影響を与えにくいといえそうだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu