読み違えたラオックス “爆買い”バブルから脱却できるか?

読み違えたラオックス “爆買い”バブルから脱却できるか?

2016.08.19

“爆買い”の代名詞ラオックスの第2四半期決算で営業利益、経常利益ともに90%以上も減り、それを受けて業績予想を下方修正した。訪日外国人観光客の1人当たりの旅行支出が減少する中、ラオックスは爆買い依存から脱却できるのか。

営業利益、経常利益ともに90%以上減

2016年12月期第2四半期決算を公表したラオックス。免税品などを数多く取り扱う量販店である同社は、“爆買い”の代名詞的な存在として大きく知名度を上げた。売上高は、前年同期比22.4%減の350億6200万円。営業利益は90.9%減の4億5400万円。経常利益は、91.6%減の4億1700万円だった。さらに業績の悪化に伴って同社は、16年度の業績予想を下方修正した。営業利益、経常利益ともに当初の予想よりも約80%減少した12億5000万円にとどまっている。

6月30日東京・銀座

個人旅行の増加がもたらすもの

決算の大幅な減収減益、そして業績予想の下方修正に至った最も大きな要因。それは、国内の量販店における中国人“爆買い”動向の変化だ。日本政府観光局が発表している訪日外国人観光客数は引き続き増加し続けている。さらにその中でも中国人観光客は4月から3カ月連続で50万人を超えており、国別で1位、訪日外国人観光客の中でも、ひときわ存在感を放っている。しかしながら、リピーターが増加し、それに伴って個人による旅行が増加し、反対に今まで、大型のバスで免税品店を回っていた団体客が減少している。そのため、観光庁が発表している訪日外国人消費動向調査では、全体で増加傾向が続くものの、1人当たりの旅行支出にすると、2015年7月~9月期を境に減少傾向に転じている。

これは先に述べたように、リピーター、個人旅行が増加し、訪日の目的が買い物だけでなくなったことや、免税品目の拡大によって売れ筋商品が、高額商品から単価の低い商品にシフトしたことなどが挙げられる。

この国内全体の傾向がそのまま“爆買い”の代名詞である同社の売れ行きに影響しているのはいうまでもない。店舗を訪れる訪日外国人観光客の平均単価は、2015年11月から9カ月連続で前年同月比割れとなっているのだ。

さらに、営業利益の減少については、昨年は中国人観光客の“爆買い”で粗利率の高い商品が大量に売れたのに対して、今年は、顧客の志向・行動様式の変化に伴って比較的粗利率の低い商品の需要が高まったことなどによる売上高の減少、加えて事業拡大のための人件費や店舗拡大による地代や家賃の増加、そして「モノ」と「コト」の複合施設と位置づける千葉ポートプロジェクトの準備など成長への投資コストが増加したことも要因となっている。

読み違えた“爆買い”急ブレーキ

2015年12月期通期連結決算短信の次期の見通しの中で「中国を初めとしたアジア新興国の経済成長率は大幅な減速傾向が見られますが、中長期的な成長トレンドは持続しその消費購買力も徐々に拡大していくものと思われます」と記述している同社。不安要素も認めていたが、急激なトレンドの変化は折り込んでいなかったのだろう。

事実、同社の第2四半期決算の資料中でも、「想定を上回るスピードで事業環境が変化。対応策に着手したものの、第2四半期業績低迷」と環境の変化スピード想定しきれなかったことを認めている。

東京・銀座

浮上のカギは個人旅行への対応策

ただ、消費動向の変化について同社も手をこまねいていたわけではない。同社の主力顧客である団体ツアー客の伸び率が鈍化していること。それによって、ゴールデンルートの一極集中から地方の顧客分散化がおきていること。「モノ」から「コト」への消費傾向の変化が起きていることは、先に述べたように同社でも分析。これに対応すべく「モノ」と「コト」の複合施設の準備を進めるほか、昨年にも、旅行博などといったイベントに出展したり、ドコモとキャンペーンを組むといった個人旅行向けの施策をおこなってきた。

今年に入ってからも、個人旅行の増加に伴って訪れる地域が分散化している現状に対応するため、国際線利用が伸びている地域の店舗展開に重点を置き店舗の最適化や、店内にツーリストインフォメーションカウンターの設置を進めている。このカウンターによって訪れた人は買い物だけでなく、事前予約済みの各種チケットや、Wi-Fiルーターの引き渡しなどのサービスを受けられる。訪日外国人観光客向けのインフォメーション施設は、旅行業などでも設置が進められている。そこで客のニーズを拾い、新しい旅行商品を作ったり、ニーズにこたえたサービス展開を検討できたりといったメリットがあるのだ。さらに、社内の人材育成組織で、多言語に対応できるスタッフの養成にも力を入れ始めている。

中国人団体客による“爆買い”。依存脱却の手は打ち始めていた。だが、その速度に対応できなかった。

そして、これまで述べてきた爆買い減速要因を加速させたもの。それは、相次ぐテロや難民問題、イギリスのEU離脱などといったことの影響を受け、円高傾向が進んだことが言えるだろう。それによって、訪日外国人観光客の財布の紐はより固くなった。

売上高の約9割が国内の店舗事業

売上高のうち国内の店舗による割合が88.7%と、事業のほとんどである同社であるから、為替変動によるリスクは今後も消えない。ラオックスは、今後も引き続き訪日観光客は増加傾向にあると、インバウンド市場を分析。対応策を強化し、ラオックスの進化を推進するために、中期経営計画を9月メドで公表するとしている。

爆買い依存脱却は急務だが、ラオックスが打つ手は特効薬となりえるだろうか。

今回の決算は、ちょうど爆買い減速と、爆買い依存脱却のための投資が重なった時期となる。ここの痛みを耐え、成長軌道に戻せるかどうか。同社の真価が問われるところ。まずは、中期経営計画の中身に注目したい。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu