【三菱商事】資源価格の低迷がM&A戦略を変える

【三菱商事】資源価格の低迷がM&A戦略を変える

2016.08.20

【三菱商事】資源価格の低迷がM&A戦略を変える

■日本の五大商社で最大の総合商社

 三菱商事株式会社<8058>は、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅とともに日本の5大商社の一つである。

 同社は三菱財閥を起源としており、三菱財閥は明治維新に始まる近代日本と歩みを同じくしている。土佐藩(高知県)出身の岩崎弥太郎が創立した三菱商会を基盤に、明治政府の保護も得て海運業を独占し、海運部門の全盛期に事業の多角化を図っている。明治6(1873)年の吉岡鉱山や明治14(1881)年の高島炭坑の買収に始まる鉱業(三菱鉱業の前身、現・三菱マテリアル)、明治17(1884)年の官営長崎造船所を借り受けて進めた造船業(三菱造船の前身、現・三菱重工業)など、古くから今でいうM&Aを手掛けてきた。また、東京海上保険(現・東京海上日動火災保険)、明治生命保険(現・明治安田生命保険)、三菱為替店(現・三菱東京UFJ銀行)もこの時代に設立されており、日本を代表するような企業を数多く設立している。

 そして、明治26(1893)年三菱合資会社を設立。これを持株会社として造船業・鉱業・鉄道・貿易などあらゆる分野に進出している。これが三菱財閥の出発点である。

 その後、岩崎弥太郎の甥である岩崎小彌太が三菱財閥4代目となり各事業部を株式会社として独立させた。この時、貿易事業が独立する形で、大正7(1918)年に三菱商事が誕生した。しかし、第二次世界大戦後、連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ/SCAP) の指令により三井財閥、住友財閥と共に三菱財閥は解体され、1954年に三菱商事は改めて設立された。

 現在、三菱グループの中核企業の一つである三菱商事は、国内及び海外約90カ国に200以上の拠点を持ち、600社を超える連結対象会社を持つ日本最大の総合商社である。また、2016年3月期決算における売上高(IFRS基準)は、6兆9千億円の規模を誇る。

■変わりゆく総合商社の投資スタンス

設立以来、三菱商事は多くのM&Aを手掛けてきた。その数は出資も含めると膨大な数に上り、現在の連結対象会社が600社以上であることもうなずける。

 総合商社はこれまで、例えば、「ラーメンからミサイルまで」を扱う投資スタンスから、今では「ローソンから石炭鉱山まで」の事業投資が主体となっている。つまり、ある程度特定の事業への投資しかできなくなってきている。それは、社員が直接事業投資先で経営するため、人の供給を絞る必要があるからである。

 こういった背景から、三菱商事では20年後を見据えて高い競争力のある「コア」の部分に投資し伸ばそうとしており、そうではない「ノンコア」の部分は売却するなど、「コア」に成り得る事業との入れ替えを進めている。

 同社は原則として、投資を考えるときにはそれに見合う入れ替えを用意して投資の優先順位を決めている。例えば、05年12月の新東亜交易の株式全てを兼松に売却した例や、衣食住の「住」分野への集中を目的とし、子会社の三菱商事建材が、エムシー砿産を吸収合併、グリーンハウザーの貿易事業譲受した例などがそれに当たる。

 02年、同社はさらにM&A事業を本格展開するため、投資ファンドの運用会社を設立している。M&Aに精通した外国人を数多く採用し買収案件の発掘を進めてきた。そして買収後も、短期間で企業の収益力を高めるため、過去に優れた実績を持つ人材を確保し、総合商社として蓄積したノウハウやネットワークを有効活用できるよう特定の産業に対象を絞り込んだ投資を行っている。

 08年3月期までの中期経営計画では、金融や企業再建ビジネスを重点分野に位置付け、中堅企業で投資ポートフォリオを組み、短期間で売買を繰り返して着実に投資収益を上げる戦略を打ち出している。

■三菱商事が行った主なM&A1

年月 内容
2005.7 ライフコーポレーションの発行済株式の16.62%を追加取得。出資比率は3.38%から20%となる
2005.12 出光興産グループのLPG 事業部門を会社分割し、三菱商事子会社の三菱液化瓦斯に承継の上、同社を存続会社として出光興産の100%子会社である出光ガスアンドライフと合併し、アストモスエネルギーを設立。同社への出資比率は49%となる
2005.12 保有している新東亜交易の株式25%の全てを兼松に売却
2006.3 CLP Holdings社(香港)とアジアにおける民間発電事業の推進を図るため、発電事業の開発・運営を行うOneEnergyの株式50%を約6億7000万米ドル出資し共同で設立。
2006.4 いすゞ自動車の普通株式4,000万株(3.7%)を約160億円で米GMから取得
2006.4 保有するダイヤモンドシティの株式を、イオンが実施する公開買付に応じ、27.38%を約340億円で譲渡
2006.6 衣食住の「住」分野への集中を目的とし、子会社の三菱商事建材が、エムシー砿産を吸収合併、グリーンハウザーの貿易事業譲受
2006.7 北越製紙が実施する第三者割当増資を引受け、発行済株式数の約 23%を約304億円で取得。これにより出資比率は1%から24%となる
2006.7 金商の第三者割当増資による新株の約41.8%を引受け子会社化。出資比率は9.2%から約51%となる
2006.8 日本軽金属と国内外の鋳造・ダイカスト用アルミニウム合金製造・販売事業を統合。出資比率は45%となる
2006.10 子会社化を目的に行っていた、興人の普通株式に対する公開買付を終了。約55億円出資し出資比率は30%から73.09%となる
2006.11 いすゞ自動車発行の普通株式6,000万株(5.6%)をトヨタ自動車に売却
2006.12 ロイヤルダッチシェル、三井物産と共同で出資していたサハリンエナジー社の株式の一部をロシアのガスプロム社へ約14億9000万米ドルで譲渡。譲渡後の出資比率は10%となる
2007.2 ダイヤモンドリース、三菱商事および三菱自動車工業の3社グループにおける自動車ファイナンス事業再編。三菱オートリースHDを新設し出資。出資比率は50%
2007.4 米久の発行済株式につき、現行保有分と合わせて株式の19.83%を取得することを決議。これにより出資比率は1.83%から21.67%となる
2007.4 中央化成より、食品添加物事業を行っている中央フーズマテリアルの全株式を吸収分割により100%子会社化
2007.5 発行済株式の30.63%を保有している日本食品化工<2892>の株式を、連結子会社化を目的に公開買付けにより取得。株式35.37%を約17億7000万円で追加取得し、保有割合は66%となる
2007.6 発行済株式総数の 20.80%を保有する日本農産工業を連結子会社とすることを目的として公開買付けを実施。株式35.83%を約157億円で追加取得し、保有割合は56.63%となる
2007.6 発行済株式総数の 34.72%を保有する日東富士製粉を連結子会社とすることを目的として公開買付けを実施。株式30.87%を約52億円で追加取得し、保有割合は65.59%となる
2007.8 50%出資する三菱オートリースHDの傘下にある、三菱オートリースとダイヤモンドオートリースを合併。出資比率は50%
2007.10 約31.11%を保有している日本ケンタッキー・フライド・チキンの株式を、連結子会社化を目的とし米国KFCから公開買付けにより取得。株式33.41%を約148億円で追加取得し、保有割合は64.52%となる
2007.12 発行済株式総数の 51%を保有している金商の株式の全部を取得することを目的に公開買付を実施。公開買付の結果、約60億円で保有株式と合わせて96.19%を取得

■三菱商事が行った主なM&A2

 
年月 内容
2008.3 日本航空の優先株式をUBS証券から取得
2008.3 千代田化工建設との提携強化を目的とし、同社が行う第三者割当増資を引き受け。株式23.13%を約608億円で追加取得し、保有割合は33.4%となる
2008.5 中央化成より、肥料事業を行っている播州ケミカルの全株式を吸収分割の手法で取得し、当社直接保有の100%子会社とすることを決定
2008.12 グローバル競争に打ち勝つための新たな協業 イオンと三菱商事の包括業務提携契約の締結
2009.1 伊藤ハムと資本面での関係強化を目的とし、同社の第三者割当増資を引き受けるとともに、同社代表取締役会長の伊藤研一氏から株式を取得。株式16.43%を約137億円で追加取得し、保有割合は20.06%となる
2009.1 各社の強みを生かし経営資源を有効活用することを目的に、伊藤ハム及び米久との包括業務提携契約を締結
2009.7 発行済株式数の52.75%を保有する上場子会社である日本農産工業を完全子会社化するため公開買付けを行うことを決定。これに伴い株式39.54%を約147億円で追加取得し、保有割合は92.29%となる
2010.8 事業の一環として行っている機能化学品本部のシリコーン・乾式シリカ事業を100%子会社である三菱商事ケミカルに吸収分割させることを決定
2011.2 子会社である菱食、明治屋商事、サンエス、及びFNSの4社は経営資源を集中させるため経営統合を決定
2011.2 香港最大の電力会社である CLP ホールディング社と共同で設立した合弁会社を通じて間接的に保有する EGCO社の株式 11.21%に加えて、CLP 社が間接的に保有するEGCO社の株式 13.36%(約 230 億円)を、子会社のテプディア社を通じて全て買い取ることに合意し、同時に、東京電力は、三菱商事との間でテプディア社の株式 50%を買い取ることに合意
2011.4 事業の一環として行っている機能化学品本部の塗料原料・製品事業を子会社である三菱商事ケミカルに会社分割により承継
2011.10 中央化学を連結子会社化を目的とし公開買付けにより株式の46.25%を約36億円で取得。これにより出資比率は55.62%となる
2011.11 優良資源事業投資の拡大と持続的に成長可能な資源ポートフォリオの拡充を目的とし、アングロ・アメリカン保有のチリ銅鉱山・製錬所運営会社の株式24.5%を約53億9000万米ドルで取得
2011.11 子会社である三菱デベロップメントは、豪マーチソンメタルズ(以下、MML社)と共同で事業化調査を推進する西豪州中西部地区におけるジャックヒルズ鉄鉱石プロジェクトならびに鉄道・港湾インフラ関連の全ての資産をMMLより約3億2500万豪ドルで買収。出資比率は50%から100%となる
2011.11 三菱デベロップメントは、コール&アライドの株主により、被買収企業が主導して手続きを行う友好的な企業買収手法であるスキーム・オブ・アレジメントの買収提案が承認された
2012.8 事業の一環として行っている非鉄金属本部の純金・プラチナ積立事業を会社分割(吸収分割)により田中貴金属工業へ承継
2012.12 シンガポールに金属資源トレーディング子会社を新規設立し、これに併せて子会社である三菱商事ユニメタルズを承継会社とする金属資源トレーディング事業の会社分割(吸収分割)を行うことを決定
2013.1 事業の一環として繊維本部で行っている欧米ブランド OEM・輸入取引を、三菱商事ファッションに承継する会社分割(吸収分割)を行うことを決定
2013.2 連結子会社であるメタルワンは、エムオーテックの普通株式を公開買付けにより取得することを取締役会にて決議。約24億8000万円出資し株式の52.54%を取得。保有割合は94.05%となる
2013.2 米久を連結子会社化を目的に公開買付けを行い、約10億6000万円で株式44.27%を取得。これにより保有割合は71.02%となる
2015.2 連結子会社である Alpac Forest Products Inc.(AFPI)の保有している全株式(発行済株式数の 70%)及び Alpac Pulp Sales Inc.(APSI)の保有している全株式(発行済株式数の 100%)を北越紀州製紙に譲渡
2015.5 ビジネスサービス部門で行 っている建設業向けのクラウド型システムサービス事業を、会社分割 (吸収分割 )によって、100%子会社であるMCデータプラスに分割し承継 させ、さらに当該子会社に対 して、インテック及びシグマクシスからの一部出資を受入れることで合意
2015.6 子会社である三菱商事石油を承継会社として、産業需要家向燃料油販売事業を会社分割(吸収分割)により移管すること、100%子会社であるエムシー・エネルギーを吸収合併させること、三菱商事石油の社名を三菱商事エネルギーに変更することなどを決定

■ホワイトナイトとなり紙・パルプ事業の強化をもくろむ

 近年、三菱商事が関係したM&Aで世間的に話題となったのが、王子製紙が北越製紙に対して敵対的TOB(注1)を仕掛けた案件である。

 当時、ライブドアによるニッポン放送、楽天によるTBSなど、その結果からも敵対的買収は日本の文化に合わないのではと言われ始めていた。そのような世間の雰囲気がある中で、製紙業界最王手の王子製紙が、業界6位の北越製紙に対する敵対的TOBを行ったため、世間の注目度はおのずと高まった。

 この時、三菱商事は北越製紙のホワイトナイト(注2)として登場し、北越製紙株を約24%取得して筆頭株主に躍り出た。しかし、三菱商事にとって北越製紙への出資の目的は、単なるホワイトナイトとしての買収防衛というよりも、グループ企業である三菱製紙と北越製紙との再編にあった。同社としては業績不振に苦しむ三菱製紙のてこ入れを行うとともに、王子製紙、日本製紙グループ本社に続く紙・パルプ会社の第三勢力の誕生をもくろんでいた。しかし、北越製紙はあくまで自主独立路線を守るため三菱製紙との提携を拒んだ。

 実は北越製紙はかつて三菱製紙と提携関係にあったが、その後提携を解消している。その背景には、三菱製紙と中越パルプ工業との合併話が05年1月に浮上したからだといわれている。この合併は同年5月には白紙撤回となったが、北越製紙にとって三菱製紙は一度裏切られた相手という見方が一部にあるのかも知れない。

 将来的には三菱製紙と北越製紙の提携もあり得るが、それは北越製紙としては本来自主独立路線を守るために結んだ三菱商事との資本業務提携だったはずが、その意に反した方向に転がる可能性があるということにもなる。仮にそうなった場合、三菱商事との提携が王子製紙との経営統合よりも経済合理性があったかという点には大きな疑問も残る。

 こういった部分で、三菱商事が引き受けた北越製紙の第三者割当増資が正しいものだったかはまだ分からない。しかし、三菱商事が意図するような短期間に集中して「コア」事業に投資するという意味ではもくろみが外れている。こういった出資は三菱商事としては今後見直しの対象となり、いずれ「ノンコア」となる可能性も否定できない。

 (注1)大量の株式を短期間に取得するために、新聞公告などを行い、株式市場外で対象企業の株主から直接株式の買い付けを行うこと。http://www.strike.co.jp/maword/0073.html参照

 (注2)敵対的買収を仕掛けられた企業側に立つ有力な支援者のこと。アーサー王伝説に出てくる英雄がその由来。http://www.strike.co.jp/maword/0195.html参照

■資源価格下落による決算内容の悪化から立て直しへ

 これまで数々のM&Aを行ってきた三菱商事であるが、特に資源分野には力を入れてきた。例えば、オーストラリア原料炭の新規鉱山の開山や、米国Cameron LNG の最終投資決定を行ったことなどである。

 14年半ばから始まった原油価格の下落の影響があったものの、非資源分野の底堅い利益の積み上げなどにより15年3月期の連結純利益は4006億円となり通期目標も達成している。しかし、今回の決算は、あくまで非資源分野の好調が寄与したもので、資源関連では950億円、その他も含めた総額では1270億円の減損を余儀なくされている。

 15年3月期の非資源分野では過去最高益を達成しており、これはファンド関連事業における持分利益の増加、畜産事業の収益増加などに加え、ローソン株式などの減損振り戻し益が寄与したことによる一時的な要因も含まれている。

 直近の決算では資源価格の低迷が大きく影響し、資源分野は3850億円の損失、非資源分野についても前年度に計上した減損振り戻し益の反動などにより765億円の損失と合わせて4260億円の大幅な損失を計上している。

■業績推移(左)IFRS移行後(右)

■総資産、純資産、株主資本比率の推移(左)IFRS移行後(右)

 こうした状況を受け、16年以降3年間は、資源価格の変動に影響されやすい体質から「資源」と「非資源」のバランス見直しを経営戦略に掲げている。また、リスク・リターンの観点からポートフォリオ・リバランスを実現するため、資源分野については優良資産への投資を継続しながら入れ替えを通じて投融資残高を一定に保ち、非資源分野では入れ替えを進めつつ、主体的に強みや機能を発揮できる事業への成長投資の実行を目標としている。

 三菱商事がこれまで成長の源泉を「投資」に求めていたことが資源価格の下落により限界を迎え、今後は事業の中に入り、「経営力」を生かした、主体的な価値の創造により成長していくという方針に変わらざるを得ない状況となっている。そういった意味では、今後の三菱商事のM&Aにもこれまでと違った変化が起きてくることが予想される。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。