【三菱商事】資源価格の低迷がM&A戦略を変える

【三菱商事】資源価格の低迷がM&A戦略を変える

2016.08.20

【三菱商事】資源価格の低迷がM&A戦略を変える

■日本の五大商社で最大の総合商社

 三菱商事株式会社<8058>は、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅とともに日本の5大商社の一つである。

 同社は三菱財閥を起源としており、三菱財閥は明治維新に始まる近代日本と歩みを同じくしている。土佐藩(高知県)出身の岩崎弥太郎が創立した三菱商会を基盤に、明治政府の保護も得て海運業を独占し、海運部門の全盛期に事業の多角化を図っている。明治6(1873)年の吉岡鉱山や明治14(1881)年の高島炭坑の買収に始まる鉱業(三菱鉱業の前身、現・三菱マテリアル)、明治17(1884)年の官営長崎造船所を借り受けて進めた造船業(三菱造船の前身、現・三菱重工業)など、古くから今でいうM&Aを手掛けてきた。また、東京海上保険(現・東京海上日動火災保険)、明治生命保険(現・明治安田生命保険)、三菱為替店(現・三菱東京UFJ銀行)もこの時代に設立されており、日本を代表するような企業を数多く設立している。

 そして、明治26(1893)年三菱合資会社を設立。これを持株会社として造船業・鉱業・鉄道・貿易などあらゆる分野に進出している。これが三菱財閥の出発点である。

 その後、岩崎弥太郎の甥である岩崎小彌太が三菱財閥4代目となり各事業部を株式会社として独立させた。この時、貿易事業が独立する形で、大正7(1918)年に三菱商事が誕生した。しかし、第二次世界大戦後、連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ/SCAP) の指令により三井財閥、住友財閥と共に三菱財閥は解体され、1954年に三菱商事は改めて設立された。

 現在、三菱グループの中核企業の一つである三菱商事は、国内及び海外約90カ国に200以上の拠点を持ち、600社を超える連結対象会社を持つ日本最大の総合商社である。また、2016年3月期決算における売上高(IFRS基準)は、6兆9千億円の規模を誇る。

■変わりゆく総合商社の投資スタンス

設立以来、三菱商事は多くのM&Aを手掛けてきた。その数は出資も含めると膨大な数に上り、現在の連結対象会社が600社以上であることもうなずける。

 総合商社はこれまで、例えば、「ラーメンからミサイルまで」を扱う投資スタンスから、今では「ローソンから石炭鉱山まで」の事業投資が主体となっている。つまり、ある程度特定の事業への投資しかできなくなってきている。それは、社員が直接事業投資先で経営するため、人の供給を絞る必要があるからである。

 こういった背景から、三菱商事では20年後を見据えて高い競争力のある「コア」の部分に投資し伸ばそうとしており、そうではない「ノンコア」の部分は売却するなど、「コア」に成り得る事業との入れ替えを進めている。

 同社は原則として、投資を考えるときにはそれに見合う入れ替えを用意して投資の優先順位を決めている。例えば、05年12月の新東亜交易の株式全てを兼松に売却した例や、衣食住の「住」分野への集中を目的とし、子会社の三菱商事建材が、エムシー砿産を吸収合併、グリーンハウザーの貿易事業譲受した例などがそれに当たる。

 02年、同社はさらにM&A事業を本格展開するため、投資ファンドの運用会社を設立している。M&Aに精通した外国人を数多く採用し買収案件の発掘を進めてきた。そして買収後も、短期間で企業の収益力を高めるため、過去に優れた実績を持つ人材を確保し、総合商社として蓄積したノウハウやネットワークを有効活用できるよう特定の産業に対象を絞り込んだ投資を行っている。

 08年3月期までの中期経営計画では、金融や企業再建ビジネスを重点分野に位置付け、中堅企業で投資ポートフォリオを組み、短期間で売買を繰り返して着実に投資収益を上げる戦略を打ち出している。

■三菱商事が行った主なM&A1

年月 内容
2005.7 ライフコーポレーションの発行済株式の16.62%を追加取得。出資比率は3.38%から20%となる
2005.12 出光興産グループのLPG 事業部門を会社分割し、三菱商事子会社の三菱液化瓦斯に承継の上、同社を存続会社として出光興産の100%子会社である出光ガスアンドライフと合併し、アストモスエネルギーを設立。同社への出資比率は49%となる
2005.12 保有している新東亜交易の株式25%の全てを兼松に売却
2006.3 CLP Holdings社(香港)とアジアにおける民間発電事業の推進を図るため、発電事業の開発・運営を行うOneEnergyの株式50%を約6億7000万米ドル出資し共同で設立。
2006.4 いすゞ自動車の普通株式4,000万株(3.7%)を約160億円で米GMから取得
2006.4 保有するダイヤモンドシティの株式を、イオンが実施する公開買付に応じ、27.38%を約340億円で譲渡
2006.6 衣食住の「住」分野への集中を目的とし、子会社の三菱商事建材が、エムシー砿産を吸収合併、グリーンハウザーの貿易事業譲受
2006.7 北越製紙が実施する第三者割当増資を引受け、発行済株式数の約 23%を約304億円で取得。これにより出資比率は1%から24%となる
2006.7 金商の第三者割当増資による新株の約41.8%を引受け子会社化。出資比率は9.2%から約51%となる
2006.8 日本軽金属と国内外の鋳造・ダイカスト用アルミニウム合金製造・販売事業を統合。出資比率は45%となる
2006.10 子会社化を目的に行っていた、興人の普通株式に対する公開買付を終了。約55億円出資し出資比率は30%から73.09%となる
2006.11 いすゞ自動車発行の普通株式6,000万株(5.6%)をトヨタ自動車に売却
2006.12 ロイヤルダッチシェル、三井物産と共同で出資していたサハリンエナジー社の株式の一部をロシアのガスプロム社へ約14億9000万米ドルで譲渡。譲渡後の出資比率は10%となる
2007.2 ダイヤモンドリース、三菱商事および三菱自動車工業の3社グループにおける自動車ファイナンス事業再編。三菱オートリースHDを新設し出資。出資比率は50%
2007.4 米久の発行済株式につき、現行保有分と合わせて株式の19.83%を取得することを決議。これにより出資比率は1.83%から21.67%となる
2007.4 中央化成より、食品添加物事業を行っている中央フーズマテリアルの全株式を吸収分割により100%子会社化
2007.5 発行済株式の30.63%を保有している日本食品化工<2892>の株式を、連結子会社化を目的に公開買付けにより取得。株式35.37%を約17億7000万円で追加取得し、保有割合は66%となる
2007.6 発行済株式総数の 20.80%を保有する日本農産工業を連結子会社とすることを目的として公開買付けを実施。株式35.83%を約157億円で追加取得し、保有割合は56.63%となる
2007.6 発行済株式総数の 34.72%を保有する日東富士製粉を連結子会社とすることを目的として公開買付けを実施。株式30.87%を約52億円で追加取得し、保有割合は65.59%となる
2007.8 50%出資する三菱オートリースHDの傘下にある、三菱オートリースとダイヤモンドオートリースを合併。出資比率は50%
2007.10 約31.11%を保有している日本ケンタッキー・フライド・チキンの株式を、連結子会社化を目的とし米国KFCから公開買付けにより取得。株式33.41%を約148億円で追加取得し、保有割合は64.52%となる
2007.12 発行済株式総数の 51%を保有している金商の株式の全部を取得することを目的に公開買付を実施。公開買付の結果、約60億円で保有株式と合わせて96.19%を取得

■三菱商事が行った主なM&A2

 
年月 内容
2008.3 日本航空の優先株式をUBS証券から取得
2008.3 千代田化工建設との提携強化を目的とし、同社が行う第三者割当増資を引き受け。株式23.13%を約608億円で追加取得し、保有割合は33.4%となる
2008.5 中央化成より、肥料事業を行っている播州ケミカルの全株式を吸収分割の手法で取得し、当社直接保有の100%子会社とすることを決定
2008.12 グローバル競争に打ち勝つための新たな協業 イオンと三菱商事の包括業務提携契約の締結
2009.1 伊藤ハムと資本面での関係強化を目的とし、同社の第三者割当増資を引き受けるとともに、同社代表取締役会長の伊藤研一氏から株式を取得。株式16.43%を約137億円で追加取得し、保有割合は20.06%となる
2009.1 各社の強みを生かし経営資源を有効活用することを目的に、伊藤ハム及び米久との包括業務提携契約を締結
2009.7 発行済株式数の52.75%を保有する上場子会社である日本農産工業を完全子会社化するため公開買付けを行うことを決定。これに伴い株式39.54%を約147億円で追加取得し、保有割合は92.29%となる
2010.8 事業の一環として行っている機能化学品本部のシリコーン・乾式シリカ事業を100%子会社である三菱商事ケミカルに吸収分割させることを決定
2011.2 子会社である菱食、明治屋商事、サンエス、及びFNSの4社は経営資源を集中させるため経営統合を決定
2011.2 香港最大の電力会社である CLP ホールディング社と共同で設立した合弁会社を通じて間接的に保有する EGCO社の株式 11.21%に加えて、CLP 社が間接的に保有するEGCO社の株式 13.36%(約 230 億円)を、子会社のテプディア社を通じて全て買い取ることに合意し、同時に、東京電力は、三菱商事との間でテプディア社の株式 50%を買い取ることに合意
2011.4 事業の一環として行っている機能化学品本部の塗料原料・製品事業を子会社である三菱商事ケミカルに会社分割により承継
2011.10 中央化学を連結子会社化を目的とし公開買付けにより株式の46.25%を約36億円で取得。これにより出資比率は55.62%となる
2011.11 優良資源事業投資の拡大と持続的に成長可能な資源ポートフォリオの拡充を目的とし、アングロ・アメリカン保有のチリ銅鉱山・製錬所運営会社の株式24.5%を約53億9000万米ドルで取得
2011.11 子会社である三菱デベロップメントは、豪マーチソンメタルズ(以下、MML社)と共同で事業化調査を推進する西豪州中西部地区におけるジャックヒルズ鉄鉱石プロジェクトならびに鉄道・港湾インフラ関連の全ての資産をMMLより約3億2500万豪ドルで買収。出資比率は50%から100%となる
2011.11 三菱デベロップメントは、コール&アライドの株主により、被買収企業が主導して手続きを行う友好的な企業買収手法であるスキーム・オブ・アレジメントの買収提案が承認された
2012.8 事業の一環として行っている非鉄金属本部の純金・プラチナ積立事業を会社分割(吸収分割)により田中貴金属工業へ承継
2012.12 シンガポールに金属資源トレーディング子会社を新規設立し、これに併せて子会社である三菱商事ユニメタルズを承継会社とする金属資源トレーディング事業の会社分割(吸収分割)を行うことを決定
2013.1 事業の一環として繊維本部で行っている欧米ブランド OEM・輸入取引を、三菱商事ファッションに承継する会社分割(吸収分割)を行うことを決定
2013.2 連結子会社であるメタルワンは、エムオーテックの普通株式を公開買付けにより取得することを取締役会にて決議。約24億8000万円出資し株式の52.54%を取得。保有割合は94.05%となる
2013.2 米久を連結子会社化を目的に公開買付けを行い、約10億6000万円で株式44.27%を取得。これにより保有割合は71.02%となる
2015.2 連結子会社である Alpac Forest Products Inc.(AFPI)の保有している全株式(発行済株式数の 70%)及び Alpac Pulp Sales Inc.(APSI)の保有している全株式(発行済株式数の 100%)を北越紀州製紙に譲渡
2015.5 ビジネスサービス部門で行 っている建設業向けのクラウド型システムサービス事業を、会社分割 (吸収分割 )によって、100%子会社であるMCデータプラスに分割し承継 させ、さらに当該子会社に対 して、インテック及びシグマクシスからの一部出資を受入れることで合意
2015.6 子会社である三菱商事石油を承継会社として、産業需要家向燃料油販売事業を会社分割(吸収分割)により移管すること、100%子会社であるエムシー・エネルギーを吸収合併させること、三菱商事石油の社名を三菱商事エネルギーに変更することなどを決定

■ホワイトナイトとなり紙・パルプ事業の強化をもくろむ

 近年、三菱商事が関係したM&Aで世間的に話題となったのが、王子製紙が北越製紙に対して敵対的TOB(注1)を仕掛けた案件である。

 当時、ライブドアによるニッポン放送、楽天によるTBSなど、その結果からも敵対的買収は日本の文化に合わないのではと言われ始めていた。そのような世間の雰囲気がある中で、製紙業界最王手の王子製紙が、業界6位の北越製紙に対する敵対的TOBを行ったため、世間の注目度はおのずと高まった。

 この時、三菱商事は北越製紙のホワイトナイト(注2)として登場し、北越製紙株を約24%取得して筆頭株主に躍り出た。しかし、三菱商事にとって北越製紙への出資の目的は、単なるホワイトナイトとしての買収防衛というよりも、グループ企業である三菱製紙と北越製紙との再編にあった。同社としては業績不振に苦しむ三菱製紙のてこ入れを行うとともに、王子製紙、日本製紙グループ本社に続く紙・パルプ会社の第三勢力の誕生をもくろんでいた。しかし、北越製紙はあくまで自主独立路線を守るため三菱製紙との提携を拒んだ。

 実は北越製紙はかつて三菱製紙と提携関係にあったが、その後提携を解消している。その背景には、三菱製紙と中越パルプ工業との合併話が05年1月に浮上したからだといわれている。この合併は同年5月には白紙撤回となったが、北越製紙にとって三菱製紙は一度裏切られた相手という見方が一部にあるのかも知れない。

 将来的には三菱製紙と北越製紙の提携もあり得るが、それは北越製紙としては本来自主独立路線を守るために結んだ三菱商事との資本業務提携だったはずが、その意に反した方向に転がる可能性があるということにもなる。仮にそうなった場合、三菱商事との提携が王子製紙との経営統合よりも経済合理性があったかという点には大きな疑問も残る。

 こういった部分で、三菱商事が引き受けた北越製紙の第三者割当増資が正しいものだったかはまだ分からない。しかし、三菱商事が意図するような短期間に集中して「コア」事業に投資するという意味ではもくろみが外れている。こういった出資は三菱商事としては今後見直しの対象となり、いずれ「ノンコア」となる可能性も否定できない。

 (注1)大量の株式を短期間に取得するために、新聞公告などを行い、株式市場外で対象企業の株主から直接株式の買い付けを行うこと。http://www.strike.co.jp/maword/0073.html参照

 (注2)敵対的買収を仕掛けられた企業側に立つ有力な支援者のこと。アーサー王伝説に出てくる英雄がその由来。http://www.strike.co.jp/maword/0195.html参照

■資源価格下落による決算内容の悪化から立て直しへ

 これまで数々のM&Aを行ってきた三菱商事であるが、特に資源分野には力を入れてきた。例えば、オーストラリア原料炭の新規鉱山の開山や、米国Cameron LNG の最終投資決定を行ったことなどである。

 14年半ばから始まった原油価格の下落の影響があったものの、非資源分野の底堅い利益の積み上げなどにより15年3月期の連結純利益は4006億円となり通期目標も達成している。しかし、今回の決算は、あくまで非資源分野の好調が寄与したもので、資源関連では950億円、その他も含めた総額では1270億円の減損を余儀なくされている。

 15年3月期の非資源分野では過去最高益を達成しており、これはファンド関連事業における持分利益の増加、畜産事業の収益増加などに加え、ローソン株式などの減損振り戻し益が寄与したことによる一時的な要因も含まれている。

 直近の決算では資源価格の低迷が大きく影響し、資源分野は3850億円の損失、非資源分野についても前年度に計上した減損振り戻し益の反動などにより765億円の損失と合わせて4260億円の大幅な損失を計上している。

■業績推移(左)IFRS移行後(右)

■総資産、純資産、株主資本比率の推移(左)IFRS移行後(右)

 こうした状況を受け、16年以降3年間は、資源価格の変動に影響されやすい体質から「資源」と「非資源」のバランス見直しを経営戦略に掲げている。また、リスク・リターンの観点からポートフォリオ・リバランスを実現するため、資源分野については優良資産への投資を継続しながら入れ替えを通じて投融資残高を一定に保ち、非資源分野では入れ替えを進めつつ、主体的に強みや機能を発揮できる事業への成長投資の実行を目標としている。

 三菱商事がこれまで成長の源泉を「投資」に求めていたことが資源価格の下落により限界を迎え、今後は事業の中に入り、「経営力」を生かした、主体的な価値の創造により成長していくという方針に変わらざるを得ない状況となっている。そういった意味では、今後の三菱商事のM&Aにもこれまでと違った変化が起きてくることが予想される。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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