日本の家電メーカーは復活できるのか? 白物家電が好調な3社の課題

日本の家電メーカーは復活できるのか? 白物家電が好調な3社の課題

2016.08.22

白物家電事業で好調なのが、パナソニック、日立アプライアンス、三菱電機の3社だ。パナソニックは、2015年度(2015年4月~2016年3月)の連結業績において、アプライアンス部門の売上高が前年比3%減の2兆2,694億円、営業利益は45%増の722億円となった。減収となったのは、テレビ事業の販売絞り込みが影響したものであり、白物家電事業は増収。とくにプレミアム戦略によって、アプライアンス部門全体の収益良化に貢献したという。

パナソニック 代表取締役専務 アプライアンス社社長の本間哲朗氏は、「ここ数年、パナソニックのアプライアンス事業は、ひたすら身を縮めてきた。テレビ事業を中心に売り上げを縮め拠点を閉じ、人を縮小してきたが、昨年度でそのフェーズを終え、全社員が前を向いて成長を語れるフェーズに変わってきている。白物家電分野では成長を目指したい」と語りながら、「すでに2015年度実績で、日本における家電製品の合計シェアは27%となり、過去30年間で最高シェアを記録した」と続ける。アプライアンス社を構成する11事業部のうち、白物家電を担当する5つの事業部のすべてで営業利益率が5%以上を達成しているという。

パナソニックセンター大阪で展示された、パナソニックが提案するキッチン

本間社長は「白物家電事業を牽引しているのはプレミアム製品。日本におけるプレミアム製品の構成比率は44%を占め、アジアでも34%、中国でも32%に達している。これにより、限界利益率はわずか1年で1.5ポイント向上。収益向上に大きく貢献している」と続ける。

独自機能やスマート家電戦略が奏功

パナソニックがプレミアム製品と定義しているのは、「憧れにつながる製品」だという。 パナソニックの独自機能を搭載したり、スマホで制御したりできる製品などがこれに当たる。

ナノケア EH-NA98

例えば、パナソニックのヘアドライヤー「ナノケア」シリーズは、2005年の発売以来、累計出荷700万台を誇るヒット商品。このシリーズだけで、国内シェアは約2割に到達。パナソニックのドライヤー全体では国内で5割以上のシェアを持つという。中核となる「ナノケア」シリーズは、パナソニック独自の微粒子イオン「ナノイー」を採用し、髪をトリートメントできる世界初のドライヤーとして登場。9月に発売する新製品は12代目となり、放電電流の増加によってナノイーの発生量と、ナノイーを送り出す風量を約20%向上。ナノイーが髪に浸透することで、水分バランスを整え、うねりを抑制することで、しっとり感や指どおり、まとまりなどの効果がより実感できるようになる。

「ナノケアシリーズの市場想定価格は2万1000円前後。そうした製品が売れているのは、景気の影響や消費動向よりも、我々の提案が受け入れられているためだと認識している。これらの事業を支えているのは、価値を生み出す商品企画力、顧客が体感および実感ができる店頭力、ナノイーのようなコアデバイスを持っていることである。家電は、製品力によって、事業の中身を変えていくことが大切である」と、本間社長は語る。こうしたプレミアム製品の躍進が、パナソニックの家電事業の好調ぶりにつながっている。

さらに、ナノケアシリーズをはじめとした女性をターゲットにする「パナソニックビューティ」のほかにも、50~60代を対象にした「Jコンセプト」、30~40代を対象にした「ふだんプレミアム」といったセグメント戦略を展開。こうした戦略も市場に受け入れられている。

同じく、プレミアム戦略が功を奏しているのが、日立アプライアンスだ。

同社では、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、ジャー炊飯器の家電5製品における国内販売金額シェアで25%を超えるシェアを維持し、この領域においては、ここ数年、トップシェアを争っている。

新方式「ナイアガラ循環シャワー」を採用した「BD-SV110A」

エコの追求に加えて、日立独自の新たな機能を搭載することによって、生活を豊かにするという提案が、「エコに足し算」。冷蔵庫では真空チルドによって野菜の酸化を抑えて、鮮度を維持。ドラム式洗濯機では、ナイアガラすすぎによって、たっぷりの水と遠心力で洗剤もしっかり落とすことを訴求する。また、電子レンジでは、Wスキャン機能によって、肉や魚の旨み成分を引き出すといったように、それぞれの製品において、特徴的な機能を付加して、これを差別化戦略に据えている。

同社では、「お客様に日立が提供する価値を認めていただき、日立を選んでいただける商品づくりに力を注いできた」と語る。

日立製作所の連結業績は、2015年度実績で、売上収益は前年比2.7%増の10兆343億円、営業利益は同1.0%減の6,348億円、税引前利益は同0.4%減の5,170億円、当期純利益は同20.8%減の1,721億円。そのなかで、白物家電事業を担当する日立アプライアンスの売上高は5,605億円と、全体の約5%に留まる。

日立アプライアンスに求められる役割

だが、日立製作所が取り組む社会イノベーション事業のなかにおいて、家庭内でのイノベーションを起こすという役割を担い、日立のブランドの認知を高める役割を担うのが、日立アプライアンスが推進する白物家電事業となる。

日立製作所の東原敏昭社長兼CEOは、「アプライアンスは人の生活に一番近いところにある事業。エアコンではセンサーによって、冷たい足下を探して、足下を暖かくさせることができる。この技術を使えば、近い将来、人の顔色が悪いということもわかるようになり、クオリティ・オブ・ライフを向上させることができる。白物家電も今後は、つながっていくことが必要であり、それによって進化していくことになる」と、今後の白物家電事業の成長に期待を寄せる。

日立のルームエアコン「ステンレス・クリーン 白くまくん」では、画像カメラ、温度カメラ、モノカメラ、お部屋カメラで構成させる「くらしカメラ 4」により、人や家具の場所、温度などを検知。気流の通り道を判断し、冷風を効率よく循環させることができる。この機能を発展させれば、さらに付加価値が高いエアコンへと進化させることができるというわけだ。

三菱電機本社が入居するビル

白物家電事業で安定した業績をあげているのが、三菱電機だ。

2015年度の連結業績では、家庭電器部門の売上高は前年比3.9%増の9,820億円、営業利益は17.6%増の638億円と、増収増益を達成している。全社売上高が前年比1.6%増の4兆3,943億円、営業利益が5.2%減の3,011億円であることに比べても、それを上回る成長率となっていることがわかる。

国内向け家庭用および業務用空調機器や欧州、アジア、北米向け空調機器の増加に加え、円安がプラス要素になったのが要因だが、パソナニックや日立アプライアンス同様に、国内におけるプレミアム戦略の推進が成果をあげていることが見逃せない。

もともと2006年に、内釜に炭を削って作る「本炭釜」を採用し、10万円を超える高級炊飯器「本炭釜」シリーズを投入することで、プレミアム家電市場を創出してきたのが三菱電機。今年はちょうど10年目の節目を迎えた同製品は、内釜に炭を使用し、2回に渡る焼成や、黒鉛化処理、そして削り工程を経て、約100日をかけて作り上げる手法を踏襲。発熱に必要な磁力線が、釜厚全体に浸透させることができる唯一の素材である炭にこだわり続け、美味しいごはんの象徴である「かまどで炊いたごはん」の実現に取り組んでいる。

こうした独自の取り組みは、ほかの製品でも同じだ。

冷蔵庫の新製品「置けるスマート大容量 WXシリーズ」は、保存するだけで野菜のビタミンCや糖量がアップする「朝どれ野菜室」を搭載。野菜室背面に光LEDを配置し、赤、緑、青の光を野菜に照射することで、ビタミンCの向上と緑化を促進することができる。野菜が、畑で光合成を行い、栄養素を生成する仕組みを冷蔵庫に再現した付加価値製品であり、冷蔵庫に保管しながら栄養素を高めることができるというユニークな製品だ。三菱電機のプレミアム戦略も依然として健在だといえる。

置けるスマート大容量 MR-B46Z

好調3社の課題とは?

だが、白物家電事業が好調な3社だが、手放しでは喜べない側面もある。

それは利益率の問題だ。

パナソニックでは、白物家電の5つの事業のすべてで、営業利益率が5%以上となっているが、アプライアンス社全体の営業利益率は、2015年度実績で2.7%。2016年度見通しでも3.8%に留まる。パナソニックの津賀一宏社長が、「すべての事業部において、営業利益率5%以上を目標にする」と宣言していることに比べると、それを大きく下回っていることがわかる。

三菱電機でも、家庭電器事業は全体の約2割を占めるが、営業利益率は全社水準を下回る形で推移を続けている。

日立製作所の東原敏昭社長兼CEOは、「白物家電事業については、利益率が3~4%のままであれば、再編を考えなくてはならない。この1~2年で、その可能性を見極めていくことになる」とする。

営業利益率の改善は、各社に共通した課題であることは間違いない。その解決策のひとつが、これまで以上にプレミアム戦略を加速し、家電事業の収益性を高めていくことである。 白物家電事業の舵取りは、各社とも利益率向上という慎重さ、プレミアム戦略による大胆な施策が求められているといえよう。

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日本の若者が敬遠し始めている“飲みニケーション”

訪日外国人をターゲットとした“異文化飲みニケーション”サービスが誕生

居酒屋がビジネスのヒントを得られる貴重な場になる可能性も

ここ最近、若者に嫌われがちな慣習に「飲みニケーション」がある。

これはいうまでもなく、仕事を終えた後、同僚たちと居酒屋などに集結し、アルコールの力を借りて互いの胸襟を開き、親睦を深めるコミュニケーション手法のこと。しかし、終身雇用や年功序列が崩壊した今や「会社の人とプライベートの時間まで削って仲良くなろう」というモチベーションは薄れた。「“飲みニケーション”って、いらなくね?」というムードが蔓延。令和時代に廃れてしまいそうな慣習ともいえる。

会社に勤める日本人の若者には、風当たりの強い飲みニケーション。それを新たなカタチとしてビジネスにつなげているのが、アシノオトの木村壮介さんだ。では、どんなビジネスなのか、木村さんに聞いた。

アシノオト代表の木村壮介さん。高校卒業後、兄が起こしたグループウェアメーカーにジョインして、エンジニアとして活躍。ウェブマーケティングの会社へ転職し、ウェブコミュニティの開発運営などを経て独立。訪日外国人とローカル日本人をつなぐQ&Aサイト「Hub Japan」を起ち上げ。2017年、同サイト内で「MEET&EAT」をスタートさせた

サービス名はHub Japan「MEET&EAT」。ネット上のプラットフォームを介して知らない者同士がマッチングし、文字どおり、食べて、飲む。”飲みニケーション”で親睦を深める、というわけだ。

もっとも「MEET&EAT」がマッチングするのは上司と部下でも、出会い系的な若い男女でもない。木村さんが飲みニケーションのターゲットにしているのが訪日外国人と日本人。日本を訪れた海外からの旅行者と、日本にいる人たちを居酒屋でつなぎ、親睦を深めさせる。いわば“異文化飲みニケーション”を提供しているのだ。

旅行者の「美味しい」は、アテにならない

きっかけになったのは、木村さんの経験だった。

「新婚旅行のときに覚えた違和感。そこからはじまったんです」(木村さん)

木村さんがイタリアへ行ったのは2015年。奥さんと2人で楽しみにしていたのが本場のイタリア料理だった。旅行に関する大手口コミサイトでみつけた店を、まず巡った。待ちに待った本場の味。それが実にいまいちだった。

「『こんなものかな…』とも思ったけれど、2日目に偶然仲良くなった地元のおばちゃんが『昨日はどこで食べた? 駅前の店? ダメダメ。行くならあっちの店よ』と教えてくれたんです。すると今度はめちゃくちゃ美味しかった。それが衝撃でした」(木村さん)

美味しさに対する衝撃だけじゃない。圧倒的な集合知を誇るネットの口コミサイトが、地元のおばちゃんのアナログな知見に勝てないことにこそ、木村さんは感銘を受けた。

「考えてみたら当たり前なんですけどね(笑)。世界中の質の高いユーザーが口コミを書き込めたとしても、書き手が旅行者である以上、底はしれている。地域にずっといる人の知識には敵いませんから」(木村さん)

そこに着想の芽があった。

ならば「地元の人と海外からの旅行者をQ&Aでつなぐローカルコミュニティサイトがあったら喜ばれるのでは?」と考えた。ヤフー知恵袋のような巨大なQ&Aサイトや、SNSで直接つながったコミュニティサイトはあるが、越境してローカルの人と旅行者をつなぐQ&Aサイトは意外と見つからない。

それまでグループウェアの制作運営や、企業向けのコミュニティサイトの開発運営を手がけるITエンジニア・ディレクターだったが、独立起業の潮目を感じた。個人的に「社会課題の解決につながるような事業で独立したい」と考えていたことも後押しになったという。

「どんな課題か? “グローバリゼーション”とそれに伴う文化の均質化“への危惧ですね。なんていうと大げさですけど、目立たないけれど素敵なスポットや、小さくても美味しいお店が、情報の均質化で目立たず消えていく。盛りあげないともったいないなって、感じていたのです」(木村さん)

そして2016年に独立。自らプログラムを書けること、奥さんもWebデザイナーだったこともあいまって、すぐさまシンプルなQ&Aサイトを立ち上げた。名前は「Hub Japan(ハブ・ジャパン)」。訪日予定、あるいは訪日中の外国人ユーザーが英語でクエスチョンを書き込むと、日本のローカルユーザーがアンサーを書き込んでくれるシンプルな仕組みだ。

たとえば「東京でオススメの穴場の寿司屋は?」「サクラを見に大阪へ行くが、気温は? 上着は持参したほうがいいか?」といった具合に欧米を中心に訪日予定の人たちから英語で書き込む。すると、サイトに埋め込んだGoogle翻訳エンジンが日本語に変換してくれるので、日本人も気兼ねなく「現地の声」を書き込める。その日本語は、書き込んだユーザーが読めるように、英語に変換されるわけだ。

「ただオンラインだけだとつまらないのでリアルでも何かやりたいと考えた。そこで『体験の仲介サービス』をやろうとしたんです。訪日外国人が興味のありそうな、着物の着付けとか、お茶の体験とか、いろいろ試しにやってみたら……」(木村さん)

そうしたなか、圧倒的に参加者の好評を得た体験イベントがあった。「居酒屋探訪」ツアーがそれだ。

日本人には当たり前の居酒屋に価値があった

赤提灯や縄のれんが目印の大衆居酒屋から、高級割烹ぜんとした高級店まで、バラエティに富む居酒屋レストランは、日本全国に23万店以上あるといわれる。日本独自の酒とつまみが効率よく味わえるうえ、日本の生活文化や日本人とふれあう機会もあるため、今や訪日外国人にも人気のスポットだ。

ただ興味はあれど、観光客が海外の夜の街に繰り出して、初めての居酒屋に入るのはハードルが高い。ボッタクリ店などにあたるリスクもある。しかし、勝手知ったるローカルの日本人が薦める店に、しかも一緒に入って楽しめるとあれば、安心感が高まる。

「一方で居酒屋などの飲食店も、訪日外国人のお客様を呼び込みたいけれど、お店を知ってもらえていないというのが、多少の機会損失になっていた。なので、飲食店の販促の仕組みとして活用してもらえると考えたんです」(木村さん)

試しに「ハブ・ジャパン」をとおして「日本の居酒屋で日本人と語り合おう」というツアーを告知すると、すぐに外国人観光客から応募があった。木村さんが試験的にアテンドをする。奥さんや友達とともに外国人複数×日本人複数で、オススメの居酒屋にむかい「カンパイ!」からはじめると、異様な盛り上がりをみせた。

英語もできず、そもそもコミュニケーションも苦手だった木村さんだが、酒が入り、気持ちが大きくなると「身振り手振りで必死に会話をしている自分」に気づいた。飲みニケーションあなどれじ、だ。

「また、もちろん海外の方々に『日本に来た目的は?』『何を楽しんだ?』などと聞くことも楽しいのですが、実のところ彼らから日本について意表をつく質問をされることにこそおもしろさ、価値を感じました」(木村さん)

「日本で最もポピュラーな宗教は?」とか、「無宗教? ではなぜあれほど神社があり、誰しもお参りしているんだ?」とか、「あなたにとって蕎麦とはなんですか?」とか――。

「蕎麦については、おもしろかった。自分にとって蕎麦とは何か、なんて考えたことなくて(笑)。日本人同士だったら絶対に聞いてこないような質問をどんどん向けられる。結果、むしろ日本のこと、日本文化のことを深掘りせざるを得なくなったんです。また海外の人たちが、日本の何に興味があるのかも肌感覚でわかる。これって観光施策や訪日外国人向けビジネスのヒントが得られる貴重な場になるなって」(木村さん)

だから、日本文化を深掘りしたい「訪日外国人」、質の高いインバウンド客を集客したい「居酒屋」、そして外国人とフランクに交流することで刺激やアイデアを得たい「ローカルの日本人」。この三者を“三方良し”でつなぐプラットフォームとして、2017年末に作った。

仕組みはやはりシンプルだ。ローカルの日本人ならFacebook認証をとおして「ハブ・ジャパン」にまず登録。そこから「MEET&EAT」のサイトに行く。同じようにログインして日本滞在中の「居酒屋で交流したい」と書き込んでいる訪日予定の外国人アカウントをチェック。都合のいい場所や日時、気の合いそうなプロフィールの団体がいたら「マッチング希望」をクリック。返信を待つ。マッチングとなれば、メールでのやりとりができるようになり、「MEET&EAT」内で指定する居酒屋店をチェックして予約。当日、最寄りの駅前で待ち合わせて、予約時間に店にいき「カンパイ!」となるわけだ。

外国Hub Japanの利用者たち。未成年かどうかの判断はFacebook認証で行われる。トラブルが起きないように、基本2~3人ずつしかマッチング登録できない

今はサイト経由で飲食店への予約が発生したときに、紹介料を得る仕組みで運営中。都内数十店舗の居酒屋と契約を結び、月30人程度の訪日外国人からのリクエストに応えている。

「ビジネスの規模はもう本当に小さい。受託の仕事を続けながら、まだまだ手探りの段階です。ただ小さいながら手応えも感じています」(木村さん)

「またぜひ居酒屋で飲みたい」と訪日外国人のリピーターが増えている。「生きた英語を学びたい」「楽しい飲み会を開きたい」というローカル日本人も増加中だ。とくに「企業のインバウンド担当をしているが、本当のニーズがつかめない。ヒントを得たい」「飲食店を経営しているが外国人向けにメニューやサービスを充実させたい。直接リサーチできるのでは」とマーケティング・リサーチの場として価値を見出している人も現れ始めているという。

飲みニケーション、やはりあなどれじなのだ。

「まあ、まだまだ小さい事業で、どこまでできるかわからないけど(笑)」(木村さん)と、取材終盤、木村さんは繰り返した。ただ、目立たないけど素敵なビジネス。盛り上げないともったいない、と……。

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2019.05.21

2018年度のM&A件数は830件、取引総額は12兆7,069億円

「武田薬品のシャイアー買収」は日本企業最高金額に

日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が見られた

平成最後の年度となる2018年度(2018年4月-2019年3月)は、日本の上場企業によるM&A(企業の合併・買収)が活発だった。

国内の高齢化が進み、中小企業の後継者不在の問題はますます深刻になっている。大手企業でも国際競争が激しくなる中で、規模を拡大したり、「選択と集中」で経営を効率化したりする動きが活発だ。こうした経済環境の中で、多くの企業はM&Aに注目し、自社の成長の手段の1つとして積極的に活用し始めている。

M&A仲介サービス大手のストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースによると、2018年度のM&A件数は830件、金額(株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額)は計12兆7,069億円となり、いずれも2009年度以降の10年間で最高に達した。

2009年度から2018年度にかけてのM&A件数の推移。ストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースで集計したもの。※経営権が移動するものを対象とし、グループ内再編は対象に含まない。金額などの情報はいずれも発表時点の情報
2009年度から2018年度にかけてのM&A金額の推移。 ※同上

日本企業最高金額となった「武田薬品のシャイアー買収」

2018年度に注目されたのが取引金額の拡大だ。

武田薬品工業がアイルランドの製薬会社シャイアーの買収に投じた6兆7,900億円は、日本企業が実施したM&Aとしては過去最高額となった。さらに同年は、1,000億円を超える案件がこの10年で最高であった2017年度と並ぶ18件に達するなど、国際競争が激しくなる中で、日本企業がクロスボーダー(国際間案件)のM&Aを活発化させた様子が見てとれる。

武田薬品のシャイアー買収は2018年5月8日に発表され、2019年1月8日に成立した。巨額の買収金額が経営に与える影響を懸念して、創業家一族ら一部の株主が買収に反対したことも話題になったが、臨時株主総会での武田薬品株主の賛成率は9割近くに達した。

武田薬品に次ぐ大型の案件は、ルネサスエレクトロニクスによる米半導体メーカー・インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)の買収であった。買収金額は日本の半導体メーカーとして過去最高となる7,330億円に達した。自動運転やEV(電気自動車)などの進化に伴い、車載向け半導体の需要拡大が見込まれており、ルネサスエレクトロニクスはIDTの買収によってこの分野の開発力強化や製品の相互補完を目指す考えだ。

それに次ぐ大型の案件は、日立製作所によるスイスABBの送配電事業の買収であり、その金額は7,140億円に達する。日立製作所はABBから2020年前半をめどに分社される送配電事業会社の株式の約8割を取得して子会社化したあと、4年目以降に100%を取得し、完全子会社化する予定だ。再生可能エネルギー市場の拡大や新興国での電力網の整備に伴い、送配電設備に対する需要は一層高まると予想されており、日立製作所は買収により送配電事業で世界首位を目指す。

2018年度(2018年4月1日-2019年3月31日)の取引総額上位10ケース。※金額は株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額 (ストライク調べ)

2019年度も活況続くか

先述したように、金額が1,000億円を超える大型のM&Aは18件あり、武田薬品など金額上位3社のほかに、大陽日酸、三菱UFJ信託銀行、大正製薬ホールディングス、東京海上ホールディングス、JTといった大企業が名を連ねた。

これら18件中17件はクロスボーダーであり、かつ2018年度のM&A件数中、こうしたクロスボーダーは185件(構成比22.3%)に達しており、日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が浮かび上がった。

かつて、日本で企業の投資といえば、研究開発や設備投資が大半を占めていた。しかし、最近の状況を受けて、ストライクの荒井邦彦社長は「全体の成長率が低迷する中で、こうした投資の効果は思うように高まらず、事業戦略としてのM&Aが日本企業でも定着してきている」と分析する。

なお同氏は、2019年度のM&A市場の動向についても「日銀による金融緩和が企業の資金調達環境を改善させており、活況が続きそうだ」と予測している。

出展:M&A online データベース

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