レッドオーシャン化するMVNO、なぜ550社を超えるまでに増えたのか

レッドオーシャン化するMVNO、なぜ550社を超えるまでに増えたのか

2016.08.23

スマートフォンを安価に利用できるサービスを提供している、MVNOが急増している。既に500を超えるMVNOが存在しており、今後も増える可能性が見込まれているが、一方で競争も激化し、コンシューマー市場から撤退するなど戦略変更するMVNOも現れているようだ。なぜ、これほど急速にMVNOの数が増えているのだろうか。

競争が激しくなるMVNO、日本通信が個人市場から撤退

ここ数年のうちに、キャリアから回線を借りて通信サービスを提供するMVNOの数は大幅に増え、その知名度も大きく高まっている。NTTドコモ、au、ソフトバンク(ワイモバイル含む)の大手3キャリアだけでなく、さまざまなMVNOの名前を家電量販店の店頭などで目にする機会が増えたというのは、多くの人が感じているところではないだろうか。

では実際のところ、現在MVNOはどの程度存在しているのだろうか。総務省が6月29日に公開した「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成27年度第4四半期(3月末))」の内容を見ると、キャリアから直接回線を借りている「一次MVNO」の数は、大手キャリアがグループ企業などからネットワークを借りているケース(KDDIがUQコミュニケーションズのWiMAX 2+回線を借りているケースなどが該当する)を除くと、今年3月末時点で227社。前期比で18社増えているという。

そしてより増えていると見られるのが「二次以降のMVNO」と呼ばれるものだ。これはキャリアから直接ネットワークを借りるのではなく、他のMVNOからネットワークを借りてサービスを提供するMVNOのことで、3月末時点では334社に上っているとのこと。一次、二次以降のMVNOを合わせると、既に合計で550社を超えるMVNOが存在しているのだ。

総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成27年度第4四半期(3月末))」より。一次MVNOが227社、二次以降のMVNOが334社と、合わせて550社を超える企業がMVNOに参入していることが分かる

しかしながら一方で、移動体通信全体に占めるMVNOのシェアはまだあまり高いわけではない。先の総務省の資料を見ると、「移動系通信の契約数に占めるMVNOサービスの契約数比率」は今年3月末時点で7.8%。このうち、特定業務に使用する「通信モジュール」向けの契約数を除いた「SIMカード型契約数比率」を見ると4.0%となっている。我々が知っているMVNOの個人向けサービスの多くはSIMカード型に相当すると考えられることから、実際のMVNOのシェアは、移動体通信市場全体の4%程度に過ぎないことが分かる。

MVNOは市場が伸びているとはいえ、550を超える事業者が、4%程度の市場でひしめきあっているだけに、事業者間の競争は非常に激しい。実際データ通信用SIMの場合、2年前には月額980円で1GB程度の高速通信容量だったのが、現在は同じ料金で3GBもの容量が使えるようになっている。また最近では、MVNOが実店舗を構えたり、テレビCMを展開して積極的にプロモーションしたりするケースが増えるなど、その競争は激しさを増す一方だ。

そうしたこともあってか、従来の戦略を転換するMVNOも現れ始めた。MVNOの老舗でもある日本通信は、8月10日にMVNOの1つであるU-NEXTと協業し、個人向け通信サービスをU-NEXTに引き継ぐことを発表。個人向け事業から事実上撤退し、他のMVNOにネットワークを提供するなど、MVNOの支援事業に専念するとしている。

日本通信は今年1月に、MVNOの支援へと事業の軸足を移す方針を示しており、8月10日には個人向けサービスをU-NEXTに引き継ぎ、事実上撤退することを発表している

MVNOの急増は総務省の後押しがあってこそ

しかしながら、かつてはMVNOという名前自体あまり耳にすることがなかったにも関わらず、最近になって急にMVNOが増えたのには、どのような理由があるのだろうか。そこに最も大きく影響しているのは国、ひいては総務省である。

かねてより総務省は、携帯電話大手3キャリアが、ネットワークだけでなく、端末とサービスを一体で提供する販売手法を、ユーザーの選択肢を奪うものだとして改善を求めてきた。また経営破たんや買収などで携帯電話事業者が3社に集約されたことで市場の協調的寡占が起き、市場が3すくみ状態となって競争が進まず携帯電話の月額料金が下がらないにもかかわらず、キャッシュバック等で端末の過剰な割引がなされている状況も、改善すべきとして問題視していた。

こうした大手キャリアの商習慣を変えるには、総務省自身がガイドラインを制定するなどして直接キャリアに指導をするだけでなく、ライバルを増やして競争を加速させる必要があると判断。しかしながら新しいキャリアを作るとなると、ただでさえひっ迫している周波数帯の割り当てをどうするのかという問題が発生してしまう。またそもそも、日本全国をカバーするインフラ整備のために巨額の投資が必要になることから、よほど体力のある企業でない限り参入自体が困難な状況だ。

今から大手キャリアに対抗できる「第4のキャリア」を立ち上げ、1から育てるのは現実的にも難しい。そこで総務省は、キャリアから回線を借りてサービスを提供するMVNOを増やし、市場競争を加速することに力を入れるようになったのである。MVNOの急速な広がりは、ある意味国の政策によるものでもあるのだ。

実際、総務省はこれまで、さまざまな場面でMVNOの支持に回ってきた。例えば2006年、日本通信がNTTドコモに相互接続を申し込んだ際、回線を借りる時にキャリアに支払う接続料などの設定で交渉が決裂したことから2007年に総務大臣の裁定を仰ぐこととなったのだが、その際当時の総務大臣は日本通信の主張の多くを支持。この裁定の結果が、現在MVNOが安価な料金でサービスを提供できるようになった要因にもつながっている。

また、昨年末に実施された「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」では、MVNOのサービス自由度を高めるHLR/HSS(Home Location Register/Home Subscriber Server)などの加入者管理機能が「開放を促進すべき機能」として位置付けられ、開放に向けキャリアとMVNOとの交渉を促進する方針を打ち出している。

さらに言うならば、昨年のSIMロック解除義務化や、今年実施された端末の実質0円販売の事実上禁止措置なども、端末とネットワークを一体で販売しつつ、端末価格を大幅に値引くキャリアの販売手法を改めるだけでなく、それによって端末とネットワークの分離を進め、SIMのみでサービスを提供するMVNOの競争力強化を狙ったものと見ることができるだろう。

「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の第2回会合より。タスクフォースではMVNOの競争力拡大のため、HLR/HSSを開放すべき機能として位置付けられた

MVNOを支援する「MVNE」も増加を後押しする一因に

そしてもう1つ、MVNOが増加している背景にあるのは、先に触れた通り二次以降のMVNO、つまりMVNOからネットワークを借りてサービスを提供しているMVNOが増えていることにある。実際、DMM.comの「DMMモバイル」やイオンの「イオンモバイル」、日本通信の個人向け事業を受けるとされているU-NEXTの「U-mobile」、そして今夏から秋にかけてサービスを提供する予定の「LINEモバイル」などは、キャリアから直接回線を借りている一次MVNOではなく、二次以降のMVNOであることを明らかにしている。

今夏から秋にかけてサービスを提供する予定のLINEモバイルも、他のMVNOからネットワークを借りて提供する方針であることから、二次以降のMVNOといえる

そしてこれらの企業がMVNOとしてサービス提供できるよう、支援しているのがMVNE(Mobile Virtual Network Enabler)である。MVNEとは、MVNOとしてサービス提供できるようにするためキャリアからネットワークを借りてサービス設計し、サポート部分まで請け負ってくれる、MVNOを支援する事業者のことを指す。

MVNEは自社でもMVNOとしてサービスを提供しており、ネットワークのノウハウを持つISPが多く、代表的なところでは、DMMモバイルなどに回線提供しているインターネットイニシアティブ(IIJ)などが挙げられる。日本通信も、個人向けの市場から撤退した後は、このMVNE事業に集中し、MVNOを支援する事業を主体にしていくとしている。

MVNEの存在があることで、サービスのアイデアを持っていても、通信のノウハウがないためサービスを提供できない事業者がMVNOとして参入しやすくなり、市場拡大にもつながっているといえるだろう。例えば、ベンチャー企業であるエコノミカルの「ロケットモバイル」は、ソニーネットワークコミュニケーションズがMVNEとしてサポートすることで、アプリのダウンロードやアンケートへの回答などで獲得したポイントを通信費から割り引くという、ユニークなサービスを実現している。

アプリのダウンロードなどで獲得したポイントを通信費に充当できる「ロケットモバイル」は、MVNEのサポートによって特徴的なサービスを実現している

総務省の措置によって端末実質0円販売が事実上禁止したことで、MVNOの利用者は増加していることから、今後もMVNOに参入する企業は増え、市場も拡大が続くと考えられる。だが一方で、先行してMVNOを展開している国の多くは、移動体通信市場におけるMVNOのシェアが15%前後で推移しており、日本も将来的に、MVNOはそのくらいのシェアに落ち着くのではないかと見られている。

それだけに近い将来には、劇的に増加したMVNO同士の競争が一層激しいものとなり、かつてのISPのように多くの事業者が合併・撤退していく可能性が大いに考えられる。それゆえ今後は単にMVNOを拡大するだけでなく、実際に契約するユーザーに対し、いかに不利益を生じさせないかという仕組み作りも、同時に求められることになるだろう。

大変革の新型「カローラ」に試乗! 激戦のハッチバックに挑むトヨタの事情

大変革の新型「カローラ」に試乗! 激戦のハッチバックに挑むトヨタの事情

2018.08.22

ハッチバックとなった背景に2つの理由

TNGA導入効果で走りは変わったか

コネクティッド機能は充実もスマホ連携に改善の余地

トヨタの「カローラ スポーツ」が発売となった。新型モデルにはさまざまな大変革が見られる。まず、先代モデルはセダンボディの「アクシオ」とワゴンボディの「フィールダー」という車種構成だったのに対し、今回の新型カローラシリーズで先陣を切ったのはハッチバックモデルであった。カローラの歴史を紐解くと、このボディタイプは2006年まで販売された「カローラランクス」以来、実に12年ぶりの復活となる。なぜ今、ハッチバックなのか。その理由は大きく2つ挙げられる。

ハッチバックを選んだ2つの理由

1つ目の理由は「若返り」だ。現在、カローラユーザーの平均年齢は70代で、ワゴンモデルのフィールダーでも60代だという。一昨年に50周年を迎えたカローラは、トヨタの基幹車種として愛され続けてきた反面、ロイヤルティの高いユーザーは高齢化していたのだ。そこで新型車には、次の50年に向けて若い人たちに乗ってもらえるクルマにしたい、という思いを込めた。

2つ目の理由としては「グローバル化」を挙げることができる。カローラは1966年の初代誕生以来、150以上の国と地域で累計4,600万台を販売してきた。世界16拠点の生産工場を持ち、10秒に1台を販売するグローバル商品だ。しかし、「カローラ」の名はつくものの、ボディタイプやプラットフォーム、搭載するエンジンなど、その中身は国や地域により作り分けていた。それを今回は、名実ともに、基本は世界ワンスペックのクルマとして作った。そして、グローバルで見ると、ハッチバックは人気が高い車種なのだ。

中国や米国などのビッグマーケットでも、ハッチバックの販売が伸びている。一足先に発売となったライバルのホンダ「シビック」も、セダンに加えハッチバックモデルをラインナップしているが、米国ではハッチバックが約3割を占めているそうだ。

このような理由から、まずはハッチバックの「カローラスポーツ」が登場することとなった。

新型車「カローラ スポーツ」のボディタイプはハッチバックだった(全ての画像提供:トヨタ自動車)

サーキットで感じた第一印象

カローラ スポーツと最初に出会ったのは、ショートサーキットだった。一言でいうと、存在感はあるけど強烈なクセはない、すんなり受け入れられるデザイン、というのが第一印象だ。切れ長でシャープな眼、ワイド&ローのプロポーションで、特にデザイナーがこだわったというリヤは“カタマリ感”、踏ん張り感で安定性をアピールしながらも、全体的にはスポーティーなシルエットとなっている。

ディテールを見ると、サイドのプレスラインはかなりエッジが効いている。つまり、作る際には鋭角的に鉄板を折り曲げる必要があり、実はこれもかなりチャレンジングだ。先に述べたように、トヨタは今回、グローバルで作るため、各工場の作り手の技術を安定させるという「工場の開発」にまで挑んでいるのだ。

エッジの効いたサイドのプレスライン

走ってみると、クルマの基本性能である「走る・曲がる・止まる」の性能が飛躍的に向上していた。実に気持ち良く走る。しっかりしたシャシーとボディに包まれ、足元のサスペンションはしなやかに動く。ステアリングはしっかり感があって、切れば素直に曲がっていく。従来のクルマと比べ、ドライバーの操作の伝達スピードと確度が格段に上がった印象だ。

サーキットの路面はフラットなので、そもそも安定感が高い。なので、意地悪く縁石を踏んでみたりもしたが、乗り越えの際にも尖った突き上げ感はなく、常にタイヤの接地を失うことなくスマートにいなした。また、限界域まで追い込んでみても、旋回中にブレーキを踏んでも、リヤが破綻することなく安定性を保っていた。DSC(ダイナミックスタビリティコントロール、クルマが曲がりすぎたり、逆に曲がらなかったり、横滑りしたりするのを防ぐ機能)を解除して電子制御なしで走っても唐突な動きはなかったので、トヨタが基本的な素性から作り込んでいることが確認できた。

後日、一般道と高速道路でも試乗した。ハンドリングの良さは納得だが、やはり、荒れた路面やアンジュレーションのある”生きた道”を走ってみないと乗り心地や静粛性といった「快適性」の側面はわからないからだ。しかし、サーキットで受けた印象が覆されることはなく、快適に、気持ち良く走ることができた。エンジンは1.8Lハイブリッドと1.2Lターボのガソリンがある。燃費志向の方にはハイブリッド、気持ち良さや瞬発力を求める方にはガソリンエンジンをオススメしたい。

「HYBRID G」というグレードの内装(色はサドルタン)

「TNGA」導入の効果は明らか

「走り」の進化は、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)プラットフォームの導入によるところが大きい。TNGAは「もっといいクルマをつくろう」という豊田章男社長の号令の下、トヨタが推し進めた開発コンセプト。現行「プリウス」で初採用し、人気の高いコンパクトSUV「C-HR」で走りを磨いたが、第3弾となるカローラ スポーツでは、その能力をさらにブラッシュアップしている。

具体的には、C-HRよりさらにステアリングの剛性がアップしたことで、リニアな操縦性が実現している。摩擦が低く滑らかに動く新開発ダンパーの投入により、動き始めからしなやかさを発揮する。さらには電子制御が良くなっているし、静粛性も向上している。

先代カローラを国内専用モデルとして開発したトヨタだが、プラットフォームはBセグメントの「ヴィッツ」と共用していた。それに対して今回は、Cセグメントで使う新規プラットフォームを採用しているので、動的性能の向上幅が大きい。

スポーティでありながら、スポーツカーほど尖った性格ではないし、パワーに対して高いシャシー性能があるので、初心者でも安心して乗れる。この後、セダンやワゴンも登場するとのことだが、ワゴンよりカッコよく、リヤシートを倒して使えるなどセダンよりフレキシビリティのあるハッチバックは、若い人たちにも受け入れられるのではないだろうか。

6月26日の発売から1カ月で「カローラ スポーツ」の受注台数は約9,200台に達したとのこと。月販目標は2,300台だ

コネクティッド機能が充実、スマホ連携は少し残念

ところで今回、クルマ本来の楽しさに加えて、トヨタが開発に注力したのが「コネクティッド」機能だ。「クラウン」と「カローラ」という基幹車種の同時フルモデルチェンジにも関わらず、メディア向け発表会は開かず、ユーザーを対象とした「コネクティッドデイ」なるイベントを大々的に開催したことからも、その力の入れようは容易にうかがえる。

カローラの全グレードに標準装備となるコネクティッド機能を使えば、例えばオペレーターを介してナビの目的地設定を行ったり、インジケーター点灯時に対処法のアドバイスを受けることができたりするし、エアバッグ作動時には自動でオペレーターに接続し、ドクターヘリの出動判断を行う「D-Call Net」にも対応していたりする。さらに、LINEにマイカーを「友だち」として追加すると、乗車前に目的地登録やガソリン残量の確認などを行うことができる。

安心・安全が格段に上昇するが、一方で、ちょっと残念なのは、スマホアプリを車載ディスプレイで操作する機能が搭載されていない点だ。というのも、トヨタはAppleやGoogleと手を組まず、独自のプラットフォーム「SDL」(スマートデバイスリンク)を介してスマートフォンとナビゲーションシステムを連携させ、スマホアプリを車載ディスプレイで操作する機能を開発しているからだ。

なので現状、Wi-fiがつながる環境は整っているのだが、「Apple CarPlay」や「Android Auto」は使えない。もっとも、これにも理由がある。彼らと提携すればことは簡単なのだが、そのシステムはブラックボックス化されていて、トヨタには管理できない。より安全なものを提供したい、というこだわりがあるゆえの選択なのだ。

とはいえ、若者にとって(いや、若者に限らずかも)スマホはマストアイテムであり、運転中も”つながっていたい”というニーズは高そう。また、スマホと車載ディスプレイの連動は「ながら運転」を抑止するための重要な機能でもある。なので、早急な対応を望みたいところだ。

コネクティッドは面白い機能だが、やはりスマホ連携も充実させて欲しいところだ

カローラ スポーツが位置するCセグメントのハッチバックモデルは、フォルクスワーゲン「ゴルフ」、メルセデス・ベンツ「Aクラス」をはじめ、競合車がひしめく大激戦区だ。しかしながら、グローバルを見据えてトヨタが大きた革新を施した新型カローラ スポーツは、その土俵でも十分に戦える戦闘力があると思わせるクルマに仕上がっていた。
 

なぜMVNO通信サービスは昼休みの通信速度が遅いままなのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第22回

なぜMVNO通信サービスは昼休みの通信速度が遅いままなのか

2018.08.22

MVNOの通信速度が遅いのはどうしてか

データの通り道が細いMVNO特有の問題

フルMVNOとなって帯域幅を広げる企業

大手キャリアから料金が安いMVNOのサービスに乗り換えた人が不満を抱くのが、昼休みなど多くの人がスマートフォンを利用する時間帯を中心に、劇的に通信速度が遅くなることではないだろうか。同じ大手キャリアのネットワークを使っているのに、なぜMVNOの通信速度だけが遅くなりやすいのだろうか。

MVNOのネットワークは“道”が狭い

大手キャリアでスマートフォンを利用していると、月々の通信料が6~7千円から1万円はかかるのが一般的だ。それゆえ毎月のスマートフォンの通信料金を節約するために、“格安”をうたうMVNOに乗り換えたという人も、多くいることだろう。

確かにMVNOのサービスは、同じ通信容量であれば毎月の通信料金が大手キャリアの半分から3分の1と、大幅に抑えられるので、料金面でのメリットが非常に大きいのは事実だろう。だが一方で、MVNOのサービスを利用している人から多くの不満の声が聞かれるのが通信速度だ。

というのも、特に昼休みや朝夕の通勤時間帯など、多くの人がスマートフォンを利用する時間帯になると、MVNOのサービスは軒並み通信速度が劇的に遅くなってしまうのだ。MVNOの状況にもよるが、その通信速度は動画視聴はおろか、Webサイトの閲覧やSNSの利用などであっても、まともに利用できないほど遅くなるケースもあり、深刻な状況が続いている。

こうした事象は大手キャリアのサービスではほとんど起きることはなく、MVNO特有の問題となっている。ではなぜ、MVNOの通信速度が遅くなりやすいのかといえば、それはネットワークの帯域幅、要するにデータの“通り道”が狭いからである。

MVNOは、お金を払って大手キャリアから借りたネットワーク帯域を使い、通信サービスを提供している。このことは、鉄塔を建てるなど莫大なインフラ投資をする必要がなくなるため設備投資が少なくて済み、MVNOが安価にサービスを提供できる一因となっている。

だが一方で、帯域幅を増やすにはより多くのお金をキャリアに支払う必要があり、無尽蔵に増やせる訳ではない。それゆえMVNOの帯域幅は大手キャリアよりも狭い、つまり道幅が狭いのである。狭い道路にたくさんの車が通れば渋滞が起こるのと同じように、帯域幅が狭いネットワークに、多くのデータが流れ込めば混雑が起きやすくなる訳だ。

2018年7月1日に実施されたLINEモバイルの発表会より。ネガティブイメージとしてネットワークと通信速度に対する不安が挙げられるなど、MVNOは通信速度の問題に大きな影響を受けている様子が見える

解決に特効薬がない頭の痛い問題

もう1つ、キャリアがMVNOに対して、時間帯に関係なく一定の帯域幅で貸し出していることも、MVNOが簡単に帯域幅を増やせない要因となっている。というのも、ユーザーのデータ通信利用は24時間常に一定という訳ではなく、確かに昼休みや朝夕などはスマートフォンの利用者が増えて混雑が起きやすいのだが、深夜・早朝などはスマートフォン利用者が大幅に減り、帯域が空いている状態になる。

帯域が空いているということは、お金を払ってネットワークを借りているMVNOにとって“無駄”が生じていることでもある。混雑している時間帯に合わせた幅の帯域幅を借りると、空いている時間帯に多くの無駄が発生してしまうことから、MVNOはコストの無駄を抑えるため、混雑時にユーザーが不満を抱かない範囲の帯域幅を借りてサービスを提供しているのだが、ユーザーとともに増えるデータ通信量に耐え切れず、混雑時に通信速度が大幅に落ちてしまうのである。

この問題を解消するにはいくつかの方法がある。1つはキャリアにより多くのお金を支払って、混雑する時間帯に合わせた帯域幅を借りること。KDDI傘下のUQコミュニケーションズが提供している「UQ mobile」は、帯域幅を自らWiMAX 2+のネットワークを提供することで得ていることに加え、他のMVNOより高めの料金設定にすることによって、KDDIからより広い帯域幅を借り、高速な通信速度を維持している。

UQ mobileは他のMVNOより通信料を高く設定することで、売上を増やしより多くの帯域幅を借りることで、通信速度の低下を抑えている

2つ目は、自らキャリアになってしまう方法だ。そうすれば他社にお金を支払う必要はなく、自身のネットワークの帯域幅が使い放題になるため、問題は一気に解消する。この手法を取ろうとしているのが楽天で、同社は2019年に携帯電話事業に参入することを発表している。

そして3つ目は、空いている時間帯の帯域幅を有効活用することで、帯域の無駄を減らし底上げを図る方法だ。実際、MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)は、自らSIMを発行できる「フルMVNO」となり、法人向けのデータ通信サービスに力を入れることで、深夜などの時間帯にもネットワークを活用してもらう取り組みを進めている。

IIJは個人のスマートフォン向けサービスだけでなく、IoTを中心とした法人向けのサービスにも力を入れることで、深夜のネットワーク稼働率を高め無駄を減らそうとしている

より直接的な施策を打ち出しているのが、ソニーネットワークコミュニケーションズの「nuroモバイル」が提供する「時間プラン」の「深夜割」だ。これは深夜1時から早朝6時の5時間だけ、高速通信を使い放題にするいうもの(それ以外の通信速度は200kbps)。空きのある深夜の帯域を有効活用してもらうことで、利用効率を高めようとしている訳だ。

だが、1つ目、2つ目の方法を取ることができるMVNOは相当限定されるし、3つ目の方法は劇的な効果には結び付きにくい弱点がある。それだけにMVNOにとって、通信速度の問題は頭の痛い問題として残り続けることとなりそうだ。