イトーヨーカドー復活のヒントに? 「omni7」で得た大きな手応え - セブン&アイ・ホールディングス鈴木康弘CIOに聞く(後編)

イトーヨーカドー復活のヒントに? 「omni7」で得た大きな手応え - セブン&アイ・ホールディングス鈴木康弘CIOに聞く(後編)

2016.01.06

セブン&アイ・ホールディングスが11月から本格開始したオムニチャネルの「omni7」。重視するのは商品力だ。本格スタートしてからわずか1カ月ほどだが、あるコラボ商品などですでに大きな手応えも得たという。それは今後のデジタル時代における傘下企業の光明になるかもしれない。今後の商品の展開、新たなサービスへの取り組みも含めて、セブン&アイ・ホールディングス取締役執行役員最高情報責任者(CIO)の鈴木康弘氏に聞いた。

鈴木康弘(すずき やすひろ) 1987年大学卒業後、システムエンジニアとして富士通に入社。ソフトバンクを経て、2000年にイー・ショッピング・ブックスの代表取締役に就任。2007年に日テレ7の取締役を務めるなど、IT・メディア業界に従事。以後も要職をこなしながら、2014年3月からセブン&アイ・ネットメディア代表取締役(現任)に就く。同年12月にセブン&アイ・ホールディングス執行役員最高情報責任者(CIO)に就任、現在はセブン&アイ・ホールディングス取締役執行役員最高情報責任者(CIO)。omni7の実現にあたって陣頭指揮をとった

――ジャンポール・ゴルチエとのコラボ商品「SEPT PREMIÈRES」の取り扱いを始めましたが、これはオムニチャネルと関わるのでしょうか。

これはオムニチャネルの一環で、目玉企画の第一弾です。今回、我々は、高品質でブランド力のある商品を展開しようと考えました。これができたのは、我々には、ラグジュアリー商品の扱いに長けたそごう・西武があり、量を扱えるイトーヨーカドーがあったからです。量があるから比較的手頃な価格で提供できるわけです。

omni7の販売サイトではジャンポール・ゴルチエとのコラボ商品「SEPT PREMIÈRES」も取扱い。発売3週間で販売計画費約150%に達した

――結果は好調だったと聞いています。

テレビCMを流したら、お客様が「omni7」のサイトをご覧になって、PVが大きく伸びました。その後、多くのお客様に実際にご来店いただきました。その影響で、10月、11月のイトーヨーカドー、そごう・西武の来店客数が増えました。これまでにいない層のお客様、つまり若い方のご来店が増えたんです。

さらに後日、これが本当に「omni7」サイトの効果なのかを確かめようと、イトーヨーカドー店頭で調査を行ったところ、販売サイトを見て来店したお客様が31.5%もいました。ウェブを見た後でご来店いただいたことがわかり、その際、ついで買いをしていただいた方も多く、いきなりウェブルーミング効果が出たと思っています。

――ジャンポール・ゴルチエ氏とイトーヨーカドーの組み合わせは意外でした。

当初は、SNS上で「ゴルチエ? ヨーカドー? ありえねえ」といった感想があったくらいです。イメージは確かにそうかもしれません。「どうして、スーパーでゴルチエなの?」と疑問を抱かれてもおかしくないわけです。

でも、売り場がしっかりしていて、実際に物を見ていただいたら「いいじゃん」「買っちゃった」というように変わったようです。若い方からは尖がってっていいなとか、そういう感想もいただきました。

今回の取り組みでは、もともと、ネットとリアルの好循環を期待していたんですけど、いい事例ができました。今は商品開発に力を入れようということで、社員一丸となって取り組んでいます。イトーヨーカ堂も、そごう・西武も、「omni7」に合わせてリアルも改革していこうという動きもあります。実際にプロジェクトは動き出しています。

――出だしが好調の一方で、販売サイト上の商品点数はまだ少ないようです。

確かに、スタートしたばかりなので、まだまだこれからです。サービス開始時点で180万点程度です。まだリアルの商品さえ登録しきれていません。今は商品をどんどん登録している段階です。

販売サイトには、地域の限定の取扱商品も登録しています。醤油ひとつとっても、イトーヨーカドーも、セブン-イレブンもエリアによって異なっていて、リアルだと面積の制限がありますが、ネットは無限の空間ですから、こういうことができますよね。

――今後、「omni7」のサイトで扱う商品の方向性はどうなりますか。

上質、安心がキーワードです。世の中の既存のネットショッピングの商品には、まだまだ冒険的要素が強いと思うんですよ。ときどきヘンなものを買ってしまった経験はないですか? 一般的なネットショッピングはまだそういうことが起きるものと思っています。

だからこそ、「omni7」が扱う商品は、クオリティで安心できるもの、そして、上質であることが重要です。上質というのは、高級という意味ではなく、たとえば「セブンプレミアム 金のハンバーグ」だと、あの値段で、あの味を実現できるという意味です。安心・安全で少し生活が贅沢になる、そこにこだわった品揃えをしていこうと思っています。

また、さらに重要なことはゴルチエのような比較的、嗜好性の高い商品を企画・開発する一方で、幅広い層の多くのお客様に手にとっていただける商品を現場の仲間とともに開発し、生み出していくということです。

そして、近い将来には「omni7」のシステムを活かし、お客様の声を活かした商品開発をすることも考えています。

バウムクーヘンひとつをとっても商品紹介に力が入っており、商品ラインナップには"こだわり"が見えてくる

――PB(プライベートブランド)の取り扱い比率についてはどうお考えですか。

仮にお店の商品がすべてプライベートブランドで埋め尽くされれば、売り場は楽しくないかなと(笑)。ナショナルブランド(NB)商品とのバランスが重要だと思います。我々のプライベートブランド「セブンプレミアム」については、自信を持ってお客様に販売できる商品を取扱っていこうと思っています。セブンプレミアムについては、もともと高いQC基準があり、当然、そこに照らし合わせていこうと思っています。

とはいえ、お客様にとっては、この商品はこだわるけど、別の商品は一般的な商品でいいというニーズもあります。ですから、必ずしも全商品が"上質"なものになるというわけでもありません。ただ、何でもかんでも揃えようとは思っていません。重要なのはそのときのお客様のニーズに合わせたバランスです。

――「omni7」の新サービスは?

たとえば、そごう・西武では、お客様からお許しを得た上で、衣服のサイズ情報がサイト上に登録できるようなサービスが考えられます。サイト上で、自分のサイズで迷わずに買い物ができたり、逆にサイトで商品を見て、リアルのどの店舗に在庫があるのかがわかるような機能をつけられたりしたらと思っています。これはリアルがあるからできることなんですよね。

――「omni7」の販売サイトでは、セブン-イレブンの商品とイトーヨーカドーの商品を同じカートに入れて購入することができません。これはどうしてですか?

これは会計処理の問題で、課題として認識しています。消費税の取り扱いをどうするかという点で、業界によって取扱い方が異なっています。こうしたところも今後、見直していきます。

――店舗の協力を得ることも重要になります。

愚直な経営哲学をもって「omni7」を成功させると語る鈴木氏

我々はフランチャイザーであり、いくらオムニチャネルを進めようとしても、現場の理解を得られなければ、前には進めません。オーナーさんは一番のお客様であり、その方たちが気持ちよく取り組んでもらえる仕組みは重要です。皆様からもから多くの意見を頂戴しています。

それをもとに改善すれば、必ずいいものになると思っています。こうした信念は我々のグループ独特のものかもしれません。我々の先輩たちから引き継いでいるDNAには、お客様に認められるまでやり続ける愚直さというものがあります。

たとえば、セブン-イレブンでは、37年前からおにぎりを販売していますが、当時、おにぎりは家で作るもので、店舗で販売しても、ぼそぼそしていてまずい、などと言われていました。米をコシヒカリに変えて進化し、今では、おにぎりはコンビニで買うものということが当たり前になっています。

――「omni7」もやり続けていくと?

そうです。繰り返しになりますが、我々には他社にはないものが3つあります。ひとつは、様々な業態の小売企業を抱えていること、セブン-イレブンというお客様との接点をもっていること、愚直な経営哲学です。

そして、新しいことをやるには、基本の徹底も不可欠です。変化への対応、基本の徹底がグループの行動指針になっています。この部分はかなりの自信を持っています。

――「omni7」を通じての大きな目標は?

2020年まではぼやっと見えています。東京オリンピックでは海外の方が大勢来ますし、その際に「日本の小売業っていいよね」と思ってもらえるのが僕の夢ですね。「omni7」が海外の方へのお手本になって、「これ便利じゃない? アメリカでもこれをやろうよ」と言っていただけるところまでいけたらいいですね。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。