東京が再び“水の都”に!? カギを握る“かわてらす”とは

東京が再び“水の都”に!? カギを握る“かわてらす”とは

2016.08.24

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、急速に変化を遂げている東京の街並み。そんな中、東京都内の水辺にもある変化が起きている。

隅田川の奥にはスカイツリー。東京の川辺の象徴!

東京湾へ流れる隅田川や荒川、神田川、江戸川、日本橋川、目黒川などたくさんの川や運河は、かつては貴重な輸送ルートとして活用されるなど、文化や経済、生活の中心にあった。

復活した隅田川花火大会『「隅田川流域河川整備計画(平成28年6月)P13より抜粋」東京都建設局河川部』

しかしその後、陸上交通の発展とともに河川舟運は交通機能としての役割が低下、さらに高度経済成長期に差しかかると、水質の悪化などにより、徐々に河川自体も都民の目から離れたものとなり、水辺はさびしくなっていった。

その後、昭和50年代に下水道の整備や河川の浄化の取り組みが進み、水質が改善されると、隅田川花火大会や早慶レガッタが復活し、人々の関心が再び河川に集まり始める。さらに近年では、東京スカイツリー人気を受け、屋形船や水上バスの利用客も増加した。

都内の水辺ににぎわいを! 川床の東京版“かわてらす”

東京の水辺に再びにぎわいを取り戻す……。

そんな取り組みの一環として、東京都建設局が2014年にスタートさせたのが、隅田川と日本橋川における“かわてらす”なる社会実験だ。

“かわてらす”のイメージの原点は、夏の京都の風物詩として知られる“川床(かわどこ)”。川床とは、河川に突き出して設けた飲食のための高床で、京都の鴨川沿いに納涼床がずらりと並ぶ情景は実に壮観だ。

京都の鴨川沿いの川床は夏の風物詩!(写真:PIXTA)

“かわてらす”はこれら川床の東京版で、人々が集う川沿いの“テラス席”と、水辺でにぎわう人々の表情を楽しく“照らす”、太陽の光と水面に反射した光によって人々の顔を明るく“照らす”という意味を込めて名付けられたという。

“防災”だけでなく“にぎわい”にも力点

これまでは都民の安心安全を守る防災という面から防潮堤を整備し、河川を管理してきた東京都が、“新しい水辺整備”という観点で都民を再び水辺に呼び戻し、にぎわいを創出するという展開が興味深い。

この社会実験では、河川敷地の使用に係る規制緩和を受け、都が“かわてらす”の設置と維持管理、店舗営業を行う事業者の募集を行った。この官民協業の取り組みについて、東京都建設局 河川部の冨澤房雄さんと大田将大さんに話を聞いた。

「これまで河川敷地において民間の事業者による飲食店等の設置は不可能でした。そういった中、規制緩和のひとつとして、平成23年4月に河川敷地占用許可準則が改正され、民間の事業者も地元の協議が整えば河川敷地にテラスをせり出すことができるようになりました」(冨澤さん)。

テラス席がせり出しているのが「ボン花火」の“かわてらす”東京・台東区

2014年に日本橋川沿いの日本の食をテーマにした文化情報発信型飲食店「豊年萬幅(ほうねんまんぷく)」が、社会実験に参加。そして今年7月から隅田川沿いに、バルニバービによる食堂&呑み「ボン花火」、シスコが経営するフレンチレストラン「Nabeno-ism」が社会実験をスタートしている。

社会実験による、一時占用期限は2年間。その他、事業者による維持管理や安全性確保、地域貢献策、構造などの設置条件などが東京都建設局のホームページで事細かく設定されている。

地元の理解を得ることが“かわてらす”実現のキモ

そして条件面で最も重要となるのが、冨澤さんの言う“地元の協議が整えば”というポイント。募集条件の最初にも「建物および土地所有者、地域団体や隣接者等とかわてらす設置に関する十分な調整ができていること」「清掃や緑化などの周辺環境の向上等による地域貢献を行うこと」と書かれている。つまり、地元との折り合いをつけられるかどうかが“かわてらす”設置を占う最大のカギとなる。

実際に隅田川と日本橋川、それぞれの川沿いを眺めてみると、京都の川床が店舗でひしめき合っているのに対し、東京の川沿いは飲食店の間にマンションや会社のビルが並んでいる。

奥でテラス席がせり出しているのが「Nabeno-ism」の“かわてらす”。手前にはマンションやビルなどが立ち並ぶ場所

「地域団体や近隣住民の方への事前説明は、事業者に一任していますが、お店が川までせり出すということは、近隣の方たちにとってみるとやはりお店の騒音や視線の問題は気になるところだと思います」(冨澤さん)。

「地元のゴミ拾いに参加したりと、事業者の方たちが地域に根付くことが大事。そうして関係性を築いた上で、 “かわてらす”が地元にとってプラスになると納得してもらう必要があります」(大田さん)。

他にも、テラスに植栽を置いたり、営業中は曇りガラスの壁を設置し、営業時間外は壁を解放するなど、住民生活や周辺の景観を損ねないための店舗側の努力も見られるという。また、地元の理解以外にも、“かわてらす”の設置、運営する事業者にとっては、かわてらす設置等の予算に見合うだけの利益が見込めるかなどの課題もある。

「隅田川と日本橋川の実験を参考に、課題を確認し、次の展開を考えていきたい」(冨澤さん)。

現在日本橋川の参加店舗を募集中。隅田川はすでに募集期間を終了している。東京オリンピック開催の頃には、都内が再び“水の都”となるのか。“かわてらす”の社会実験の行方に期待したい。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。