グーグルが2つ目のビデオ通話アプリ「Duo」をリリース、一体何がしたいのか

グーグルが2つ目のビデオ通話アプリ「Duo」をリリース、一体何がしたいのか

2016.08.24

グーグルは、8月15日に、新しいビデオチャットアプリ「Duo」をリリースした。2016年5月に開催された開発者会議「Google I/O 16」で、人工知能アシスタントを搭載したメッセンジャーアプリ「Allo」とともに発表された新しいアプリで、AndroidとiOS向けに用意される。この製品は非常にシンプルで、スマートフォンの電話機能さながらの使い勝手を提供してくれるアプリだ。しかし、グーグルにはすでに「Googleハングアウト」と呼ばれるビデオチャットサービスが存在しており、その棲み分けも不明瞭となってきた。グーグルがDuoをリリースする理由とは何か?

グーグルのビデオチャットアプリにはDuoのほかハングアウトもある。この違いはどこにあるのか

コミュニケーションをよりシンプルに

グーグルのDuoは、コミュニケーションの観点、そしてテクノロジーの観点から、一目置くべき存在であると考えられる。Duoを使い始める際、ユーザー登録などは不要だ。アプリを開いて、電話帳から相手の電話番号を見つけてコールするだけで良い。ただし、相手がDuoを持っていない場合は、SMSなどでDuoをダウンロードするリンクを送る必要がある。

Duoの作りは非常にシンプル。初期設定を済ませると画像左が表示されビデオ通話ボタンを押すと連絡先に移動。あとは画像右の画面右上のように設定やヘルプがあるのみだ

DuoをAndroidで利用する際、自分がコールを受け取る前から、かけてきた相手のビデオが表示される「ノックノック機能」も搭載されている。この点は非常に画期的だ。コールに応答してから相手の映像が映し出されるのではなく、コールへの応答を待っている相手の様子が見られるのは新鮮な体験だし、確かにそうあるべきだと感じた。小さなことだが、これまでのビデオチャットアプリにはなかった機能だ。

Duoで利用されているのは、標準的なWebRTC(Web Real-Time Communication)で、ブラウザではプラグインなしでのビデオチャットやファイル転送を行うことができ、Google ChromeとFirefoxに実装されている。2016年になってアップルも、Mac向けSafariに搭載するようになった。また、エンドツーエンドでの暗号化や、グーグルが取り組む新しい高速プロトコルQUICを採用した。

開発者向け会議「Google I/O」でもWebRTCやQUICなどが強調された

ユーザー体験の側面、テクノロジーの側面で、Duoは非常にシンプル化を進めているという点が印象的だ。ただし、現時点ではそれ以上の評価ができないほどに、シンプルさが極まっているとも指摘できる。

FaceTimeキラー?

アップルには、暗号化されたメッセージとビデオ・音声通話機能であるiMessageとFaceTimeがある。いずれも、App Storeで利用するApple IDを利用して、1つの番号やメールアドレスで、複数のデバイスからのコミュニケーション参加が可能だ。

例えば、iPhoneでやりとりしていたメッセージのスレッドを、Macに引き継いでキーボードを使って参加したり、iPhoneに着信したFaceTimeをiPadで受けて、より広い画面でのビデオチャットを楽しむといった使い方ができる。

ただし、FaceTimeやiMessageには、これらの機能をアップルのデバイス上でしか利用できないといった弱点もある。

一方で、DuoとAlloは、AndroidだけでなくiOS向けにもアプリをリリースする。この2つのアプリはAndroid上での標準的なビデオ通話とメッセージアプリの座を狙っていると考えられるが、アップルと違い、Androidユーザーではない人ともコミュニケーションをとれるのだ。そのため、AndroidユーザーとiPhoneユーザーの間で、DuoとAlloは、よりシンプルなコミュニケーションツールの座を獲得できれば、グーグルの狙いを叶える結果となる。

チャットアプリのAllo。画像認識を行い即座に返信可能なスマートリプライ機能を備える

ただし、Duoを使う人が、「iPhoneからAndroidに乗り換えるか?」と問われれば、その答えは「No」だろう。AndroidでDuoを使うべき理由は、今のところ存在しないため、 Duoユーザーが十分に増えたとしても、iPhoneでも利用できれば、そのままiPhoneを利用し続けるからだ。

競合が多すぎ、位置づけが不明瞭

確かにDuoのデキは良いし、人工知能がチャットルームをアシストしてくれるAlloでのコミュニケーションは、自分まで賢くなったような錯覚すら覚える。しかし、ユーザー数ゼロからスタートするコミュニケーションアプリは前途多難だ。ただでさえも競合が多いメッセージとビデオ通話のカテゴリが、別々のアプリで提供されている点も、疑問に感じる。

iPhoneの電話アプリはFaceTimeやFaceTimeオーディオと連携しており直接使用することができる。グーグルのDuoとAlloにも使い勝手の向上が求められそうだ

アップルユーザーは普段メッセージアプリを利用する際、SMSかiMessageかを意識しながら使う必要はない。FaceTimeやFaceTimeオーディオで通話したい場合も、電話アプリからそのまま操作できる。その使い勝手を狙っていくのであれば、現在、別のアプリとして存在しているDuoとAlloを、Android標準の電話アプリ、メッセージ(TextもしくはSMS)アプリに統合すべきだ。

また、LINEであれば、1:1やグループチャットを行うことができ、そのメンバーとビデオ通話をワンタップで始めることができる。Facebookメッセンジャーでもビデオ通話が可能で、グループでの音声通話までサポートする。文字でのコミュニケーションと音声や映像での通話を統合した1つのアプリで実現している点で、DuoやAlloと比較して理に適っている。そして当然、LINEもFacebookメッセンジャーも、Andorid、iOSをサポートしており、クロスプラットホームでのコミュニケーションを既に実現している。

こららのことからすると、アプリ体験のシンプルさとテクノロジーの新しさは、コミュニケーションにおいては、キラーとなり得ない。

プロダクトの整理の側面も

グーグルには「ハングアウト」というビデオチャット環境があり、Android、iOS向けのモバイルアプリも用意されている。1つ考えられるのは、グーグルの中でのビデオチャット製品の整理の過程で、ハングアウトの穴埋めにDuoを投入したということだ。

ハングアウトは、Duoと比較できないほどに多機能なビデオチャットアプリに仕上がっている。テキストチャット、グループビデオ通話が可能で、画面共有や通話しながらのチャット画面の配信、「ハングアウトオンエア」と呼ばれる映像配信機能まで搭載していた。 このハングアウト機能はGoogle+に統合されてきたが、その所属先をGoogle Apps、すなわちビジネス向けのコミュニケーションツールとして再定義している。前述のオンエア機能はYouTubeに転属し、個人向けのビデオチャットとテキストチャットアプリとしてDuoとAlloを新たに用意した、という流れに整理することができよう。さて、Alloには、Googleアシスタントを搭載する、他のメッセージアプリにはない大きなアドバンテージが存在するが、Duoの魅力を構成しうる、圧倒的な優位性は今後表れるのだろうか。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu