日本の白物家電復活をはかる「攻防」

日本の白物家電復活をはかる「攻防」

2016.08.25

国内白物家電メーカーにとって、海外家電メーカーとの「攻防」は、これから数年の重要な課題になるだろう。国内白物家電メーカーにとって攻防の「攻」は、海外市場への進出だ。例えば、パナソニックは、2016年度における家電事業の取り組みにおいて、「プレミアムゾーンのさらなる強化」とともに、「日本の勝ちパターンの海外展開」、「アジア・中国、欧州での事業成長を加速」をあげる。

とくに、注目しておきたいのが、「日本の勝ちパターンの海外展開」である。

本連載の第1回目において、日本の家電メーカーが海外市場において失敗してきた要因のひとつに、日本の成功事例をもとに、その製品をそのまま海外市場に持ち込んだ例をあげた。日本で成功した製品は、海外でもヒットするという誤った認識が、日本の家電メーカーにはあった。だが、文化や生活様式に根差した白物家電製品は、日本で成功したからといって、そのまま海外市場で成功するとは限らない。そのやり方が、日本の家電メーカーの海外市場での成長を鈍らせた。

各国に開発拠点を築く

アプライアンス社 本間哲朗社長(アプライアンス社ホームページより)

パナソニックが打ち出した新たな戦略も、一見すると、この失敗をまた繰り返すように見える。だが、その中身は大きく異なる。

パナソニック アプライアンス社の本間哲朗社長は、「パナソニックは昭和30年代から海外市場においても白物家電事業を展開してきたが、日本で受け入れられた製品を海外に提案するのが基本的な考え方だった。だが、それが通用しなくなってきたのがこの10年である。アジアも中国も生活が豊かになり、独自の価値観が芽生えている。パナソニックはその変化に対応しきれていないために、海外でお客様の信頼を失っていた」と前置きし、「パナソニックは、ここ3年の間に、中国とアジアに開発拠点をそれぞれ構えて、各地域のお客様が求めていることをゼロから見つめ直して、それにあった製品を提案してきた。パナソニックの家電事業には、エンドユーザーに深くインタビューをして、モノづくりをする文化があった。それを生かしていく」と続ける。

つまり、日本で成功した「製品」をそのまま持ち込むのではなく、日本で成功した「手法」を持ち込んでいくことが、「日本の勝ちパターンの海外展開」ということになる。

パナソニックでは、APアジアおよびAP中国という組織を現地に設置。地域内での商品企画の最適化や、地域内での相互供給によるラインアップの拡充を行なうほか、事業部長経験者を送り込み、現地でスピーディに意思決定できる体制を整えている。いわば、地域で完結できる「ミニパナソニック」を作り上げ、それによって、地域密着型のビジネスを推進しようというわけだ。

すでにいくつかの実績があがっている。今年春にアジア市場向けに発売したエアコン「SKYシリーズ」は、上部フラップ「SKY stream desigin」を活用して、輻射冷却方式を業界で初めて採用。冷たい風が直接身体にあたらないようにすることで、冷えすぎを防ぎ、快適な空間を提供することができるという。

また、ダストセンサーにより、空気中の微粒子をモニターし、濃度が高くなると、ナノイーを放出して、空気を清浄することかできるという。これは、日本に先駆けてアジアで発売した製品だという。また、同じくアジア向けには、速く冷やせる「速冷」のニーズを捉えた「速冷暖エアコン」も発売。シェアナンバーワンを獲得したという。

一方、外資系傘下に入った家電メーカーも、海外でのビジネス拡大に意欲をみせる。

東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長は、「マイディアグループのなかで事業を行うことで、米国や欧州、インドなど、これまで東芝ブランドとして参入できていなかった市場にも参入できるようになる。どの市場から展開していくかは現時点では未定だが、名実ともに、東芝の白物家電がグローバルに展開していくチャンスを掴んだといえる」と語る。

世界第2位の白物家電メーカーであり、全世界200カ国以上で展開しているマイディアグループのリソースを活用して、世界市場に攻めていけるというわけだ。

外資メーカーの存在感が高まる

一方で、国内家電メーカーにとっての「防」とは、外資系家電メーカーの日本への進出への対応だ。

これまでは日本の白物家電市場は日本のメーカーの独壇場であった。だが、この数年、欧州や米国、アジア、中国などの家電メーカーが日本に進出し、着実に存在感を増している。日本の家電メーカーにとっても、これまでとは競合環境が異なっていることを理解する必要がある。

2016年8月26日発売の「ルンバ960」

その最たる領域のひとつが掃除機市場だ。

もともと掃除機市場は、サイクロン方式や紙パック方式のキャニスタータイプの掃除機が主流であったが、近年、スティック型掃除機が台頭。すでに市場の25%を獲得している。また、部屋のなかを自動的に掃除するロボット掃除機や、ふとんを掃除することができるハンディ型掃除機も需要を拡大。これらの製品もあわせると、国内掃除機市場全体の20%以上を占めている。

そして、掃除機市場は、2台目需要を創出し、飽和感がある日本の家電市場において、この数年にわたって、市場全体が拡大し続けている数少ない成長分野でもある。

これらの市場を開拓してきたのは、まさに外資系家電メーカーだ。

吸引力の強さが高い評価を得ているダイソンは、スティック型掃除機でも人気を博しているほか、ロボット掃除機市場では、iRobotのルンバが市場を席捲。

こうした動きを日本の家電メーカーが後を追っていくという構図が、ここ数年続いている。

ハイアールの冷蔵庫「JR-N106K」

掃除機以外にも、理美容製品や小物キッチン家電、そして、メジャー家電製品でも、そうした動きが少しずつ見られている。

三洋電機の冷蔵庫、洗濯機部門の買収によって日本で展開しているアクアは、親会社である中国ハイアールの調達力と、三洋電機時代から培った日本の市場に最適化した製品企画が相まって、冷蔵庫および洗濯機市場で、それぞれ5%以上のシェアを獲得するという存在感を発揮している。これも海外家電メーカーが日本においてシェアを拡大している動きのひとつと捉えることができる。

今後、東芝やシャープも、新たな経営環境のなかで、日本向けの製品開発が加速する可能性がある。これまで以上に、日本の白物家電市場が賑やかになる可能性は捨てきれない。当然、それに伴って、激しい競争も繰り広げられることになろう。

日本の白物家電メーカーの動きをみると、ライフスタイル提案を重視する傾向が強まっている。製品単体の提案から、複数の製品を組み合わせたり、サービスと連携したりといった提案が進んでいるのだ。その背景には、IoT時代の到来にあわせて、センサー、ネットワーク、クラウド、ビッグデータなどの新たな技術を活用した家電製品の創出が見逃せない。

東京・有楽町のビックカメラ有楽町店では、2016年6月28日から、「IoTスマートソリューションコーナー」を開設している。パナソニックの洗濯機や冷蔵庫、三菱電機の炊飯器など、すでに発売されているネットワークに接続して利用できる白物家電製品を展示している。

こうしたスマート家電と呼ばれる家電製品は、機能面でも新たなものが多いが、ライフスタイル提案につなげる取り組みが重視されている。

現時点では、ビックカメラにおいても、スマート家電の認知度をあげたり、スマート家電の機能を訴求したりといったことを重視しており、売り上げへの貢献はまだ先だと判断している。しかし、こうした提案が日本の家電メーカーから行われていることには注目しておきたい。

IoT時代における日本メーカーの優位点

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによると、センサーの世界需要は、2014年には532億個の市場規模であったものが、2025年までに年平均成長率10%増で推移。2014年の2.9倍となる1522億個にまで拡大すると予測している。金額では、2014年の2兆8000億円から、2025年までに年平均11%増で成長し、同じく3.2倍の9兆円に達すると予測した。

この分野において、日本の企業は高いシェアを持っている。そして、白物家電事業を行っている企業と同じ企業が、センサー分野においても実績を持っている。つまり、IoT時代の新たな白物家電においては、日本の白物家電メーカーが優位な立場にあるともいえるわけだ。

こんなにところにも、日本の白物家電メーカーの今後の成長を期待できる要素がある。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。