MVNO勝ち組の楽天モバイル、大手キャリアになぞらえた戦略の狙い

MVNO勝ち組の楽天モバイル、大手キャリアになぞらえた戦略の狙い

2016.07.04

積極的なテレビCMや、5分間の通話が定額になる「5分かけ放題」などにより、仮想移動体通信事業者(MVNO)の中でも頭角を現しつつある楽天の「楽天モバイル」。新たに楽天スーパーポイントで料金が支払える仕組みの提供や、端末と通信、サービスをセットにした「コミコミプラン」などを打ち出すなど、大手キャリアに近い戦略をとりつつある楽天は、楽天モバイルで何を目指そうとしているのだろうか。

メイン回線のユーザー獲得に成功

既に200を超える企業が参入していると言われるMVNO。ここ数年で大きな注目を集めるようになったMVNOだが、大手キャリアの実質0円での端末販売が事実上禁止された影響もあってか、ここ最近一層勢いを増しているようだ。

そうしたMVNOの中でも、最近頭角を現しているのが楽天モバイルである。楽天モバイルは楽天がMVNOとなって展開しているモバイル通信サービスだが、スマートフォンとのセット契約を主体としたメイン回線の需要を多く獲得し、シェアを伸ばしていることから注目を高めている。

楽天のMVNOによるモバイル通信事業は、元々楽天傘下のフュージョンコミュニケーションズ(現・楽天コミュニケーションズ)が展開していたが、当初はデータ通信を安価に提供する「楽天ブロードバンド LTE」(現・楽天ブロードバンド データSIM)がサービスの主体。積極的なプロモーションもあまりなされておらず、どちらかと言えば知る人ぞ知る存在であった。

しかしながら2014年10月、楽天は「楽天モバイル」ブランドを打ち出し、音声通話も含めたスマートフォン向けの通信サービスに本格的に取り組むことを明らかにした。その後、楽天モバイルは、サッカーの本田圭佑選手を起用したテレビCM展開や、デュアルカメラを備えたファーウェイ製スマートフォン「honor6 Plus」の独占販売など端末ラインアップの充実、そして東京・銀座など主要都市へのショップ展開などを実施してきた。

楽天モバイルはこれまで、ファーウェイの「honor6 Plus」を独占販売するなど、加入者拡大に向けた独自の取り組みを積極的に進めてきた

これらの取り組みが功を奏し、楽天モバイルは幅広いユーザーからの認知を高めた。その結果、従来のMVNOの主要顧客であった、データ通信の利用が主体の30~40代男性だけでなく、ファミリー層や女性など、スマートフォンとセットで、メイン回線として契約する人達の獲得にも成功したのである。

さらに楽天モバイルの利用を拡大するきっかけを作ったのが、今年1月に提供された「5分かけ放題」である。これは楽天コミュニケーションズが提供する「楽天でんわ」の楽天モバイル契約者向けオプションサービスであり、月額850円を支払うことで、1回当たり5分間の通話が無料になるというもの。5分を超えた場合でも、30秒当たり10円という楽天でんわの料金が適用されるため、大手キャリアの5分間通話定額プランよりも安価に通話ができる。

今年1月よりサービスを開始した「5分かけ放題」は、楽天モバイルのユーザー拡大に向けた強力な武器となったようだ

これまでMVNOは、定額通話サービスを提供していない所が多いことから、音声通話を頻繁に使う人はお得にならないと言われてきた。だが楽天は、自社グループの資産を活用することで、5分間の制限はあるものの定額通話を実現。MVNOが抱える弱点を1つ解消したことで、メイン回線として利用するユーザーの一層の拡大に成功した。実際今年5月時点で、楽天モバイルの新規契約者のうち約8割が、音声通話対応のSIMを契約しているという。

5分かけ放題で勢い、コミコミプランで勝負をかける

こうしてメイン回線としての利用に自信を深めた楽天モバイルは、6月28日にもいくつかの新しい施策を打ち出している。中でも注目されるポイントの1つは、楽天のポイントプログラム「楽天スーパーポイント」で楽天モバイルの料金を支払えるようになったことだ。

これまでにも楽天モバイルでは、契約しているだけで、楽天市場などの買い物で獲得できるポイントが2倍になるなど、楽天スーパーポイントとの連携を積極的に進めてきた。そして今回、ポイントを獲得するだけでなく、楽天モバイルの中で消費できるようになったことで、楽天スーパーポイントを軸とした楽天経済圏の中に、楽天モバイルを完全に取り込むことができたといえる。

楽天スーパーポイントを、楽天モバイルの月額料金の支払いにも使えるようになった

2つ目のポイントは店舗の拡大だ。楽天モバイルは既に9の直営店を設けているが、今回新たに、家電量販店や販売代理店などの協力により、今年度中に100店舗を達成することが明らかにされた。ネットサービスが主体の楽天は、元々店舗で構えて営業しているわけではない。それだけに、元々店舗を持つイオンなどに匹敵する規模で、急速に実店舗を増やしているのには驚かされる。

そしてもう1つ、大きなポイントとなるのが「コミコミプラン」だ。これは、端末とSIM、さらに「5分かけ放題」のサービスをまとめて購入・契約することにより、1年目の月額料金が安くなるというもの。ZTE製の新機種「BLADE E01」と、高速通信容量が2GBのセット「コミコミプランS」の場合、端末込みで1年間1,880円と、非常に安価に利用できる。

端末とSIMによる通信サービス、そして5分かけ放題をセットにした「コミコミプラン」。24カ月の契約が必要だが、1年目の月額料金が最安値で1,880円からと、大幅に抑えられる

サービスと端末のセット契約で料金を安くするという手法は、元々大手キャリアが展開しているものだ。楽天モバイルではやや形は異なるもものの、多くのユーザーが馴染みのある大手キャリアと同様の手法を取り入れることで、契約しやすい仕組みを整えたといえるだろう。もっともコミコミプランは、2年目以降の料金が1年目より高額になるほか、24カ月の契約が必須で、中途解約時は12,000円の違約金を支払わなければならない"2年縛り"の制約が存在する。問題視する向きも多い2年縛りまでそのまま取り入れた所からも、楽天モバイルがキャリアの販売手法を強く意識していることが分かる。

コミコミプランだけでなく、5分間の定額通話や、販売代理店を活用した店舗の拡大、そしてポイントプログラムとの連携強化など、最近楽天モバイルが取っている戦略をよく見ると、実はいずれも大手キャリアの施策を強く意識したものであることが分かる。楽天は、多くの人が馴染みのある大手キャリアに近い施策をあえてとることにより、メイン回線として契約するユーザーを一層拡大しようとしているといえそうだ。

キャリアに匹敵する契約数を目指す楽天、真の狙いは?

メイン回線の利用に狙いを定め、加入者拡大に向けた施策を次々打ち出している楽天だが、同社は楽天モバイルの拡大で何を狙おうとしているのかというと、それはキャリアに匹敵する規模の契約数を獲得することである。楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、楽天モバイルの事業戦略を打ち出した2014年10月29日の発表会で、1000万契約を目標にすると話していたことが、その根拠となるだろう。

楽天モバイルの展開当初、楽天の三木谷氏は時期こそ定めなかったものの、1000万契約を目標にすると話していた

実は楽天は、2012年9月にイー・アクセスと合弁会社を設立し、イー・モバイルの回線を活用した「楽天スーパーWiFi」を展開しているが、このことは当時、資金繰りに困っていたイー・アクセスに、楽天が接近し、モバイル事業に力を入れる動きとして注目されていた。もっともイー・アクセスはその後、現在のソフトバンクグループに買収されたため、結果的にこの取り組みが楽天のモバイル事業拡大に直接つながることはなかった。だがMVNOの拡大でモバイル通信事業に参入しやすくなったことを受け、楽天は改めてこの分野へのチャレンジを進めてきたといえる。

とはいえ楽天が、楽天モバイルの規模拡大で狙っているのは、通信事業でキャリアと争うことではなく、あくまで楽天経済圏を拡大することであろう。スマートフォンは多くの人が手にするインターネットデバイスであり、スマートフォンの通信と端末を自社で押さえることは、自社のネットサービス利用のタッチポイントを押さえることにもつながるからだ。

大手キャリアは通信を主体として、その上にネットサービスを提供することで通信の利用を拡大し、売上を高めようとしている。だが楽天は逆に、ネットサービスを主体としながら、通信を取り込むことでサービスの利用機会を増やし、売上拡大につなげようとしているわけだ。

もっとも、楽天モバイルが目指す"1000万"という規模感は、イー・アクセスとウィルコムが合併した当時の、ワイモバイルの加入者数とほぼ同等である。両社が大手キャリアとの競争で加入者獲得に苦しみ、買収されたり、経営破たんしたりしていった経緯を考えると、同様の規模に達するまでには相当な困難が予想される。MVNOの中では"勝ち組"に入りつつある楽天モバイルだが、MVNO同士の競争から抜け出し、一層の規模拡大を実現するには、さらなる一手が求められていることは確かだ。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

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2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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