【短期集中連載】グローバル企業への成長はステップ・バイ・ステップで/ マーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル、鳥居弘也氏 インタビュー

【短期集中連載】グローバル企業への成長はステップ・バイ・ステップで/ マーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル、鳥居弘也氏 インタビュー

2016.07.04

【短期集中連載】グローバル企業への成長はステップ・バイ・ステップで/ マーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル、鳥居弘也氏 インタビュー

日本企業が海外企業を買収するアウトバウンド型のM&Aは、円安になった今も活発だ。しかし、多額の投資をして買収したにもかかわらず、PMI(Post Merger Integration、買収後の統合プロセス)が思うように進まず、業績面で苦戦する日本企業は多い。日本企業がグローバル企業に脱皮してM&Aを成功させるには何が必要なのか。日系や外資系企業のM&Aに関わる組織・人事面の支援の分野で、十数年にわたる豊富な経験を有するマーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル、鳥居弘也氏が語る、M&Aを成功に導く組織・人事の考え方を短期集中連載する。

グローバル企業への成長はステップ・バイ・ステップで

―― 日本企業の海外M&Aが盛んですが、海外企業買収によって、
   日本企業はグローバル企業化しているのでしょうか。

 私たちは以前から、日本企業のグローバル企業化については、下図のような仮説モデルを考えてきました。横軸を内部資源に向けた組織・人事改革と外部資源に向けたM&A、縦軸を対象資源の所在である国内と海外に分けて、4つの象限を想定し、日本企業のグローバル化の成長ステージを説明したものです。このモデルを作った4年前、右下の国内とM&Aの象限にある「国内経営統合」が盛んに行われていました。企業側は、その狙いについて、国内市場縮小への備えとともに、海外事業買収のための資本力向上を挙げていました。その言葉通り、海外M&Aの市場規模は国内経営統合を上回るようになり、多くの企業が右上の「海外事業買収」の段階に入りました。

―― しかし、買収した海外事業会社を
   うまくコントロールできない例も目立ちます。

 買収して傘下にぶら下げるだけでは足りません。そこで、株主としてガバナンスをきかせる「海外事業ガバナンス強化」(左上)の段階が必要になります。我々が、その次に来ると予想したのは「国内事業・組織人事再構築」の段階です。売り上げで国内をしのぐ規模になった海外事業の経営者から「なぜ、日本だけが経営管理のKPIを公開しないのか」、「グローバルの収益配分を説明して欲しい」と突き上げられれば、国内事業・経営者のガバナンス、国内の組織人事も見直しを迫られるはずだからです。これも、3年ほど前から現実になり、当社が支援する自動車、電機、製薬等の大手企業は「国内のグローバル化」とも言うべき圧力を受け、グローバルスタンダードに沿った組織人事制度改革を進めています。

 そして、今、まさに起きつつあるのが「国内・海外一体の事業・機能の最適化」の段階です。これまで連絡役に過ぎなかった本社派遣の社員も、海外でビジネス能力を身に付けることを求められるようになっています。グローバルにサプライチェーンを展開する先進企業は、開発・設計、部品調達、組み立て、販売を最適地で行うため、常に配置を見直し、国内外一体の最適化に向けて、人・組織の均質化を進めています。トップ企業群は最終段階の「グローバル経営体制の確立」にあと一歩のところまで来ていると言えるでしょう。

―― 一方で、「海外事業買収」「海外事業ガバナンス強化」
   「国内事業・組織人事再構築」の段階で、足踏みして、
  なかなかグローバル化を進められない日本企業もあるようです。

 今後は、自社がどのステージにいるのか、を認識した上で、人事組織の課題に取り組む必要があります。経営者も、ステージを一段ずつクリアしながら、グローバルな事業再編のために必要な能力を身に付けることを意識すべきでしょう。注意すべきなのは、基本的にはステージを飛ばすことはできないということです。必要な経験を積まないうちに、一足飛びにグローバル化を進めようとしても、うまくいきません。ただ、ステージを飛ばすことはできませんが、外部人材の採用やコンサルタントの活用により、ステージを登るスピードを加速することはできると考えています。(第2回に続く)

編集:M&A Online編集部

※関連記事【短期集中インタビュー】マーサージャパン グローバル
M&Aコンサルティング部門代表 プリンシパル 島田 圭子氏の取材記事を読む

1回目:マネジメントを任せるならガバナンスをしっかり利かせるを読む

2回目:実際にガバナンスを機能させるために、意思決定プロセスを把握せよ

3回目:現経営陣の留任に成功したら、 後継育成計画に着手する

鳥居 弘也(とりい・ひろや)略歴

マーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング プリンシパル

銀行系総合研究所および会計系コンサルティング会社(ビッグ4)の組織・人事コンサルティング部門を経て現職。
2002年からM&Aにおける人事デューディリジェンスおよび企業買収、経営統合に伴う組織・人事面の総合的な支援をコア領域として位置付けて活動、豊富な経験を有する。
マーサーでは国内外のトップティア企業を対象として、人事デューディリジェンスはもちろん、経営統合や事業カーブアウト、グループ再編におけるプロジェクトマネジメント事務局(PMO)、組織人事分科会の組成やアジェンダ作成、就業条件・福利厚生および人事制度の統合・再設計支援、要員・人件費の将来予測と構造改革支援などの様々な業務に携わってきた。

近年では、事業戦略から求められる人材像および人材ポートフォリオ(質的・量的要員構成)を明確化するとともに、現状とのギャップ分析を行い、数年後に理想のポートフォリオを実現するためのタレントマネジメントのあり方を設計。また、各階層のマネジメント行動の可視化と従業員意識への影響分析を通じ、組織マネジメント上の課題と打ち手を特定するなど、戦略遂行の強力なドライバーとなり得る組織・人事改革のアプローチの検討に注力し、シナジー発揮に向けた第二段階のPMIへの応用を試みている。
東京都立大学(現首都大学東京)法学部卒業

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。