「旅行革命」でカプセルホテルはここまで進化した

瀧澤信秋のいろはにホテル 第5回

「旅行革命」でカプセルホテルはここまで進化した

2019.05.30

ホテル評論家・瀧澤信秋氏による連載!

カプセルホテルは時代の変化に合わせて進化している

魅力がありあまる「進化形カプセルホテル」を語り尽くす

旅行といえば、旅行会社の店舗へ出向きアレンジするのが定番――、というのはもはや一昔前の話だ。

今ではオンライン上で様々な手配ができるようになった。インターネットの普及がもたらした「旅行革命」が、旅の手配ばかりではなく、移動手段の多様化や機能性・利便性の向上をももたらしている。

近年の宿泊業全体でみれば、訪日外国人旅行者の激増等によりサービスも変容し、様々な旅行者のニーズに応える宿泊施設が誕生し続けている。

カテゴリーでいえばシティホテルやビジネスホテルといった伝統的な区分にとどまらず、ワールドワイドなラグジュアリーブランドの進出、ライフスタイルホテルといった新たな概念の広まりや、付加価値を打ち出す進化系ビジネスホテルの誕生など、枚挙に暇が無い(※1)。また、レジャーホテルの一般ユース取り込みなどについても本連載で指摘したところだ(※2)。

参照:
※1.なぜ東横インは、宿泊料が一定なのか? 多様化するビジネスホテルの今
※2.時代とともに変わるホテル - ラブホは「レジャーホテル」へ

宿泊業の活況に伴い、稼働率の上昇や料金高騰という事態も指摘されるようになってきた。そのような中、リーズナブルに移動できる手段が流行ったことで、安価で利用できる宿泊施設が大いに注目されている。法律的な区分としては「簡易宿所」が代表例だ。大まかにいうと、料金は一般ホテルと一線を画す安さにして、客室(空間)を多人数で共用するというイメージ。「カプセルホテル」や「ホステル」が知られるところである。

そこで今回は、カプセルホテルに注目した話をお届けしたい。

時代と共に進化してきた「カプセルホテル」、あなたはどれだけ知っていますか?

カプセルは「部屋」ではない

そもそも、カプセルホテルの就寝場所であるカプセルは“個室”ではない。消防法等法令の関係もあり、鍵がかからないようになっている。多くのカプセルが並ぶ部屋全体が“客室”であり、前述の通り1室を多人数で共用する前提により複数のベッド(カプセルユニット)が1室にあるという考え方だ。ちなみにこれはホステルも同様で、1室に二段ベッドが並ぶタイプがよく知られているところだろう。

他の宿泊施設同様に、簡易宿所にも入浴施設(シャワーという場合もある)を設けることが法令で定められているが、そもそもカプセルホテルでは充実設備の大浴場が設けられているケースもよくみられる。露天風呂やサウナ、ジャグジーなど、カプセルの宿泊利用の他に大浴場のみの利用者などへサービスを提供する施設も多い。そもそも温浴施設をメインにしつつカプセルホテルも営業している、という施設もみられるほどだ。

「宿泊業」という点から見ると、簡易宿所は営業許可やイニシャルコストといった点からハードルが低い上に、参入・撤退のスピード感という点も秀でているのが特徴だ。

さらには、国際紛争や経済・環境問題など、様々な要因で一気にクールダウンするリスクを内含するインバウンド需要にも、柔軟に運営対応できる業態ともいえる。ユーザー視点に立っても、ある程度のプライバシーが確保されるカプセルホテルは、簡易宿所でも利用しやすい業態である。

どこからが「カプセルホテル」なのか?

筆者は2014年に、“365日365ホテル”というテーマで毎日異なる宿泊施設へチェックインするミッションを続け、結果として372軒の宿泊施設へチェックインした経験がある。

その過程で東京にあるすべてのカプセルホテルへもチェックインする機会を得たのだが、その進化には驚愕するばかりだった。筆者自身、カプセルホテルといえば終電に乗り遅れたサラリーマンが仕方なく利用するといった「緊急避難」的なイメージを持っていた。そして一般的にも、安全・安心の担保という面から疑問符を持たれていた。

ところが、都心の駅から近い一等地に立地し、デザインやサービスなどに気遣った施設が続々と誕生していたのだ。この状況に衝撃を受けた筆者は、これらを「進化系カプセルホテル」と名付け、メディアで情報発信を行った。その後もかような“ブーム”は続き、カプセルホテル活況といえる状況が進んできた。

「進化形」の増加で、カプセルホテル活況が続く

そしてこのブームは、多様な“カプセルスペース”を誕生させた。ホステルとして営業している施設に木枠で二段の就寝スペースが誕生すると、その光景はまるでカプセルホテルのようだったし、「本」をテーマにした施設では、本棚に囲まれ枠で区切られた就寝スペースがあり、その専有面積はまさにカプセルホテルそのものだった。

一般にカプセルホテルというと、たくさんのカプセルが”カイコ棚”のようになっているイメージは共通しているものの、上述した木枠で組んだベッドスペースも、カプセルホテルを標榜する。かような情況に“そもそもカプセルホテルの定義とは何なのか”と考えるようになった。

メディアもカプセルホテルへの興味は尽きないようだ。筆者はテレビや雑誌と関わる仕事もしているが、「カプセルホテルについてとりあげたい」というオファーは2~3年前から激増した。

話を聞くと、カプセルホテルというワードは視聴者や読者に対してフックがあるのだという。まさにカプセルホテルというワードありきの企画であるが、ワードそのものの持つインパクトは大きいようにも思う。

一方、筆者はカプセルホテルとはあくまでも“カプセルユニットを用いた業態”と定義づけている。カプセルユニットは、専門メーカーにより研究され、製作・販売されている。快適性や機能性はもちろんのこと、実際にメーカーを取材してみると、安全性担保などの面からも様々な工夫が為されていることがうかがえるので面白い。

「進化系カプセルホテル」の一部を紹介

カプセルユニットといえば、上下2段で正方形の入り口、奥に長い就寝スペースが並ぶ光景をイメージするが、カプセルホテルの進化は多様なスタイルのユニットを誕生させている。

その代表格が横から出入りできるタイプのユニットだ。この形式は以前から存在していたが、横長の側面から出入りできるので楽な上、進化系では大きなテレビを枕と対の壁面に設置することも多くみられる。上下交互に配置すればプライベート空間を確保できるというのもこのタイプの特徴である。

横からスムーズな出入りができるようなつくりのカプセルユニットもある

また、「キャビン」という名称で知られるファーストキャビンでは、比較的広い空間を確保し、かつキャビン内はいずれも直立できる上下空間を確保する。これまたカプセルホテル同様に簡易宿所のカテゴリーであるが、「カプセルホテルでもなく、ビジネスホテルでもない、新しいスタイルのホテル」(公式HPより)としてカプセルホテルとは一線を画している。

ファーストキャビンの余裕ある空間

そのほか、進化系カプセルホテルの特徴として「女性専用エリア」の存在が挙げられる。カプセルホテルといえば、サラリーマンを代表とする「男性専用の施設」と認識される時代が長かった。

しかし、頭書のとおり、旅行の多様化、さらには移動手段の簡便化によって、若年から老年の女性ひとり旅の需要は喚起された。女性が利用できるカプセルホテルの誕生は必然だったのかもしれない。

いまや進化系カプセルホテルでは、女性専用フロアは常識であり女性専用エレベーターまで設置する施設もある。さらには女性しか利用できない施設も徐々に増えている。

安心して利用できるように設置された専用エレベーター

一方で、昔ながらのトラディショナルスタイルのカプセルホテルも根強い人気がある。進化系に対しいわゆる「旧態型」とも表せる施設であるが、何より進化系に比べて安いことが魅力だ。進化系が4~5,000円というイメージに対して、2~3,000円、中には1,000円台といった施設もある(料金は繁閑などで変動する)。

こうしたホテルはデザイン性やサービスなどは限定的であるが、長期利用プランなど低料金の強みを生かした利用形態にマッチしているのが特徴だ。 

昔ながらのスタイル

以上、昨今のカプセルホテルについての話をしてきた。次回は筆者が体験した実際の店舗をいくつか紹介するので、こちらも併せてチェックしていただければ幸いだ。

次回は、「今知っておくべき進化形カプセルホテル」について。ホテル評論家・瀧澤氏がオススメするカプセルホテルとは――?

※掲載は5月31日を予定しています。

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最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
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